著者
松本 卓也 松永 篤彦 原 美弥子 齊藤 正和 米澤 隆介 石井 玲 忽那 俊樹 山本 壱弥 増田 卓
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.315-326, 2008-06-01 (Released:2008-08-13)
参考文献数
32
被引用文献数
4 5

PURPOSE : The purpose of this study was to clarify the effects of prolonged expiration (PE) on respiratory and cardiovascular responses and autonomic nervous activity during the exercise.METHODS : Twenty-five healthy men (22±1years) were classified according to the breathing mode during the exercise : 2-second inspiration and 4-second expiration in 1 : 2 group, 3-second inspiration and 3-second expiration in 1 : 1 group and normal breathing in control group. The 6-minute exercise was performed at anaerobic threshold (AT) and 60%AT using a cycle ergometer as an exercise protocol. Respiratory rate (RR) and tidal volume (TV) were measured by the expired gas analysis. The power of low- (LF) and high-frequency components (HF) was analyzed from a Holter electrocardiogram to assess the heart rate variability. RESULTS : RR and LF/HF were significantly lower, TV and HF were significantly higher during the exercise of 60%AT and AT in the 1 : 1 and 1 : 2 groups than in the control group (P<0.05 or P<0.01). The increase of HR was significantly lower and that of HF was significantly higher during the exercise at 60%AT in the 1 : 2 group than in the 1 : 1 group (P<0.05). CONCLUSION : PE activated the parasympathetic nervous activity and consequently restrained an excessive increase of HR during the exercise at 60%AT.
著者
目黒 智康 桒原 慶太 金子 志保 渡辺 学 新井 智之 松永 篤彦
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第25回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.80, 2006 (Released:2006-08-02)

【はじめに】本態性振戦は,姿勢時及び動作時振戦だけを唯一の神経症状とする良性の神経疾患である.また,本態性振戦の亜型として書字振戦が報告されている.この書字振戦は書字という特定の動作においてのみ出現する課題特異的振戦であり,書字動作そのものの障害だけでなく,手段的日常生活動作能力の著しい低下に繋がる可能性がある.しかし,書字振戦に対する理学療法の介入効果に関する研究報告は極めて少ない.今回我々は,書字振戦を呈した高齢患者に対して,失調症に対して弾性緊縛帯を適用し,書字振戦が改善する経験を得たので報告する.【症例紹介】症例は85歳の男性で,特記すべき既往歴はみられなかった.現病歴は誘因なく発熱,嘔吐,頚部硬直を伴って意識レベルが低下し,ヘルペス脳炎の診断を受ける.なお,パーキンソニズムや小脳失調性などの神経学的な異常所見は認められなかった.第21病日より理学療法を開始し,第30病日には院内T杖歩行が可能となった.第31病日より書字練習開始した.【初期評価】安静時には振戦はみられないものの,上肢を挙上するとわずかに手指振戦が出現し,さらにこの振戦は書字時に増悪した.感覚機能は正常であり,運動機能は,握力が右16.0kg・左12.5kg,ペグボードテストが右12本・左13本,簡易上肢機能検査(STEF)では右85点・左91点であった.さらに Mini Mental State Examinationによる得点は27点, Functional Independence Measureによる運動項目は91点であった.いずれの評価も著しい低下はみられなかった.【理学療法介入】書字振戦に対する理学療法として,弾性緊縛帯を適用した.方法は,弾性包帯で手関節を固定するように巻き,毎日1時間程度ひらがなの文章を書写する練習を繰り返し,計15日間行った.【結果と考察】書字練習開始時では弾性緊縛帯で手関節を固定した時のみ振戦が減少し書字の不均整に改善を認めたのに対して,退院時には弾性緊縛帯を適用しない状態で書字の不均整に明らかな改善がみられた.先行研究によると,弾性緊縛帯は失調症に対して固有感覚系を介して運動制御を促通する効果があると報告されている.本症例の書字振戦が改善した理由も,弾性緊縛帯により書字の際に手関節の不随意運動が制限され,書字動作時の運動制御を促通した可能性がある.また,弾性緊縛帯による書字の不均整の減少(即時効果)が書字練習時の正しい結果のフィードバックにつながり,さらにはこの学習過程が繰り返し継続されたことが書字という緻密な動作の再学習に効果的に働いたと考えられた.
著者
下瀬 良太 只野 ちがや 重田 枝里子 菅原 仁 与那 正栄 内藤 祐子 関 博之 坂本 美喜 松永 篤彦 室 増男
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A2Se2038, 2010 (Released:2010-05-25)

