著者
新井 勝紘
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.126, pp.67-85, 2006-01-31

日本における軍事郵便制度の確立は、一八九四年の日清戦争時に出された勅令がはじまりで、前史としては、一八七四年に太政官布告の「飛信逓送規則」がある。非常時の特別郵便の必要性は早くから認識されていた。日清戦争時だけでも内地と戦地とを合せて一二三九万通余りの量になり、日露戦争時には四億六千万通近い数になっている。戦争の規模も動員数も日清戦争とは大きな隔たりがあるが、その取扱い件数は桁違いで、軍事郵便規則や軍事郵便取扱規程が定められ、我国の軍事郵便制度は日露戦争を契機として整ったといえる。その後増補改正をしつつ、アジア太平洋戦争へとつながり、一九四六年まで続く。このように軍事郵便史を紐解くと、日本の近代史に刻印されている戦争の姿がみえてくる。それは当然ながら、国民意識にも強い影響を与えている。二一世紀に入り、日露戦争一〇〇年、戦後六〇年という節目の年を迎えているが、日本近現代史研究のなかでも、改めてさまざまな視点による戦争研究が活発になり、とりわけ戦争参加が最初で最後の外国体験となった兵士の立場に注目し、かれらの戦争体験を改めて分析対象に据えてみようと多くの取り組みがなされている。個人のプライベイトな手紙である軍事郵便研究もその流れのひとつといえよう。ではいったい、軍事郵便研究の足跡はどのようになっているのだろうか。すでに複数の成果があるが、まだ数が少ない。軍事郵便そのものの発掘と公開が遅れており、筐底に埋もれたまま放置されている。戦争体験者も高齢化し、間もなく直接の聞き取りも困難になる。この現実の上にたって改めて軍事郵便に注目してみると、制度史、郵便そのものの内容分析と比較検討、兵士の戦争体験の中身、銃後の人々の意識、その往復過程での相乗作用、野戦郵便局と検閲の変遷と実態、先行研究の文献確認と課題などが山のように見えてきたが、まず本稿は基礎的研究から着手し、今後の私の研究の端緒としたい。
著者
新井 勝
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.1047-1053,015, 1997

最近では白色度70%を超える高白色新聞DIPが製造され, 中級印刷紙, PPC用紙, フォーム用紙, 微塗工印刷紙などに使用されている。<BR>高白色新聞DIPの品質としては, 白色度が70%以上であるということの他に, DIP中の黒ひげ (未剥離のインキ) およびチリが極力少ないことが要求される。<BR>一般的な新聞DIP, 白色度55-60%を製造する技術と, 高白色新聞DIPを製造する技術を比べると, 基本の原理としては大きく変わることはない。基本の原理とは大きく分けて, 離解, 除塵, 脱墨, 漂白である。高白色新聞DIPを製造するためには, 一般の新聞DIPの処理工程に比べ, 特に除塵, 脱墨, 漂白を強化する必要がある。<BR>(1) 離解工程: 異物除去効率向上のため, 補助のパルパースクリーンやドラム型のファイバーフローが使用される。<BR>(2) 除塵工程: 粗選工程, 精選工程でスリットスクリーンが使用され, 精選工程のスリットスクリーンのスリットサイズとしては0.15mmが使用されるようになってきている。<BR>(3) 脱墨工程: インキの剥離方法には大別して機械的処理方法と化学的方法があり, この二つの方法を上手く組み合わせることが重要である。機械的処理を主にした方法にはディスパーザー処理がある。化学的処理を主とした方法には熟成処理がある。この剥離したインキを工程内から除去する手段の一つとしてフローテーション処理を行うが, より効率がよく, 電力原単位の少ないフローテーターを採用する必要がある。フローテーターで除去し難い微細なインキ粒子を除去するには洗浄機が使用される。<BR>(4) 漂白工程: 新聞古紙を脱墨後, さらに白色度を高めるには酸化漂白または還元漂白を行う。酸化薬品としては過酸化水素が最も一般的である。還元薬品としてはハイドロサルファイトやFASなどが使用される。
著者
堀内 清華 石黒 精 中川 智子 庄司 健介 永井 章 新井 勝大 堀川 玲子 河合 利尚 渡辺 信之 小野寺 雅史
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.526-532, 2012 (Released:2012-12-31)
参考文献数
13
被引用文献数
3

