著者
新井 智之 伊藤 健太 高橋 優太 丸谷 康平 細井 俊希 藤田 博暁
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.559-557, 2019 (Released:2019-10-28)
参考文献数
23

〔目的〕本研究は不安定面上での片脚立位時のライトタッチの効果を,足圧中心動揺と下肢筋の筋活動から検討することを目的とした.[対象と方法]対象は健常男子大学生13名とした.支持なし(フリー),ライトタッチ(1 N以下の接触),フォースタッチ(5 N以上の接触)の3条件で,足圧中心動揺と6つの筋の筋電図を測定した.〔結果〕総軌跡長,矩形面積,実効値面積は,フリー条件に比べ,ライトタッチとフォースタッチが有意に低値を示した.またライトタッチ条件に比べ,フォースタッチが有意に低値を示した.大殿筋,大腿二頭筋,前脛骨筋,非腓腹筋の筋活動においては,フリーとライトタッチ時の%RMSに有意差はなかった.〔結論〕片脚立位中のライトタッチは,下肢筋の筋活動を減少させずに,足圧中心動揺を減少させる効果があることが示された.
著者
新井 智之 金子 志保 藤田 博曉
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.539-544, 2011 (Released:2012-02-09)
参考文献数
25
被引用文献数
20 10

目的:本研究では決定木分析を用いて,大腿骨頸部骨折患者の歩行自立に関わる要因を明らかにし,歩行自立を判断するためのモデルを提示することを目的とした.方法:対象は大腿骨頸部骨折を受傷し,退院時に歩行能力の評価が可能であった者108例(男性26例,女性82例,平均年齢77.2±12.8歳)とした.検査項目は年齢,性別,Body mass index(BMI),入院期間,術式,骨折分類,脳神経障害の既往の有無,骨折の既往の有無,退院時の理学療法評価として術側と非術側の膝伸展筋力,10 m最大歩行時間,Functional reach test(FRT),Mini Mental State Examination(MMSE)とした.対象者を退院時の歩行能力により,自立群と非自立群2群に分け,両群間で各評価項目における平均値の比較をt検定,χ2検定を用い解析した.また2群間の比較において有意差をみとめた項目を独立変数,退院時の歩行自立度を従属変数とした決定木分析を行った.結果:全対象者108例の内,自立群は55例,非自立群は53例であった.2群間の比較で有意差がみられた項目は,年齢,性別,術式,骨折分類,脳血管障害の既往,術側と非術側の膝伸展筋力,10 m最大歩行時間,FRT,MMSEであった.決定木分析の結果,対象における正分類率85.2%であり交差検証による誤差率は0.042であった.歩行自立の要因として非術側の膝伸展筋力,FRT,MMSE,脳血管障害の既往が選択され,4つの要因により7群に分類される決定木が示された.結論:決定木分析の結果から,大腿骨頸部骨折患者では非術側の下肢筋力から評価し,その値によって動的バランス能力や合併症の有無を確認することで歩行自立を判断できる可能性が示された.
著者
新井 智之 柴 喜崇 渡辺 修一郎 柴田 博
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.165-172, 2011-06-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
45
被引用文献数
3

【目的】本研究では歩行周期変動と他の運動機能,転倒との関連を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は地域在住高齢者124人(平均年齢74.2 ± 7.7歳)とした。歩行周期変動は小型の加速度計を用いて10m歩行時に測定し,連続する1歩行周期時間のデータから変動係数を算出した。歩行周期変動と他の運動機能との関係は相関係数により検討し,転倒の有無を従属変数,運動機能を独立変数とした多重ロジスティック回帰分析を行い転倒に関わる運動機能を検討した。【結果】歩行周期変動と有意な相関を示した運動機能は10m快適歩行速度,10m最大歩行速度,Timed Up and Go Test,6分間歩行距離,Functional Reach Test,最大等尺性膝伸展筋力,30-s Chair Stand Test(|r| = 0.31〜0.58)であった。また多重ロジスティック回帰分析の結果,歩行周期変動のみが転倒に関わる要因として抽出された。【結論】歩行周期変動は総合的な歩行能力を示す指標であり,高齢者の転倒発生に関わる有用な指標であるといえる。
著者
岩朝 睦美 戸田 雄一郎 新井 智之 久保田 直行
出版者
一般社団法人 システム制御情報学会
雑誌
システム制御情報学会論文誌 (ISSN:13425668)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.256-264, 2019-06-15 (Released:2019-09-15)
参考文献数
14

