- 著者
-
木梨 友子
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2005
今年度は、バイスタンダー効果の臨床応用としてホウ素中性子捕捉療法(BNCT)を受けたときのバイスタンダー効果による人体影響について研究をすすめた。BNCTの生体におけるα線のバイスタンダー効果は、ホウ素化合物の投与の有無の条件下で、中性子照射後に直接α線の照射を受けない正常組織の変化の差を比較することで証明することができる。、BNCTにおいてα線の照射を直接受けない末梢血のTリンパ球のBNCT治療後のマイクロヌクレウスの出現頻度の増加率を中性子照射前のマイクロヌクレウスの出現頻度をもとに算出し、BNCT患者のリンパ球のマイクロヌクレウス形成率の解析により生物学的線量を評価することができた。さらに、従来のライナックによるX線治療や甲状腺のアイソトープ治療と比較し中性子照射の生体への影響を評価した。BNCTを受けた、頭頚部腫瘍患者および脳腫瘍患者患者の治療前後の末梢血リンパ球におけるマイクロヌクレウスの出現頻度の変化を解析し、生物学的被ばく線量の推定を行なったところ、生物学的被ばく線量の平均値は頭頚部腫瘍患者が0.24Gy、脳腫瘍患者が0.20Gyであった。ライナック治療を受けた患者の治療前後の末梢血リンパ球におけるマイクロヌクレウスの出現頻度の変化と比較したところ、BNCTにおける治療前後の末梢血リンパ球におけるマイクロヌクレウスの出現頻度の変化は約三分の一以下の増加率にとどまり、BNCTがX線による放射線治療と比べても、全身への被ばく線量の少ない効果的な選択的放射線治療であることが確認された。