【目的】随意筋収縮における筋力発揮の力-時間曲線は神経筋機能を評価する上で有効な情報を与えてくれる.特に高齢者は若年者に比べ筋力の発生からピークまでの力発達曲線(Rate of Force Development;RFD)が低い傾向にあり,不意の重心移動などに素早く対応できずに,転倒に繋がる事が多いといわれている.高齢者の転倒予防を考える際に,高いRFDの改善に繋がるトレーニングは重要である.RFDを変化させる因子には運動初期の速い運動単位(fast-MUs)の動員,発射頻度とその同期性や,運動単位の二重子的同期性(doublet discharge)が関与している.RFDの増加は高強度トレーニングによる報告が多く,fast-MUsの動員の寄与で起こると考えられている.しかし,高齢者に対して高強度のトレーニングは臨床的に適しておらず,日常動作で負荷が及ぶ筋力レベルの低強度の運動トレーニングが求められる.最近,低強度でfast-MUsの動員を可能にする皮膚冷刺激筋力トレーニング法が提案されているが,皮膚冷刺激がRFDにどのような影響を与えるかについての報告は未だ皆無である.そこで今回我々は,皮膚冷刺激がRFDに与える影響について検討し,高齢者への皮膚冷刺激筋力トレーニングの有効性についての一資料を得る目的である.【方法】本研究の説明を受け,同意の得られた健常成人男女8名(男性5名,女性3名,年齢34±10歳)を対象とした.被験者は椅子に座り,股関節屈曲90度,膝関節屈曲60度の姿勢で,「なるべく早く最大の力で」という指示のもと等尺性膝関節伸展運動を皮膚冷刺激(Skin Cold Stimulation; SCS)と非皮膚冷刺激(CON)の状態で行なった.SCSは冷却したゲルパック(Alcare製)を専用の装着バンドで数分間大腿四頭筋上の皮膚に密着させ,適切な皮膚温であることを確認して試行を行なった.CONも同重量の非冷却ゲルパッドを装着して行なった.試行順はランダムとし,各試行間では十分な休息をとり,皮膚温を確認して各試行を行なった.プロトコール試行中は,筋力出力と筋電図(EMG)を測定した.EMG(電極直径10mm,電極間距離30mm)は外側広筋(VL),内側広筋(VM),大腿直筋(RF)から双極誘導した.測定データはコンピュータに取り込み,後日解析を行なった.データ解析は力曲線の最高値(Fpeak)と微分最大値(dF/dtmax)を解析し,RFDは,0-30,0-50,0-100,0-200msecの区間での平均勾配を算出した.また各試行のFpeakで標準化したRFD(normalized RFD; nRFD)を,0-1/6MVC,0-1/2MVC,0-2/3MVCの区間の平均勾配として算出した.EMG解析は上述の各区間のroot mean square EMG(rmsEMG)を算出した.統計学的処理は各区間でのSCSとCONの値についてWilcoxonの符号付順位和検定を行い,統計学的有意水準は5%未満とした.【説明と同意】本研究を行うにあたり,ヘルシンキ宣言に基づいた東邦大学医学部倫理委員会実験計画承認書を得た上で,本研究の意義と実験に伴う危険性を協力依頼被験者に十分説明し,納得して頂いた上で測定を行なった.【結果】SCSでFpeakとdF/dtmaxは有意に増加した.dF/dtmaxまでの到達時間はSCSで平均9msec短縮したが,有意差は見られなかった.RFDは,0-30msec,0-50msec区間でSCSにより有意な増加が見られた.またnRFDは,0-1/6MVC区間でSCSにより有意な増加が見られ,到達時間もSCSで有意に短縮した.筋活動は,0-30msec区間でRFのrmsEMGが増加し,0-100msecと0-200msecでVLのrmsEMGが増加した.nRFDの区間では,0-1/6MVCにおいてVMとRFのrmsEMGが増加し,0-1/2MVCと0-2/3MVCにおいてVLのrmsEMGが増加した.【考察】皮膚冷刺激によりRFDの増加が見られた.各筋のrmsEMGの増加傾向が見られたことや皮膚冷刺激によってfast-MUsの動員が引き起こされる結果,初動負荷の素早いオーバーカムが可能となり,RFDの増加に繋がったと考えられる.特に筋力出力の初期でRFDの増加が見られ,不意の重心移動に対して素早く対応できる可能性を示唆した.本研究において,皮膚冷刺激により筋活動・RFDは増加し,皮膚冷刺激は高齢者の転倒予防トレーニングに対して有用であることが示唆された.【理学療法学研究としての意義】本研究において,高齢者の日常動作に類似した低強度でもfast-MUsの動員による筋機能改善の筋力トレーニングが提案でき,高齢者の転倒予防にも繋がる新しい筋力トレーニングとしての可能性を探るデータが得られる.そして,本研究は臨床運動療法の一戦略になり得る可能性を秘めている意味で理学療法研究として意義がある.