著者
小川 好美 朝井 均
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 4 教育科学 (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.1-20, 2006-09
被引用文献数
1

性教育を施行する場合,どの時期に誰が実施するべきかなど,いつも議論の絶えないところであるが,最近は「行き過ぎた性教育」などがマスメディアに取り上げられ話題になるといった状況もある。ところで,ドイツの性教育に関する教材などを日本でも見かけることがあるが,文化的背景等の異なるところで作られたものであるということも注意しておかなければならない。本研究は,日独の性教育に関する比較検討を行うことにより,日本の性教育を客観視し,長所の再発見や応用の可能性を探ることなどを目的としたものである。日独の青少年の性交状況を比較すると性交率はドイツのほうが高かったが性交経験率の推移はどちらも上がりつつある傾向が見られた。性に関して日本では友人の影響が強いのに対し,ドイツでは親の存在感が強かった。家庭内において性教育若しくは身体発育や性に関する話をすることがあるとしても,その内容が異なるのではないかということが考えられた。ドイツではBundeszentrale fr gesundheitliche Aufklrung(連邦教育センター)から性教育に関する多種類のパンフレットなどが発行されており,具体的な性行動などについても書かれているが,愛情や様々な心情から取り扱い,身体に関する基本的な知識など多面的に盛り込まれ,また読みやすいように工夫されているものであった。一方,わが国ではそのような種類の刊行物は皆無に等しいといわざるを得ない。文化的背景,歴史,教育システム,学校と家庭の関係などが異なるので,日本とドイツの学校での性教育を単純に比較することは大変難しいが,その中で日本の性教育を考える上での参考になる点は,学校と家庭での性教育の関係,保護者と子どものコミュニケーションとその信頼関係であり,愛情や人とのつながりを考えさせ,正しい情報をわかりやすく伝えるための資料や手段などは重要であろうと考えられた。When we performs sex education, there is a difficult problem who should carry it out in which time in usually. This study was aimed at we regarded Japanese sex education as objectivity by doing comparison examination about sex education of Japan and Germany, and investigating rediscovery of a good point and potency of application. German one was high in the sex rate, but determination stopping both was seen in the transition of coitus experience coefficient when compared the young sex situation of Japan and Germany. When was troubled about sex, for the partner whom a youth talked with, influence of a parent was strong for a thing with in Germany and many friends in Japan. Even if we put it in home and could have a talk about sex education or sex, it was supposed whether you were not considerably different in the contents at Japan and Germany. Because it is different from cultural background, history, an education system, a school in domestic reference, it is not easy to compare the sex education between Japan and Germany. A point to be useful for at the top that thought about Japanese sex education was a school and communication of reference of sex education at home, a protector and a child and the relationship of mutual trust , and it was thought so that a document or medium it was easy to understand right information, and to tell were important.
著者
朝井 知 朝井 均 坂口 守男 朝井 栄
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. IV, 教育科学 (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.33-42, 2005-09-30

20世紀を代表するピアニスト,ウラディミール・ホロヴィッツ(1903-1989)は,卓越した演奏技術に加え,19世紀以前の浪漫派の伝統を継承した,傑出した音楽家として,現在でも,コンサートピアニストの「指標」となっている。その一方で,広く知られているように,ホロヴィッツは,生涯を通じ,数回にわたって公の演奏活動を休止している。ここでは,活動休止に至る経緯に注目した症候学的考察を,そして,木村の論考に基づき,演奏における音楽性を検討した上で,精神病理学および人間学的考察を試みた。症候学的には,ホロヴィッツが,神経症性うつ病の範疇にあることが示唆された。また,多くの聴衆を熱狂に導くような彼の音楽性においては,木村のいう二重主体性の完全な重なりが志向されており,そのために彼の私的間主観性が,過剰なまでに動員されいるものと考えられた。さらに,音楽に呼応する精神病理の観点からは、音楽性,精神病理,音楽美の多元的な関係における均衡の破綻によって,その病理の表出に至った可能性が示唆された。
著者
坂口 守男 朝井 均 朝井 忠 弓庭 喜美子
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 3 自然科学・応用科学 (ISSN:13457209)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.39-48, 2007-09

