著者
三浦 励一 小林 央往 草薙 得一
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.271-278, 1996-02-09 (Released:2009-12-17)
参考文献数
19
被引用文献数
2 2

京都付近では畑雑草コハコベは春から秋にかけて耕起のたびに発生するが, 人里植物であるミドリハコベは秋期にのみ発生する (前報)。このような発生消長の差異をもたらす種子休眠性および発芽特性の差異を知るため, 両種の種子を7月から野外地表, 野外土中, 実験室内の恒温乾燥 (10,20,30℃) および恒温土中 (10, 20, 30℃) の各条件下で保存し, 定期的に発芽試験を行った。発芽試験は通常15℃明・暗条件で行い, 実験開始時と2ヵ月間保存後 (9月; 発生始期に相当) には温度の影響を調べるため5~30℃のそれぞれ明・暗条件で行った。1) 実験開始時にはコハコベ, ミドリハコベとも全く発芽せず, 一次休眠の状態にあることが示された。2) 野外地表区のコハコベ種子では休眠覚醒が遅く, 光発芽性は顕著でなかった (Figs. 2, 4)。地表で夏から冬まで経過したときの累積発芽率は30%以下であった (Fig. 3)。野外埋土区では速やかに休眠覚醒して著しい光発芽性を示し, 発芽適温域は5~25℃と広かった (Figs. 2, 4)。3) ミドリハコベ種子は野外地表区・埋土区のいずれにおいても比較的速やかに休眠から覚醒したが, 発芽適温域は5~20℃とやや狭かった (Figs. 2, 4)。野外地表区の種子は秋期にその場で発芽し, 累積発芽率は82%となった (Fig. 3)。4) コハコベ種子の室内の恒温乾燥区における休眠覚醒はきわめて遅く, 光発芽性は認められなかった (Figs. 5, 6)。恒温埋土区では速やかに休眠覚醒して著しい光発芽性を示した (Figs. 5, 6)。5) ミドリハコベ種子の室内の恒温乾燥区および埋土区における休眠覚醒の様相は後者でやや光発芽性が認められたほかはよく似ており, いずれも高温 (30℃) で促進され, 低温 (10℃) では遅かった (Figs. 5, 6)。
著者
石山 志央子 小林 央美 新谷 ますみ
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
vol.116, no.2, pp.31-36, 2016-10-14

学校において学級担任をはじめとする教職員により行われる健康観察は,日常的に子どもの健康状態を観察し,心身の健康問題を早期に発見して適切な対応を図り,学校における教育活動を円滑に進めるための重要な活動である。そこで,特に児童生徒と日常的に関わり教育活動を進める学級担任の行う健康観察に着目しその実態について質問紙調査を行った。結果,朝の健康観察は,小学校では98.8%,中学校では100.0%,高校では73.5% の割合で実施していた。校種別にみた朝の健康観察の主要な方法は,小学校では「健康状態申告方式」,中学校では「自己申告方式」,高校では「観察方式」であった。朝の健康観察は「体調不良を訴えた児童生徒の経過観察」に最も活かされていた。健康観察の機会の内,「朝の会」を小学校では特に大切にしていた。高校では,「清掃時」や「放課後」等も大切にしていた。朝の健康観察の方法は発達段階に応じて選択されており,その日一日の教育活動で行う健康観察に連動されるように活かされており,特に重点的に行う必要があることが示唆された。
著者
大石 博之 小林 央宜 尹 禮分 田中 浩一 中山 弘隆 古川 浩平
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F (ISSN:18806074)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.107-118, 2007 (Released:2007-03-20)
参考文献数
3
被引用文献数
1

