著者
劔 卓夫 奥村 謙 大西 史峻 金子 祥三 根岸 耕大 林 克英 岡松 秀治 田中 靖章 坂本 知浩 古山 准二郎
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.113-123, 2021-10-01 (Released:2021-10-10)
参考文献数
20

左脚ペーシング(LBBP)は,His束下流の刺激伝導系を直接捕捉しようとする新しい心室ペーシング法である.LBBPはHis束ペーシングより成功率が高く,心機能やQRS幅はHis束ペーシングとほぼ同等で,閾値上昇を認めないことが報告されている.われわれは房室ブロック30例に対してLBBPを試みたが,全例で左脚エリア心室中隔心筋内へのリード留置に成功した.心室ペーシング後のQRS幅は128±15ms(平均値±標準偏差),ペーシング閾値は0.6±0.2V/0.4ms,心室波高値は11.0±7.2mVで,刺激電極に7例(23%)で左脚電位が認められた.合併症は認められず,平均観察期間6±3ヵ月においてリード脱落,リード位置変更,0.5V以上の閾値上昇はなかった.LBBPはペーシング誘発心筋症の予防のみならず,左脚ブロックを有する両室ペーシング適応症例に対する心機能改善効果も検討されており,今後さらに普及することが期待される.
著者
小谷 英太郎 新 博次 井上 博 奥村 謙 山下 武志
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.195-208, 2013 (Released:2015-07-27)
参考文献数
34
被引用文献数
2 2

心房細動症例の抗凝固療法において,ブコロームがワルファリンの減量目的にしばしば併用される.しかし,我が国のワルファリン治療におけるブコローム併用の現状と実際のワルファリン投与量に与える影響に関する全国規模での検討はなされていない.そこで,J-RHYTHM Registry登録時にワルファリン投与中であった6,932例のブコローム併用の有無を調査し,その施設別および地区別のブコローム併用率とワルファリン投与量との関連を検討した.ブコロームは158施設中64施設(40.5%),計297例(4.3%)に併用され,ブコローム併用例のワルファリン投与量は非併用例の約半量であり,有意な減量効果を認めた(1.4±0.7mg/日vs. 2.9±0.4mg/日,p<0.001).各施設のブコローム併用率は施設間で大きな差があり(0~88.9%),施設別平均ワルファリン投与量と負の相関を認めた(r=-0.59,p<0.001).地区別の併用率は,北越地区が27.3%と最も高く,九州地区と中国地区は1%未満と低率であった.全国10地区間に有意な差を認め(p<0.001),地区平均ワルファリン投与量と負の相関を認めた(r=-0.71,p=0.021).ブコローム併用療法は,有意なワルファリン減量効果を認め,その併用率には大きな施設間差,地区差が存在した.
著者
奥村 謙
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.577-583, 2020 (Released:2020-12-14)
参考文献数
22

心房細動(atrial fibrillation: AF)に対するカテーテルアブレーションは「薬物治療抵抗性の症候性発作性AF」に対してクラスI適応,「症候性持続性AF」に対してクラスIIa適応で,施行数は年々増加している.AFアブレーションは,AF自体に血栓塞栓リスクがあり,左房内に長時間カテーテルを留置,広範囲に焼灼または冷凍するため,血栓塞栓の発生リスクを伴う.また複数の電極カテーテルを心腔内まで進め,心房中隔穿刺や左房内で比較的複雑なカテーテル操作を必要とするため,心タンポナーデなどの出血リスクを伴う.すなわち高塞栓・高出血リスクの治療手技であり,周術期の適切な抗凝固管理が必要となる.抗凝固薬はワルファリンから直接経口抗凝固薬へとシフトし,その管理は容易となるとともにアブレーションの術直前,術後の投与法に関しても,最近多くのエビデンスが示されている.適切な抗凝固薬管理により,安全なアブレーション施術が可能となっている.
著者
田中 真実 渡辺 毅 打田 悌治 金澤 武道 長内 智宏 奥村 謙
出版者
日本未病システム学会
雑誌
日本未病システム学会雑誌 (ISSN:13475541)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.1-8, 2006-07-31 (Released:2010-11-22)
参考文献数
17

