著者
新井 庭子 分寺 杏介 石原 侑樹 松崎 拓也 影浦 峡
出版者
計量国語学会
雑誌
計量国語学 (ISSN:04534611)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.144-159, 2017-09-20 (Released:2019-01-11)
参考文献数
38

本研究では,小学校と中学校の理科教科書を対象に,語彙と構文の観点からテキストの複雑さを構成するパラメータを予測し,小・中間でそのパラメータで表現できるギャップがあることを示す.中学校に適応できないいわゆる小・中ギャップは,生活面と学習面から研究されてきたが,教科書等の教材のテキストの相違がもたらすギャップに着目した研究はない.本研究はこの点を背景に,テキストの表現形式に具体的にどのような差があるのかを,小・中ギャップに関連する段階の教科書を対象に明らかにするものである.分析の結果,小・中の教科書には特に係り受け関係の複雑さに顕著な差があることが明らかになった.
著者
朱 心茹 影浦 峡
雑誌
第82回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, no.1, pp.333-334, 2020-02-20

発達性ディスレクシアは、読字や書字に特異的な困難が見られる学習障害である。ディスレクシアの症状は実に多様であるため、個々人に最適化された支援方法が必要となる。筆者らはこれまでの研究において、特別にデザインされた書体が有用なディスレクシア支援となる可能性を模索した。その結果、適切にデザインされた書体はディスレクシアを持つ児童と成人の読みに良い影響を与えることが明らかになった一方で、その影響の種類や度合いは個々人によって差があることが示された。この結果は、共通の特徴をベースとしつつも個々人にとって最も有効な特徴を書体に付与するようなカスタマイズシステムの必要性を示唆するものである。本研究ではカスタマイズシステム開発への第一歩として、これまでに構想・開発された主要な書体カスタマイズシステムをレビューし、ディスレクシアに特化した和文書体カスタマイズシステムの枠組みを示す。
著者
朱 心茹 高田 裕美 影浦 峡
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.3_51-3_60, 2020

本研究では、発達性ディスレクシア等の学習障害に由来する読み書き困難にも配慮した書体として開発されたUD デジタル教科書体の新しい付属欧文書体が読みに与える影響を明らかにすることを目的に、読みやすさの客観的指標に関する実証実験と主観的指標に関する調査を行った。発達性ディスレクシアを持つ読者16名と発達性ディスレクシアを持たない読者19 名が研究に参加した。<br>実証実験と調査の結果、発達性ディスレクシアを持つ読者にとってUD デジタル教科書体の新しい付属欧文書体が他の教科書体付属欧文書体及び一般的に使用されている欧文書体と比較してより読みやすいことが明らかになった。また、書体は読みやすさの客観的指標と主観的指標の双方に一定の影響を与えることが明らかになった。これらの結果から、発達性ディスレクシアに特化した書体の有用性が示された。
著者
鈴木 崇史 影浦 峡
雑誌
じんもんこん2006論文集
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.145-152, 2006-12-14

本研究では、1945年から2006年にかけての総理大臣国会演説の、時代による文体的変化を検討した。一文の長さ、延べ語に対する助詞の比率、助動詞の比率を時系列に観察すると、それぞれにトレンドが観察された。全ての助詞・助動詞の相対頻度を用いた主成分分析・クラスター分析によって、三木以外の総理演説が分類されることから、総理演説の助詞・助動詞使用に、もっとも大きな影響を与えている要因は時代であることが示された。分類に寄与の大きい助詞・助動詞の増加・減少傾向は、現代雑誌とほぼ対応していることから、総理演説の助詞・助動詞使用の変化は、主に日本語の変化に対応したものであると考えられる。
著者
鈴木 崇史 影浦 峡
出版者
日本行動計量学会
雑誌
行動計量学 (ISSN:03855481)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.83-92, 2011 (Released:2011-07-04)
参考文献数
39
被引用文献数
4 3

