著者
村瀬 公胤
出版者
日本教育方法学会
雑誌
教育方法学研究 (ISSN:03859746)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.29-37, 2000-03-31 (Released:2017-04-22)

Referring to findings of sociology of science, R. Driver and her colleagues identified both a community of science learners and a community of scientists with a scientific community, which constructs scientific knowledge. From this perspective they defined learning science as a process of "enculturation" using scientific knowledge as "cultural tools". But their concept of "enculturation" has difficulty in analyzing the reciprocal process of constructing scientific recognition at classroom. To overcome that difficulty, this paper aims to reconceptualize "cultural tools" and to understand the reciprocal process in the classroom referring to the J. V. Wertsch's analysis of science classroom. In Wertsch's analysis, one student appropriated her peers' utterances to make her own utterance and other students also did same. These sequential appropriation is essential to make meaning. Thus "cultural tools" are also to be appropriated sequentially because the scientific community evolves scientific knowledge day by day. The process of constructing scientific recognition should be regarded as a sequential and reciprocal process.
著者
村瀬 公胤 岸本 琴恵
出版者
日本教育方法学会
雑誌
教育方法学研究 (ISSN:03859746)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.97-107, 2019-03-31 (Released:2020-04-01)
参考文献数
23

本研究の目的は,教育実践における二つの道徳的価値「規則の尊重」と「相互理解,寛容」の相克について,ケアの倫理を導入することによってこれを乗り越える方途を探ることである。そのために,中学校の事例に基づいて問題の構制を分析するとともに,佐伯(2017)の「二人称的かかわり」および「三人称的かかわり」を参照しながら「規則の尊重」と「相互理解,寛容」の概念の再定義を試みた。事例を通して明らかになったのは,まず,「三人称的かかわり」が「規則の尊重」と「相互理解,寛容」の相克をもたらしており,「二人称的かかわり」がそれを乗り越える契機となり得ることである。次に,「二人称的かかわり」の中で,生徒が主体的な規則の担い手として育つ過程が示された。「規則の尊重」とは,私があなたとどのような関係でありたいかという,二人称的な自律性の発露として捉えることができる。 他方,「相互理解,寛容」としてのケアとは,一方的な保護で現状を無条件に肯定し放置する甘やかしとは異なり,成長の文脈において現状を受けとめることであった。多様な個によって担われる規範と,多様な個が成長するためのケアは,学校が道徳的空間であるための必要な要素である。この理解に基づいて,日々の生徒指導や学校経営が進められる可能性が示唆された。
著者
村瀬 公胤
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.129-139, 2013-03-19

本稿は、1960年代に誕生した科学教育研究運動である仮説実験授業において、討論と読み物という学習活動が導入された過程を、史料に基づき整理する研究ノートである。仮説実験授業の特徴である討論が仮説実験授業に導入された背景として、本稿は、当時の首都圏の私立学校教員たちの理科教育改革の機運を仮定した。また、従来の研究では触れられてこなかった、仮説実験授業における読み物の意義についても、討論の導入を補完するものとして着目した。整理の作業として、まず、仮説実験授業の前史として当時の私立小学校の教育研究の事例を取り上げる。つぎに、仮説実験授業の初めての授業中に討論が発生した過程を史料から再構成し、教育心理学的な意義について検討する。さいごに、その後の私立小学校の科学教育運動と仮説実験授業の相互作用について概観する。これらの作業によって、科学的概念の協同構成という現代の学習科学の視点から、仮説実験授業における討論の導入の意義を検討する資料を提供する。
著者
村瀬 公胤
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
no.6, pp.129-139, 2013-03

本稿は、1960年代に誕生した科学教育研究運動である仮説実験授業において、討論と読み物という学習活動が導入された過程を、史料に基づき整理する研究ノートである。仮説実験授業の特徴である討論が仮説実験授業に導入された背景として、本稿は、当時の首都圏の私立学校教員たちの理科教育改革の機運を仮定した。また、従来の研究では触れられてこなかった、仮説実験授業における読み物の意義についても、討論の導入を補完するものとして着目した。整理の作業として、まず、仮説実験授業の前史として当時の私立小学校の教育研究の事例を取り上げる。つぎに、仮説実験授業の初めての授業中に討論が発生した過程を史料から再構成し、教育心理学的な意義について検討する。さいごに、その後の私立小学校の科学教育運動と仮説実験授業の相互作用について概観する。これらの作業によって、科学的概念の協同構成という現代の学習科学の視点から、仮説実験授業における討論の導入の意義を検討する資料を提供する。研究ノート
著者
楠見 孝 村瀬 公胤 武田 明典
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.33-44, 2016-06-20 (Released:2016-06-17)
参考文献数
32
被引用文献数
2

本研究は,児童・生徒用一般的批判的思考態度(CT-G)と学習場面の批判的思考態度(CT-S,各10項目)を用いて,認知的熟慮性-衝動性,認知された学習コンピテンス,教育プログラムとの関係を解明した.小学校5,6年生312人,中学1,2,3年生306人に,4ヶ月間隔をおいた2回の調査を実施した.そのうち,中学1年生125人に対しては,28ヶ月後の3回目調査を実施した.1回目調査において一般的および学習場面の批判的思考態度の2尺度の信頼性を内的整合性によって確認した.さらに,構成概念妥当性を確認的因子分析,基準関連妥当性を関連尺度との相関に基づいて確認した.パス解析の結果,3回の調査いずれにおいても,(i) 熟慮性は,一般的批判的思考態度に影響を及ぼし,(ii) 一般的批判的思考態度は学習場面の批判的思考態度に影響を及ぼした.そして,(iii) 学習場面の批判的思考態度は学習コンピテンスに影響を及ぼした.最後に,教育プログラムの影響について考察した.