著者
山田 尚勇
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.73-112, 1995-03-31
被引用文献数
1

ワープロが普及し、常時活用する者が増えるとともに、かな漢字変換などのわずらわしさを嫌って、「直接」入力法に関する関心が高まっている。本稿ではかつて筆者たちが行なった2ストローク入力法についての、約10年まえの紹介の自後経過をまず報告し、次いで当時から問題であった、技能習熟訓練を普及させる努力の現状と、特に小中学生からの習熟に欠かせない、人間工学的に配慮された小型キーボードの開発の必要性について述べる。最後に、変換入力法における文字使いをもっと知能的に改善する方略と、ローマ字入力におけるつづり方の統一について考察する。なお付録として、アメリカ合衆国ミネソタ州における、キーボードの使い過ぎによって起こったとする手の異常に対して起こされた損害賠償請求裁判の経過の速報と評価をつけてある。
著者
山田 尚勇
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.261-318, 1991-12-25

われわれは主として漢字かな混じり文を使いなれているために, 自分が漢字に対して持っている先入主を基にした, 科学的裏付けのない議論をもって, 文字に関する普辺的真理と信じていることがかなりある。本稿においては, 言語学, 心理物理学, 認知科学, 脳科学などの観点から, 講演形式を用いて, 文字に関するそうした種々の主張を一つ一つ解明してゆく。
著者
山田 尚勇
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.33-71, 1997-03

現在世界的な規模で進行しつつある、社会の情報化と国際化に伴い、日本語とその表記法とは、いま新たな問題に直面している。すなわち、言語学的には世界でもっともやさしい部類に属する日本語が、世界でもっとも複雑な表記法を用いているが故に、外にはなかなか国際的に受け入れられず、内には情報化の出発点となる機械可読化、すなわち入力が複雑で非能率、かつストレスの多い作業となることである。本稿では、長期的な課題として、いかにして日本語の表記を国際化するかについて、また短期的な課題として、いかにして現在の表記法のままの文章を能率よく、かつ楽に入力するかについて、考察する。
著者
山田 尚勇
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.249-290, 1994-03-28

アルファベットによってことばを表記している国ぐにでは、表記法の問題は前世紀の終りごろまでにだいたい片付いているが、日本では今にいたっても、ときどきまだ大きな変化が起こっている。そしてそのほとんどが、実は漢字の借用に始まる、おおよそ1500年にも及ぶ問題の細部の表明である。 本稿ではこの漢字の問題を、主権在民の情報化社会の立場に立って、日本語の側から展望した論説である。
著者
山田 尚勇
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.199-247, 1994-03-28

発話およびそれから派生した文章を含めた聴覚的言語のほかに、最近ではコンピュータ・グラフィクスの急激な進歩に伴って、ほとんどがまだ片こと的なものではあるが、画像に訴える視覚的言語という概念が注目されている。本稿では人間科学の立場に立って、この両者を比較し、かつ実は手話などを含む視覚的言語のほうが、言語としてはずっと古い起源を持ち、それだけに人間にとっては楽で自然なコミュニケーションの媒体である可能性を探る。
著者
西澤 正己 柿沼 澄男 孫 媛 矢野 正晴
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.179-196, 1999-03
被引用文献数
1

なぜ米国は情報技術/情報科学の多くの面で世界をリードすることができたのか。そのなぞを解き明かすことは、我が国が情報技術/情報科学において優位性を確保するための必須条件となる。そのためには、米国と日本との比較研究をすることにより、その違いを明らかにすることが重要であると考え、本稿では、人的資源、研究費、論文数等の情報科学研究を取り巻く実態を比較研究した。その結果、日米両国の情報科学研究について以下の点が明らかになった。 (1)大学院生数及び研究者数では、日米の人口比を考慮すると、大学院生の数については日米ほぼ同じ水準にあるが、研究者の数については日本の研究者数は米国の半分以下の水準である。 (2)研究費では、中央政府による大学への研究助成金の比較を行った。日本政府が大学へ助成している金額は、GDP比を考慮すると米国の約5分の1である。 (3)論文数の比較では、米国Institute for Scientific Information(ISI)社が作成した文献抄録データベースScience Citation Index(SCI)を用いて分析を行った。その結果、「情報システム」、「ハードウェア/アーキテクチャー」、「理論/方法論」の分野では、日本の研究は相対的に盛んであるが、「ソフトウェア/グラフィクス/プログラミング」の分野は相対的に盛んでない。
著者
山田 尚勇
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.319-330, 1991-12-25

