著者
宮垣 さやか 長谷川 聡 梅垣 雄心 中村 雅俊 小林 拓也 田中 浩基 梅原 潤 藤田 康介 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0096, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】胸郭可動域制限は,肋間筋など胸壁に付着する軟部組織の柔軟性低下,呼吸筋の筋力低下,脊柱や肋椎関節の可動性低下などにより生じる。臨床現場においては肋間筋ストレッチングや肋椎関節の運動など,肋骨の動きの改善を目的とした胸郭可動域トレーニングが実施されており,呼吸機能の改善に有用であると報告されている。一方,呼吸時には胸椎も屈伸運動するといわれており,胸椎アライメントが呼吸機能に影響を及ぼすという報告もあるものの,胸椎後弯姿勢の改善を目的とした運動(胸椎伸展運動)が呼吸機能を改善させるという報告は見あたらない。さらには,頚部痛など整形外科疾患患者や脊髄損傷患者において,胸椎可動性の低下が呼吸機能低下に影響するとの報告もあることから,肋骨の動きの改善だけではなく,胸椎の伸展運動が呼吸機能を改善することが予想される。そこで本研究では,胸椎伸展ストレッチング(以下胸椎ストレッチ)が,脊柱アライメント,胸郭拡張性,呼吸機能に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は喫煙歴のない健常男性15名(平均年齢24±3.4歳)とした。胸椎ストレッチ前後に胸椎アライメント,呼吸機能,胸郭拡張差,上部および下部肋間筋・胸部脊柱起立筋の筋弾性率を測定した。胸椎アライメントの測定はSpinal mouse(Index社製)を用い,安静立位での胸椎後弯角度を測定し,胸郭拡張差は腋窩,剣状突起,臍レベルの三箇所で測定した。呼吸機能はAutoSpiro(ミナト医科学社製)を用い,安静立位で対標準肺活量(%VC),一秒量(FEV)を測定した。筋弾性率は超音波診断装置(SuperSonic Imagine社製)のせん断波エラストグラフィー機能で測定し,各筋の筋腹に設定した関心領域の弾性率(kPa)を求めた。上部肋間筋は右側の鎖骨内側1/3から下した垂線上の第2肋間,下部肋間筋は右側の前腋窩線上の第6肋間,胸部脊柱起立筋は第6胸椎棘突起右側方1横指の部位にて,全て安静吸気位で測定した。胸椎ストレッチは,対象者の両肩甲骨下角の位置で背部を横断する方向に株式会社LPN製ストレッチポールハーフカット(以下ハーフポール)を設置し,その上に背臥位となりセラピストが肩関節前方から鉛直方向に3分間抵抗を加えた。統計学的解析は,第2・第6肋間の肋間筋と脊柱起立筋の3筋の弾性率,3箇所での拡張差,%VC,FEVについて,対応のあるt検定を用いて胸椎ストレッチ前後の値を比較した。なお,有意水準は5%とした。【結果】肺機能について,胸椎ストレッチ前後に%VC(前:90.0±10.1%,後:91.3±9.6%)は有意に増加したが,FEVは介入前後で有意な差は認められなかった。筋弾性率について,上部肋間筋(前:18.9±7.5kPa,後:14.7±6.4kPa),下部肋間筋(前:17.6±9.2kPa,後:13.8±7.3kPa),脊柱起立筋(前:18.1±9.9kPa,後:13.1±5.1kPa)は,介入後に有意に低下した。胸郭拡張差について,腋窩レベル(前:5.5±1.8cm,後:6.2±1.9cm),剣状突起レベル(前:6.7±1.9cm,後:7.7±2.0cm)で介入後に有意に増加し,臍レベルでは変化は認めなかった。胸椎後弯角度は,胸椎ストレッチによる変化は認めなかった。【考察】本研究の結果より,胸椎ストレッチは,肺活量を増加させ得ることが示された。胸椎ストレッチにより改善がみられると予想された胸椎アライメントは,介入による変化を認めなかった。一方で,各筋の弾性率の有意な低下から,胸椎ストレッチによって,上部および下部肋間筋,さらに,ハーフポールにより圧迫された脊柱起立筋の柔軟性が向上したことが示された。これにより,腋窩・剣状突起レベルでの胸郭拡張差が増し,上位胸椎部分の胸郭拡張運動が改善したことで肺活量が増加したと考えられる。これまでは主として肋骨の動きに関連の強い肋間筋にアプローチする手技が胸郭可動域トレーニングとして取り上げられ,これらの手技により呼吸機能が改善するという報告がされている。しかし本研究では,胸椎の屈伸運動に着目した胸椎ストレッチによっても上位胸郭可動性が向上し,呼吸機能が改善することが示された。また同時に,肋間筋のみならず,胸郭構成筋として着目されることの少ない,脊柱起立筋の柔軟性も,呼吸機能に関連していることを示唆する結果となった。【理学療法学研究としての意義】本研究では,これまで着目されることの少なかった,呼吸時の胸椎伸展運動を促すようなストレッチによっても胸郭可動性が改善することが示唆され,胸郭の可動性低下を認める拘束性換気障害に対する有用な治療手段の一つとなり得る可能性が示唆された。