「生活の場で見るメンタルヘルス」の第二回目として過疎地で生活する高齢者のメンタルヘルスについて論じた。過疎地における高齢者の生活上の負荷を検討するために6つの事例を提示した。事例1は強盗によって安全感が揺るがされたケース,事例2は家庭内不和のため家族から離れて孤独の中で生活しているケース,事例3は夫に支えられて生活している認知症のケース,事例4は妄想的言動が顕在化したケース,事例5は夫を不慮の事故で失い一人暮らしを続けているケース,事例6は夫を癌で亡くして一人暮らしを続けているケースである。これらのケースに見られる恐怖体験,知的能力の低下,精神症状の出現,配偶者との死別などは過疎地の高齢者の生活をしばしば妨げる要因となる。しかし長年住み慣れた自然との結びつきや人と人との程よい精神的距離は過疎地ならではのものであり,高齢者のメンタルヘルスにとって特に重要なものである。また,配偶者の死亡原因の分析では大量飲酒者,喫煙者は悪性腫瘍,中でも胃癌の罹患率が高く,その平均死亡年齢は65.8歳で全体の平均死亡年齢よりも5歳低くなった。残された者の生活上の負担やその後のメンタルヘルスへの影響の甚大さを鑑み,配偶者の大量飲酒と喫煙に関してはそれぞれの「生のストーリー」をよく理解した上で健康教育活動を展開する必要性があることを指摘した。Mental health of senior citizens who lived in a certain depopulated village were studied. The population of this village is only 577 (male is 282, female is 295). Elder people aged 65 years and older are 229 and occupy 40 % of the population. 52 of them are living alone (male is 19, female is 33). We investigated factors which disturbed the living of 40 elder people (33 females and 7 males) in the depopulated area through door-to-door survey. A fear experiences, a fall of intellectual activity, the onset of mental symptoms and bereavement with spouse were regarded as factors which interfere with the living in the depopulated area. Nature and rural human relations were considered good factors for the living there. 28 women of a single life lost their husbands in a disease. 16 of their husbands were a large quantity of drinker and smoker. 8 of them died of carcinoma and 3 died for cerebrovascular disorder. Positive health activity for such drinkers and smokers need to be practiced to make them stop liquor and cigarettes. But it will not be effective too much if we do not understand the living background that they came to often drink and smoke.
著者
朝井 均 岡 博子 緒方 和男 市吉 誠 田中 一雄
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.14, no.7, pp.1029-1038, 1981 (Released:2011-03-02)
参考文献数
23
被引用文献数
1

腹部症状を主訴として来院した外来患者に対し超音波検査をfirst screening検査として検討した結果, 胃癌症例28例中12症例において胃X線内視鏡検査などに先がけて胃癌診断をすることができた.Borrmann分類での描出率はII型20% (1例), III型36% (5例), IV型86% (6例) であり浸潤型の胃癌症例, とくにIV型において高率に超音波診断が可能であった.胃壁に沿って全周性に癌が浸潤している症例においては, いわゆるpseudokidney signを捉えることにより胃壁肥厚像を証明でき, 粘膜側からの情報だけでなく筋層, 漿膜側の情報も得ることが可能であるといえる.以上, これまで超音波診断のアプローチがほとんどなかった胃病変に対しても他の諸検査の弱点を補う検査法として十分期待される.
著者
三村 寛一 三村 寛一 奥田 豊子 朝井 均 鉄口 宗広 安部 惠子 三村 達也 塩野祐也 檀上弘晃 上田真也 辻本健彦 織田恵輔 北野雄大
出版者
大阪教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

ライフコーダを用いて児童の1 週間の行動記録と運動量を測定し、児童の適正運動量は運動強度6 以上の出現率が10%以上あることが望ましいことを明らかにした。また、体力の低い非活発な児童を対象にライフコーダおよびインターネットを活用して、1 ヶ月間の半監視型運動療法を実施し、その効果は低学年ほど大きく、高学年になるにつれて小さくなることが明らかになり、特に休日における運動実践や学校生活における体育の重要性が示唆された。