著者
高橋 健太郎
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.78, no.14, pp.987-999, 2005-12-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
29

本研究において,中国寧夏回族自治区を事例として,回族のイスラームの聖者廟(ゴンベイ)への参詣の実態と特徴,およびその宗教活動が教坊(モスクを中心とする地域社会)へ与える影響について検討した.調査地域においては,聖者廟は,スーフィー教団のものとそれに属さない教宣者を祭ったものとに大別され,回族住民は教坊ごとにそれらへの集団参詣を行っている.参詣の主な目的は,現世利益の獲得,聖者の霊への接近,死後の平安の祈念と多様であり,レクリエーションも兼ねている.聖者廟参詣の際には,交通手段の確保や廟への施しの取りまとめ,儀礼の遂行などで教坊が重要な役割を果たしており,集団参詣を通して,人々の間で教坊の存在意義が再確認されている.また,特に男性にとって,聖者廟参詣は自身の宗教知識や敬虔さ,経済力を示す機会となっており,この宗教活動を通して,教坊内における社会的地位を向上させている人もいることが明らかになった.
著者
松本 光太郎 小林 敦子 梅村 坦 大野 旭 松本 ますみ 高橋 健太郎
出版者
東京経済大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

平成19年度科学研究費補助金研究成果報告書は、3年間の調査研究の成果と、本プロジェクトの最終年度に開催された国際シンポジウム「移動する中国ムスリム-ヒトと知識と経済を結ぶネットワーク」の報告内容を整理し、作成したものである。その際、本科研プロジェクトの課題として提示した三つのテーマを軸としている。その三つのテーマとは次のとおりである。一つ目に、中国ムスリムの越境移住の実態について調査を行うことである。中国ムスリムは中国国内における人口流動のみならず、迫害や留学、労働移民、宗教指導者の動きやメッカ巡礼などによって、国境を越えて移住し、コミュニティを形成している。移住や定着にともなって、社会構造や文化にどのような変化が生じたのかという点が、本報告書で解明しようと試みた一つ目の軸である。二つ目に、中国ムスリムの国内外における移住に付随して、イスラーム的宗教知識と商業的ネットワークの構築過程を探ることが目的であった。本報告書では、宗教指導者や宗教学生のモスク間の移動や、イスラーム宗教知識の国境を越えた流動などが分析を二つ目の軸として分析している。三つ目に、中国ムスリムの移住や、移住にともなうイスラーム宗教知識の流動などにともなって生じる、宗教復興を調査分析することであった。イスラーム復興をキーワードとする論考も、本報告書に収録されている。これら三つの軸を中心に提出された研究成果を、中国西北、西南華南、新疆、中国域外という地域軸に基づいて整理しなおし、報告書として提出した。
著者
高橋 健太 鈴木 忠樹 片野 晴隆 長谷川 秀樹
出版者
日本神経感染症学会
雑誌
NEUROINFECTION (ISSN:13482718)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.125, 2020 (Released:2020-05-13)
参考文献数
28

【要旨】中枢神経系では病原体の感染により種々の病態がもたらされる。病理学的には脳炎・脳症は組織形態により区別される。形態観察で炎症が認められる場合に脳炎、炎症を欠くものが脳症とされ、これらは宿主側の反応の違いによる。感染症の病理学的検索では、同一検体上で病原体の感染とその結果としての組織反応や形態変化の関係性を併せて評価することが重要となる。本稿では病原性微生物の感染による脳炎および脳症の代表的疾患につき病理組織像を提示しながら概説し、感染症が疑われる原因不明脳炎に対する国立感染症研究所感染病理部における網羅的な病原体の新規検索法についても紹介する。
著者
柴田 陽一 三村 昌弘 高橋 健太 中村 逸一 曽我 正和 西垣 正勝
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.8, pp.1833-1844, 2004-08-15
被引用文献数
3