著者
廣野 哲也 池添 冬芽 田中 浩基 梅原 潤 簗瀬 康 中村 雅俊
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0610, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】近年,低強度・高反復トレーニングの筋力増強・筋肥大効果が着目されており,30%1RM程度の低強度トレーニングでも反復回数を12セット程度に増やすことにより,80%1RMの高強度と同等の効果が得られることが報告されている。一方,セット間の休息時間の影響について,高強度トレーニングではセット間の休息時間を長くすると介入効果が減少することが報告されているが,低強度トレーニングにおけるセット間の休息時間の影響を検討した研究はみられない。また,筋力トレーニング直後に生じる筋腫脹は骨格筋へのメカニカルストレスを反映しているとされており,トレーニング介入による筋肥大効果と関連があると考えられている。そこで本研究は低強度・高反復トレーニングにおける休息時間の違いがトレーニング直後の筋腫脹に及ぼす影響について,1)筋腫脹が生じる運動量(セット数)に違いはみられるのか,2)高反復トレーニング直後の筋腫脹の程度に違いはみられるのかに着目して検討した。【方法】対象は健常若年男性42名(年齢22.9±2.4歳)とし,トレーニングのセット間の休息時間を20秒,60秒,180秒とする3群にそれぞれランダムに振り分けた。30%1RMの低強度での膝伸展筋力トレーニングを膝関節屈曲90°から0°までの範囲で求心相3秒,保持1秒,遠心相3秒の運動速度で行った。なお,1RMは膝関節屈曲90°から0°まで膝伸展可能な最大挙上重量を筋機能評価装置(BIODEX社製)にて測定した。10回の反復運動を1セットとし,各セット間休息時間をはさんで計12セット行った。筋腫脹の評価として,超音波診断装置(GEメディカルシステム社製)を用いて外側広筋の筋厚を測定した。測定肢位は端座位・膝関節屈曲90°位とし,測定部位は上前腸骨棘と膝関節外側裂隙を結ぶ線の遠位1/3とした。筋厚の計測はトレーニング直前およびトレーニング3セットごとの計5回行った。統計解析は各群における筋厚の変化について反復測定分散分析および事後検定として多重比較を行った。さらに,多重比較検定を用いてトレーニング前に対する12セット終了時の筋厚変化率の群間比較を行った。【結果】反復測定分散分析の結果,全ての群で主効果を認め,多重比較の結果,休息20秒群と60秒群はトレーニング前と比較して3,6,9,12セット後のすべてにおいて有意な筋厚の増加がみられた。一方,180秒群においては12セット後のみ筋厚の有意な増加がみられた。また,12セット後の筋厚変化率に3群間で有意差はみられなかった(20秒群;5.1±6.0%,60秒群;6.8±1.7%,180秒群;4.4±3.1%)。【結論】低強度トレーニングにおいて,12セットの高反復トレーニング直後の筋腫脹にはセット間の休息時間による違いはみられないが,セット間の休息時間が長くなると筋腫脹を生じさせる運動量(セット数)はより多く必要となることが示唆された。
著者
西下 智 長谷川 聡 中村 雅俊 梅垣 雄心 小林 拓也 藤田 康介 田中 浩基 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0428, 2014 (Released:2014-05-09)

【目的】肩関節は自由度が高く運動範囲が広いが,関節面が小さいため回旋筋腱板(腱板)の担う役割は重要である。肩関節周囲炎,投球障害肩などに発生する腱板機能不全では棘上筋,棘下筋の柔軟性低下が問題となることが多く,日常生活に影響を及ぼすこともある。柔軟性向上にはストレッチング(ストレッチ)が効果的だが,特定の筋の効果的なストレッチについての研究は少ない。棘下筋に関しては即時効果を検証するような介入研究もされているが,棘上筋ではほとんど見当たらない。棘上筋の効果的なストレッチは,複数の書籍では解剖学や運動学の知見をもとに,胸郭背面での内転(水平外転)位や伸展位での内旋位などが推奨されているが定量的な検証がなされていない為,統一した見解は得られていないのが現状である。Murakiらは唯一棘上筋のストレッチについての定量的な検証を行い最大伸展位での水平外転位が効果的なストレッチであるとしているが,これは新鮮遺体の上肢帯を用いた研究であり,臨床応用を考えると生体での検証が必要である。