著者
松田 秀人
出版者
名古屋文理大学短期大学部
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.125-129, 1998-04-01
被引用文献数
1

女子大生263名を対象に, 食品の咀嚼を考慮して食品嗜好調査を実施した.被検者をBody Mass Index(BMI)により肥満群(BMI 26.4以上, 17名)と非肥満群に分類した.その結果, 肥満群は, ピザ, ナポリタン, チャーハン, フランスパン, コーンフレーク, ヒレカツ, ひじき, ショートケーキ, かりんとうの摂取頻度が低かった.これらの食品のなかでピザやショートケーキはカロリーが比較的高いので, 肥満群のほうが非肥満群に比べて肥満を気にする傾向が強いために, 摂取頻度が低かったと考えられる.ピザやショートケーキ以外の食品は, 概して咀嚼回数が多く, なかでも, フランスパン(可食部10gあたりの咀嚼回数108回), コーンフレーク(同243回), かりんとう(同98回)は咀嚼回数が特に多く, しかも噛みごたえのある食品である.したがって, 肥満群は非肥満群に比べて, 噛みごたえがあり咀嚼回数が特に多い食品の摂取頻度が低かった.
著者
内田 あや 大橋 美佳 中村 美保 松田 秀人
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.33-39, 2008 (Released:2019-07-01)

米飯食は伝統的な日本型食生活の中心であり,日本食は肥満や糖尿病食として推奨されている.米飯食が血糖コントロールの面から良い食品であるかをパン食と比較検討した.被験者は19〜20歳の健常な女性35名で,被験食品(約350kcal)を10分間で摂取させた.空腹時,食後30分,60分,90分,120分の計5回指先より採血し血糖測定器で測定した.その結果,空腹時血糖値は全員110mg/dL未満で耐糖能異常者はいなかった.食後60分,90分,120分の米飯食の血糖値がパン食より有意に高かった.また,体脂肪率30%以上の被験者ではパン食と米飯食間での有意差はなく,30%未満では食後60分,90分,120分の米飯食の血糖値がパン食より有意に高かった.米飯食で比較すると体脂肪30%未満が30%以上に比べて食後30分値が有意に高かったが,パン食では有意差はなかった.体脂肪率30%以上の人には内臓脂肪によるインスリン抵抗性が惹起しているのではないかと考えられる.
著者
松田 秀人 冨田 円香 野木 絵美子 林 美千代 正岡 久美 三輪 恵未
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.81-87, 2015-03-31 (Released:2019-07-01)

「特定保健用食品」とは,特定の保健の目的が期待できることが認められた食品である.「特定保健用食品」の効果・効用について,健康な女性に対して表示内容について一定の効果が認められるかどうかを調査することを目的とした.健康な女性5 名(BMI:21.56±1.81 kg/㎡) を対象として,おなかの調子を整える食品として「ヤクルト400」を,血中中性脂肪と体脂肪が気になる方の食品としてクロロゲン酸含有「ヘルシアコーヒー」を,血糖値が気になり始めた方の食品としてβ-グルカン含有「大麦ごはん」を摂取させた.その結果,「ヤクルト400」による便秘改善効果および「ヘルシア」による体脂肪減少効果は認められたが,大麦β-グルカンによるセカンドミール効果は認められなかった.「特定保健用食品」は境界型のヒトに最適で,BMI 25.0 kg/㎡ 以上の肥満者や24.0〜25.0 kg/㎡ の境界型が対象者に含まれていなかったため,効果が認められなかったと考えられる.
著者
内田 あや 大橋 美佳 中村 美保 松田 秀人
出版者
名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.33-39, 2008-03

米飯食は伝統的な日本型食生活の中心であり,日本食は肥満や糖尿病食として推奨されている.米飯食が血糖コントロールの面から良い食品であるかをパン食と比較検討した.被験者は19〜20歳の健常な女性35名で,被験食品(約350kcal)を10分間で摂取させた.空腹時,食後30分,60分,90分,120分の計5回指先より採血し血糖測定器で測定した.その結果,空腹時血糖値は全員110mg/dL未満で耐糖能異常者はいなかった.食後60分,90分,120分の来飯食の血糖値がパン食より有意に高かった.また,体脂肪率30%以上の被験者ではパン食と米飯食間での有意差はなく,30%未満では食後60分,90分,120分の米飯食の血糖値がパン食より有意に高かった.米飯食で比較すると体脂肪30%未満が30%以上に比べて食後30分値が有意に高かったが,パン食では有意差はなかった.体脂肪率30%以上の人には内臓脂肪によるインスリン抵抗性が惹起しているのではないかと考えられる.
著者
松田 秀人 高田 和夫 橋本 和佳 栗崎 吉博 伊藤 裕 長嶋 正實 斉藤 滋
出版者
特定非営利活動法人 日本咀嚼学会
雑誌
日本咀嚼学会雑誌 (ISSN:09178090)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.95-100, 2001

