著者
山口 誠二 ヤマグチ セイジ Yamaguchi Seiji 中井 隆介 ナカイ リュウスケ Nakai Ryusuke 高玉 博朗 タカダマ ヒロアキ Takadama Hiroaki
出版者
中部大学生命健康科学研究所
雑誌
生命健康科学研究所紀要 (ISSN:18803040)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.65-72, 2016-03

チタン金属(Ti)及びその合金は、生体親和性に優れ、高い機械的強度を示すので、整形外科や歯科の分野において人工関節や人工歯根などに広く使用されている。しかし、これらの金属は、骨と結合しない、骨粗鬆症骨に適用しにくい、感染症の感染源となり得るなど、様々な課題を抱えている。筆者らは、 Tiに骨結合能を付与できると報告されているNaOH-加熱処理を改良して様々な機能性金属イオンを導入することにより、上述の課題を同時に解決し得る多機能生体活性Tiの開発を進めている。TiをNaOH水溶液に浸漬後、Caと共にSr、Mg、Li、Znなど様々な機能性金属イオンを含む混合溶液に浸漬した。その後、加熱処理を施し、再度、金属イオンを含む水溶液に浸漬した。処理後のTiは、擬似生体環境下でこれらの金属イオンを7日まで徐放し、骨結合能の指標となる骨類似アパタイトを3日以内に旺盛に形成した。Sr、Mgを導入したTiを家兔大腿骨に埋入したところ、処理後のTiはいずれも生体内で周囲の骨形成を促進し、早期に骨と結合した。これらの処理を施したTiは導入した金属イオンの種類に応じて生体内で様々な機能を果たすので整形外科及び歯科用インプラントとして有用であると期待される。
著者
中井 隆介 若槻 麻里子
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

高磁場MRI装置を用いて、顎関節部および咀嚼筋の種々の画像の取得、および、下顎運動時の動的画像の取得を行った。また、この下顎運動を医用画像から自動的に計測し、運動軌跡を抽出するソフトウェアの開発を行った。この解析の結果、下顎運動の左右方向の移動距離と咬筋の体積の左右比に正の相関があることが判明した。また、関節円板に異常がある被験者は、異常が無い被験者に比べ、下顎頭の左右方向の変位が大きいことがわかった。さらに、このMR計測情報を応用した有限要素法による力学解析を行ったところ、関節円板に異常のある被験者はより応力が高くなる要素が存在することがわかった。
著者
西口 周 青山 朋樹 坪山 直生 山田 実 谷川 貴則 積山 薫 川越 敏和 吉川 左紀子 阿部 修士 大塚 結喜 中井 隆介
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】一般的に,加齢に伴う脳萎縮などの脳の器質的変化が,アルツハイマー病(Alzheimer's disease:AD)や軽度認知機能障害(mild cognitive impairment:MCI)の発症リスクを高めるとされている。また,ワーキングメモリ(working memory:WM)低下はADやMCIの前駆症状であり,認知機能低下と共にWMに関連する脳領域の活動性が低下すると報告されている。つまり,ADやMCIの発症を予防するためには,WM関連領域の脳活動を高め,脳萎縮を抑制することが重要であると予想されるが,脳萎縮とWMに関連する脳活動の関連性はまだ十分に検証されていない。そこで本研究では,地域在住高齢者における脳萎縮とWM課題中の脳活動との関連性を機能的磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging:fMRI)を用いて明らかにすることを目的とした。【方法】対象は地域在住高齢者50名(73.5±5.2歳,男性27名,女性23名)とした。Mini-Mental State Examination(MMSE)<24点の者,重度な神経学的・整形外科的疾患の既往を有する者は除外した。全ての対象者のWM課題中のfMRI画像及び構造MRI画像は3.0TのMRI装置(シーメンス社MAGNETOM Verio)にて撮像した。WM課題としてはブロックデザインを用いて,画面上に映る点の位置がひとつ前の点の位置と一致するかを問う1-back課題と,画面上に映る点の位置が中心かどうかを問う0-back課題を交互に8ブロック行なった。また,構造MRI画像をVSRAD advanceにより処理し,対象者の脳全体における定量的な灰白質萎縮割合を算出した。統計解析は,統計処理ソフトウェアSPM8を用いてfMRIデータを処理した後,1-back課題と0-back課題のサブトラクションを行ない,WM課題中の脳活動部位を同定した。続いて,相関分析にて脳萎縮割合とWM課題中の脳活動部位の関連性を検討した。なお,WFU PickAtlasを用いて,解析範囲を前頭前野,内側側頭葉に限定した。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は当該施設の倫理委員会の承認を得て,紙面および口頭にて研究の目的・趣旨を説明し,署名にて同意を得られた者を対象とした。【結果】本研究の対象者のMMSEの平均値は,27.5±1.9点であった。WM課題において,右の海馬,海馬傍回を中心とした領域,両側の背外側前頭前皮質(Brodmann area:BA9),右の下前頭回(BA45)を中心とした領域に賦活がみられた(p<0.005,uncorrected)。また,脳萎縮割合と関連がみられたWM課題中の脳活動部位は,両側海馬及び両側の背外側前頭前皮質(BA9),右前頭極(BA10)を中心とした領域であった(p<0.005,uncorrected)。なお,これらの関連性は負の相関を示しており,脳萎縮が小さいほど上記の領域の脳活動量が大きいという関連性が認められた。【考察】本研究の結果により,脳萎縮の程度が低いほど,視空間性WM課題中の海馬,背外側前頭前皮質を中心とした領域の脳活動が高いことが示唆された。視空間性WMは前頭前野や海馬の灰白質量と関連すると報告されており,本研究はそれを支持する結果となった。海馬を含む内側側頭葉は記憶機能の中枢であり,一方,背外側前頭前皮質はWMを主とする遂行機能を担う領域とされており,双方ともにともに加齢による影響を受け,萎縮が強く進行する領域であると報告されている。つまり,これらの領域の活動が低下し萎縮が進行することが,記憶機能や遂行機能の低下を主とする認知機能低下を引き起こし,ADやMCIの発症リスクを高める要因の一つになりうると考えられる。今後は,二重課題や干渉課題といったWMの要素を取り入れた複合的な運動介入を行ない,関連領域の脳活動を高めることで,脳萎縮を抑制できるかどうかを検証していく必要があると考える。本研究は横断研究のため脳萎縮と脳活動の因果関係は不明であり,また脳の詳細な萎縮部位は同定していないことが本研究の限界であると考える。今後は,詳細かつ縦断的研究を行なうことが検討課題である。【理学療法学研究としての意義】高齢者の認知機能低下を抑制することは,近年の介護予防戦略において重要な役割を担っている。本研究の結果により,脳萎縮の程度には記憶や遂行機能に関連する領域の脳賦活が関連することが示された。本研究を発展させることで,脳萎縮や認知機能低下抑制を目的とした非薬物療法のエビデンスを構築するための一助となると考えられる。
著者
中井 隆介 ナカイ リュウスケ Nakai Ryusuke 山口 誠二 ヤマグチ セイジ Yamaguchi Seiji 若槻 麻里子 ワカツキ マリコ Wakatsuki Mariko 東 高志 アズマ タカシ Azuma Takashi 高玉 博朗 タカダマ ヒロアキ Takadama Hiroaki
出版者
中部大学生命健康科学研究所
雑誌
生命健康科学研究所紀要 (ISSN:18803040)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.77-86, 2016-03