第2次世界大戦後の日本の工業経済の奇蹟的な発展は国際的に高く評価されるとともに, 時には謎とされている。一方, 国際的な貿易摩擦を引きおこすようになってからは, 日本のそうした成功は日本文化の非国際的な異質性や日本政府のアンフェアな貿易政策によるものとする論調をしばしば誘発するに至った。しかし, その多くは問題の核心を十分理解した上でのものとは言い難いと思われる。 本稿は, さまざまな観点からの考察を通して, この問題の本質についてのそうした国際的な誤解を解くことを試みるとともに, これからわれわれ日本人がこのような国際問題に取り組んでいくときに考えるべきことの一端を率直に示唆しようとするものである。
著者
山田 尚勇
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.139-160, 1990-09-30
被引用文献数
1

本稿においては、研究開発に関わる統計的分析を示すのではなく、日米両国において、大学および企業の研究所で長らく過したあいだの、個人的経験を述べる。 日本では科学と技術がほとんど区別されず、一体として理解されている。しかし、かりにその差を認めたときには、どちらかというと、技術者のほうが科学者よりも地位が高いとする伝統がある。しかるに米国においては、科学は自然の法則を理解(分析)すること、工学はそれを実利に向けて応用(合成)することという、よりはっきりとした区分がなされている。 しかも、基盤となる科学に関わる者のほうが、工学に関わる者より、常に高い評価を受けてきた。 こうした微妙な差異は、科学と技術に関わる2国の政策に、かなりの違いを生んでいる。米国が基礎研究と新しいアイデアの発見にカを入れてきたのに対し、日本では既成のアイデアと技術を導入し、それらにキノ細かい改良を加えた上での製品化技術に集中し、勤勉でレベルが高く、しかも質の揃った技術者、労働者の効果的活用により、高品質、高信頼性の製品を大量生産し、安価に世界市場に供給しつつ、工業立国の面目を発揮してきた。 そうした国策は、近年大幅な貿易黒字をまねくとともに、主として製品の信頼性と価格の差とにより、米国におけるいくつかの産業を極度に圧迫している。そうして起こった貿易摩擦、経済摩擦の結果、日本が基本的アイデアを生み出すこと少なく、もっぱら他国に頼りつつ、甘い汁を吸っているという、技術タダ乗り論が海外に台頭し、高度先端技術の日本への移転を制限する運動さえ起こりだした。 こうした国際状勢の中にあって、日本としては、貿易黒字減らしと基盤的創造性の養成に、いやおうなしに取り組まなければならなくなった。 改めて世界を見まわしてみると、日本製品の廉価供給を可能にした原因として、1人あたりの国民総生産が世界一であるにもかかわらず、日本における実質的生活水準の低さが目につくようになった。すなわち、世界において飛び抜けて多い年間労働時間数、流通機構の過保護による世界一の物価高、過少な社会資本投資の結果としての生活環境の貧困さなどである。そして、国外における日本製品の価格の低廉さは、こうした犠牲の上に可能となっているという国際的指摘がなされだした。 さらに、もともと基礎研究というものは、豊かな「科学資本」-つまり教育、設備、試験研究、知識の集積など-に経費のかかるものである。日本は外国のアイデアにタダ乗りして、こうした資本の投資をもおこたっているというのである。 こうした国際的緊急状態に対処するために、日本は基礎研究にカを入れるとともに、創造性の組織的開発に取り組み始めた。 独創性を発揮するのは平均的思考能力を持つ人たちではなく、他人と変わった、独自の思考をする小数の人たちの集団であることが多い。 しかるに日本の社会では、単一化、画一化を陰に陽に奨励する文化が長らく定着しており、個性の強い者、変わり者が自由に伸びていくにはさまざまな障害が多い。 