著者
石黒 圭 佐野 彩子 吉 甜
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.5-20, 2023-09-30 (Released:2023-10-31)
参考文献数
7

日本語学習者の多くが,スマホやタブレット,PCを用いて辞書アプリやインターネット上の辞書を利用している.本研究では,世界各地域の日本語学習者110名を対象に,日常生活において語彙検索行動を行う際に使用したデバイスの画面録画機能を用いて,語彙検索行動を記録してもらうことを試みた.また,この調査記録を,入力言語,入力方法,検索に使用するリソース,検索過程,および検索行動の成否の観点から分析した.その結果,日本語学習者は既習の知識を組み合わせたり応用したりしながら,工夫して語彙検索を行う一方,日本語の誤りや検索方法の誤りのために検索に時間を要したり求める情報にたどりつけなかったりする状況も少なくないことが明らかになった.日進月歩で発展を遂げるテクノロジーによって,日本語学習者の語彙検索の環境も大きく変容している.このような個別事例の分析の蓄積を生かし,今後は語彙検索行動にかんする新たな支援の可能性を探りたい.
著者
石黒 圭
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.39-54, 2022-09-30 (Released:2022-10-19)
参考文献数
18

本論文は,対面コミュニケーションに比べ,話し合いへの参加者の積極的関与が失われ,参加者間の社交が困難になりやすいとされるオンライン・コミュニケーションについて,大学院のオンラインゼミの談話データを用いて,豊かなコミュニケーション活動が行われていることを質的な分析によって明らかにしたものである.参加者の積極的関与については,参加者同士の協力によって話者交替が積極的に行われ,沈黙による気まずさが回避される多様な方略が用いられ,参加者の話し合いへの積極的関与が失われているわけではなく,別の形で維持されていることがわかった.また,参加者間の社交については,オンライン会議ツールで共有されるビデオや音声に積極的に言及することで社交的な発話を行い,接続トラブルや研究上の困難を参加者間で協力しながら解決することで,信頼関係を醸成する姿が明らかになった.
著者
石黒 圭 栁田 直美
出版者
一橋大学国際教育センター
雑誌
一橋大学国際教育センター紀要 (ISSN:21856745)
巻号頁・発行日
no.6, pp.151-165, 2015

本稿は、日本語教育学を学ぶ大学院生、および大学院入学を希望する大学院受験生のために、2名の執筆者が、自身の指導経験・投稿経験に基づいて、研究の進め方のヒントを紹介するものである。前半は、執筆者の一人(石黒)が、自身の指導経験をもとに、研究から論文執筆までのプロセスを紹介し、後半は、執筆者のもう一人(栁田)が、自身の投稿経験をもとに、論文執筆から投稿までのプロセスを紹介する。
著者
野山 広 岩槻 知也 石黒 圭 藤田 美佳 石川 慎一郎 横山 詔一 前田 忠彦 名嶋 義直 大安 喜一 石井 恵理子 佐藤 郡衛
出版者
大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では、現在の社会状況や多様な言語・文化背景を持った日本語使用者が共存・共生する時代に応じた(約70年ぶりの)日本語リテラシー調査(主に読み書きの力に関する調査)の実施に向けて、調査方法の開発を目指す。そのために、以下の1)~3)の実態調査(国内外)、コーパス構築、学際的な観点(基礎教育保障学、日本語教育学、生涯学習論、統計科学、異文化間教育などの多様な分野)からの分析・検討、国際シンポジウム等を実施するとともに、調査の在り方(方向性)や姿勢の追求(追究)、調査方法の開発、試行調査を行う。1)日本語使用の実態調査2)コーパス構築とデータ分析3)調査方法の開発
著者
石黒 圭応 阿部 薫 近藤 優
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.E3P2187, 2009

【目的】<BR>「身体の前進は,立脚側下肢の可動性に依存する.身体重量が足関節に載り,力は床に向かう.身体は全身の安定性を保ちながら,この力の方向を変えることで前進する.」1)このように歩行時の足関節は荷重された下向きの力を関節角度の変化で前向きの力に変換する.幅広い年齢層の女性に使用されているハイヒールは,そのヒール高により足関節に対して様々な影響を与えていると考えられる.本研究の目的は,ヒール高の違いによって歩行時の足関節の関節角度に与える影響を明らかにすることであった.<BR>【仮説】<BR> ヒールの高さが増加するにしたがって,踵接地時から足趾離地時(立脚期全般)にわたり,足関節の底屈角度が増加し,それに伴い足関節の可動範囲が減少するとした.<BR>【方法】<BR>1.対象<BR>インフォームドコンセントの得られた健常女性11名(年齢20.8±1.2歳,身長158.1±4.5cm,体重50.6±4.3kg,足長23.5~24.0cm)とした.被験者はいずれもハイヒール靴経験者であった.<BR>2.条件<BR>1)測定機器:<BR>赤外線カメラ9台を含む三次元動作解析装置(VICON MX,Oxford Metrics 社製),床反力計(OR6-6-2000,AMTI 社製)6台を用いた.<BR>2)使用靴:<BR>ヒールがないヒール高0.0cm靴,ヒール高3.5cmのローヒール靴,ヒール高6.0cmの中ヒール靴,ヒール高8.5cmのハイヒール靴の4種を設定した(図1).3.5~8.5cmヒール靴のトップリフト(ヒール接地部)の形状を直径1cmの円形に加工して形状を同一とした.<BR>3)測定条件:<BR>裸足,およびヒール高0.0cm,3.5cm,6.0cm,8.5cmの靴着用し,各々4回歩行させた.全条件とも靴は裸足で使用した.測定に先立ち,被験者には各靴を着用して歩行練習を十分に行なわせ,歩行速度はComfortable Gaitにて行った.<BR>4)測定項目:<BR>4回の歩行のうち最も安定した代表値1回を用い,歩行中の右下肢立脚期を解析区間とした.右足関節関の関節角度について,踵接地時,立脚中期時,足趾離地時,最大背屈値,足関節可動範囲を各歩行の間で比較した.<BR>【結果】<BR> ヒールの高さが増加するにしたがい,立脚期全般にわたって足関節の底屈角度が増加し,背屈角度は減少することがわかった.また6.0~8.5cmのヒール高になると足関節可動範囲が減少し,標準偏差が大きくなることが観察された.<BR>【考察】<BR>足関節可動範囲が減少することについては,足関節は最も下方に位置する関節であり,上位関節による代償動作が出現したと考えられた.またデータのバラツキについては,被験者によってヒール靴による歩行の習熟度の差も影響しているものと思われた.
著者
石黒 圭 阿保 きみ枝 佐川 祥予 中村 紗弥子 劉 洋
出版者
一橋大学
雑誌
一橋大学留学生センター紀要 (ISSN:1348768X)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.73-85, 2009-07-20

本研究は、ジャンル別のコーパスを用いて、接続表現の使用実態を調査することを目的としたものである。対象としたジャンルは、新聞の社説、新聞のコラム、学術論文、エッセイ、小説、シナリオである。調査は、(1)総文数にたいして何%ぐらい接続表現が用いられているか、(2)個々の接続表現の形式がそれぞれいくつ使われているか、という二つの観点からおこない、接続表現の多寡や連接類型に現れる各ジャンルの特徴を考察した。