MRI装置は、生体に傷をつけることなく生体内部の画像を取得することができる装置であり、現在では数多くの病院に設置されており、病気の診断のために様々なMRI検査が実施されている。MRI装置の特長として、組織の形態だけでなく、機能的情報も同時に取得できることがあげられる。このような機能的情報を活かした生体計測手法として、水の拡散情報を捉え様々な検査に応用する拡散強調画像法や、ヘモグロビンの酸素化の度合いを捉えて脳の活動部位を特定する機能的磁気共鳴画像法(functional MRI)等がある。我々はMRI装置の幅広い特性を活かし、様々なMRI撮像手法の開発や画像処理・評価手法の開発、生体への応用研究を実施している。本稿では実際に研究に取り組んできた、MRIを用いて開発した生体計測評価手法を、顎関節疾患の評価法開発に適用した研究および、長期間の運動前後の筋肉の変化の解析に適用した研究およびfunctional MRIを用いた様々な脳機能評価に関する研究を例に取り、MRIを用いた生体計測評価法の開発とそれがどのような問題に応用できるかを紹介する。
著者
中井 隆介 ナカイ リュウスケ Nakai Ryusuke 橋本 英樹 ハシモト ヒデキ Hashimoto Hideki 山口 誠二 ヤマグチ セイジ Yamaguchi Seiji 高玉 博朗 タカダマ ヒロアキ Takadama Hiroaki
出版者
中部大学生命健康科学研究所
雑誌
生命健康科学研究所紀要 (ISSN:18803040)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.77-80, 2017-03

近年、顎関節疾患の患者数は増加傾向にあり、歯科口腔領域における治療課題の1つとされているが、その原因の特定や治療法の確立に至っていないのが現状である。顎関節疾患は様々な要因や習慣が複合することにより悪化するため、治療法の確立が難しいとされている。本研究では、顎関節周辺の力学的状態に着目し、顎関節疾患の主要因である関節円板の転位(前方転位、後方転位)と変性が、顎運動初期の顎関節部周囲に与える影響について明らかにすることを目的とした。実験では顎関節部周囲の有限要素モデルを作成し、転位および変性の条件を設定し有限要素法解析を行った。解析に入力した下顎の運動軌跡は、MRIの動的撮像法により取得した下顎運動軌跡を用いた。有限要素法解析による結果から、転位により下顎骨部において相当応力が大きくなり、負荷が大きくなることがわかった。また関節円板の硬化により、顎関節部の応力が増大したことから、硬化が障害に繋がることが示唆された。本研究によって、転位と変性が顎関節疾患に繋がる可能性が明らかとなった。本研究を進める事により将来的には、汎用性の高い顎関節疾患の要因の検査・分析・診断法が確立できるのではないかと考える。