著者
松川 正毅
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.807-812, 2011 (Released:2011-10-22)
参考文献数
17

本稿では,不法行為責任(契約責任も含めて)の概説から始めて,医療過誤訴訟の法理論の特徴を明らかにした.「違法性」などの考え方を例にして,不法行為責任の要件の変遷をたどり,過失概念の客観化について述べた.そして,わが国の医療過誤訴訟では,「医療水準論」が重要な役割を果たしつつあることを,判例を題材にして示した.この分野でも,要件の客観化が進んでいることを過失の推定や因果関係の推定理論を例にして記述した.さらに加えて,通説によれば慰謝料請求の対象となる「説明義務違反」による責任について説明した.
著者
有地 亨 三島 とみ子 緒方 直人 南方 暁 清山 洋子 生野 正剛 大原 長和 金山 直樹 久塚 純一 小野 義美 川田 昇 丸山 茂 松川 正毅 河内 宏 二宮 孝富 伊藤 昌司 UEKI Tomiko MISHIMA Tomi HISATSHUKA Junichi
出版者
九州大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1989

われわれは、1990年秋と91年秋の2度に分けて、第1年目には英国第2年目には仏国および独国において、離婚、児童福祉、老人の3領域における各種相談・援助機関に関する実態調査を行なった。離婚の領域では、英国において、公私2つの研究機関と12の各種相談・援助機関のスタッフに対する面接調査を行い、質問票配布の方法による補足的調査をも行った。仏国では3つの公的機関と22の民間機関のスタッフならびに7人の研究者との面接調査を行い、同様の補足調査を併用した。独国では、民間機関である結婚生活相談所スタッフを調査対象に選んだ。英国では、離婚問題を抱えた当事者への相談・援助活動は、民間機関中心に行われており、夫婦関係の和合調整より、クリ-ン・ブレイクを目指す傾向が顕著であったが、仏国でも民間機関が中心であって、その活動にも同様の傾向が見られ、ここでの合意形成援助活動を司法手続の前段階として制度化する動きも確認できる。独国の上記相談機関は、法的問題と心理的問題を区別し、活動分野を後者に限定しているのが特徴であり、これが独国の一般的傾向を代表する。児童福祉の領域では、英国の公的機関13と民間機関4、仏国の政府機関をはじめとする公的機関8および民間機関11の、それぞれのスタッフと面接調査し、独国においては民間機関1および少年係検事1人を対象に調査した。英仏両国ともに民間機関に活動が顕著であり、各個に特色ある諸機関がその特色を活かしてキメ細かな援助を行なっていることが分かったが、特に、英国においては、公的機関と民間機関との連携が良く、総合的機関の確立も追求されている。独国でも、民間の青少年援助機関が、広義の社会的不適応者に対する社会化のための援助を行っているのが注目される。老人の領域では、英国では、研究者3、地方行政における福祉担当官や公的機関のスタッフや民間の営利・非営利の老人施設のスタッフに面接調査した他に、施設利用者15人に対しても面接調査し、さらに、質問票による補足調査からも多くの情報を得た。同様に、仏国でも高齡者施策に関与する諸機関を訪問してスタッフの面接調査をした(30件)後、福祉諸施設の現場を訪問した。独国では民間の老人ホ-ム経営体を訪問したにとどまる。この領域でも、英仏両国では、やはり民間機関が高齡者個々のニ-ドに応じた多様な援助を広範に提供しており、公的機関の役割はむしろ限定的であるが、両者の連携が重視されている。仏国でも、民間機関による援助が、質・量ともに顕著である。英国では、高齡者は総じて家族とは独立した生活を送っており、相談・援助は、家族との人間関係調整よりも実際的(経済的)援助中心であるが、仏国では、高齡者の自己決定の尊重を眼目としつつ、家族による精神的サポ-トのための民間機関の活動も重視されている。独国調査でも家族によるサポ-トのための民間機関の活動が重視されている。総じて、これらの海外調査の結果は、日本調査の結論としての「家族問題総合センタ-」の構想において、ともすれば公的機関中心に考える日本的発想への反省を迫るものがある。つまり、今回われわれが調査した国々では、家族問題への公的機関の関与は抑制的であり、その役割は財政的支援の範囲に限定されているようである。主導的な役割は、むしろ多様な民間機関が果たしているが、それを可能にしている背景には、その活動の担い手であるソ-シャル・ワ-カ-の専門性の高さとその社会的認知が存在することを見失ってはならない。多様な機関に所属しつつも、活動の担い手相互間には専門性という共通項があって、それが、わが国には見られないような機関相互間の良好な連携を生み出しているという点も、特記すべきことである。
著者
三成 賢次 松川 正毅 高橋 明男 高田 篤 茶園 成樹 松本 和彦 中山 竜一 養老 真一 福井 康太 仁木 恒夫 水島 郁子 佐藤 岩夫 佐藤 岩夫
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、法曹の新職域として注目が集まっている弁護士業務の調査研究を行い、これに法領域横断的な理論的検討を加えることを通じて、近未来における法曹新職域のグランドデザインを提示することを目的とする研究プロジェクトであった。本研究では、諸外国の法曹とその養成課程に関する現状と課題を明らかにするとともに、主として最先端の企業法務を対象とする聞き取りおよびアンケート調査を実施し、法曹の職域の今後に関する模索的な研究を行った。本研究で特に力を入れたのは、全国2000社を対象とする「企業における弁護士ニーズに関する調査」、大阪弁護士会会員の約半数にあたる1500名を対象とする「弁護士業務に関するアンケート調査」、そして全国の企業内弁護士259人を対象とする「組織内弁護士の業務に関するアンケート調査」という3つのアンケート調査であった。それゆえ、本研究では、主として企業関連の弁護士の新しい職域の動向を明らかにすることとなった。