これまで生体における個別のストレッチ方法を確立できなかった理由の一つに,個別の筋の伸張の程度を定量的に評価する方法が無かったことが挙げられる。近年開発された超音波診断装置のせん断波エラストグラフィー機能を用いることで,計測した筋の伸張の程度の指標となる弾性率を求める事が可能になった。そこで今回我々はせん断波エラストグラフィー機能によって計測される弾性率を指標に,効果的な棘上筋のストレッチ方法を明らかにすることを目的とした。【方法】対象者は健常成人男性15名(平均年齢23.4±3.1歳)とし,対象筋は非利き手側の棘上筋とした。棘上筋の弾性率の計測は超音波診断装置(SuperSonic Imagine社製)のせん断波エラストグラフィー機能を用い,棘上筋の筋腹に設定した関心領域の弾性率を求めた。計測誤差を最小化出来るように,計測箇所を肩甲棘中央の位置で統一し,2回の計測の平均値を算出した。弾性率は伸張の程度を表す指標で,弾性率の変化は高値を示す程筋が伸張されていることを意味する。計測肢位は,下垂位(1st),90°外転位(2nd),90°屈曲位(3rd),最大水平内転位(90Had),45°挙上での最大水平内転位(45Had),胸郭背面での最大水平外転位(20Hab),45°挙上での最大水平外転位(45Hab),最大水平外転位(90Hab),最大伸展位(Ext)のそれぞれの肢位にて被験者が疼痛を訴える直前まで他動的に最大内旋運動を行った9肢位に,更に安静下垂位(Rest)を加えた計10肢位とした。統計学的検定は,各肢位の棘上筋の弾性率について一元配置分散分析および多重比較検定を行い,有意水準は5%とした。【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言を順守し,所属機関の倫理委員会の承認(承認番号E-1162)を得て行った。対象者には紙面および口頭にて研究の趣旨を説明し,同意を得た。【結果】全10肢位のそれぞれの弾性率(平均±標準偏差,単位:kPa)はRestが26.2±10.9,1stが21.2±8.0,2ndが37.0±13.7,3rdが28.3±11.2,90Hadが29.3±9.5,45Hadが37.1±16.7,20Habが34.0±13.1,45Habが83.3±35.4,90Habが86.0±34.1,Extが95.7±27.6であった。統計学的にはRest,1st,2nd,3rd,90Had,45Had,20Habに対して45Hab,90Hab,Extの弾性率が有意に高値を示した。Rest,1st,2nd,3rd,90Had,45Had,20Habそれぞれの肢位間では,1stと2ndとの間にのみ有意差が見られ,その他は有意差が無かった。45Hab,90Hab,Extそれぞれの肢位間には有意な差は無かった。【考察】棘上筋のストレッチ方法は,Restに対して弾性率が有意に高値を示した45Hab,90Hab,Extの3肢位が有効であることが示され,有効な3肢位は全て伸展領域の肢位であった。しかしながら,同様に伸展領域の肢位である20Habには有意差は認められなかった。全肢位中,45Hab,90Hab,Extの弾性率が有意に高値で,かつ,20Habに有意差が見られなったことから考えると,棘上筋のストレッチ方法はより大きな伸展角度での水平外転・内旋もしくは,最大伸展位での内旋が効果的であることが明らかとなった。この結果は新鮮遺体での先行研究を支持するものであった。しかし書籍などで推奨されていた胸郭背面での水平外転位のストレッチについては水平外転よりもむしろ伸展を強調すべきであることが明らかとなった。【理学療法学研究としての意義】これまで新鮮遺体でしか定量的な検証が行えていなかった棘上筋のストレッチ方法について,本研究では弾性率という指標を用いる事で,生体の肩関節において効果的な棘上筋のストレッチ方法が検証できた。その運動方向は,より大きな伸展角度での水平外転・内旋もしくは,最大伸展位での内旋であることが明らかとなった。
著者
草野 拳 西下 智 中村 雅俊 梅垣 雄心 小林 拓也 田中 浩基 梅原 潤 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1366, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】腱板筋は肩関節の動的安定性に強く関与しており,自由度が高く運動範囲が広い肩関節において重要な役割を果たしている。棘下筋や小円筋などの腱板筋の柔軟性が低下することで,可動域制限や疼痛により日常生活動作が制限されることもある。筋の柔軟性低下や可動域制限に対してはストレッチング(ストレッチ)が用いられている。