著者
伊豆 裕一 加藤 裕治 林 在圭 イズ ユウイチ カトウ ユウジ イム ゼエギュ Yuichi IZU Yuji KATO Jaegyu Lim
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 = Shizuoka University of Art and Culture bulletin
巻号頁・発行日
vol.15, pp.73-84, 2015-03-31

1955 年、東京芝浦電気より発売された自動式電気釜は、米と水を入れてスイッチを入れればおいしいご飯が炊けるという、今では当たり前となったことを実現した夢の商品であった。日本国内で急速に普及率を伸ばした電気釜は、その後、アジアの各国に輸出され、米食を簡単で身近なものとした。本稿では、まず、我が国における、電気釜の普及と生活文化の関係を、デザインと広告の変遷を見ることで考察する。つぎに、同じく米を主食とする韓国における電気釜のデザインの変遷との比較を行うことで、地域の食文化と家電製品の関係について論じる。
著者
林 在圭 イム ゼエギュ Jaegyu Lim
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 = Shizuoka University of Art and Culture bulletin
巻号頁・発行日
vol.11, pp.17-30, 2011-03-31

韓国の伝統的な食生活は医食同源の考え方に基づき、日常の食事は主食と副食から構成されている。そのため、野菜を中心とする多様な副食から均衡のとれた栄養素を取り込むことが可能である。 そこで本稿では、韓国農村の一村落を対象として日常の食事記録をとり、日常食の特徴と基本パターンを検証する。「飯バンサン床」と呼ばれる日常の食事は固有のルールをもっており、基本飲食を除くおかずの数によって格式化されている。 しかし実際に調査してみると、調査対象村落における日常食の基本パターンは主食1に副食4の5品であった。最も質素な「三サムチョップバンサン楪飯床」の7品に比べ、当該村落は2品が少ない結果となった。また日常食の特徴としては今日でも主食と副食とが明確に区別されており、食材と調理法の重複を避けて、栄養バランスがとれるように工夫されている。したがって、韓国の村落社会における医食同源の考え方は、依然として強く受け継がれていることが確認できる。しかし近年、幼児を含む世帯を中心に外食行動も増え、肉食化の傾向がみられる。Based on the concept of the importance of food in health, Korea's traditional food lifestyle has everyday food comprised of a staple andsupplementary foods. This enables them to obtain balanced nutritional elements from diverse supplementary foods, especially vegetables.Thus in this paper, we take daily food records in one village in rural Korea, and investigate the characteristics and basic pattern ofeveryday foods. Based on characteristic rules, everyday foods called "bansang" have their status raised by the number of side dishesapart from basic food and drink. According to our specific fieldwork survey, the basic pattern of everyday foods in the village surveyed is one staple food with four or fivesupplementary dishes. Compared to the seven dishes of a very modest "samcheob-bansang" meal, the survey showed this village hastwo dishes less. Also, a characteristic of everyday foods is that even today they are clearly divided into staple and supplementary foods,and they avoid overlapping ingredients and cooking methods, working to obtain nutritional balance. We thus confirmed that the concept ofthe importance of food in health is still a strong tradition in Korea's rural society. However, in recent years, especially households includingchildren are increasingly eating out, and we see a trend towards meat in the diet.
著者
林 在圭
出版者
静岡文化芸術大学
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 (ISSN:13464744)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.13-21, 2011

