著者
原田 幸一
出版者
一橋大学国際教育センター
雑誌
一橋大学国際教育センター紀要 (ISSN:21856745)
巻号頁・発行日
no.4, pp.109-121, 2013

本稿は、一橋大学に在籍する学生を対象として行われたキャンパスことば調査の結果を報告するものである。キャンパスことばを若者ことばの一部として位置づけ、キャンパスことばなのか否かは傾向性の問題として捉える。使用範囲を尋ねるアンケート調査を行うことで、一橋大学内で使用される言葉か否かの分類を試みた。調査の結果、一橋大学の学生が使用する多様な言葉が収集できた。
著者
石黒 圭 栁田 直美
出版者
一橋大学国際教育センター
雑誌
一橋大学国際教育センター紀要 (ISSN:21856745)
巻号頁・発行日
no.6, pp.151-165, 2015

本稿は、日本語教育学を学ぶ大学院生、および大学院入学を希望する大学院受験生のために、2名の執筆者が、自身の指導経験・投稿経験に基づいて、研究の進め方のヒントを紹介するものである。前半は、執筆者の一人(石黒)が、自身の指導経験をもとに、研究から論文執筆までのプロセスを紹介し、後半は、執筆者のもう一人(栁田)が、自身の投稿経験をもとに、論文執筆から投稿までのプロセスを紹介する。
著者
グエン・ティ・タイン・トゥイ
出版者
一橋大学国際教育センター
雑誌
一橋大学国際教育センター紀要 (ISSN:21856745)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.69-80, 2017-07-31

日本語オノマトペが日本語学習者にとって習得が難しいことは、多くの先行研究で指摘されている。世界言語にはオノマトペが豊富な言語とそうでない言語があるがベトナム語は後者である。オノマトペに日常的に触れているベトナム語母語話者はオノマトペに対する馴染みがあり、日本語オノマトペの習得に強みを有すると予想される。しかし、本当に強みを有するのか、有するとしたらどのような点で強みを有するのかを明らかにするには、日本語オノマトペの習得方法や母語のオノマトペの使用状況の考察が必要である。本論文では、独自に制作したアニメーションを学習者に視聴させ、オノマトペの使用を誘出する特定の場面を日越両言語で描写してもらった。その上で、習得方法についてのアンケートも実施した。その結果、同じ場面において使用するオノマトペには日越両言語間に対応関係にある語が多く存在し、学習者はベトナム語訳で意味を覚えていることが判明し、その点で日本語オノマトペの習得に強みを有するという示唆を得た。
著者
庵 功雄 宮部 真由美
出版者
一橋大学国際教育センター
雑誌
一橋大学国際教育センター紀要 (ISSN:21856745)
巻号頁・発行日
no.4, pp.97-108, 2013

本稿では、漢語サ変動詞の使役形である「漢語+させる」の頻度を中納言を用いて調べた。その結果、基本語彙と考えられる能力試験1級までの二字漢語の大部分において、「させる」は「強制」や「許可・許容」の用法ではなく、「他動詞を作る」ために使われていることがわかった。また、定延(2000)で指摘されている「使役余剰」が実際の言語使用においてもかなり安定的に見られる現象であることもわかった。本稿の結果は、最近の日本語教育文法の主張を定量的に裏付けるものであるとともに、シラバス策定における、大規模コーパスの有用性を示すものでもある。
著者
栁田 直美
出版者
一橋大学国際教育センター
雑誌
一橋大学国際教育センター紀要 (ISSN:21856745)
巻号頁・発行日
no.5, pp.49-63, 2014

日本語学習者に対して議論の場における前置き表現の効果的な指導を行うためには、教授項目の選定とともに、提示された前置き表現を学習者がどのように使用し、その使用がどのように変化していくかについて、実際の発話データをもとに明らかにする必要がある。そこで、中国人日本語学習者対象の「討論会」をデータとし、議論の場において他者に反対意見を述べる際に共感・理解を表す形で配慮を示し、相手発話との関連を明示的に示す「他者発言容認の前置き表現」について、学習者の使用実態の変化を分析した。その結果、前置き表現が単純な指示詞を用いたものから、相手の発話を具体的に取り込むものに変化する一方、複合形を作りにくい形式の選択を避け、「確かに」のような母語の影響が考えられる表現形式に使用が偏る傾向が明らかになった。
著者
Sepehri Bady Azam
出版者
一橋大学国際教育センター
雑誌
一橋大学国際教育センター紀要 (ISSN:21856745)
巻号頁・発行日
no.2, pp.57-71, 2011