斜面の災害危険度を評価することは,効率的に防災事業を進めるための重要な課題である.これについては詳細な調査や安定解析に基づいた評価を個別に行うことが望ましいが,対象数が膨大であるため困難となることが多い.そこで,本研究では数理的手法のひとつであるサポートベクターマシンを活用し,各斜面の諸元データと災害履歴を学習することで災害危険度を評価することを試みた.道路沿線斜面のデータを例とした分析では,従来法以上の高い精度で危険度が評価できることが判明した.また,既に対策済みの斜面については,無対策斜面データのみの学習結果に基づく評価と対策済み斜面のみでのそれとを比較することで,対策工効果の指標値を得ることを発案した.これらの成果は,防災事業を進めていく上で大変有効なものと考えられる.
著者
梅本 信也 小林 央往 植木 邦和 伊藤 操子
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.244-248, 1998-10-30

Eclipta prostrata (L.) L.と記されてきた日本産タカサブロウの2変異型を分類学的に検討するために, おもに近畿地方2府4県ならびに沖縄, 福井, 石川, 埼玉および茨城県の水田畦畔において採取した127系統を同一条件で栽培し, 得られたさく葉標本のそう果と葉の形態を観察した。その結果, すべてのさく葉標本と採取系統は, そう果が大型で狭卵形から披針形の葉をもつRound型と, 痩果が小型で披針形から挟披針形の葉をもつSlender型の2群に区別された。従来, 日本産タカサブロウに対しては, Eclipta prostrata (L.) L.が宛てられてきたが, 原記載の引用図譜には明らかな多細胞性の開出毛がある。そこで、タカサブロウ属に関する分類学文献と京都大学理学部(KYO)所蔵のさく葉標本を用いて検討したところ、えられた2群はE. prostrataとは別種であり、前者はEclipta thermalis Bungeタカサブロウ, 後者はE. alba (L.) Hasskarlアメリカタカサブロウとするのが妥当であると考えられた。
著者
冨永 達 小林 央往 植木 邦和
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.273-279, 1989-12-25
被引用文献数
1

チガヤ(Imperata cylindrica var. koenigii)は防除が困難なイネ科の多年生雑草である。本研究では和歌山県紀伊大島におけるチガヤの集団間および集団内変異を明らかにしようとした。 紀伊大島内の路傍、放棄畑、果樹園、芝地および海岸前線砂丘のチガヤ11集団(Fig.1)について、1982年から1984年にかけて自生地における結実率を調査した。また、11集団から5クローンずつ、1クローンあたり5ラミートを任意に選び、1983年6月10日に直径20cm、深さ19cmの素焼鉢に1ラミートずつ移植した。11月上旬に植物体を掘り取り、草丈、分株数、根茎数、根茎の直径および長さ、器官別乾物重を測定した。また、琶穎の長さ、菊の大きさ、自殖率および100粒重も調査した。移植実験は京都大学農学部附属亜熱帯植物実験所(紀伊大島)で行った。 自生地における結実率は、集団および年次の違いにより大きく異なった(Table 3)。海岸前線砂丘のチガヤは、花粉粒がほとんど認められず、雄性不稔であり、その結実率は、0.46%以下と著しく低かった。他の10集団では、菊の形状や花粉稔性に異常は認められず、1.05%から59.07%におよぶ結実率の幅広い変異は集団の大きさや出穂個体の密度によるものと推察された。また、移植実験におけるクローンの自殖率は0.35%以下であり、100粒重は11.07〜13.15mgであった(Table 4)。草丈、全乾重、分株数、総根茎長、根茎の単位長さ当りの重さ、菊の幅および根茎への乾物分配率について分散分析を行った結果、集団間には有意な差異が認められたが、集団内クローン間には有意な差異は認められなかった(Table 1)。この結果から、集団間にはこれらの形質について差異が存在するが、集団内では変異が少ないことが推定された。 海岸前線砂丘由来のクローンでは、他の生育地由来のクローンと比較して、分株数、根茎数および総根茎長が大であり、集団内のクローン間変異は小さかった(Table 2)。また、琶頼長と各クローンの採集地から海岸までの距離との間には、有意な負の相関が認められ、海岸前線砂丘由来のクローンの菅穎は著しく長かった(Fig.2)。
著者
冨永 達 小林 央往 植木 邦和
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.204-209, 1989-10-30
被引用文献数
2