韓国における伝統的な儀礼は年中行事と通過儀礼に大別される。こうした年中行事や通過儀礼は人々の生活に癒しの休息と活力を与えてくれる。また年中行事や通過儀礼などの諸儀礼の過程では、特別季節料理がご馳走として調理され、四季折々の食物とともに豊穣祈願、家内幸福、厄払いなどの願いをこめて、あるいは祖先崇拝の象徴として供物が供えられる。それゆえ、儀礼食の供物は霊や神と人間との関係性における媒介の役割を果たしている。 韓国の祖先祭祀は儒教的大伝統に則って、儒教の教えを行為に表した典型的な儀礼として、祖先祭祀を行うことによって、その教えを体得することができ、それが社会的評価にもつながる。そのため、韓国人にとって祖先祭祀を祀ることが重要な生活規範になっている。 特に祭祀供物には韓国文化の歴史的経過とその特徴が反映されており、肉や魚料理をはじめ餅や果物などが供えられる。したがって祭祀供物を通して、日常の食事ではほとんど食べない肉料理や魚料理を中心とした良質の動物性蛋白質を摂取しうる機会を得ることができる。
著者
林 在圭
出版者
日本村落研究学会
雑誌
村落社会研究 (ISSN:13408240)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.45-56, 1998 (Released:2013-05-22)
参考文献数
21

This study clarifies the structure and functions of Munjung in Korea. The analysis mainly focuses on the modernized characteristics and meaning of organization of lineage. Especially the principle of Korean Munjung structure (organization) is effective principle to explain unique manner of action by Koreanand system of organization’ s principle at the Korean society. The structure of Munjung is the connective structure which has flexible principle of organization; if an independent group of Munjung becomes a core under the certain situation, the structure tends toward “So-Munjung” as a reductive size, or tends toward “Dae-Munjung” as a expansive size. From an individual point of view, the principle of Munjung organization is seen as a concentric circle which flexibly expands from inside of circle to outside ; an individual as center of circle expands towards Jib, Dangnae (Jib-an), Munjung, Linage.
著者
林 在圭 イム ゼエギュ Jaegyu Lim
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 = Shizuoka University of Art and Culture bulletin
巻号頁・発行日
vol.14, pp.21-30, 2014-03-31

人間の暮らしにとって衣食住は根幹をなすものである。ここでは、特に「衣」に焦点を当てて韓国服飾の伝統とその特徴についてみる。そこで、韓国の伝統衣裳の現状を知るために忠清南道舒川郡韓山の苧布の韓山モシを取りあげる。韓山モシは夏用の高貴な織物の生地で、伝統的に主に舒川郡一帯の韓山で生産されている。ところが、化学繊維の普及と増大によって苧麻栽培は激減し、韓山モシは壊滅的状況に追い込まれた。そのため、1980 年代半ばに伝統文化復活の一環として、地方行政の舒川郡や国が韓山モシの保存・継承のために力を注いでいる。そして、1990 年代には韓山モシ館を建立し、さらに2000 年代に入ってからは韓山モシ世界化事業団を組織化して、その復興に努めている。
著者
林 在圭 イム ゼエギュ Jaegyu Lim
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 = Shizuoka University of Art and Culture bulletin
巻号頁・発行日
vol.16, pp.9-16, 2016-03-31

韓国の村落社会における伝統的な食生活は「薬食同源」の考え方に基づき、日常食は主食と副食から構成されている。そのため、多種多様な副食を通して均衡のとれた栄養素を取り込むことが可能である。 しかしながら、日常の食事がいたって質素であるのに対して、祭祀・結婚式・還暦・葬式などの諸儀礼の際に用意される食事は、その量や質においてたいへんなご馳走である。いずれも日常の食事では滅多に口にすることのない肉や魚料理をはじめ、餅や果物を食する機会ともなっている。なかでも、膨大な回数に及ぶ祖先祭祀では、地域住民も招かれて共食が行われる。このように韓国では、諸儀礼の際には家族や親族のみならず近所や村人が共に食する習慣がある。 そのため、韓国の食生活は日常食だけでは完結せず、諸儀礼の際に供される儀礼食を組み合わせるかたちで、全体的な栄養バランスをとっているのである。したがって、韓国の食生活は日常食と儀礼食とが相互補完的関係にあって、食生活という観点からみれば、日常と非日常とは個別的な事象ではなく、連続線でとらえるべきものである。Based on the concept of the importance of food in health, traditional food lifestyle in Korea's rural society has daily food comprised of staple and supplementary foods. Thus diverse supplementary foods enable intake of balanced nutritional elements. However, while everyday foods are simple, food prepared for formal events such as festivals, weddings, 60th birthdays and funerals are real feasts in volume and quality. These are also opportunities to eat foods seldom eaten in everyday meals : meat and fish dishes, rice cake and fruits. Of these, at the frequent ancestor worship events, local residents are also invited to eat together. In this way, Korean society has a custom of eating together at formal events with family and relatives, and also with neighbors and villagers. Thus Korea's food lifestyle is incomplete with everyday foods alone, and overall nutritional balance is obtained by combining with formal foods provided at formal events. Therefore, Korea's food lifestyle has a mutual complementary relationship between everyday foods and formal foods, and viewed from the perspective of food lifestyle, everyday and occasional are not separate phenomena, and are positioned as a series.
著者
林 在圭
出版者
静岡文化芸術大学
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 (ISSN:13464744)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.17-30, 2010

