著者
高橋 美絵 磯谷 敦子 宇都宮 仁 中野 成美 小泉 武夫 戸塚 昭
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.102, no.5, pp.403-411, 2007-05-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
21
被引用文献数
5 7

製麹工程における麹の香りの変化を明らかにした。1.製麹工程中の香りは, 麹らしい香りの全体的強度, キノコの香りの強度は経時的に増加する傾向を示し, 甘い香りは出麹時に最も強くなり, 栗香は出麹以降に強くなることが認められた。2.栗香については, Phenylacetaldehydeが床もみ後40時間で最大となり, 1-Octen-3-one, 1-Octen-3-olは菌体量の増加とともに44時間から49時間の出麹にかけて約2倍に増加したことから, これらの成分のバランスで栗様の香りになるものと考察した。3.製麹工程において麹中のアミノ酸は出麹に向けて経時的に増加する傾向を示したが, 香気成分の前駆物質と考えられるアミノ酸 (Val, Leu, Met及びPhe) において固有の動向は見られなかった。4.製麹工程における脂肪酸の動向を検討したところ, 脂肪酸は菌体量の増加, 菌体外タンパク質量と共に増加する傾向を示し, 脂肪酸は麹菌の増殖の指標となると考えられた。5.リノール酸を基質として麹から抽出した粗酵素液を反応させたところ, HOD及び1-Octen-3-olの生成が確認された。1-Octen-3-ol生成酵素活性は製麹後半 (リノール酸の増加開始約4時間後付近) で約10倍高くなり, 基質であるリノール酸に制御されていることが示唆された。6.1-Octen-3-olを基質として粗酵素液を反応させたところ, 1-Octen-3-oneの生成が確認された。1-Octen-3-one生成酵素活性は盛仕事以後の製麹工程中において一定であり, 香りに強弱がある麹間においても差は認められなかった。7.製麹後期の麹の香りは, リノール酸を前駆体として生産されるものであり, この香りを製麹管理及び麹の品質評価の指標として活用できることが確認された。
著者
山本 奈美 戸塚 昭
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.85, no.5, pp.341-344, 1990-05-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
6
被引用文献数
5 5

ノーズ・クリップ法でワインの官能評価をおこない, 赤ワインは味と香りの両方に白やロゼと判別される特徴を持つこと, ワインのブドウ品種の判別や熟度の評価には味よりも香りの方が重量な要因であることが示され, ワインの官能評価における香りの重要性が確認された。終わりに, 審査にご協力いただいたパネリスト各位に, 深謝致します。
著者
水品 圭司 高島 邦夫 高橋 利郎 戸塚 昭
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.120-126, 1990-02-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

(1) ワイン中の中高沸点硫黄系化合物の抽出・同定を試み7個の化合物を同定した。このうち, 2-メチルーメルヵプトエタノール (MME) とジメチルースルホン (DM) はワイン中に初めて同定された。(2) 2-メチルーメルカプトエタノール (MME), ジメチルースルホン (DM), 3-メチルチオプロパノール (MTP), デヒドロー2-メチルー3-(2H)-チオフェン (DMTP) 及び3-メチルチオプロピオン酸エチル (EMTP) について品種を異にするワインにおける含有量を求めたところ, 香味の正常なワイン中にもこれらの化合物が広く存在していることが明らかとなった。(3) 中高沸点硫黄系化合物は, ヌカミソやタクアン, ゴム, タマネギ様の匂いを有した。官能検査からこれらの化合物のワインにおけるF. U. 値を求めたところ3-メチルチオプロピオン酸エチル (EMTP) と赤ワインにおけるジメチルースルホン (DM) を除いて, いずれの化台物もF. U. 値が1以上を示し, これらの化合物が供試ワインの香気特性に対して寄与しているものと考察された。
著者
豊田 健太郎 池崎 秀和 平林 和之 三村 昭彦 那須 賢二 戸塚 昭
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.1, pp.49-58, 2016 (Released:2018-05-28)
参考文献数
13
被引用文献数
4

清酒の味を味覚センサー(味認識装置)で評価した結果,以下の知見を得た。1.BT0センサーは疎水性部分を持つペプチドに応答し,清酒の後味(膨らみ感,味の幅)の評価に活用できる可能性が示された。純米酒では,BT0センサーの出力が高く出る傾向が認められ,清酒の後味(膨らみ感)に着目した官能検査との間で相関が認められた。2.CT0センサーは有機酸塩に応答し,清酒の「濃醇感」の評価に活用できる可能性が示された。3.BT0とCT0の2本のセンサーを用いて,清酒の「後味」及び「濃醇感」という2つの項目によって清酒の味を識別することができた。4.清酒の味わいの違いを表示する方法を提示した。

1 0 0 0 OA 酒類と金属

著者
戸塚 昭
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.229-234, 1975-04-25 (Released:2009-05-25)
参考文献数
9
著者
戸塚 昭 難波 康之祐 小武山 温之
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.12, pp.1116-1119, 1970-12-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
19

昭和45年4月醸造試験所春の鑑評会に出品された吟醸酒のうち上位29点および下位20点, 43BYおよび44BYに醸造された原酒41点, 市販酒特級11点, 1級21点および2級19点中の鉄, マンガン, 亜鉛, 銅の含量を原子吸光法によって測定した。吟醸酒上位と下位の平均価は, それぞれ鉄0.055, 0.064ppm, マンガン1.551, 1.727ppm, 亜鉛0.573, 0.570ppm, 銅0.039, 0.062ppmであり, 上位と下位の間の差の有無について検定を行なったところ, いづれの金属も分散および平均値に差が認められない。但し銅の場合上位と下位の分散に差が認められるが, 下位の清酒のうち0.308ppmは異状値と考えられるので, この値を除外すると差が認められなくなる。特級, 1級, 2級で製造場の同一のもの10場を選び出し, 分散分析を行なうと, 鉄は, 級別により差を認め, 平均に対する95%信頼限界は, 特級0.084±0.044ppm, 1級0.117±0.044ppm, 2級0.132±0.044ppmであった。マンガンは, 製造場間, 級別間に高度に有意差があり, 95%信頼限界はそれぞれ1.752±0.139ppm, 1.635±0.139ppm, 1.469±0.139ppm, 亜鉛は製造場・級別に差があり, 95%信頼限界は, 1.375±0.184ppm, 1.458±0.184ppm, 1.718±0.184ppm, 銅は製造場間に有意差があり, 級別に有意差が認められない。95%信頼限界1よ0.134±0.058ppm, 0.139±0.058ppm, 0.153±0.058ppmであった。