著者
石黒 圭 栁田 直美
出版者
一橋大学国際教育センター
雑誌
一橋大学国際教育センター紀要 (ISSN:21856745)
巻号頁・発行日
no.6, pp.151-165, 2015

本稿は、日本語教育学を学ぶ大学院生、および大学院入学を希望する大学院受験生のために、2名の執筆者が、自身の指導経験・投稿経験に基づいて、研究の進め方のヒントを紹介するものである。前半は、執筆者の一人(石黒)が、自身の指導経験をもとに、研究から論文執筆までのプロセスを紹介し、後半は、執筆者のもう一人(栁田)が、自身の投稿経験をもとに、論文執筆から投稿までのプロセスを紹介する。
著者
栁田 直美
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.177, pp.17-30, 2020-12-25 (Released:2022-12-26)
参考文献数
14

外国人住民の急増を背景に,非母語話者に情報をわかりやすく伝えるための言語的調整である「やさしい日本語」についてさまざまな提案が行われている。しかし,それらの調整は情報を受け取る側の非母語話者からどのように評価されているのだろうか。本稿では,母語話者の〈説明〉に対する非母語話者の評価結果を検証し,評価に影響を与える観点と言語行動について分析した。分析の結果,「積極的な参加態度」「落ち着いた態度」「相手に合わせた適切な説明」が評価に影響を与えることが明らかになった。さらに,非母語話者からの評価が高い母語話者と低い母語話者を比較したところ,会話への積極的なかかわりや相手の理解への配慮を示す言語行動,そして対等な関係性を前提としたふるまいが評価に影響を与えていることが示唆された。このことから〈説明〉場面においては母語話者の非母語話者の理解度に配慮した対応が高く評価されるといえよう。
著者
宇佐美 洋 岡本 能里子 文野 峯子 森本 郁代 栁田 直美
出版者
言語文化教育研究学会:ALCE
雑誌
言語文化教育研究 (ISSN:21889600)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.383-403, 2019-12-31 (Released:2020-03-10)

日本語教育関係者を対象に,フォーラム・シアター(FT)と呼ばれる演劇ワークショップを実施した後で,参加者に対するインタビューを実施し,各参加者にどのような変容があったかを分析した。その結果,ある参加者はFTへの継続的な参加を経て,ネガティブ・ケイパビリティ(すぐに答えを求めず考え続ける能力)を深化させていったことが確認されたが,一方でFTに明確な終着点を求めてしまう参加者もいたことが確認された。またある参加者は,FTでは「一人称的アプローチ」(自分の内観をそのまま他者に当てはめて理解しようとする)によって他者理解をしようとしていたが,その後他者から「二人称的アプローチ」(対象の情感を感じ取り,対象の訴え・呼びかけに答えようとする)を受けることで,一人称的アプローチから脱却していくプロセスが確認された。このことを踏まえ,この種のワークショップを運営する者に求められる配慮についても論じた。
著者
栁田 直美
出版者
一橋大学国際教育センター
雑誌
一橋大学国際教育センター紀要 (ISSN:21856745)
巻号頁・発行日
no.5, pp.49-63, 2014

日本語学習者に対して議論の場における前置き表現の効果的な指導を行うためには、教授項目の選定とともに、提示された前置き表現を学習者がどのように使用し、その使用がどのように変化していくかについて、実際の発話データをもとに明らかにする必要がある。そこで、中国人日本語学習者対象の「討論会」をデータとし、議論の場において他者に反対意見を述べる際に共感・理解を表す形で配慮を示し、相手発話との関連を明示的に示す「他者発言容認の前置き表現」について、学習者の使用実態の変化を分析した。その結果、前置き表現が単純な指示詞を用いたものから、相手の発話を具体的に取り込むものに変化する一方、複合形を作りにくい形式の選択を避け、「確かに」のような母語の影響が考えられる表現形式に使用が偏る傾向が明らかになった。