著者
矢澤 美香子 金築 優 根建 金男
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.243-253, 2008-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究は、女子学生のダイエット行動における完全主義認知、感情、自己評価の特徴を実験的に検討することを目的とした。ダイエット行動尺度(松本ら,1997)に回答した女子学生326名のうち、非構造的ダイエット得点が高い群(H)に21名、低い群(L)に20名を配置し、さらにダイエットの成功想定状況群(S)と失敗想定状況群(U)に割り当てた。参加者は、3週間のダイエットに取り組むことを想定してダイエットプランを作成した。そして、成功想定状況群(H-S,L-S)と失敗想定状況群(H-U,L-U)は、それぞれそのダイエットが成功、あるいは失敗する状況について8分間考えた。その結果、H-S、L-Sで高目標設定の認知が増加した。一方、H-Uではミスにとらわれる認知と不安感が増加した。さらに、H-S、H-Uはダイエット状況によって自己評価に影響を受けていた。これらの結果から、過度なダイエットにおいて、完全主義認知はネガティブな感情や自己評価と関連することが示唆された。
著者
近藤 友佳 金築 智美 根建 金男
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.273-284, 2008-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究では、大学生のシャイネスに対する自己教示訓練(SIT)の有効性を確認し、教示文の組み合わせ方および訓練の回数や長さがSITの効果に及ぼす影響を検討した。シャイネスの認知・行動の両側面の得点が高かった27名を実験参加者とし、認知焦点型教示文のみを用いる(SIT-C)群、認知焦点型教示文と行動焦点型教示文の両方を用いる(SIT-CB)群、統制(NTC)群の3群に振り分けた。3週間のトリートメント期間中、SIT群は計10回のトレーニングを行った。一方、NTC群は特別な訓練は行わなかった。その結果、統制群と比較してSIT-C群とSIT-CB群は特性シャイネスが有意に改善され、その効果は約6か月後のフォローアップ時でも維持されていた。また、特にSIT-C群のほうが総合的な効果は顕著であることが示された。本研究より、SITの効果性を高める要因として、用いる教示文や訓練の回数や長さが示唆された。
著者
増田 智美 金築 優 関口 由香 根建 金男
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.31-44, 2005-03-31 (Released:2019-04-06)

本研究では、怒り喚起を伴う対人場面における自己陳述を測定できる怒りの自己陳述尺度を作成し、標準化することを目的とした。青年期の学生596名のデータを対象として因子分析を行った結果、第1因子「他者からの不当な扱い」、第2因子「敵意に満ちた考え」、第3因子「報復の正当化」、第4因子「自己への叱責」、第5因子「他者への非難」が抽出された。尺度全体および各下位尺度ともに安定的な内的整合性が示されたことから、尺度の信頼性が認められた。また、他尺度との関連性により併存的妥当性が確認された。加えて、イメージによる怒り喚起状態に伴って、尺度得点が増加したことから、怒り喚起状態における自己陳述を測定する尺度としての構成概念妥当性が裏づけられた。今後、怒りの認知的側面を標的とした認知行動療法を施す際のアセスメント・ツールとして、本研究で標準化された怒りの自己陳述尺度を活用することが望まれる。
著者
伊藤 義徳 根建 金男
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.33-46, 2001-03-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本研究では、ネガティブ感情の喚起がセルフモニタリング能力に及ぼす影響について検討を行った。38名の情緒安定性の高い、あるいは低い大学生を対象として、手話の指文字を観察し、再生する課題を行わせた。情緒安定性の高い者と低い者を、それぞれネガティブ感情喚起群と中性的刺激群の4群に振り分けた。プリテストとポストテストの間に感情を操作する刺激をVTRにより呈示した。再生の程度に対する客観的評定の得点から主観的評定の得点を減じた値をセルフモニタリング得点とした。その結果、ネガティブ感情を喚起させる群では、セルフモニタリングの得点が刺激を呈示する前から後にかけて上昇し、再生に要する時間が長くなることが示された。このことは、ネガティブ感情の喚起が、セルフモニタリング能力を低下させることを示唆している。本研究の結果をもとに、認知心理学の知見をセルフコントロール研究に応用することの意義について考察した。
著者
長谷川 晃 伊藤 義徳 矢澤 美香子 根建 金男
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.68-71, 2010

