著者
横谷 謙次 高橋 英之 高村 真広 山本 哲也 阿部 修士
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

行動嗜癖(過度な賭博行動やインターネットゲーム使用)は日本でも人口の約9%が経験しており、適切な治療が求められている。本研究の目的は1.ユーザーの嗜癖行動からの離脱と連動するキャラクター(以下、アバター)とその離脱を賞賛するキャラクター(以下、自律エージェント)によって行動嗜癖を治療し、2.その神経基盤を解明することである。1.の目的を達成するためにロボットとスマートフォンアプリでアバターと自律エージェントを作成し、ギャンブル障害者及びインターネットゲーム障害者に対する治療効果を検証する。また、2の目的を達成するために、fMRIを用いて、1.の治療効果に関与する神経回路を特定する。
著者
阿部 修士
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.404-410, 2018-11-30 (Released:2018-11-30)
参考文献数
19

人間にとって,生きるということは意思決定の連続に他ならない.食事のメニューや着る洋服を決めるといった日常的なことから,進学先の選択や配偶者の決定といった人生における重大事まで,意思決定は途切れることなく続く.こうした意思決定は,論理的思考や合理的判断に基づいて行っていると,我々は考えがちである.ところが,実際にはわたしたち人間の意思決定は,意識の外で自動的・無意識的に起こるこころのはたらきにも大きく依存している.すなわち,わたしたち人間はいくら理性的に意思決定をしようとも,容易には抗えないバイアスの影響を受けている.本稿では,主に人間を対象とした心理学や神経科学から得られた知見に基づき,意思決定の基礎的なメカニズムとその背後に潜むバイアスについて,具体例を交えながら概観した.さらに,こうした知見に基づき,どのようなストラテジーを用いることで,より良い意思決定を実現できるかを,特に健康教育の視点から考察した.
著者
西口 周 青山 朋樹 坪山 直生 山田 実 谷川 貴則 積山 薫 川越 敏和 吉川 左紀子 阿部 修士 大塚 結喜 中井 隆介
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】一般的に,加齢に伴う脳萎縮などの脳の器質的変化が,アルツハイマー病(Alzheimer's disease:AD)や軽度認知機能障害(mild cognitive impairment:MCI)の発症リスクを高めるとされている。また,ワーキングメモリ(working memory:WM)低下はADやMCIの前駆症状であり,認知機能低下と共にWMに関連する脳領域の活動性が低下すると報告されている。つまり,ADやMCIの発症を予防するためには,WM関連領域の脳活動を高め,脳萎縮を抑制することが重要であると予想されるが,脳萎縮とWMに関連する脳活動の関連性はまだ十分に検証されていない。そこで本研究では,地域在住高齢者における脳萎縮とWM課題中の脳活動との関連性を機能的磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging:fMRI)を用いて明らかにすることを目的とした。【方法】対象は地域在住高齢者50名(73.5±5.2歳,男性27名,女性23名)とした。Mini-Mental State Examination(MMSE)<24点の者,重度な神経学的・整形外科的疾患の既往を有する者は除外した。全ての対象者のWM課題中のfMRI画像及び構造MRI画像は3.0TのMRI装置(シーメンス社MAGNETOM Verio)にて撮像した。WM課題としてはブロックデザインを用いて,画面上に映る点の位置がひとつ前の点の位置と一致するかを問う1-back課題と,画面上に映る点の位置が中心かどうかを問う0-back課題を交互に8ブロック行なった。また,構造MRI画像をVSRAD advanceにより処理し,対象者の脳全体における定量的な灰白質萎縮割合を算出した。統計解析は,統計処理ソフトウェアSPM8を用いてfMRIデータを処理した後,1-back課題と0-back課題のサブトラクションを行ない,WM課題中の脳活動部位を同定した。続いて,相関分析にて脳萎縮割合とWM課題中の脳活動部位の関連性を検討した。なお,WFU PickAtlasを用いて,解析範囲を前頭前野,内側側頭葉に限定した。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は当該施設の倫理委員会の承認を得て,紙面および口頭にて研究の目的・趣旨を説明し,署名にて同意を得られた者を対象とした。【結果】本研究の対象者のMMSEの平均値は,27.5±1.9点であった。WM課題において,右の海馬,海馬傍回を中心とした領域,両側の背外側前頭前皮質(Brodmann area:BA9),右の下前頭回(BA45)を中心とした領域に賦活がみられた(p<0.005,uncorrected)。また,脳萎縮割合と関連がみられたWM課題中の脳活動部位は,両側海馬及び両側の背外側前頭前皮質(BA9),右前頭極(BA10)を中心とした領域であった(p<0.005,uncorrected)。なお,これらの関連性は負の相関を示しており,脳萎縮が小さいほど上記の領域の脳活動量が大きいという関連性が認められた。【考察】本研究の結果により,脳萎縮の程度が低いほど,視空間性WM課題中の海馬,背外側前頭前皮質を中心とした領域の脳活動が高いことが示唆された。視空間性WMは前頭前野や海馬の灰白質量と関連すると報告されており,本研究はそれを支持する結果となった。海馬を含む内側側頭葉は記憶機能の中枢であり,一方,背外側前頭前皮質はWMを主とする遂行機能を担う領域とされており,双方ともにともに加齢による影響を受け,萎縮が強く進行する領域であると報告されている。つまり,これらの領域の活動が低下し萎縮が進行することが,記憶機能や遂行機能の低下を主とする認知機能低下を引き起こし,ADやMCIの発症リスクを高める要因の一つになりうると考えられる。今後は,二重課題や干渉課題といったWMの要素を取り入れた複合的な運動介入を行ない,関連領域の脳活動を高めることで,脳萎縮を抑制できるかどうかを検証していく必要があると考える。本研究は横断研究のため脳萎縮と脳活動の因果関係は不明であり,また脳の詳細な萎縮部位は同定していないことが本研究の限界であると考える。今後は,詳細かつ縦断的研究を行なうことが検討課題である。【理学療法学研究としての意義】高齢者の認知機能低下を抑制することは,近年の介護予防戦略において重要な役割を担っている。本研究の結果により,脳萎縮の程度には記憶や遂行機能に関連する領域の脳賦活が関連することが示された。本研究を発展させることで,脳萎縮や認知機能低下抑制を目的とした非薬物療法のエビデンスを構築するための一助となると考えられる。
著者
阿部 修士
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

本研究ではまず健常被験者を対象として、虚再認と嘘の神経基盤を機能的磁気共鳴画像法による実験で検討した。嘘は虚再認に比べ前頭前野の活動が高く、また虚再認は嘘に比べ内側側頭葉(右海馬前方)の活動が高いことを報告した。嘘の神経基盤についてはパーキンソン病患者群を対象とした神経心理学的研究を行い、前頭前野が重要な役割を果たすことを報告した。さらに、これまで行ってきた研究成果をまとめた総説を発表した。