臨床で多く行われているストレッチにスタティックストレッチ(SS)があり,筋の柔軟性を向上させるためには,適切な肢位で十分な時間SSを継続する必要がある。棘下筋の効果的なSS肢位に関する報告は解剖学や運動学の知見をもとに幾つかあるが,確立されていない。新鮮遺体を用いて棘下筋に対するストレッチ研究を行ったMurakiらによると,棘下筋が最も伸張される肢位は挙上位での内旋,または伸展位での内旋である。この結果をもとに生体における検証を行った我々の研究においても,伸展位での内旋が最も効果的であるという結果が確かめられている。しかし実際にSS前後での柔軟性の変化については検証されていない。そこで本研究では,計3分間の伸展,内旋方向SSが棘下筋の柔軟性向上,内旋可動域拡大に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。そのなかで,SSを30秒刻みで行うことでSS間における柔軟性の時間的な推移を見ることにした。【方法】対象筋は健常成人男性16名(平均年齢22.7±1.6歳)の非利き手側の棘下筋とした。筋の硬さの程度を表す指標である弾性率の計測は,超音波診断装置(SuperSonic Imagine社製)のせん断波エラストグラフィー機能を用いた。弾性率は低値を示す程筋が柔らかいことを意味する。計測部位は棘下筋上部で統一し,筋腹に設定した関心領域の弾性率を3回計測し,その平均値を算出した。計測肢位は腹臥位にて母指を第7胸椎に合わせた肢位とした。SSは腹臥位にて肩甲骨を上から圧迫し固定した状態で,結帯肢位から母指を脊椎に沿わせて他動的に肩関節伸展,内旋運動を行った。運動強度は被験者が疼痛を訴える直前までとし,SS30秒,計測30秒の間隔で6セット行った。計測はSS介入前(Pre),各SS間(SS1,SS2,SS3,SS4,SS5),SS介入後(Post)で行い,計7回計測した。また,PreとPostに腹臥位にて,外転90°(2nd)での内旋角度をデジタル角度計で3回計測し,その平均値を算出した。統計学的検定は,測定ごとの棘下筋の弾性率について一元配置分散分析および多重比較を行い,またPreとPostの2nd内旋角度間で対応のあるt検定を行った。有意水準は5%とした。【結果】測定ごとの弾性率(平均±標準偏差,単位:kPa)はPreが12.0±5.1,SS1が10.4±4.1,SS2が9.5±3.4,SS3が9.7±3.9,SS4が9.3±3.5,SS5が9.1±3.4,Postが8.6±3.3であった。また2nd内旋角度(単位:°)はPreが58.4±7.5,Postが62.6±5.9であった。統計学的には,多重比較によりPreに対しSS1,SS2,SS3,SS4,SS5,Postで有意に弾性率の低下が見られた。対応のあるt検定により,Preに対しPostで有意に2nd内旋角度の拡大が見られた。【考察】PreとPostの比較より,計3分間の肩関節伸展,内旋方向SSによって棘下筋の柔軟性は向上し,可動域の拡大も得られることが明らかとなった。さらに30秒ごとに弾性率の変化を見ることで,30秒のSSにより弾性率が低下し,30秒と3分のSSでは弾性率に変化が見られないことが明らかとなった。弾性率を指標に下肢でストレッチ研究を行った我々の研究では,腓腹筋の柔軟性の向上には2分以上のSSが必要であることが明らかとなっているが,それに対し棘下筋ではより短いSS時間で柔軟性が向上したと考えられる。これは棘下筋の筋断面積が腓腹筋に比べ非常に小さいことが理由として考えられる。【理学療法学研究としての意義】これまでストレッチ前後での柔軟性の変化が検証されていなかった棘下筋に対し,先行研究で最も効果的であるとされている伸展,内旋方向SSを3分間行うことによって棘下筋の柔軟性は向上し,内旋可動域も有意に拡大することが明らかとなった。また,このSSにより30秒で棘下筋の柔軟性が向上していることが明らかとなった。
著者
中村 雅俊 池添 冬芽 梅垣 雄心 西下 智 小林 拓也 藤田 康介 田中 浩基 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

