著者
康 純
出版者
近畿大学臨床心理センター
雑誌
近畿大学臨床心理センター紀要 = Bulletin of center for clinical psychology Kinki University
巻号頁・発行日
no.5, pp.3-10, 2012-11-01

[要旨] ギリシャ神話の「変身物語」や平安時代の「とりかえばや物語」に描かれているように、異なる性別で生きることを求める人は昔から存在していたと考えられる。 19世紀中頃から、解剖学的性やその性の役割に対し違和感を表現する人々に対し、医学的な枠組みの中で報告され始めた。しかし、1950年頃までは同性愛やフェティシズム、性同一性障害などが混同されていた。ハリー・ベンジャミンは身体的性とは反対の性であると確信している人々に対して性転換症(transsexualism)という用語を用い、ジョン・マネーらは性分化疾患の性意識を研究して、ジェンダー(gender)概念を提唱した。ここから解剖学的な性とジェンダー・アイデンティティとの不一致を性同一性障害という精神病理学的状態と位置づけるようになった。一方、自分の性に対する表現は自分の生き方の問題であるとして脱病理化を表現するトランスジェンダーという言葉で自らを表現する立場もある。このような状況の中、アメリカ精神神経学会や世界保健機関も診断基準の見直しを進めており、性同一性障害の概念は変遷していく課程にあると考えられる。
著者
康 純
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.755-761, 2011-08
著者
康 純
出版者
近畿大学臨床心理センター
雑誌
近畿大学臨床心理センター紀要 = Bulletin of Center for Clinical Psychology, Kinki University (ISSN:21868921)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.3-10, 2012

KOH, Jun[要旨] ギリシャ神話の「変身物語」や平安時代の「とりかえばや物語」に描かれているように、異なる性別で生きることを求める人は昔から存在していたと考えられる。 19世紀中頃から、解剖学的性やその性の役割に対し違和感を表現する人々に対し、医学的な枠組みの中で報告され始めた。しかし、1950年頃までは同性愛やフェティシズム、性同一性障害などが混同されていた。ハリー・ベンジャミンは身体的性とは反対の性であると確信している人々に対して性転換症(transsexualism)という用語を用い、ジョン・マネーらは性分化疾患の性意識を研究して、ジェンダー(gender)概念を提唱した。ここから解剖学的な性とジェンダー・アイデンティティとの不一致を性同一性障害という精神病理学的状態と位置づけるようになった。一方、自分の性に対する表現は自分の生き方の問題であるとして脱病理化を表現するトランスジェンダーという言葉で自らを表現する立場もある。このような状況の中、アメリカ精神神経学会や世界保健機関も診断基準の見直しを進めており、性同一性障害の概念は変遷していく課程にあると考えられる。
著者
仲地 豊 金沢 徹文 康 純 岡崎 康司
出版者
埼玉医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究課題は性同一性障害(GID)当事者ゲノムの全遺伝子のうち、エクソン領域を対象とした全エクソーム解析による研究計画であった。しかし海外の研究グループから性同一性障害と関連が示唆されるエクソン領域以外の多型が報告された。当初予定していた全エクソーム解析ではエクソン領域近傍100bp程度の範囲までしか変異・多型を検出することができないため、手法を当初の計画から変更し全ゲノム解析に移行して再解析をする必要があった。予備解析でイントロン領域や遺伝子間領域にみられる反復配列多型の検出も全ゲノム解析で十分可能であったため、手法を変更して10例のGID当事者サンプルについて全ゲノム解析をおこなった。
著者
丹羽 幸司 織田 裕行 石井 慧 康 純 諸富 公昭 磯貝 典孝
出版者
近畿大学医学会
雑誌
近畿大学医学雑誌 = Medical Journal of Kindai University (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1-2, pp.9-15, 2019-06-19

[抄録]性同一性障害(Gender Identity Disorder, GID)は,Female to Male(FTM)と Male to Female(MTF)に大別される.MTF患者に手術治療を行う場合,その精神医学的な特性から,医療側として特別な対応が必要と考えられる.ロールシャッハ・テストに基づく分析によれば,MTFは,FTMに比較して情緒的に不安定であり,悲観的な自己イメージ,逸脱した思考を持つ傾向にあることがうかがわれる.このMTFの精神医学的な特性を鑑み,手術適応の判断においては慎重な医療体制を整える必要があると考える.日本精神神経学会の「性同一性障害の診断と治療のガイドライン」に則した身体治療適応判定会議で手術治療の承認が得られている患者であっても,GIDに精通した精神科医の外来診察を設けて検討し,場合によっては身体的治療を行う前に精神療法を行うことが重要であると考えられる.そのうえで身体治療医から十分過ぎるインフォームドコンセントを行い,それでもなお手術治療を受けたいと希望する患者を受け入れるべきである.GID患者を受け入れるに際して,特にMTF患者の望ましくない特性を引き出すことのないように,きめの細かい病院対応が求められる.加えて,身体治療を行う医師,特に外科医としての心構えを考え続けたい.
著者
康 純
出版者
近畿大学臨床心理センター
雑誌
近畿大学臨床心理センター紀要 = Bulletin of Center for Clinical Psychology, Kinki University (ISSN:21868921)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.3-10, 2012

[要旨] ギリシャ神話の「変身物語」や平安時代の「とりかえばや物語」に描かれているように、異なる性別で生きることを求める人は昔から存在していたと考えられる。 19世紀中頃から、解剖学的性やその性の役割に対し違和感を表現する人々に対し、医学的な枠組みの中で報告され始めた。しかし、1950年頃までは同性愛やフェティシズム、性同一性障害などが混同されていた。ハリー・ベンジャミンは身体的性とは反対の性であると確信している人々に対して性転換症(transsexualism)という用語を用い、ジョン・マネーらは性分化疾患の性意識を研究して、ジェンダー(gender)概念を提唱した。ここから解剖学的な性とジェンダー・アイデンティティとの不一致を性同一性障害という精神病理学的状態と位置づけるようになった。一方、自分の性に対する表現は自分の生き方の問題であるとして脱病理化を表現するトランスジェンダーという言葉で自らを表現する立場もある。このような状況の中、アメリカ精神神経学会や世界保健機関も診断基準の見直しを進めており、性同一性障害の概念は変遷していく課程にあると考えられる。KOH, Jun