糖尿病の発症は主として膵からのインスリン分泌不足や不十分なインスリン作用によるが, 遺伝因子と生活環境因子との関係も含めて重要である。特に食生活の欧米化に伴い生活習慣, 特に食生活の重要性がクローズアップされている。そこで, 古来から非常に多くの生理活性物質を含有するとされ, 栄養学的にも優れた食品素材である大豆から, グループAソヤサポニンとグループBソヤサポニンとを分離し, 2型糖尿病マウス (KK-Ay/Ta) に投与し血糖調節作用について検討した。さらに, 粗サポニン画分をヒト被験者に投与し, 血糖値是正効果についても検討した。雄性2型糖尿病マウスKK-Ay/TaにグループAソヤサポニンとグループBソヤサポニンとを別々に投与した。グループBソヤサポニンに血糖値上昇抑制作用は明らかに認められたが, グループAソヤサポニンにはその作用は認められなかった。試験終了時の血漿インスリン値は, コントロール群とグループAソヤサポニンとでは差はないが, グループBソヤサポニンでは明らかに低値であった。血漿レプチンはコントロール群に比して, グループBソヤサポニン投与群で高値を示した。次に, 空腹時血糖値111mg/dL以上の被験者に粗サポニン画分を投与した結果, 投与前と比べ投与12週目の空腹時血糖値は明らかに低下した。一方, 試験終了後4週目には血糖値が上昇した。投与前と投与12週目に糖負荷試験を行ったところ, 糖負荷30分後の血糖値は明らかに上昇抑制された。さらに, 投与12週目と投与終了後4週目の糖負荷30分後の血糖値に明らかな亢進が認められた。粗ソヤサポニン画分は, ヒト血糖ならびに糖負荷試験による血糖上昇に対して抑制効果を有するが, その作用機序にグループBソヤサポニンが関与していると考えられた。また, グループBソヤサポニンを投与するとレプチンの血中濃度が増加し, インスリン抵抗性の改善も示唆された。
著者
荒木 功平 奥村 謙一郎 安福 規之 大嶺 聖
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.I_267-I_272, 2012 (Released:2013-02-13)
参考文献数
11

地球温暖化等の気候変動に伴う大雨の頻度増加が指摘されるようになり,各種産業への影響等が懸念されている.特に沖縄県では,亜熱帯特有の高温多雨気候により,土壌侵食を受けやすく,農地や開発事業地等から流出する赤土等は1950年代頃から問題化しているが,未だ解決に至っていない.沖縄のみならず亜熱帯化が懸念される九州地方においても侵食を受けやすい土壌を有している. 本研究では,50年,100年スケールで年平均気温や激しい雨の年間発生日数の経年変化を調べ,九州の亜熱帯化の現状把握を試みている.また,亜熱帯地域である沖縄県国頭郡宜野座村の農地で土壌侵食実験環境を整備し,降雨量~土壌水分~土壌侵食量関係の計測および考察を行っている.
著者
田中 真実 渡辺 毅 打田 悌治 金澤 武道 長内 智宏 奥村 謙
出版者
日本未病システム学会
雑誌
日本未病システム学会雑誌 (ISSN:13475541)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.1-8, 2006

糖尿病の発症は主として膵からのインスリン分泌不足や不十分なインスリン作用によるが, 遺伝因子と生活環境因子との関係も含めて重要である。特に食生活の欧米化に伴い生活習慣, 特に食生活の重要性がクローズアップされている。<BR>そこで, 古来から非常に多くの生理活性物質を含有するとされ, 栄養学的にも優れた食品素材である大豆から, グループAソヤサポニンとグループBソヤサポニンとを分離し, 2型糖尿病マウス (KK-A<SUP>y</SUP>/Ta) に投与し血糖調節作用について検討した。さらに, 粗サポニン画分をヒト被験者に投与し, 血糖値是正効果についても検討した。<BR>雄性2型糖尿病マウスKK-A<SUP>y</SUP>/TaにグループAソヤサポニンとグループBソヤサポニンとを別々に投与した。グループBソヤサポニンに血糖値上昇抑制作用は明らかに認められたが, グループAソヤサポニンにはその作用は認められなかった。試験終了時の血漿インスリン値は, コントロール群とグループAソヤサポニンとでは差はないが, グループBソヤサポニンでは明らかに低値であった。血漿レプチンはコントロール群に比して, グループBソヤサポニン投与群で高値を示した。<BR>次に, 空腹時血糖値111mg/dL以上の被験者に粗サポニン画分を投与した結果, 投与前と比べ投与12週目の空腹時血糖値は明らかに低下した。一方, 試験終了後4週目には血糖値が上昇した。投与前と投与12週目に糖負荷試験を行ったところ, 糖負荷30分後の血糖値は明らかに上昇抑制された。さらに, 投与12週目と投与終了後4週目の糖負荷30分後の血糖値に明らかな亢進が認められた。<BR>粗ソヤサポニン画分は, ヒト血糖ならびに糖負荷試験による血糖上昇に対して抑制効果を有するが, その作用機序にグループBソヤサポニンが関与していると考えられた。また, グループBソヤサポニンを投与するとレプチンの血中濃度が増加し, インスリン抵抗性の改善も示唆された。
著者
荒木 功平 奥村 謙一郎 安福 規之 大嶺 聖
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.I_267-I_272, 2012