<b>【はじめに,目的】</b>臨床において,腸腰筋の短縮による股関節伸展制限や股関節屈曲拘縮は問題となることが多く,腸腰筋の伸張性を維持・改善するためにストレッチングがよく行われている。ストレッチングの基本的な方法は筋の作用と反対方向へ伸張することであり,腸腰筋のストレッチングとしては股関節を伸展する方法がよく用いられている。しかし,腸腰筋には股関節屈曲作用に加えて,腸骨筋では股関節外転および内旋,大腰筋では股関節内転および外旋作用があると報告されている。そのため,股関節伸展に加えて股関節の内・外転もしくは内・外旋を加えることで,より腸腰筋は伸張される可能性が考えられる。近年,せん断波エラストグラフィー機能により,組織に伝わるせん断波の速度を測定し,組織の硬度(弾性率)を算出することが可能になり,弾性率は筋の伸張の程度を反映していることが報告されている。そのため,この弾性率は腸腰筋のような深部筋の伸張程度を非侵襲的に評価できる有用な指標とされている。本研究の目的は,股関節伸展に股関節内・外転や内・外旋を加えることで腸腰筋をより伸張できるかどうかを明らかにすることである。<b>【方法】</b>対象は下肢に神経学的及び整形外科的疾患を有さない健常若年男性10名(平均年齢23.6±2.2歳)の利き脚(ボールを蹴る)側の腸腰筋とした。対象者をベッド上,背臥位にて安静にした安静時と,ストレッチング肢位は反対側の股関節を最大屈曲することで骨盤を後傾位に固定し,検査側の膝関節は大腿直筋の伸張の影響を考慮し,軽度屈曲位とした状態を基準とした。その後,対象者が痛みを訴えることなく最大限耐えうる角度まで他動的に股関節伸展する条件(伸展)と対象者が最大限耐えうる角度まで股関節内転,外転,内旋・外旋した状態から最大限股関節伸展する条件(内転,外転,内旋,外旋)の計5条件とし,安静を加えた6条件の施行は無作為の順番で行った。腸腰筋の弾性率(kPa)の評価は,SuperSonic Imagine社製超音波診断装置のせん断波エラストグラフィー機能を用い,大転子の高さの鼠径部で腸腰筋を同定し,測定を行った。弾性率の測定は各条件2回ずつ行い,その平均値を解析に用いた。弾性率は筋の伸張の程度と高い相関関係を示すことが報告されており,弾性率が高いほど,筋は伸張されていることを意味している。統計学的検定は,各条件における腸腰筋の弾性率をBonferroni補正におけるWilcoxon符号順位検定を用いて比較した。なお,有意水準は5%未満とした。<b>【倫理的配慮,説明と同意】</b>本研究は所属施設の倫理委員会の承認を得て(承認番号E-1162),文書および口頭にて研究の目的・趣旨を説明し,同意を得られた者を対象とした。<b>【結果】</b>腸腰筋の弾性率は安静時24.6±19.4kPa,伸展71.7±45.0kPa,内転60.9±27.2kPa,外転78.3±45.1kPa,内旋115.8±49.9kPa,外旋93.5±45.7kPaとなった。統計処理の結果,安静時に対して伸展,内転,外転,内旋,外旋のすべてのストレッチング条件で有意に高値を示した。また,伸展の弾性率と比較すると,内旋では有意に高値を示したが,内転と外転および外旋では有意差は認められなかった。<b>【考察】</b>本研究の結果,安静時と比較して全てのストレッチング条件で弾性率は有意に増加したことから,本研究で用いたストレッチング肢位はいずれにおいても腸腰筋を伸張することが可能であることが明らかとなった。また,伸展と比較して内旋で有意に増加したことから,一般的によく用いられている腸腰筋のストレッチング法である股関節伸展方向へのみのストレッチングよりも股関節伸展に内旋を加えることで,より腸腰筋を伸張できることが示唆された。その理由として,腸腰筋のなかで大腰筋は股関節外旋作用を持つと報告されており,股関節伸展に内旋を加えることで大腰筋がより伸張された可能性が考えられる。一方,他の肢位で腸腰筋がより伸長出来なかった理由として,腸骨筋は安静時には外転の作用があるが,内転すると内転作用に変化するため,内転することで腸骨筋が緩んだ可能性が考えられる。また,股関節伸展に外転・外旋を加えると腸骨大腿靭帯が伸張されるため,股関節伸展に外転や外旋を加えたストレッチング条件の最終可動域では腸腰筋よりも腸骨大腿靭帯が伸張され,腸腰筋の弾性率の増加にはつながらなかった可能性が考えられる。<b>【理学療法学研究としての意義】</b>臨床において腸腰筋のストレッチングは股関節伸展が用いられることが多いが,股関節伸展に内旋を加えることで,より効果的に腸腰筋を伸張することができることが示唆された。
著者
田中 浩基 矢島 暁 筒井 裕士 佐藤 岳実 小野 公二 高田 真志 浅野 智之 櫻井 良憲 丸橋 晃 鈴木 実 増永 慎一郎 菓子野 元郎 劉 勇 木梨 友子 密本 俊典
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会 年会・大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.128, 2010

京都大学原子炉実験所では硼素中性子捕捉療法用のサイクロトロン加速器を用いた熱外中性子源の開発を行っている。実機のインストールを平成20年10月に完了し、平成21年3月に施設検査合格、中性子発生試験を開始した。陽子電流は1mAを達成し、熱外中性子強度1×10<SUP>9</SUP>(n/cm<SUP>2</SUP>/s)を実験的に確認した。これまで原子炉で行ってきた臨床試験の中性子強度よりも高い熱外中性子束を得ることができた。
