著者
大橋 嘉樹 柳生 隆視 加護野 洋二 斎藤 直巳 延原 健二 木下 利彦 岡島 詳泰 斎藤 正己
出版者
関西医科大学医学会
雑誌
関西医科大学雑誌 (ISSN:00228400)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.146-149, 1990-06-20 (Released:2013-02-19)
参考文献数
5

In this communication, the present authors have studied on a case of the submissive female partner of induced psychosis, of which her lover was the dominant partner and she developed an identical psychophathology to the partner after having been influenced by his psychotic state.The dominant partner (proband) was 21-year-old male student and he had some delusions of possession, that he was possessed by fox and ox, with ideas of persecution, and he was involved in religious activities. He was suspected as paranoid type of schizophrenia in the psychiatric interview, but the diagnosis was not confirmed because he refused to take either further examinations or psychological testings.The submissive partner, who was a 21- year-old female and working in an insurance company, at first made a tout resistance to his delusional ideas, but she was gradually influenced by her lover's psychotic state, particularly after she became interested in spiritual phenomina. Finally she became to share the delusions and the common ideas with him after their cohabitation for several days. The cohabitation was forcibly discontinued by her father, and she was seperated from him, but her state of possession remained unchanged therafter until her emergency admission to our university hospital. Almost complete remission from her psychotic state was after two months' treatment in our inpatient ward.In the present case, the persistent repetitions of unitary spiritual idea by the dominant partner and the entire dependence due to love relationship of the submissive partner appear to be the most important factors for induction of the psychotic state. Recently, spiritual phenomena have come into nation-wide fashion and a large number of people seem to have special interests in the spiritual world etc., so that the possible prevalence of "spiritually"induced psychoses including folie A deux might be expected more frequently among adolescence in particular.
著者
織田 裕行 中森 靖 木下 利彦 池田 俊一郎
出版者
関西医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

「自殺企図男性のLOH(Late-Onset Hypogonadism)症候群に関する検証」の課題名で、関西医科大学総合医療センター倫理審査委員会に申請し、2017年9月19日に承認を得て本研究を継続してきた。その内容は、救命救急センターに自殺企図で搬入された男性のテストステロン値を測定し、日本において自殺率が最も高い年齢層である50歳代男性の自殺企図と加齢男性性腺機能低下症候群(Late-Onset Hypogonadism:LOH症候群)との関係を検証することにある。具体的には、救命救急センターに搬入された男性自殺企図者を対象として、総テストステロン値、遊離テストステロン値を測定すること、その検査結果と本人や家族から得た情報を踏まえLOH症候群による影響を検証する予定であった。しかし、予期できない研究環境の変化が生じた。そのため、現状の中で「自殺企図男性のLOH(Late-Onset Hypogonadism)症候群に関する検証」が達成できる方策を再度検討した。その結果、「自殺企図男性のホルモン値に関する検討」として関西医科大学総合医療センター倫理審査委員会に申請し、2019年7月23日に承認を得て救命救急センターに搬入された男性自殺企図者を対象とした総テストステロン値の調査を実施することとした。2021年度には、第40回日本性科学会学術集会において、「男性自殺企図者に対するホルモン値調査の結果報告 -男性ホルモンと甲状腺ホルモンの比較-」として一部報告を行った。さらに検討を加え、日本性科学会雑誌に投稿中である。
著者
山本 敦子 橋本 健志 森本 優香 加藤 正樹 木下 利彦 四本 かやの
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.213-221, 2019-04-15 (Released:2019-04-15)
参考文献数
20
被引用文献数
1

本研究の目的は,地域で生活する統合失調症患者の社交不安症状に対する作業療法の効果を検討することである.ケースシリーズ研究で,3症例に対する6ヵ月間の作業療法介入前後の社交不安障害尺度得点,陽性・陰性症状評価尺度得点,日常生活場面での対人交流の状態を比較した.結果,6ヵ月間の作業療法介入によって,統合失調症患者の社交不安症状に改善がみられ,対象者全員に精神症状の改善も認められた.社交不安症状が中等度の患者は,重度の患者と比較し,より大きな改善がみられた.作業療法介入が,統合失調症患者の社交不安症状の改善に寄与できる可能性が示唆された.
著者
吉野 真紀 織田 裕行 木下 利彦
出版者
日本福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は、性同一性障害(以下、GID)当事者を対象とし、治療前と治療を経て概ね望む性別での生活を実現した時点とを比較することにより、当事者の自己実現のあり方及び心理的変化を明らかにすることである。対象者として、GID包括医療を求めて受診し、初診時及び治療経過後の心理検査データを入手した。主観的変化を調べる資料として2018年度までに対象者5名への半構造化面接を終了し、テキストデータにおとした。残り1名については、連絡がとれないため、半構造化面接の実施を断念した。半構造化面接の分析の参考とするため、またGID当事者のライフステージごとの課題や状況等を知るため、各種学会や研修会(GID学会研究大会、日本ユング学会、日本心理臨床学会、日本青年期精神療法学会総会、等)に参加し、専門的知識の教授を受けた。当事者ひとりひとりの自己実現過程について学びを深めるため、当事者会への参加やジェンダー外来担当者との打ち合わせ等を通して自己研鑽に努めた。また、本研究を含めた学びの内容について、講演活動(研修講師)を務める中で伝えることに尽力した(名古屋市教育委員会等)。現在、心理検査データの量的分析の試行、研究協力者と半構造化面接の分析および考察の作業を進めている。※性同一性障害(GID)という診断名はDSM-5への改定に伴い性別違和(GD)に変更されているが、対象者の診断確定時点ではGIDであったため、本研究の関連書類において必要箇所ではGIDという用語を使用する。
著者
西田 圭一郎 吉村 匡史 山根 倫也 加藤 正樹 木下 利彦
出版者
一般社団法人 日本臨床神経生理学会
雑誌
臨床神経生理学 (ISSN:13457101)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.168-173, 2019-06-01 (Released:2019-06-20)
参考文献数
26

脳波は実臨床においては, てんかんの診断やせん妄の評価に使用される。研究においては時間分解能の高さ, 侵襲性の低さ, 安価なため臨床への応用の容易さ, といった点から, 脳機能測定のツールとして以前から用いられてきた。一方脳波の分野とは別に, 最近の画像研究の進歩に伴い, 脳の構造研究で精神疾患の正常からの逸脱が検出できるようになり, 精神疾患の発現型として関心を浴びている。近年, このような脳波以外の分野の研究の発展に伴い得られた新たな知見と, 上記特徴を有する脳波測定を組み合わせることで, 脳波解析の有用性が再び脚光を浴びるようになってきている。今回我々は, 脳波定量解析が実臨床への応用が可能であるか, 自施設におけるうつ病患者の脳波データの解析結果を元に, 治療予測の可能性について考察を行い, 将来の展望を述べたい。