IPEX(immune dysregulation, polyendocrinopathy, enteropathy, and X-linked)症候群は1型糖尿病や甲状腺機能低下症などの多発性内分泌異常,難治性下痢,易感染性などを主症状とし,転写因子forkhead box P3(FOXP3)遺伝子の変異による制御性T細胞の欠損や機能低下を原因とするX連鎖性の原発性免疫不全症である.1型糖尿病,甲状腺機能低下症に難治性下痢を合併し,IPEX症候群と考えられた12歳女児例を報告する.患児は10歳時から下痢が遷延化し,著明なるいそうが認められた.12歳時に行われた消化管内視鏡所見と病理所見からクローン病と診断され,5-アミノサリチル酸製剤に加えてプレドニゾロン,アザチオプリン,インフリキシマブによる治療を要した.その結果,便性の改善ならびに炎症反応の低下など一定の治療効果が認められたが,プレドニゾロンの減量により下痢が増悪して体重も減少し,治療法の選択に難渋した.患児は2歳時に1型糖尿病を,3歳時に甲状腺機能低下症を発症しており,難治性腸炎とあわせてIPEX症候群でみられる臨床像を呈していた.ただ,本症例ではCD4+CD25+ T細胞中のFoxp3の発現は低下していたがFOXP3遺伝子には異常を認めなかった.過去の報告においてFOXP3遺伝子に変異のないIPEX症候群例では易感染性を認める場合が多いが,本症例では反復する細菌感染は認められなかった.
著者
船山 理恵 小椋 千沙 清水 香織 国崎 玲子 藤原 武男 越智 真奈美 高橋 美惠子 松岡 朋子 清水 泰岳 新井 勝大
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.718-724, 2016 (Released:2016-04-26)
参考文献数
24

【目的】小児クローン病 (Crohn's Disease; 以下、CDと略) 患者における栄養療法・食事療法の QOLへの影響について検討する。【方法】小児 CD患者27名を対象に、栄養療法や食事療法に関するアンケート調査を行い、IBDQスコアを用いて QOLを評価した。栄養療法実施群と非実施群で IBDQスコアを比較し、重回帰分析により栄養療法・食事療法 と IBDQスコアの関連性を検討した。【結果】栄養療法実施群と非実施群の IBDQスコアに有意差は認めず、重回帰分析より「体調悪化を感じる」食品数が IBDQスコアに有意に関連し、一方で栄養療法は IBDQスコアに関連しないことが明らかとなった。栄養療法実施群では、実施の理由を「医師に言われたから」「病気の悪化を予防できる」と回答していた。【結論】栄養療法は患者の QOLに関連しないことが明らかとなった。栄養療法を行っている患者は、その意義と効果を理解していると思われた。

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著者
色川大吉 新井勝紘編
出版者
筑摩書房
巻号頁・発行日
1979
著者
新井 勝紘 西村 明
出版者
専修大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、軍事郵便と従軍日記をパーソナルメディアとしてとらえ、資料の所在を明らかにするとともに、軍事郵便の内容や制度史、軍事郵便・従軍日記を記した人々の戦争に対する意識や対外認識についての考察を重ねた。そのために現地調査を実施し、資料の収集や写真撮影を行ない、その分析を試みた。また、研究成果を公開し、各地の研究団体と積極的に連携を図った。こうしたなかで現在、全国各地で個人及び保存機関などが軍事郵便・従軍日記の翻刻や出版をさかんに取り組んでいることを把握した。それにより軍事郵便・従軍日記がいまだに多くの人々に強い影響力をもっていることを認識するとともに、その内容分析の深化をはからなければならないという認識に至った。