公開鍵基盤(PKI)における秘密鍵は通常,ユーザが所有しているデバイスに保存されることになる.よって,デバイスの耐タンパ性の確保や盗難・紛失などに対して注意を払わなければならない.そこで本論文では,秘密鍵そのものではなく,秘密鍵を生成するメカニズムのみをデバイスに実装する「メカニズムベースPKI」を提案する.本方式では,ユーザが文章に署名を付す瞬間に,ユーザがデバイスに秘密鍵の種を入力することにより,デバイス内で秘密鍵を生成する.普段はデバイス内に秘密鍵は存在せず,デバイスの盗難・紛失の際にも問題はない.秘密鍵の種には様々な候補が考えられるが,ここでは一例として指紋を使用する方法について示す.しかし,指紋はアナログデータであり,指紋からつねに一意の秘密鍵をリアルタイムで生成することは困難であった.本論文では統計学的なアプローチによりこの問題を解決する「統計的AD変換」についてもあわせて提案する.基礎実験の結果,統計的AD変換によって指紋からつねに一意なユニークコードをリアルタイムで抽出可能であることが確かめられた.This paper proposes a "mechanism-based PKI", in which only a mechanism for generating user's private keys is installed on a smart card. The private key is generated inside the smart card at the event that the legitimate user gives a "seed of private key" to his/her smart card in order to sign a document. The key exists nowhere except while users are signing a document. Thus, users no longer need to pay considerable attention to their smart cards. In addition, this paper also proposes a "statistical A/D conversion", which is an effective scheme to convert fingerprint to just one and the same ID in real-time. The statistical A/D conversion enables us to use fingerprint as a seed of private key. We construct an example system for real-time key generation form fingerprint. From some basic experiments that we carried out, the availability of the system is confirmed.
著者
鈴木 啓生 大浦 一雅 山原 可奈子 金 正門 田口 啓太 高橋 海 高橋 健太 岩岡 和博 前田 哲也
出版者
岩手医学会
雑誌
岩手医学雑誌 (ISSN:00213284)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.191-204, 2020 (Released:2021-01-31)
参考文献数
50

パーキンソン病における骨粗鬆症は骨折のリスクのため予防が重要である.骨代謝は性別,年齢,栄養状態や活動度に影響される.パーキンソン病は運動障害が主徴であり,これらを一致させた上で比較が必要だが,同様の検討はない.本研究は慢性期脳血管障害を疾患対照とし,骨密度と骨代謝マーカーを用いて病態を検討した.両群50例を前向きに登録した.パーキンソン病は骨密度低値,酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ高値,血清総ホモシステイン高値,活性型ビタミンD低値であった.骨粗鬆症を有する両群間比較ではパーキンソン病は活性型ビタミンD低値であった.パーキンソン病で骨粗鬆症を有する群はない群より女性が多く,body mass index低値,臨床重症度高値,1型コラーゲン架橋N-テロペプチドと酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ高値であった.パーキンソン病の骨粗鬆症の病態には一般的リスクに加え骨吸収亢進とビタミンD関連骨形成不全,パーキンソン病自体の重症度の関与が示唆された.
著者
披田野 清良 大木 哲史 高橋 健太
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.2383-2391, 2013-11-15

ここ10年あまりにわたり,生体情報を秘匿して認証を行うテンプレート保護型生体認証が注目されている.しかしながら,それらの安全性に関する議論では,生体情報間の相関性により,当該情報量が減少し,保護テンプレートが漏洩した際に,生体情報の推定が容易となる可能性については必ずしも十分に言及されていない.そこで,本論文では,テンプレート保護型生体認証の一方式であるFuzzy Commitment Scheme(FCS)を用いたバイオメトリック暗号に着目し,生体情報間の相関性を考慮して保護テンプレートの安全性を評価する.FCSでは,ユーザが提示する生体情報から生成されたビット列と誤り訂正符号の符号語との排他的論理和を計算してコミットメントを作成し,これを保護テンプレートとすることにより安全性を確保している.本論文では,まず,ビット間に相関性の残る可能性が高い指紋情報に着目し,筆者らが提案する2次のRenyiエントロピーを用いた生体情報の情報量評価手法に基づき,実際に指紋ビット列のビット間には何らかの相関性があることを明らかにする.次いで,生体ビット列のビット間の相関性を利用したなりすましに関する新たな脅威としてDecodable Biometric Dictionary Attack(DBDA)を提案し,DBDAに対する安全性を理論的に考察するとともに,シミュレーション結果を交えて定量的に評価する.
著者
谷山 太郎 高橋 健太
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.109-136, 2014

広島県のデニム生地製造企業のカイハラは、米国リーバイ・ストラウス社との取引開始を契機として、デニム生地の製造や開発に関する能力を構築し、成長を遂げてきた。本稿では、カイハラの事業展開のプロセスを時系列で記述することで、海外顧客との取引を契機とする、事業成長の可能性について考察を加える。
著者
村上 雅仁 加藤 順一 高橋 健太郎 前田 慶明 山本 千恵子 細川 晃代 永田 安雄 古川 宏
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.155-157, 2005 (Released:2005-07-27)
参考文献数
9
被引用文献数
3 2

片麻痺を伴う脳血管障害患者200例(男性146例, 女性54例:61±11歳)を対象に,麻痺側と非麻痺側の脈波伝播速度を測定し,運動麻痺が脈波伝播速度に及ぼす影響をみるとともに,機能的自立度評価法(FIM: functional independence measure)による身体活動量との関連について検討した。麻痺側の上腕-足首間脈波伝播速度は非麻痺側と比較して有意に高値を示したが(p<0.0001),脳出血と脳梗塞による病型別および左右麻痺側別では有意差を認めなかった。麻痺側の上腕-足首間脈波伝播速度は年齢と有意に正相関を示し(r=0.56,p<0.05),FIMと負相関を認めた(r=-0.29)。これらの結果より,片麻痺を伴う脳血管障害患者の麻痺側では,非麻痺側と比較して血管の伸展性が低下しているだけでなく,加齢および運動麻痺により身体活動量が低いほど,動脈スティフネスの低下と関連していることが示唆された。
著者
米山 裕太 高橋 健太 西垣 正勝
雑誌
研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC)
巻号頁・発行日
vol.2013-CSEC-62, no.45, pp.1-6, 2013-07-11