教育も、幼稚園から高校に至るまで、例外ではないから、大学にはいってから、にわかに個性を発揮しろと言われても、もともとそうした素質を持った人間は、それ以前の過程でかなり排除されてしまっている。 さらに日本の教育システムでは、小中学校の教育にかける経費はかなり潤沢であっても、大学教育、特に大学院にかける経費は、国際的に見てかなり少ない。かつ、教官に対する制限が強すぎて、かれらには自由に過ごせるまとまった期間が少なく、企業で働けず、またほとんどが所属大学の内部育ちであり、人事の交流も少ない。これらの環境条件は、またもや研究者の画一的思考を助長することになる。若手の研究者についても、大学院生を教育、研究過程に積極的に組み込むことが法的にできなくなっており、また、若手の社会人に対する「生涯教育」も思うにまかせない。積極的に創造性を評価するのに臆病であるから、長老に対する功労賞は多くても、若手に向けた大きな功績賞はない。 幼いときから、自分の意見をはっきりと相手に主張し、相手と議論してでも意見を伝えることを教えこまれているアメリカ人に比べて、われわれの行動の主原理は和の精神であり、右顧左眄しつつものを言う会議は、とかく生産的でない。委員会なども初めからとかく同種意見の持ち主で構成されるから、画期的な結果が出にくく、討論会などでも、本来の「秩序ある対決」の精神が生かされない。 個性とアイデアとは切っても切れない関連があるから、個人の確立のないところでは、アイデアそのものを尊重する観念も希薄になる。それはアイデアを出した個人の報われかたにおける日米の差によく表われている。 こうした独創性の低さ、そしてそれに付随した、外国からの先端技術タダ乗り論の非難を解消するには、国として早急に創造性養成の施策を進めなければならない。それについても多くの提案があるが、どうも対症処置に終わっていて、原点に立ち戻って考えなおすことは極力避けているかに見える。それに対症処置そのものが、また画一的、均質的で、別の硬直化を起こしそうなものが多いようだ。ほんとうに独創性を上げようと思うなら、国民全体の均質性、高水準性は多少犠牲になるかもしれないが、幼稚園教育から始めて、個性の自由な発露と、それに伴う多様化を、極力推し進めていくことが必要なのではなかろうか。そうした教育制度の思い切った改革は、なかなかむずかしいと思うが、それなしには、ただでさえ多額な投資を必要とする基礎研究に研究費を注ぎ込んだとしても、独創的な成果は、なかなか思うようには出て来ないのではなかろうか。わが国の研究の理念は、あまりにも実用的、工学的思考に傾きすぎている。たとえば気球との関わり方の歴史をみても、軍事的効用が認識されるまでは、わが国での反応は実に冷淡であったようだ。
著者
藤代 節
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.53-72, 1998-03

東・中央シベリアを中心として、広い地域に分布するチュルク系言語ヤクート語の動物及び植物を表す語彙についての研究である。ヤクート語にはその主要な話者であるサハ(あるいはヤクート)族が今日の居住域に至るまでに辿ってきた過程が、特に語彙において反映されており、そのことがチュルク諸語の中にあって、ヤクート語が特異な言語とされる所以でもある。この言語の特異性を明らかにするため語彙の中でもセットとして扱えるものを取り上げる。既に色彩名称と方向表現に関する研究を発表したが、本稿でこれに続いて同じくセットとして動植物名称を選び、研究の対象とした。色彩名称、方向表現についてと同じくサハ族の英雄叙事詩オロンホ「クース・デビリィエ」を主な資料とし、この中に見られるヤクート語の動植物名称の整理分析を試みた。
著者
大山 敬三 神門 典子 佐藤 真一 加藤 弘之 日高 宗一郎
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
no.12, pp.111-120, 2000-03
被引用文献数
1