本稿では、家族の会話の中での人称表現の使い分けに注目しつつ、世代差や性差によって呼称(呼ばれ方)の使い分けがどう変化するか考察した。その結果、①目上から目下に対しては名前で呼ぶ、②目下から目上に対しては人称代名詞で呼ぶ、③子どもは家族の最年少者の立場から親族呼称を使って呼ばれるなど、鈴木孝夫(1973)の説が概ね裏付けられた。一方、①目上からの目下への呼称は多様化している、②兄弟姉妹間の親族呼称の使用が減少している、③親族間の呼称は呼ぶ側と呼ばれる側の双方の性差の影響を受ける、④呼ばれる側の年齢が上がるほど人称代名詞や「ちゃん/くん」付けが少ないなど、鈴木孝夫(1973)を含め、これまであまり指摘されてこなかった傾向も観察され、背後に核家族化や少子化の影響が見てとれる。
著者
三枝 令子
出版者
一橋大学国際教育センター
雑誌
一橋大学国際教育センター紀要 (ISSN:21856745)
巻号頁・発行日
no.3, pp.3-14, 2012

接続詞の中で「しかし」と「そして」は、それぞれ逆接、順接に分類され、接続詞の中でも基本的、代表的なものと言える。本稿では、「そして」と「しかし」が互いに言いかえられる時、言いかえられない時があることから、それぞれの場合を考え、その働きをみてみた。発話のプロセスに沿って考えると、「そして」は、後に続くことがらが最後であることを示し、「しかし」は、後件にそれまでの流れとは異なることがらが来る先触れと言える。接続詞の「そして」「しかし」を順接、逆接と分けるのが一般的だが、その違いは実は大きくはない。
著者
髙木 祐輔
出版者
一橋大学国際教育センター
雑誌
一橋大学国際教育センター紀要 (ISSN:21856745)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.157-165, 2017-07-31

現在,約15万の外国籍ビジネスパーソンが日本に滞在している。職業的専門性の高さから社内では日本語力を求められず,英語または母語を用いて仕事を行っているケースがある。しかし,彼・彼女らが日常生活や同僚とのコミュニケーションを円滑にしようと日本語学習を希望した際,日常業務のため学習時間が限られ,2~3年程の滞日期間しかないにもかかわらず,日本語学校で行われるシラバス(初級200~300時間)を基に教育にあたるケースがある。このシラバスでは,初級終了まで2年以上(週2時間×4週=8時間/月,月8時間×25か月=200時間)要し,初級文法で話せるようになった頃には帰国するという可能性がある。本研究では,庵(2009) がコミュニケーションに最低限必要な文型・表現を抽出した文法項目Step1,Step2用い,会話特化型の授業を半年(週2時間×24週,計48時間)行うことでどの程度会話力が身につくか,OPI を用いて測定した。結果はOPI初級中判定で,学習者はテスターの質問を理解し,受け答えはできるものの,語彙に関する知識不足が目立つことがわかった。
著者
西 優加理
出版者
一橋大学国際教育センター
雑誌
一橋大学国際教育センター紀要 (ISSN:21856745)
巻号頁・発行日
no.6, pp.167-176, 2015

本稿は、要求場面の《依頼》と《改善要求》を取り上げ、日本語母語話者、上級、中級の日本語学習者を対象にアンケート調査を行い、話者のストラテジーの適切度評価を分析した。語用論的条件の観点から適切度評価、3 グループ間の有意差について考察した結果、個々のストラテジーの適切度、学習者と母語話者の認識に差異が生じていることが明らかとなった。
著者
全 美炷
出版者
一橋大学国際教育センター
雑誌
一橋大学国際教育センター紀要 (ISSN:21856745)
巻号頁・発行日
no.4, pp.63-74, 2013

東京方言では2つの文節が1つの韻律句を生成する場合、後部文節で第1モーラから第2モーラにかけての音調の上昇が生じないことがある。この現象を本稿では句頭の上昇の消失と呼び、その生起環境を調べるための本格的な実験前の準備段階として、関連要因を探索することを目的とした調査を行った。方法は、非実験環境で収録した音声資料から句頭の上昇が消失している文節を収集し、当該文節と先行文節の2文節の関係で共通する要因を抽出する方法を採用した。分析した項目は2文節のアクセント型の組み合わせ、2 文節の修飾関係の2 つである。従来の研究ではminor phraseの定義によって、1つの句に含まれるアクセント核の数を最大1つまでしか許容していない。そのため、2文節が両方とも有核語である場合は、後部文節で句頭の上昇が消失し、前部文節と後部文節が1つの句にまとまっていても、2つの句と認められ、1つの句を形成する2 文節の関係を調べるための分析対象から除外されていた。本調査では句頭の上昇の存在を基準とした「句」の定義を用い、「有核語+有核語」を含むすべての文節を検討した。その結果、アクセント型の組み合わせ「有核語+有核語」、「有核語+無核語」、「無核語+有核語」、「無核語+無核語」の4種類すべてにおいて句頭の上昇が消失しているデータが存在することが確認された。また、修飾関係に関しては「名詞助詞+動詞」、「程度副詞+動詞」、「名詞ノ+名詞」、「形容詞+名詞」、「動詞+名詞」、「~テイル類」、「~トイウ」の7 種類において句頭の上昇が消失しているデータが存在していることが確認された。
著者
スィリラット サンタヨーパス
出版者
一橋大学
雑誌
一橋大学国際教育センター紀要 (ISSN:21856745)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.37-55, 2011-07

日本語で感謝を示すとき、「ありがとう」ではなく「すみません」などの謝罪の表現を使うこ