The present study was conducted to revise the Japanese version of the Depressive States Checklist (JDSC), and to evaluate the construct validity of the revised version. Undergraduate students participated in two questionnaire studies. In Study 1, items with sufficient face validity and factorial validity representing the self-devaluative view and affective components were selected for the revised version of the J-DSC (JDSC-R). In Study 2, each factor of the J-DSC-R showed adequate construct validity because the correlation coefficients among the factors of the J-DSC-R, depressive symptoms, and depressive rumination generally supported the hypothesis. The J-DSC-R can be used to contribute to the understanding of vulnerability to depression.
著者
根建 金男 上里 一郎
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.101-107, 1984-03-31 (Released:2019-04-06)

The present experiment was designed to determine the effects of cognition of physiological state and actual physiological responses upon emotion, as defined in terms of relaxation. Female undergraduates participated in the experiment as Ss and were asked to decrease their heart rate under both real and false fee dback conditions. Under the false feedback condition, Ss were informed as being successful in reducing heart rate when actually vice versa, and in consequence, came to believe their performance became worse as the sessions proceeded. However, Ss under this condition as well as the real feedback condition could become emotionally stable for they were actually successful in decreasing heart rate as much as under the real feedback condition. This seems to be partly because Ss were mostly using proper strategies under either condition to decrease heart rate. When cognition of physiological state and actual physiological responses are contradictory, the latter seem to influence dominantly upon emotion.
著者
金築 優 金築 智美 根建 金男
出版者
日本感情心理学会
雑誌
感情心理学研究 (ISSN:18828817)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.169-179, 2010-03-25 (Released:2011-02-20)
参考文献数
28

Worry is perseverative negative thinking about what may happen in the future. In this study, we examined the effects of cognitive behaviour intervention focused on metacognitive beliefs about worry, on alleviating worry in Japanese university students with high trait worry scores. Metacognitive be-liefs about worry refer to the beliefs that individuals have about their own worries, such as beliefs about the natures and functions of their own worries.In study I, we administered cognitive-behavioural psychoeducation to high worriers, with a fo-cus on metacognitive beliefs about worry. As a result, individuals who received the psychoeducation (n=13) were less anxious than the placebo intervention group (n=10) at a worry-provoking task.In study II, eighteen high worriers served as subjects. They were assigned to either a self-instructional training (SIT; n=9) group focusing on metacognition or a waiting list control (WLC; n=9) group. As a result, SIT produced a signi.cantly larger treatment effect on modifying negative metacognitive beliefs about worry. In addition SIT was superior to waiting-list control, in yielding improvements on worry related measures.These results show that modi.cation of negative metacognitive beliefs about worry has the effect of alleviating trait worry. The theoretical and clinical implications of these results were discussed.
著者
長谷川 晃 金築 優 根建 金男
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.21-34, 2009-06-01 (Released:2009-07-24)
参考文献数
24
被引用文献数
8 7

本研究は,本邦の大学生を対象に調査を実施し,抑うつ的反すうに関するポジティブな信念の確信度を測定する尺度を作成すると共に,どのような内容の信念が抑うつ的反すう傾向と関連しているのか検討することを目的とした。研究1では,“人生への悪影響の回避”,“問題解決能力の向上”,“感情制御の促進”,“現状の悪化の回避”の4下位尺度からなる「抑うつ的反すうに関するポジティブな信念尺度 (PBDRQ)」が作成された。研究2では,PBDRQの併存的妥当性と再検査信頼性が確認された。研究3では,“人生への悪影響の回避”と“現状の悪化の回避”という,反すうしないことで生じる不利益に関する信念が抑うつ的反すう傾向と関連していることが示された。結果より,抑うつ的反すうに関するポジティブな信念の中で,特に反すうしないことで生じる不利益に関する信念を変容することにより,抑うつ的反すう傾向を効果的に低減できる可能性が示唆された。
著者
阿部 ひと美 今井 正司 根建 金男
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.1-9, 2011 (Released:2012-02-29)
参考文献数
23