学術情報センターで開発中のオンラインジャーナル編集・出版システムは,学協会や大学が刊行する学術雑誌の執筆・編集・出版のすべての工程を電子化・オンライン化し,学術研究成果の流通を効率化するものである.学協会が運用して編集に利用するインハウスシステムは多様な編集部体制や文書形式に対応できる設計となっている.学術情報センターが運用してオンライン出版に用いるシステムは強力な検索能力を持ち,多数の購読者支援機能を提供する.本稿では,このシステムについて,著者,編集担当者,購読者などの視点からの機能や利用方法を説明し,学協会における活用方法を紹介している.
著者
孫 媛
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.103-111, 1997-03

テスト理論の分野で近年重要性が増している項目反応理論 (IRT) は、テストデータの一次元性を仮定している。しかし、現実のテストでは、項目に正答するのに複数の能力が関与していると考えざるを得ない場合も多い。そのような多次元データに対して、被験者を多次元潜在空間における能力ベクトルとして位置づける多次元項目反応理論 (MIRT) が提案されている。MIRTモデルは、特に認知診断テストへの適用が有望視されているが、いくつかの問題も残されている。一方、個人の能力特性値の変動を導入することによって、一次元IRTを拡張したものとして、一般化項目反応理論 (GIRT) がある。GIRTモデルでは、攪乱能力次元の影響を、能力特性値の変動の個人差によってある程度説明できるので、多次元データへの適合が改善される。本研究では、 MIRTモデルとGIRTモデルの解析的観点からの比較、両モデルの特徴・適用場面の検討が行われる。
著者
影浦 峡
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.23-27, 1998-03

言語における「共時性」と「通時性」の概念の基本的な枠組みは、今世紀前半にソシュールによって示唆された。けれども、それ以来、これらの概念を巡っては、様々な解釈が与えられてきた。本稿では、それらの解釈の代表的なものを参照しつつ、具体的・技術的な言語研究を健全なかたちで進めるために必要な、「共時性」と「通時性」という概念の枠組みを、特に専門用語研究のあり方を想定しながら、整理する。
著者
山田 尚勇
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.139-197, 1994-03-28

音楽の中の非可聴高周波成分が鑑賞者の快感の一端を担っているというOohashiらによる研究成果を踏まえて、アナログ技術によるLPレコードとディジタル技術によるCDとの二つの音楽メディアをめぐって分かれている評価を含む、オーディオ機器一般の音質評価を、聴覚生理学および大脳科学を中心とした認知科学の見地から、耳の非線形性の影響を中心として考察し、今後の検討課題と、関連した人種的文化的問題などについて述べる。
著者
内山 清子 竹内 孔一 吉岡 真治 影浦 峡 小山 照夫
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.49-57, 1999-03
被引用文献数
1

専門分野における複合名詞を分析する時に、複合名詞を構成している語構成要素の情報が必要となってくる。本研究では、語構成要素の文法情報だけでどこまで複合名詞の性質を分析することができるかどうかを見きわめるために、語構成要素を文法情報である品詞相当カテゴリーに分類するための検討を行った。語構成要素においては、従来の文/単語関係で定義された品詞カテゴリーをそのまま適用することは難しい。そこで本研究では、従来の品詞カテゴリーを参照しつつ、新たに語構成用の品詞相当カテゴリーとその定義を設定することを試みた。
著者
田代 朋子 佐々木 仁 大江 和彦 木村 優 熊渕 智行
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.231-242, 1995-03-31

医学雑誌に報告される臨床症例を全文データベース化した「臨床症例データベース」を精度良く検索するために医学用語シソーラスを作成した。このシソーラスは従来のシソーラスと異なり文献中に出現する自由語をそのまま収録したものであり、仮に「自由語シソーラス」と呼ぶことにする。本シソーラスにより自由な語から網羅性の高い検索を行うことができる。
著者
益森 治巳 高城 章代 北村 明久 内藤 衛亮
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.75-93, 1996-03-29