著者
中村 雅俊 池添 冬芽 梅垣 雄心 西下 智 小林 拓也 田中 浩基 藤田 康介 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0402, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】スタティックストレッチング(SS)は筋の柔軟性の改善を目的として広く用いられている。SSが筋の柔軟性に与える影響については,関節可動域(ROM)を指標として検討されることが多い。しかし,ROMは対象者の痛みに対する慣れなどの影響があるため,近年では関節を他動的に動かした時に生じる受動トルクあるいは受動的トルクと関節角度との関係(角度―トルク曲線)から求めた筋腱複合体(MTU)全体のスティフネスを柔軟性の指標として用いることが推奨されている。我々は腓腹筋MTUを対象にSSが受動トルクに及ぼす影響を経時的に検討し,腓腹筋の柔軟性を増加させるには最低2分間以上のSS時間が必要であることを報告した(Man Ther, 2013)。しかし,筋の柔軟性を増加させるために必要なSS時間については対象筋によって異なる可能性が考えられる。そこで本研究は臨床においてSSを行う機会が多いハムストリングスを対象筋とし,5分間のSSがハムストリングスMTUに及ぼす影響を経時的に検討し,ハムストリングスの柔軟性を増加させるために必要なSS時間について明らかにすることを目的とした。【方法】対象は下肢に神経学的及び整形外科的疾患を有さない健常若年男性15名(平均年齢23.4±2.2歳,股関節90°屈曲位での膝最大伸展角度-33.4±6.1,最大膝伸展時の受動的トルク40.6±11.4Nm)の利き脚(ボールを蹴る)側のハムストリングスとした。スティフネスの評価は等速性筋力測定装置(Biodex社製Biodex system 4.0)を用い,背臥位にて骨盤を軽度前傾位に固定した状態で,股・膝関節90°屈曲位から痛みが生じる直前まで角速度5°/秒で他動的に膝関節を伸展させた際に得られる膝屈曲方向に生じる受動トルクの計測を行った。この受動トルクと膝関節角度との角度―トルク曲線を求め,先行研究に従って最終10%の角度範囲の傾きをスティフネス(Nm/°)と定義した。SSは等速性筋力測定装置を用い,スティフネスの測定と同様に股関節90°屈曲位で膝関節を伸展していき,痛みが生じる直前の膝関節角度で1分×5回(計5分間)のSSを行った。SS開始前(SS前)とSS開始後1分毎にスティフネスの評価を行った。なお,SS開始後のスティフネスの評価,すなわち最終10%の角度範囲での角度―トルク曲線の傾きの算出については,SS前と同様の角度範囲を用いた。統計学的処理は,SS前とSS後1分毎のスティフネスについて,一元配置分散分析とScheffe法における多重比較検定を用いて比較した。有意水準は5%未満とした。なお,結果は全て平均±標準誤差で示した。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は所属施設の倫理委員会の承認を得て(承認番号E-1877),文書および口頭にて研究の目的・主旨を説明し,同意が得られた者を対象とした。【結果】ハムストリングスのスティフネスはSS前:1.23±0.24Nm/°,SS後1分:1.14±0.17Nm/°,SS後2分:1.08±0.16Nm/°,SS後3分:0.90±0.18Nm/°,SS後4分:0.83±0.16Nm/°,SS後5分:0.74±0.11Nm/°であった。一元配置分散分析の結果,スティフネスに有意な変化が認められ,多重比較の結果,SS前と比較してSS後3,4,5分目で有意に低値を示した。さらに1分目と比較して4,5分目,2分目と比較して5分目で有意に低値を示した。【考察】本研究の結果,スティフネスはSS前と比較してSS後3,4,5分目で有意に低値を示したことから,SS開始後3分目以降でハムストリングの柔軟性向上効果が得られることが示された。我々は腓腹筋の柔軟性を増加させるためには最低2分間のSSが必要であることを報告しており,ハムストリングスの柔軟性を増加させるために必要なSS時間と乖離がある。その要因としては,筋の断面積の違いと耐えうる最大の受動的トルク,つまりSS強度に違いがあることが関連していると考えられる。筋の断面積ではハムストリングスの方が腓腹筋よりも大きく,SS強度に関しては腓腹筋の方がハムストリングスよりも強かった(腓腹筋:49.4±12.4Nm,ハムストリングス:40.6±11.4Nm)。これらの結果より,ハムストリングスは腓腹筋よりも断面積が大きく,弱い強度でのSSしか行えなかったため,柔軟性を増加させるためには腓腹筋よりも長い時間である3分間のSS時間が必要になった可能性が考えられる。【理学療法学研究としての意義】理学療法分野においてSS介入を行うことが多いハムストリングスの柔軟性を増加させるために必要なSS時間を検討した結果,最低3分のSS時間が必要であることが示唆された。
