- 著者
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岩田 正美
岩永 理恵
- 出版者
- 社会政策学会
- 雑誌
- 社会政策 (ISSN:18831850)
- 巻号頁・発行日
- vol.4, no.1, pp.61-70, 2012-06-10 (Released:2018-02-01)
- 被引用文献数
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1990年代以降,諸外国で再び,最低生活費算定が注目されはじめた。日本でも最近,新たな最低生活費研究の動きがみられる。この状況下でわれわれは,一般市民の参加と合意を重視した方法=MIS法により最低生活費を試算した。小論では,MIS法による最低生活費と,近年日本で実施された他の手法による最低生活費試算結果,および生活保護基準とを比較した。他の試算結果より,MISは,やや高めである。もちろん金額の違いは,最低生活費算定の手法の差異を反映している。MIS法最大の特徴は,市民のグループ・ディスカッションを通じて,一種の「コモンセンス」を引き出し,最低限度の裁定を市民に任せることにある。われわれのMISの可能性を追求し,「コモンセンス」を探る試みは道半ばである。さらに最低生活の内容やあり方を探る研究の蓄積が求められる。