著者
柳澤 邦昭 西村 太志 浦 光博
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.89-102, 2010 (Released:2010-08-19)
参考文献数
29
被引用文献数
3 4

本研究では,親しい他者,親しくない他者を選択する際の特性自尊心の影響について,および選択における社会的拒絶の調整効果について,杉浦(2003)の説得納得ゲームを用いて検討した。ゲームは90名の大学新入生を対象に実施した。ゲームの特徴を利用し,説得者が説得した人数を従属変数として,セッション1(S1)とセッション2(S2)の説得者を別々に分析した。その結果,S1の他者選択(すなわちゲーム開始直後)では,高自尊心者は低自尊心者よりも親しくない他者との相互作用を多く選択することが示された。同様の効果は,親しい他者の選択においては認められなかった。このような自尊心の影響に加え,S2の他者選択では,S1納得者の際に他者から相互作用を求められる頻度,すなわち社会的拒絶の経験の有無によって,他者選択が調整されることが示された。特に,拒絶を経験した群において,高自尊心者は低自尊心者よりも親しくない他者を積極的に選択することが示された。このような効果は拒絶を経験していない群においては認められなかった。さらに,親しい他者の選択においても認められなかった。これらの結果を踏まえ,特性自尊心が社会的状況における対人選択に及ぼす影響について,さらに社会的拒絶が及ぼす影響について議論された。
著者
柳澤 邦昭 西村 太志
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.93-103, 2009 (Released:2009-08-25)
参考文献数
19
被引用文献数
2 2

本研究では,他者との相互作用場面における他者選択について自尊心の差異が及ぼす影響を杉浦(2003)の説得納得ゲームを用いて検討を行った。特に説得者の自尊心の差異でゲーム中に相互作用する納得者の選択様相が異なるかどうかに着目して検討した。105名の大学生がゲームに参加した。分析の結果,以下のことが示された。(1)説得者の自尊心の差異に関わらず,ゲーム開始直後のセッション(セッション1)より,後のセッション(セッション2)で説得者は多くの相互作用対象他者を選んでいた。(2)また,セッション1では説得者側,納得者側ともに相互作用した人数と相互作用満足度に正の相関があった。(3)さらに,セッション1において他者との相互作用満足度が低い場合,高自尊心者はセッション2で低自尊心者を相互作用対象他者として選択することが示された。以上の結果から,自尊心の差異により他者との相互作用場面における他者選択様相の異なる側面が伺えた。特に,高自尊心者は一時的に状態自尊心が低下している場合に,自尊心の回復を促進することを目的として低自尊心者を選択していると示唆される。