著者
西下 智 簗瀬 康 田中 浩基 草野 拳 中尾 彩佳 市橋 則明 長谷川 聡 中村 雅俊 梅垣 雄心 小林 拓也 山内 大士 梅原 潤 荒木 浩二郎 藤田 康介
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【目的】肩関節は自由度が高く運動範囲が広いが,関節面が小さいため回旋筋腱板(腱板)の担う役割は重要である。肩関節周囲炎,投球障害肩などに発生する腱板機能不全では棘上筋,棘下筋の柔軟性低下が問題となることが多く,日常生活に影響を及ぼすこともある。柔軟性向上にはストレッチング(ストレッチ)が効果的だが,特定の筋の効果的なストレッチについての研究は少ない。棘下筋に関してはストレッチの即時効果を検証する介入研究が行われているが,棘上筋ではほとんど見当たらない。棘上筋の効果的なストレッチは,複数の書籍では解剖学や運動学の知見をもとに,胸郭背面での内転(水平外転)位や伸展位での内旋位などが推奨されているが定量的な検証がなされていないため,統一した見解は得られていないのが現状である。棘上筋のストレッチ肢位を定量的に検証したのはMurakiらのみであるが,これは新鮮遺体を用いた研究であり,臨床応用を考えると生体での検証が必要である。これまで生体における特定の筋のストレッチ方法を確立できなかった理由の一つに,特定の筋の伸張の程度を定量的に評価する方法が無かったことが挙げられる。近年開発された超音波診断装置のせん断波エラストグラフィー機能を用いることで,計測した筋の伸張の程度の指標となる弾性率を求める事が可能になった。我々はこれまでに様々な肢位での最大内旋位の弾性率を比較する事により「より大きな伸展角度での水平外転・内旋もしくは,最大伸展位での内旋」が棘上筋の効果的なストレッチ方法であると報告(第49回日本理学療法学術大会)したが,最大内旋を加える必要性については未検証であった。そこで今回我々は,効果的な棘上筋のストレッチ方法に最大内旋が必要かどうかを明らかにすることを目的とした。【方法】対象者は健常成人男性20名(平均年齢23.8±3.1歳)とし,対象筋は非利き手側の棘上筋とした。棘上筋の弾性率の計測は超音波診断装置(SuperSonic Imagine社製)のせん断波エラストグラフィー機能を用い,棘上筋の筋腹に設定した関心領域の弾性率を求めた。計測誤差を最小化できるように,計測箇所を肩甲棘中央の位置で統一し,2回の計測の平均値を算出した。弾性率は伸張の程度を表す指標で,弾性率の変化が高値を示すほど筋が伸張されていることを意味する。計測肢位は,上腕の方向条件5種と回旋条件2種を組み合わせた計10肢位とした。方向条件は下垂位(Rest),胸郭背面での最大水平外転位(20Hab),45°挙上での最大水平外転位(45Hab),最大水平外転位(90Hab),最大伸展位(Ext)の5条件,回旋条件は中間位(N)と最大内旋位(IR)の2条件とした。統計学的検定は各肢位の棘上筋の弾性率について,方向条件と回旋条件を二要因とする反復測定二元配置分散分析を行った。なお統計学的有意水準は5%とした。【結果】全10肢位のそれぞれの弾性率(平均±標準偏差,単位:kPa)はRestNが8.9±3.1,RestIRが7.3±2.5,20HabNが11.9±5.3,20HabIRが10.9±4.3,45HabNが27.1±11.0,45HabIRが28.0±13.8,90HabNが22.6±7.8,90HabIRが27.3±10.8,ExtNが31.0±7.2,ExtIRが31.8±8.4であった。統計学的には方向条件にのみ主効果を認め,回旋条件の主効果,交互作用は認めず,中間位と最大内旋位に有意な違いがなかった。方向条件のみの事後検定ではRestに対して20Hab,45Hab,90Hab,Extの弾性率が有意に高値を示し,更に20Habに対して45Hab,90Hab,Extの弾性率が有意に高値を示した。【考察】棘上筋のストレッチ方法はこれまでの報告同様,Restに比べ20Hab,45Hab,90Hab,Extが有意に高値を示した事,また,20Habに比べ45Hab,90Hab,Extが有意に高値を示した事から,伸展角度が大きい条件ほどより効果的なストレッチ方法であることが再確認できた。しかし,回旋条件の主効果も交互作用も認めなかったことから最大内旋を加えることでの相乗効果は期待できない事が明らかとなった。この結果は新鮮遺体での先行研究が推奨する最大伸展位での水平外転位を支持するものであった。このことから書籍などで推奨されていた胸郭背面での水平外転位のストレッチについては水平外転や内旋よりも伸展を強調すべきであることが明らかとなった。【理学療法学研究としての意義】本研究では弾性率という指標を用いる事で,生体の肩関節において効果的な棘上筋のストレッチ方法が検証できた。その肢位はより大きな伸展角度での水平外転もしくは最大伸展位であったが,最大内旋を加えることによる相乗効果は期待できないことが明らかとなった。