役割固定法(fixed-role therapy: FRT; Kelly, 1955)は,構成主義的な理論のひとつであるパーソナル・コンストラクト理論(personal construct theory: PCT)に基づいた心理的介入技法である。本研究では,演じる役割を決定する手続きに実験参加者の意思決定を取り入れるという改良を加えたFRTを開発し,その社会不安に対する効果を実証的に検討することを目的とした。実験参加者は,社会不安傾向が高い大学生であり,改良型FRT群(11名),従来の標準的な手続きにのっとった標準型FRT群(10名),統制群(11名)に割り振られ,2週間にわたる実験に参加した。その結果,改良型FRT群,標準型FRT群では,統制群と比較して社会不安が有意に低減した。また,改良型FRT群では,標準型FRT群と比較して,社会不安が有意に低減する傾向が示された。さらに,PCTに基づいたアセスメント法であるレパートリー・グリッド法を用いた評定の結果,改良型FRT群では,標準型FRT群よりすぐれた効果が示された。したがって,改良型FRTはすぐれた社会不安低減効果を有することが示唆された。
著者
長谷川 晃 金築 優 根建 金男
出版者
Japan Society of Personality Psychology
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.21-34, 2009
被引用文献数
7

本研究は,本邦の大学生を対象に調査を実施し,抑うつ的反すうに関するポジティブな信念の確信度を測定する尺度を作成すると共に,どのような内容の信念が抑うつ的反すう傾向と関連しているのか検討することを目的とした。研究1では,"人生への悪影響の回避","問題解決能力の向上","感情制御の促進","現状の悪化の回避"の4下位尺度からなる「抑うつ的反すうに関するポジティブな信念尺度 (PBDRQ)」が作成された。研究2では,PBDRQの併存的妥当性と再検査信頼性が確認された。研究3では,"人生への悪影響の回避"と"現状の悪化の回避"という,反すうしないことで生じる不利益に関する信念が抑うつ的反すう傾向と関連していることが示された。結果より,抑うつ的反すうに関するポジティブな信念の中で,特に反すうしないことで生じる不利益に関する信念を変容することにより,抑うつ的反すう傾向を効果的に低減できる可能性が示唆された。
著者
牧 郁子 関口 由香 山田 幸恵 根建 金男
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.298-307, 2003-09

本研究は,学習性無力感(Seligman & Maier、1967)における随伴性認知に改めて着目し,新かな無気力感のメカニズムを検討することを目的とした。そこで,近年問題視されている中学生の無気力感の改善を鑑みて,以下の研究を行った。研究1では,随伴性認知の測定尺度「中学生版・主観的随伴経験尺度 (PECS)]の標準化を試みた。その結果,2因子(随伴経験・非随伴経験)からなる尺度が作成され,信頼性・妥当性が実証された。研究2では,まず不登校の中学生の無気力感と随伴性認知との関係を検討するために, PECSを不登群・登校群それぞれに実施したところ,差が認められなかった。このことから,登校生徒も不登校生徒と同程度に,随伴経験の欠如や非随伴経験の多さを有している可能性が示唆された。この結果を受けて,登校している中学生の無気力感と随伴性認知との関連を検討するため,担任教師の行動評定によって群分けされた無気力感傾向高群・低群生徒におけるPECSの得点を分析した。その結果,随伴経験因子において差が認められ,中学生の無気力感は非随伴経験の多さよりも随伴経験の少なさに起因する可能性があることが示された。