地球温暖化等の気候変動に伴う大雨の頻度増加が指摘されるようになり,各種産業への影響等が懸念されている.特に沖縄県では,亜熱帯特有の高温多雨気候により,土壌侵食を受けやすく,農地や開発事業地等から流出する赤土等は1950年代頃から問題化しているが,未だ解決に至っていない.沖縄のみならず亜熱帯化が懸念される九州地方においても侵食を受けやすい土壌を有している.<br> 本研究では,50年,100年スケールで年平均気温や激しい雨の年間発生日数の経年変化を調べ,九州の亜熱帯化の現状把握を試みている.また,亜熱帯地域である沖縄県国頭郡宜野座村の農地で土壌侵食実験環境を整備し,降雨量~土壌水分~土壌侵食量関係の計測および考察を行っている.
著者
奥村 謙 目時 典文 萩井 譲士
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.292-296, 2011 (Released:2011-10-14)
参考文献数
8
被引用文献数
3 5

脳梗塞はラクナ梗塞(LI),アテローム血栓性脳梗塞(ATCI),心原性脳梗塞(塞栓)(CE)の3つに大別される.久山町の疫学データでは,LI患者の生命予後は時代とともに改善しているが,ATCIとCE患者の予後は不良のままで,特に1988年~2000年のCE患者の1年生存率は約50%と極めて不良であった.2005年10月~2008年1月に弘前脳卒中・リハビリテーションセンターに搬送されたLI(215例),ATCI(308例),CE(245例)患者の退院時の機能予後をmodified Rankin scaleで比較すると,0点,1点の機能良好例はLIが63%,ATCIが46%,CEが31%であった.一方,4点,5点の機能不良例および6点の死亡例はLIが18%,ATCIが37%,CEが52%で,CEがほかに比して明らかに不良であった.CE症例の75%で持続性(永続性)または発作性心房細動(AF)の合併が認められたが,CE発症後の機能予後に発作性AFと持続性AF間で差は認められなかった.血栓溶解療法は確かに脳梗塞の有用な治療法であるが,その適応となる例はCEの11%にすぎなかった.したがってAF例でCEのリスクを有する患者に対しては,CE発症予防のための方策が極めて重要と考えられた.
著者
大和田 真玄 祐川 誉徳 伊藤 太平 佐々木 憲一 堀内 大輔 佐々木 真吾 奥村 謙
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.S4_190-S4_194, 2010

症例は37歳, 男性. 35歳時, 夜間入眠中に心室細動(VF)による心停止から蘇生されて当院に搬送された. 受診時の心電図は正常であったが, ピルジカイニド負荷にてtype 1のBrugada型心電図が検出され, Brugada症候群と診断し植込み型除細動器(ICD)植え込み術が行われた. 植え込み後1年半経過した後, 1回のICD適切作動と2回の不適切作動が確認された. 不適切作動は2回とも自転車に乗っている時で, ICDテレメトリーではT波oversensing(TOS)に起因するダブルカウントが確認された. 運動負荷試験では負荷終了後の回復期にtype 2のBrugada型心電図を来し, 同時にTOSが捉えられた. β遮断薬は投与しづらく, またICDの感度調整でもTOSを予防できず, 他社製ICDに変更し, 心室リードを追加した. その後は運動負荷でもTOSが発生しないことが確認された. Brugada症候群ではしばしばTOSによる不適切作動が問題となる. デバイスの選択やリード留置部位を決定する際には, 一層の注意が必要であると考えられた.
著者
奥村 謙 山部 浩茂
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.572-584, 1993-05-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
10

反復性持続性心室性頻拍症(VT)の発症機序をentrainment現象により検討した.陳旧性心筋梗塞例(OMI)のVT,特発性VT,右室異形成症例(ARVD)のVT中に,VTレートより5~10拍/分速いレートで数秒間心室ペーシングを行った.VTが停止しない場合にはレートを5~10拍/分増加し繰り返した.ペーシング部位は右脚ブロック型VTでは右室心尖部または流出路,左脚ブロック型VTでは原則として左室自由壁とした.OMI例のVTでは,14/15例(93%)でconstant fusionが認められ(entrainment診断基準1),ペーシング停止後VTが再開した.10例ではペーシングレートの増加によりfusionの程度が変化した(progressive fusion)(診断基準2).特発性VTでは,右脚ブロック左軸偏位型でベラパミル感受性のVTにおいて診断基準1と2を7例全例で認めたが,右脚ブロック右軸偏位型と左脚ブロック型の特発性VT例では複数箇所でペーシングを行っても診断基準は認められなかった.ARVDの2例では診断基準1,2を認めた.entrainment現象が観察されたVTでは全例で,刺激部位よりVT中の最早期興奮部位へ至る長い伝導時間すなわち緩徐伝導が認められた.またVTがペーシングにより停止する場合,緩徐伝導部での局所性ブロックによることが示された(診断基準3).VTの機序として,回路内に緩徐伝導部を有するリエントリーが考えられたが,一部の特発性VTの機序は不明であった.