著者
荒木 浩二郎 池添 冬芽 田中 浩基 簗瀬 康 森下 勝行 中尾 彩佳 磯野 凌 神谷 碧 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1306, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】筋力トレーニング直後に生じる筋厚の増加(筋腫張)は血流増加,血管透過性亢進による組織間液増加に起因し,筋肥大に必要な低酸素状態や代謝物蓄積の程度を反映すると考えられている。我々は高齢者を対象に最大等尺性筋力の10%の負荷での膝関節伸展運動を10回1セットとして5セット実施した結果,1~2セット後には筋腫脹がみられず,3セット以降から筋腫脹が生じることを報告した(第2回基礎理学療法学会,2015)。筋腫張は筋肥大を引き起こす重要な要素とされているが,筋腫脹が生じる最低限の運動量でトレーニング介入をした場合に筋肥大効果が得られるかは明らかではない。そこで本研究では高齢者を対象に,最大等尺性筋力の10%の負荷で筋腫張が生じる最低限の運動量を用いて12週間の低強度筋力トレーニング介入を実施し,介入効果が得られるか検討した。【方法】対象は健常高齢者26名(男性3名,女性23名,年齢75.0±4.2歳)とし,介入群13人,対照群13人にランダムに割り付けた。介入群のみ週3回(1回監視下運動,2回自主練習),12週間の低強度膝伸展筋力トレーニングを実施した。運動負荷として,椅子坐位,膝関節90°屈曲位で測定した最大等尺性筋力の10%の重錘を用いた。膝関節屈曲90°から0°の範囲での膝関節伸展運動(求心相3秒,保持3秒,遠心相3秒)を10回1セットとし,3セット行なった。セット間の休息は1分とした。介入前後に筋力,筋厚を測定した。筋力の測定には筋力計(OG技研製マスキュレーターGT30)を用いて椅子坐位,膝関節30,60,90°屈曲位で最大等尺性膝関節伸展筋力を測定した。筋厚の測定には超音波診断装置(フクダ電子社製)を用いて,背臥位,膝伸展位で大腿直筋(RF),中間広筋(VI),外側広筋(VL),内側広筋(VM)の筋厚を測定した。測定部位はRF,VIが上前腸骨棘(ASIS)~膝蓋骨上縁の50%,VLが大転子~大腿骨外側上顆の50%,VMがASIS~膝蓋骨上縁の80%の高さの5cm内側とした。超音波画像は各筋2枚撮影し,平均値を解析に用いた。統計解析は群と時期を2要因とした分割プロットデザインによる分散分析を行なった。なお,有意水準は5%とした。【結果】12週介入後の測定が可能だった介入群12名(男性2名,女性10名,年齢75.9±4.0歳),対照群10名(男性1名,女性9名,年齢73.7±3.3歳)を解析対象とした。低強度筋力トレーニングにおいて用いた重錘の重さは2.2±0.7kgであった。分散分析の結果,すべての膝関節角度の膝関節伸展筋力において交互作用を認めなかった。また大腿四頭筋各筋の筋厚も交互作用を認めなかった。【結論】本研究では先行研究によって明らかとなった最大等尺性筋力の10%の負荷で筋腫脹を生じさせる運動量(セット数)を用いて12週間の低強度筋力トレーニング介入を行っても筋力増強,筋肥大効果は得られないことが示唆された。低強度筋力トレーニングでも効果を得るためには運動量を増やす必要があると考えられる。
著者
田中 浩基
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

高効率かつ精度よく二次荷電粒子を検出する手法として、飛程の違いを利用した粒子識別方法を考案し、その原理実証のためのマルチワイヤ二次元ガス検出器の開発を行った。原子力機構FNS 施設において、アルミニウム薄膜ターゲットに14MeV 中性子を入射することにより発生する荷電粒子の放出角(飛程)とエネルギー情報の同時測定を実施した。本研究の飛程識別手法を用いることで高効率かつ精度良く二次荷電粒子を検出できることを実証した。また高速中性子の二次元イメージングが取得可能であるという、新たな知見を得ることができた。