韓国の伝統的な食生活は医食同源の考え方に基づき、日常の食事は主食と副食から構成されている。そのため、野菜を中心とする多様な副食から均衡のとれた栄養素を取り込むことが可能である。 そこで本稿では、韓国農村の一村落を対象として日常の食事記録をとり、日常食の特徴と基本パターンを検証する。「飯バンサン床」と呼ばれる日常の食事は固有のルールをもっており、基本飲食を除くおかずの数によって格式化されている。 しかし実際に調査してみると、調査対象村落における日常食の基本パターンは主食1に副食4の5品であった。最も質素な「三サムチョップバンサン楪飯床」の7品に比べ、当該村落は2品が少ない結果となった。また日常食の特徴としては今日でも主食と副食とが明確に区別されており、食材と調理法の重複を避けて、栄養バランスがとれるように工夫されている。したがって、韓国の村落社会における医食同源の考え方は、依然として強く受け継がれていることが確認できる。しかし近年、幼児を含む世帯を中心に外食行動も増え、肉食化の傾向がみられる。
著者
矢野 敬生 堀口 健治 吉沢 四郎 柿崎 京一 小玉 敏彦 林 在圭 金 一鐡 陸 学芸 間 宏 松田 苑子
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1997

本プロジェクトは、共通の漢字・儒教文化圏の中核をなす日本・中国・韓国を対象にして、社会学・文化人類学的実証研究法を駆使して、三国の民族社会の基層的な構造・文化的特質を明らかにすることを目的とした。そこで上記の目的を遂行するために、文化的伝統を比較的濃密に保持している村落社会(具体的には(日)長野県富士見町瀬沢新田、(中)中国山東省菜蕪市房幹村、(韓)韓国忠清南道唐津郡桃李里)を対象として、参与観察にもとづくフィールド調査を実施した。研究の枠組としては、第一に「家・家族・同族・宗族」、「土地・労働関係」、「信仰・地域統合」の3つのカテゴリーを設定した。第二に暫定的な結果として、以下述べるような諸点が明確となった。(1)中核的な文化概念が、例えば家族・同族・村落といった同一漢字で表現されていても、意味内容は相違しており、概念を再規定する必要がある。(2)社会結合の類型として定住型社会(日本)と移動型社会(中国・韓国)を設定することが可能であり、「村落」およびそれに基づく人間関係のあり方、村落祭祠、同族関係の様相が大いに異なっている。「信仰・地域統合」の面からみると、(3)日本の基礎構造が「ムラ」的地縁関係に規定される固定的な「入れ子型」体系をなすのに対して、韓国においては「ウリ」概念にみられるように伸縮自在の可変性を特徴としている。こうした特徴は「土地・労働慣行」においても同様であり、(4)日本の場合はムラを基盤として共同的志向が強いのに対して、中国・韓国では個人的祈願の志向が強くみられる。そして、(5)こうした全般的構造の特徴は、「親族・家族の構成や人間関係」においても顕著な差異をみせている。ただし、今回の研究では個別のフィールド調査に力点がおかれたために、三国の基層的文化構造の比較という側面はむしろ今後の課題として残されている。