It is an important task for mobile robots that search the target and learn the route while recognizing the unknown environment topology. Usually, reinforcement learning is used as a learning method to know the route to the target while exploring the environment. However, in an unknown environment, it is difficult to predict the number of state division. Particularly, when the state division is too fine, the amount of calculation increases exponentially. In this paper, we propose a method to dynamically construct the state space of the environment using Growing Neural Gas and simultaneously search and learn the route to the target using Q-Learning. We applied multiple autonomous mobile robots to increase searching efficiency. The experimental result shows the effectiveness of the proposed method that can respond to dynamic environmental change.
著者
丸谷 康平 藤田 博曉 細井 俊希 新井 智之 森田 泰裕 石橋 英明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48100928, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】高齢者における足趾把持力の意義については、村田や新井らが加齢変化や性別および運動機能などと影響し、評価としての有用性について報告している。しかしそれらの報告は自作の測定器を用いており、市販された足趾把持力測定器を用いた報告は少ない。また足趾把持力を用いた転倒リスクのカットオフ値を求めた報告も少ない。本研究は地域在住中高齢者を対象とし、足指筋力測定器における加齢による足趾把持力の変化を確認すること、転倒リスクと足趾把持力の関係およびカットオフ値を求めることを目的に研究を行った。【方法】対象は、地域在住中高齢者171名を対象とした(平均年齢71.9±7.6歳;41-92歳、男性64名、女性107名)。測定項目については、Fall Risk Index-21(FRI-21)を聴取し、足趾把持力および開眼片脚立位保持時間(片脚立位)、Functional reach test(FRT)ならびにTimed up and go test(TUG)の測定を行った。FRI-21の聴取はアンケートを検査者との対面方式で行い、過去1年間に転倒が無くスコアの合計点が9点以下の者を「低リスク群」、過去1年間に転倒がある者もしくは合計点が10点以上の者を「高リスク群」とした。片脚立位の測定は120秒を上限に左右1回ずつ施行し左右の平均値を求めた。足趾把持力については、足指筋力測定器(竹井機器社製TKK3361)を用いて左右2回ずつ試行し最大値を求め、左右最大値の平均値を測定値(kg)とした。統計解析において加齢的変化については、対象者を65歳未満、65-69歳、70-74歳、75-79歳、80-84歳、85歳以上に分け年齢ごとの運動機能の差異を一元配置分散分析および多重比較検定を用いて検討した。またt検定により低リスク群、高リスク群の群間比較を行い、足趾把持力および片脚立位、FRTならびにTUGと転倒リスクの関係を検討した。その後、転倒リスクに対する足趾把持力のカットオフ値についてROC曲線を作成し、曲線下面積(Area Under the Curve:AUC)を求めた。解析にはSPSS ver.20.0を用い、有意水準を5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は埼玉医科大学保健医療学部の倫理委員会の承認を得て行われた。また対象に対しては研究に対する説明を文書および口頭にて行い、書面にて同意を得た。【結果】足趾把持力の年代別の値は、65歳未満13.25±5.78kg、65-69歳11.82±5.10kg、70-74歳11.95±5.16kg、75-79歳11.28±3.96kg、80-84歳7.80±3.55kg、85歳以上6.91±3.57kgとなった。一元配置分散分析および多重比較検定の結果、80-84歳と65歳未満や65-69歳ならびに70-74歳との間に有意差がみられた。次にFRI-21による分類の結果、低リスク群は136名、高リスク群35名であり、足趾把持力の平均値は低リスク群11.69±5.19kg、高リスク群9.47±4.42kgとなり、低リスク群が有意に高値であった。一方、片脚立位やFRT、TUGについては有意差がみられなかった。足趾把持力の転倒リスクに対するROC曲線のAUCは0.63(95%IC;0.53-0.72)であった。さらにカットオフ値は9.95kg(感度0.60、特異度0.57)と判断した。【考察】今回、地域在住中高齢者を対象とし、足趾筋力測定器を用いた加齢的変化や転倒リスクに対するカットオフ値を検討した。加齢的変化については、新井らの先行研究と同様に足趾把持力は加齢に伴い低下を来たし、特に75歳以降の後期高齢者に差が大きくなる結果となった。また転倒リスクにおける足趾把持力のカットオフ値は約10kgと判断され、足趾把持トレーニングを行う上での目標値が示された。しかしその適合度および感度・特異度は6割程度であり、転倒リスクを判断するためには不十分である。今後、他の身体機能などを考慮して、さらに検討を重ねることが必要である。【理学療法学研究としての意義】市販されている足趾把持力を用いて地域在住高齢者の年代別平均値を出している報告は少ない。そのため本研究で示した年代別平均値や転倒リスクに対するカットオフ値は、転倒予防教室や病院ならびに施設などでのリハビリテーション場面において対象者の目標設定として有益な情報であると考えられる。
著者
目黒 智康 桒原 慶太 金子 志保 渡辺 学 新井 智之 松永 篤彦
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第25回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.80, 2006 (Released:2006-08-02)