咀嚼能力の測定にジューシーフレッシュガムを用いていたが, 製造中止となったため, 代替ガムの選定を目的とした. 咀嚼能力測定ガムとして, 5種類のガムを試みたが, 歯科用キシリトールガムが最適であった. 噛む回数が20~60回では, 噛む回数に正比例して溶出糖量が直線的に増加し, その相関係数はR<SUP>2</SUP>=0.9946であった. また噛むのに要した時間は, 噛む回数に比例して直線的に増加し, その相関係数はR<SUP>2</SUP>=0.998であった. 歯科用キシリトールガムを用いて咀嚼能力を測定する際の噛む回数は, 噛む回数と溶出糖量が正比例の関係にある20~60回の中間の40回が妥当であり, このガムを用いて咀嚼能力を測定することが可能である. 他のガムの場合にはこのような結果が得られなかった.<BR>実際に歯科用キシリトールガムを用いて, 高校1年生を対象に咀嚼能力を測定したところ, 溶出糖量と人数との関係は正規分布に近い形を示した. しかも, 男女生徒間の溶出糖量には有意差が認められた. また, 咀嚼能力が強い群が21人 (16.7%), 咀嚼能力が普通の群が85人 (67.5%), 咀嚼能力が弱い群が20人 (15.9%) となった.これらの結果は, ジューシーフレッシュガムを使用した場合と同様な結果となり, 咀嚼能力の測定には, 製造中止となったジューシーフレッシュガムに代わり, 歯科用キシリトールガムが使用可能である.
著者
松田 秀人 冨田 円香 野木 絵美子 林 美千代 正岡 久美 三輪 恵未
出版者
名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.81-87, 2015-03-31

「特定保健用食品」とは,特定の保健の目的が期待できることが認められた食品である.「特定保健用食品」の効果・効用について,健康な女性に対して表示内容について一定の効果が認められるかどうかを調査することを目的とした.健康な女性5 名(BMI:21.56±1.81 kg/m2 ) を対象として,おなかの調子を整える食品として「ヤクルト400」を,血中中性脂肪と体脂肪が気になる方の食品としてクロロゲン酸含有「ヘルシアコーヒー」を,血糖値が気になり始めた方の食品としてβ-グルカン含有「大麦ごはん」を摂取させた.その結果,「ヤクルト400」による便秘改善効果および「ヘルシア」による体脂肪減少効果は認められたが,大麦β-グルカンによるセカンドミール効果は認められなかった.「特定保健用食品」は境界型のヒトに最適で,BMI 25.0 kg/m2 以上の肥満者や24.0〜25.0 kg/m2 の境界型が対象者に含まれていなかったため,効果が認められなかったと考えられる.
著者
松田 秀人
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.13-17, 2001-03-31 (Released:2019-07-01)

咀嚼筋(咬筋と側頭筋前部)の活動度と咀嚼能力の関係を調べた.女子大生(19〜20歳)126人を対象として, 咀嚼能力を咀嚼能力測定ガムで測定した結果, 咀嚼能力が強い群が18名, 咀嚼能力が標準の群が92名, 咀嚼能力が弱い群が16名であった.各群の咀嚼筋の活動度を皮膚温の上昇度として把握した.皮膚温はサーミスター温度計で測定した.皮膚温の測定部位は, 咬筋中央部(左右)と側頭筋前部(左右)の合計4ヶ所とした.皮膚温測定中の咀嚼は, 咀嚼ガムを用い, 各自の一定のリズムで10分間咀嚼させた.その結果咀嚼能力が強い群は, 普通群や弱い群に比べて皮膚温の上昇度が有意に高いことがわかった.したがって, 咀嚼能力が強い群ほど咀嚼筋の活動が高く, 咀嚼能力が低い群ほど咀嚼筋の活動が低いことが判明した.
著者
松田 秀人 橋本 和佳 関 哲哉 吉田 真琴 増田 拓也 加藤 大輔 伊藤 裕 栗崎 吉博 斉藤 滋 高田 和夫 長嶋 正實 滝口 俊男
出版者
Japanese Society for Mastication Science and Health Promotion
雑誌
日本咀嚼学会雑誌 (ISSN:09178090)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.141-145, 2002

チューインガムの機能には, 咀嚼能力の向上, 脳血流の亢進, 中枢神経系への作用, 唾液の分泌亢進など咀嚼による直接作用が認められている. 食欲の調節機構としては, 満腹中枢および摂食中枢が食行動調節を司っている. 咀嚼が中枢に及ぼす影響についての研究は少なく, 臨床研究は特に少ない. 摂食抑制物質のうちヒスタミンの分泌は, 咀嚼すなわち噛む刺激によることが, 遺伝性肥満動物Zuckerラット実験により判明した. このような背景から, 食事前にチューインガムを噛むことにより, 咀嚼がインスリン分泌に及ぼす影響について検討した.<BR>19歳から25歳までの健康な女子19名を対象に, ガムベースの15分間咀嚼の後, 75gブドウ糖負荷試験を行い, ガム咀嚼の前, 咀嚼後3分, 6分, 9分, 15分と, それに引き続いて75gブドウ糖負荷後の15分, 30分, 60分, 120分後の計9回, 肘静脈より採血して, 血糖, インスリンを測定した. さらに, ガムを咀嚼しない場合で同様の測定を行った.<BR>その結果, コントロールに比べてガムベースを咀嚼した時のほうが, 75gブドウ糖負荷後の30分値において, インスリン分泌量が多かった. このことから, 咀嚼による中枢への関与が示唆された.
著者
松田 秀人 橋本 和佳 高田 和夫
出版者
名古屋文理大学短期大学部
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.25-29, 2004-04-01