This study explores the distributional characteristics of nouns of Japanese prime ministers' Diet addresses for interpreting two political phenomena. Previous content analysis studies focused only on a few content words for interpreting social phenomena and stylistic studies used stylistic characteristics independent on content of the texts with the aim of detecting their authors, genres, and chronological variations. This study focused, instead of these features, on distributional characteristics of nouns for better understanding two political phenomena: (a) the difference between the two types of Diet addresses delivered by Japanese prime ministers, and, (b) the perceived changes made to these addresses by two powerful prime ministers. This study expands the aims and scopes of text analysis by showing the effectiveness of exploring these microscopic textual characteristics for interpreting political phenomena.
著者
影浦 峡
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.23-27, 1998-03

言語における「共時性」と「通時性」の概念の基本的な枠組みは、今世紀前半にソシュールによって示唆された。けれども、それ以来、これらの概念を巡っては、様々な解釈が与えられてきた。本稿では、それらの解釈の代表的なものを参照しつつ、具体的・技術的な言語研究を健全なかたちで進めるために必要な、「共時性」と「通時性」という概念の枠組みを、特に専門用語研究のあり方を想定しながら、整理する。
著者
竹内 孔一 内山 清子 吉岡 真治 影浦峡 小山 照夫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.1446-1456, 2002-05-15
被引用文献数
8

本研究では,主辞がサ変名詞である複合名詞の語構成において,構成する単語間の係り関係を支配する語彙的性質に着目し,それに基づく複合名詞解析モデルの作成を試みる.主辞がサ変名詞の複合名詞内の係り関係の解析は,並列関係の場合を除くと,主辞であるサ変名詞の項関係なのか修飾なのかを同定することが解析の第1歩である.項関係とは名詞が動詞の目的語や主語といった関係であることを意味している.本論文では,この関係をとらえる方法として,語彙概念構造を利用した動詞の分類と,その構造を利用した名詞の分類に基づく複合名詞解析手法を提案する.情報処理関連の専門用語と新聞記事中の一般的な複合名詞に対してテスト的な実験を行った.その結果,平均で1231語の複合名詞対して約99.4%の複合名詞を正しく解析する結果を得た.In this paper,we describe a principled approach for analyzing relations between constituent words of compound nouns,specifically those whose heads are deverbal nouns,based on the classification of deverbal nouns by their lexical conceptual structure (LCS) and the classification of nouns in modifier position vis-a-vis LCS of head deverbal nouns.There are two kinds of relations of compounds with head deverbal nouns.The one is that a modifier noun becomes an argument of deverbal head and the other is that a modifier becomes an adjunct.It is an important starting point for analyzing relations to disambiguate the two kinds of relations.Through the qualitative analysis of the data and the experimental evaluation of 1231 compound nouns, we show that the use of LCS as the theoretical basis is very promising for constructing compound analyzer.
著者
内山 清子 竹内 孔一 吉岡 真治 影浦 峡 小山 照夫
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.49-57, 1999-03
被引用文献数
1

専門分野における複合名詞を分析する時に、複合名詞を構成している語構成要素の情報が必要となってくる。本研究では、語構成要素の文法情報だけでどこまで複合名詞の性質を分析することができるかどうかを見きわめるために、語構成要素を文法情報である品詞相当カテゴリーに分類するための検討を行った。語構成要素においては、従来の文/単語関係で定義された品詞カテゴリーをそのまま適用することは難しい。そこで本研究では、従来の品詞カテゴリーを参照しつつ、新たに語構成用の品詞相当カテゴリーとその定義を設定することを試みた。
著者
影浦 峡 阿辺川 武 内山 将夫 佐藤 理史 宇津呂 武仁 竹内 孔一 相澤 彰子 戸田 愼一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

(1) レファレンス・ツールにおける「包括性」の概念および包括性を 実現するための要件を明らかにした。(2) 専門語彙クローラーと対訳・関連多言語アーカイヴ クローラーを開発し、機能的包括性を有するレファレンス情報資源を構築した。(3) 翻訳情報 資源を提供する統合翻訳支援サイト「みんなの翻訳」(http://trans-aid.jp/)を開発・公開し、 一般利用に提供し翻訳情報資源の有効性を検証した。