著者らが提案した生体情報を秘密鍵とするディジタル署名 Fuzzy Signature においては,曖昧な生体情報を誤り訂正するために整数格子上の Fuzzy Commitment を用いている.整数格子上の Fuzzy Commitment では,L∞ 空間における整数格子への丸め処理によって誤り訂正を行っている.しかし,顔認証など,特徴量がユークリッド空間上のベクトルとしてコード化される場合には,Fuzzy Commitment への適用が困難であった.本稿では,三角格子の最近傍探索を用いることで,近似的にユークリッド距離に基づく Fuzzy Commitment および Fuzzy Signature を実現する方法を提案する.
著者
高橋 健太 比良田真史 三村 昌弘 手塚 悟
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.49, no.9, pp.3016-3027, 2008-09-15
被引用文献数
1

銀行ATMや入退管理などへ生体認証技術の導入が進み,今後はインターネット決済などにおけるリモート認証への適用が期待される.しかし指紋や静脈などの生体情報は,プライバシ情報であると同時に一生涯変更できない情報であり,厳密な保護が要求される.本稿ではリモート生体認証における脅威を分析してセキュリティ要件を明確化するとともに,これを満たすリモート生体認証プロトコルを提案する.提案プロトコルは,キャンセラブルバイオメトリクスとゼロ知識証明を組み合わせることで,生体情報の漏洩やなりすましといった脅威に対抗する.提案プロトコルにより,ネットワークを介したセキュアな生体認証システムが実現可能となる.Due to the high security and convenience, biometric authentication is used for access control, ATM and many kinds of identity verification. However, biometric data such as fingerprint and vein pattern is permanent feature which cannot be changed like passwords, and so must be protected securely. In this paper we analyze the threats to remote biometric authentication systems such as impersonation and compromise of biometric data, and specify security requirements. Then we propose a novel protocol scheme based on &ldquo;cancelable biometrics&rdquo; and zero knowledge interactive proof. The proposed protocol satisfies all the specified requirements and enables secure online biometric authentication.
著者
林 洋史 宮内 靖史 林 明聰 高橋 健太 植竹 俊介 坪井 一平 中辻 綾乃 村田 広茂 山本 哲平 堀江 格 小原 俊彦 加藤 貴雄 水野 杏一
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.S3_34-S3_41, 2011

症例は52歳, 男性. 繰り返す動悸を自覚し, 携帯心電計で周期240msのnarrow QRS頻拍と心房細動を認めたため, アブレーションを行った. 両側肺静脈を隔離後, 冠静脈洞近位部からのburst pacingでWenckebach型房室ブロックを伴う周期240msの心房頻拍(AT)が誘発され, このATはATP 5mg静注で停止した. AT中のelectroanatomicalマッピングでは, 右房はHis束領域が最早期であったが, 局所の単極電位にR波を認めた. 左房は前壁中隔が最早期であったが同部位での焼灼は無効であった. そこで大動脈弁無冠尖(NCC)にカテーテルを留置したところ, His束領域よりも20msec先行し, 単極電位ではQSパターンとなる最早期興奮部位を認めた. ここでの通電中にATから周期350msの非通常型房室結節リエントリー頻拍(AVNRT)へと移行. その後, 通常型AVNRTも誘発され遅伝導路領域を焼灼し, これらの頻拍はすべて誘発不能となった. NCC起源ATを認め, その焼灼中にAVNRTへの移行が見られた症例を報告する.
著者
高橋 健太郎 泉 憲裕
出版者
岩手県林業技術センター
雑誌
岩手県林業技術センター研究報告 = Bulletin of the Iwate Prefectural Forestry Technology Center (ISSN:13411438)
巻号頁・発行日
no.13, pp.31-34, 2005-03

岩手県矢巾町のキリ健全木と岩手県岩泉町のキリてんぐ巣病罹病木において、寄生しているカメムシの種類を調査した。健全木上では4科10種、罹病木上では5科17種のカメムシが確認された。クサギカメムシ、エゾアオカメムシ、チャバネアオカメムシ、ハリカメムシ、ツマジロカメムシ、ツノアオカメムシ、モンキツノカメムシの3科7種が健全木、罹病木の両方で確認された。
著者
高橋 健太郎 栗岡 裕子
雑誌
思春期学 = ADOLESCENTOLOGY (ISSN:0287637X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.398-403, 2004-09-25
被引用文献数
2