目的:生活習慣とチューインガムを用いて咀嚼能力を調べた.方法:高校生を対象に生活習慣を調査した.生活習慣と咀嚼能力の関連を調べるために,歯科用キシリトールガムを用いて咀嚼能力を測定した.結果:咀嚼能力に有意差が認められた生活晋匿は,男子生徒では,「運動が大好きですか」,「朝食は毎日必ず食べていますか」であり,女子生徒では,「食べる速さはいかかですか」ゾきらいな食べ物がたくさんありますか」,「寝る前によく食べたり飲んだりしますか」であった.すなわち男子生徒では,運動が大好きな生徒,朝食を毎日必ずしも食べていない生徒のほうが咀嚼能力が強かった.また女子生徒では,食べる速さが遅い生徒,嫌いな食べ物が少ない生徒,寝る前によく食べたり飲んだりする生徒のほうが咀嚼能力が強かった.しかしながらよく噛んで食べていると自覚している生徒の咀嚼能力は,よく噛んでいないと自覚している生徒と有意差が認められなかった.よく噛んでいるという自覚と咀嚼能力は一致していなかった.
著者
橋本 和佳 百合 草誠 松田 秀人 高田 和夫 犬飼 敏博 土屋 智昭 吉田 真琴 清水 武藤
出版者
Japanese Society for Mastication Science and Health Promotion
雑誌
日本咀嚼学会雑誌 (ISSN:09178090)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.52-59, 2007-05-31 (Released:2010-07-21)
参考文献数
22
被引用文献数
1

今回著者らは, 日常のさまざまな咀嚼習慣のなかでの食物性状の選択という問題が生活習慣病発症に及ぼす影響を明らかにする目的で, ラットを用いて, 異なった性状の飼料での飼育時の糖代謝の違いを検討した.Wistar系ラットを4週齢時より, 成分は同一で固形状または粉末状と性状の異なる飼料のみで飼育し, 絶食後にグルコースを経口投与し, 血糖値の推移を検討した.その結果, グルコース投与後の血糖値は, 42週齢以前では両群間に有意差がなかったが, 45, 48, 51週齢時には有意差が認められ, すべて粉食群は固形食群より大きな値を示した.また, 血糖値の最大値は3つの週齢時とも粉食群は固形食群に比較して遅延して発現するとともに, 粉食群は血糖値の高い状態が持続した.また, 糖代謝に差異の認められた週齢時には, 両群間の体重にも差異が認められ, 粉食群が固形食群より大きな値を示した.これらのことより, 育成時における飼料の性状に伴う咀嚼機能の促進が成長後 (45週齢以降) の糖代謝の充進に寄与することが明らかとなった.また, 咀嚼習慣や食習慣に関する指導が生活習慣病予防や治療の一つとなる可能性が示唆された.
著者
橋本 和佳 松田 秀人 高田 和夫 吉田 真琴 高橋 健太 滝口 俊男 斉藤 滋
出版者
Japanese Society for Mastication Science and Health Promotion
雑誌
日本咀嚼学会雑誌 (ISSN:09178090)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.23-28, 2004-05-31 (Released:2010-07-21)
参考文献数
17
被引用文献数
3

C-peptideは膵臓でのインスリン生成時にプロインスリンから分離され, 新たに生成されたインスリンの量を反映する.今回, ブドウ糖摂取時のインスリン分泌の咀嚼の有無による違いを検討するため, ガム咀嚼後にブドウ糖液を摂取させた群と, ガム咀嚼を行わずにブドウ糖液を摂取させた群とでブドウ糖液摂取後の血中C-peptide値の変化を観察した.被験者は女性19名, 年齢平均20歳, Body Mass Index (BMI) は25以下である. これらの被験者に香料や甘味料を含まないガムベースを15分間咀嚼させた後に経口ブドウ糖負荷試験 (oralglucosetolerance test, 以下OGTT) を行うガム咀嚼群と, ガム咀嚼を行わずにOGTTを行うコントロール群とに分け, OGTT後15, 30, 60, 120分に採血を行い, 血糖値, 血中インスリン値, 血中C-peptide値を測定した.その結果, 血中C-peptide値は, ガム咀嚼群でOGTT30分後, コントロール群でOGTT60分後に最高値に達した. また, ガム咀嚼群はOGTT時の血糖値の上昇がコントロール群に比べて緩やかで, 血糖値の急激な上昇が抑えられることが明らかとなった. これらのことから, ブドウ糖摂取前の咀嚼の有無はインスリンの分泌に影響を与え, 過食や肥満との関連を有する可能性が明らかとなった.