学術情報の流通を促進する方策の一つとして、鹿児島大学において1995年前半に、大学紀要の電子入稿について調査した。1995年2月時点で当該年度の出版物として、11部局から29種類の紀要が刊行されており、254論文が掲載されていた。第一著者、複数の論文を執筆した場合は一論文のみの著者として154名が確認できた。全教官の15%に相当する。有効回答は133名(回収率86%)。電子的に執筆していたのは117名(全回答者の88%)。ハードウェア、ソフトウェアは多岐にわたった。入稿の態様は投稿規定に依存しているものの、37名(28%)の著者がプリントとフロッピーによって入稿した。流通に対する意識は未見の事態に対するものとして、過渡的であり、平行出版の必要性が指摘された。投稿規定・手順としての意見も未成熟であり、フオーマットの標準化についての意見は分かれている。投稿規定の整備が必要である。
著者
孫 媛 井上 俊哉
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.193-216, 1995-03-31

1960年代以降、アメリカではテストの公正な利用、テストバイアスが大きな関心を集める問題になっている。その間、差異項目機能(DIF:Differential Item Functioning)の概念が生まれ、いくつものDIF分析法が提案されている。現在、DIF分析は項目バイアスを検出するための統計的道具として、テスト開発過程に欠かせないものとなっている。また、バイアス探索とは別の文脈においてもDIFの概念と分析法が役に立つこともわかってきた。 本稿ではまず、DIFが今日のように盛んに研究されるまでの経緯を概観した後、代表的なDIF分析法を関連する概念とともに展望する。ついで実際のテスト開発過程でDIF分析が適用されている現状を紹介する。最後に日本での研究の可能性を含めて、DIF分析のより広い応用について論じる。
著者
竜岡 博 山田 尚勇
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
no.8, pp.27-74, 1996-03

日本語のローマ字書きの国定の標準は1937年に布告され、現在の訓令式は1954年にそれを若干修訂したものである。その中から、当座許容されていたヘボン式つづりを削除したものが、国際標準化機構によって1989年に国際標準とされている。そうした国内的、国際的標準の存在にもかかわらず、現在もっともよく使われているのは、英語寄りのヘボン式つづりである。 標準の遵守の、そのように不満足な状況は、明らかに、実施に対する政府機関の無為によるものである。しかしそうした消極的な態度の奥には、訓令式の言語学的基礎に対する理解不足がある。 本稿の主目的は、標準の普及のために、幅広い人びとを対象として、使用の実状と照らし合わせつつ、訓令式つづりの理論的基礎のハイライトを提供するにある。
著者
山田 尚勇
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.81-109, 1998-03

本稿では、まずごく初歩的な数理的分析を通して、かつて日本の思想を風靡した精神主義の非合理性を検討し、大東亜戦争における日本の敗北の真の一因を明らかにする。その上で、そうした思想を醸し出す一端となった、日本語の表記法の問題点を検討し、この間題についてはわれわれの多くがいまだに不合理な思考の枠に囚われていることを指摘する。
著者
根岸 正光 山田 尚勇
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.27-39, 1992-12-25

わが国の学術論文では、外国論文に比べて、一般に共著者の数が多いといわれることがある。この背景には、わが国における研究活動のあり方、さらには、わが国の文化的社会的風土があるはずである。本稿は、文献データベースによる共著者数の統計的調査のための予備調査の結果報告と、多数連名の論文を生む、わが国の研究環境に関する試論よりなる。予備調査における日米比較では、わが国の論文のほうが著者数が多いという結果がえられたが、研究分野別間での差異が予想されるので、今後の本格調査設計上の要件をまとめる。後半では、共著論文の性格と創造性、学術雑誌の編集方針に関して、欧米とわが国の相違を、事例を通じて比較検討し、今後、情報メディアの発達が共同研究の実施を一層容易にする反面、成果の発表においては個別化・個性化をもたらす可能性を考える。