【はじめに】本態性振戦は,姿勢時及び動作時振戦だけを唯一の神経症状とする良性の神経疾患である.また,本態性振戦の亜型として書字振戦が報告されている.この書字振戦は書字という特定の動作においてのみ出現する課題特異的振戦であり,書字動作そのものの障害だけでなく,手段的日常生活動作能力の著しい低下に繋がる可能性がある.しかし,書字振戦に対する理学療法の介入効果に関する研究報告は極めて少ない.今回我々は,書字振戦を呈した高齢患者に対して,失調症に対して弾性緊縛帯を適用し,書字振戦が改善する経験を得たので報告する.【症例紹介】症例は85歳の男性で,特記すべき既往歴はみられなかった.現病歴は誘因なく発熱,嘔吐,頚部硬直を伴って意識レベルが低下し,ヘルペス脳炎の診断を受ける.なお,パーキンソニズムや小脳失調性などの神経学的な異常所見は認められなかった.第21病日より理学療法を開始し,第30病日には院内T杖歩行が可能となった.第31病日より書字練習開始した.【初期評価】安静時には振戦はみられないものの,上肢を挙上するとわずかに手指振戦が出現し,さらにこの振戦は書字時に増悪した.感覚機能は正常であり,運動機能は,握力が右16.0kg・左12.5kg,ペグボードテストが右12本・左13本,簡易上肢機能検査(STEF)では右85点・左91点であった.さらに Mini Mental State Examinationによる得点は27点, Functional Independence Measureによる運動項目は91点であった.いずれの評価も著しい低下はみられなかった.【理学療法介入】書字振戦に対する理学療法として,弾性緊縛帯を適用した.方法は,弾性包帯で手関節を固定するように巻き,毎日1時間程度ひらがなの文章を書写する練習を繰り返し,計15日間行った.【結果と考察】書字練習開始時では弾性緊縛帯で手関節を固定した時のみ振戦が減少し書字の不均整に改善を認めたのに対して,退院時には弾性緊縛帯を適用しない状態で書字の不均整に明らかな改善がみられた.先行研究によると,弾性緊縛帯は失調症に対して固有感覚系を介して運動制御を促通する効果があると報告されている.本症例の書字振戦が改善した理由も,弾性緊縛帯により書字の際に手関節の不随意運動が制限され,書字動作時の運動制御を促通した可能性がある.また,弾性緊縛帯による書字の不均整の減少(即時効果)が書字練習時の正しい結果のフィードバックにつながり,さらにはこの学習過程が繰り返し継続されたことが書字という緻密な動作の再学習に効果的に働いたと考えられた.
著者
渡辺 学 網本 和 新井 智之 廣瀬 隆一(MD)
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第25回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.17, 2006 (Released:2006-08-02)

【目的】「鏡失認」は、鏡上の物体を探索しその物体が視野内に呈示された後でもその探索行動を変容できない症状で、1997年にRamachandranが初めて報告した。また彼は鏡の利用により半側空間無視が改善する可能性を示唆しているが、その後も定量的な研究は行われていない。今回、半側空間無視に鏡失認を認めた例に対して定量的な評価を行い、次に鏡を利用することで半側無視の改善が得られたので報告する。【対象】症例A:85歳、女性。右頭頂葉皮質下出血、左片麻痺。JCSI-1、Brunnstrom stage上肢II手指I下肢II、左感覚重度障害、同名半盲なし。合併症は、見当識障害、認知障害、注意障害、病態失認、左半側空間無視、Pusher症候群。ADLは全介助、作話あり。症例B:89歳、女性。右側頭頭頂葉皮質梗塞、左片麻痺。JCSI-1、Brunnstrom stage全てVI、左感覚障害なし。合併症は、同名半盲、認知障害、構成障害、注意障害、病態失認、左半側空間無視。ADLは監視レベル。【方法】車椅子の右側に矢状面方向で姿勢鏡を隣接した。検査者は対象者の右前方に位置し、鏡に注意を向けさせそれが何かを呼称させた後、鏡上に映る物体を呼称させた。次に閉眼させ、対象者の前方50cm両眼の下20cm高さで鏡面から水平方向に左50cm(対象者の身体正中線より左側)の所に、ピンク色で直径6.5cmのボールを上方から糸で吊して呈示した。対象者を開眼させ鏡上に映るボールが認識できるか確認してから、「手を伸ばしてボールを取って下さい」と口頭指示した。鏡上を探索し実際のボールが掴めない場合は再び閉眼させ、ボールを10cm間隔で鏡面に近づけて同様の指示した。これを実際のボールを掴めるまで繰り返し、掴めたら今度は10cm間隔で鏡面から離していき、再びボールを掴めなくなる位置を確認しこれを閾値とした(鏡条件)。その後、鏡条件での閾値位置前後でボールの認識とリーチ動作を繰り返し(ミラーアプローチ)、治療前後でAlbertテストを実施した。【結果】鏡条件では、症例Aはボールを鏡面から10cm、症例Bは5cmの位置に近づけるまでは一度実際のボールを見ても鏡像を掴もうとして鏡面を探り、「鏡に浮いていて掴めない」「掴めるわけない」と訴えた。反対にボールを鏡面から離していくと症例Aは40cmで再び鏡上を探るようになり、症例Bは50cm離れても実際のボールを直接握ることができた。ミラーアプローチ前後のAlbertテストは、症例Aは17/40から36/40に、症例Bは38/40から40/40に変化した。【考察】実際の目標をつかめた距離の測定により、鏡失認と半側空間無視の評価を定量的に行う手段となりうる。一方、鏡の利用により半側空間無視が改善する例があり、治療法として有効な手段の一つであると同時に、症例により効果が異なる可能性が示唆された。