チガヤ(Imperata cylindrica var. koenigii)は、防除が極めて困難な、世界の熱帯から温帯に広く分布するイネ科の多年生雑草である。チガヤが密生している草地の現存量の季節変化を調査し、あわせてチガヤの主な繁殖器官である根茎の水平および垂直分布を調査した。 1980年6月14日から1981年5月18日に和歌山県西牟婁郡串本町紀伊大島にみられるほぽ全域をチガヤに被われた放棄畑(北緯33°28'、東経135°50'、標高約50m)において(Fig.1)調査を行った。50×50cm^2のコドラート3個を調査地に設け、ほぼ1か月ごとに出現種および被度を調査した後、地上部を地上から10cmごとに層別に刈り取り、器官別に乾物重を測定した。地上部を刈り取った後、チガヤの根茎の水平および垂直分布を調査した。 調査地ではチガヤが密に分布していたが、分布様式は一様でなかった(Fig.2)。チガヤの他にススキ、スイバ、ワラビなど31種の生育が確認された。チガヤの被度は1年を通じて76%以上であったが、その他の種の被度は10%以下であり(Fig.3)、個体数も少なかった。チガヤは速やかに生長し、調査開始時には既に草丈が89.7cmに達し、草冠を被っていた(Fig.4)。チガヤ、ススキ、ヘクソカズラ、スイカズラおよびハスノハカズラ以外の種は下層に位置していた。2月にはチガヤの地上部はほとんど枯死したが、枯死葉は、脱落せず、枯死した状態で残存していた。調査地の地上部最大現存量は1月に883 g/m里を示し、チガヤはそのうちの87.4%を占めた。チガヤの主な繁殖器官である根茎は複雑に分枝していた(Fig.6)。根茎は、深さ10cmまでに全量の約80%が分布し、深いものでは30cmに達していた(Fig.4)。根茎の現存量は年間を通じ全器官の40〜50%を占め、その最大値は地上部の現存量が最大となる時期から約1か月遅れた2月に653 g/m王を示した(Fig.5)。 複雑に分枝した根茎が地中深くまで分布し、多量の同化産物を蓄積していることがチガヤの防除を困難にしている要因であると推定された。
著者
冨永 達 小林 央往 植木 邦和
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.164-171, 1989-10-31
被引用文献数
9

チガヤ(Imperata cylindrica (L.) BEAUV.)は,世界の熱帯から温帯にかけて広く分布するイネ科の多年生草本で,家畜の飼料として利用されている。本研究はチガヤの日本列島における形態および生活史に関する地理的変異を明らかにしようとしたものである。北海道から沖縄県に至る各地で1983年までに採集し,系統維持していた402クローンを1985年から同一条件下で栽培し,稈の節毛の有無および生活史について調査した。このうちの52クローンについては,1クローンにつき5ラミートを8号素焼鉢(直径20cm,深さ19cm,容積約6000cm^3)に移植し,乾物生産量を調査した。栽培実験は京都大学農学部附属亜熱帯植物実験所(和歌山県串本町)において行った。調査した402クローンは,稈の節毛の有無により,2変種に分類された。無毛のvar.genuinaに属するクローンの分布は,北海道,東北北部および福島,群馬,長野各県の高地に限定され,紀伊大島での出穂は極めて早く,草型は小型であった。一方,有毛のvar.hoenigiiに属するクローンは,東北南部以南に分布し,生活史に基づいてさらに2群に類別された。すなわち,奄美大島以南から採集したクローンは5月から10月にかけて断続的に出穂し,冬期も枯死しなかったのに対し,東北南部から九州にかけて採集したクローンは年に一度だけ5月に出穂し,冬期には休眠状態に入った。また,一般に植物体の大きさや生活史に関して採集地の緯度に伴うクラインが認められ,北方産のクローンほど植物体が小型で遅く出芽し,出穂は早く,地上部が早く枯死した。これらの結果は主として採集地の気候要因,特に冬期の温度の差異に起因するものと推定された。