著者
桑山 由文
出版者
史学研究会 (京都大学文学部内)
雑誌
史林 (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.157-191, 1996-03

個人情報保護のため削除部分あり元首政期ローマ帝国において、本来極めてわずかな軍事権限しかもち得なかった近衛長官職は、徐々に国政における役割を増やしていき、三世紀の軍人皇帝時代には、国政運営の様々な面において指導的役割を果たすようになった。そればかりか、帝位を纂奪する近衛長官さえしばしば出現したのである。先行研究ではこのような近衛長官隆盛の基はセウェルス朝期に築かれたとし、特に法学者パピニアヌスらが連続して近衛長官職に就いたことが近衛長官職の内政的側面の発達の画期であると理解し、重視してきた。しかし、本稿における検討の結果、法学者近衛長官の意義は低いものであり、近衛長官職発展の画期は、従来軽視されてきた五賢帝期後期であったことが明らかになった。この時代に、近衛長官職は権限・地位が上昇して職務として確立したのである。騎士身分を中心とする三世紀半ばの政治体制へと元首政が移行していく基盤は、五賢帝期後期に成立したといえよう。
著者
桑山 由文
出版者
京都大学大学院文学研究科
雑誌
西洋古代史研究 = Acta academiae antiquitatis Kiotoensis = The Kyoto journal of ancient history (ISSN:13468405)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-17, 2004-02-25

後2世紀におけるローマ帝国の東方への拡大は, 従来, トラヤヌス帝以来の3度のパルティア戦争を中心に考察されてきた。本稿は, その狭間で, 防衛に徹し対外平和を維持したとして軽視されてきたハドリアヌス帝とアントニヌス・ピウス帝の治世に着目した。帝国領自体は拡大しなかったが, この時代にこそローマ帝国は東方諸国に対する統制を強めていき, 対外的権威が著しく増大したのである。とりわけ, 黒海からアルメニアにかけての地域への支配はアントニヌス・ピウス帝の下で確立し, マルクス・アウレリウス帝のパルティア戦争はこの延長線上で理解すべきものであった。さらに, この体制を基盤として, セプティミウス・セウェルス帝以後, ローマがメソポタミアへ直接支配を拡大していくこともまた可能となったのである。
著者
栗原 麻子 桑山 由文 井上 文則 小林 功 山内 暁子 佐野 光宣 中尾 恭三 南雲 泰輔
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

ギリシア、ローマそしてビザンツにおける宗教・政治儀礼と政治体制との関係性を共通のテーマとして、個別・具体的な事例研究をおこなった。政治史的な事実と宗教儀礼とを結びつける際の危うさ踏まえたうえで、法と儀礼の相互関連性、パン・ヘレニックな祭祀拡大におけるポリス社会の関与、ビザンツ皇帝の即位における都市民衆の儀礼的関与といった具体的な個別事例について、シンポジウムで公開し、比較・検討をおこなった。
著者
葛西 康徳 吉原 達也 西村 安博 松本 英実 朝治 啓三 小川 浩三 芹沢 悟 朝治 啓三 吉村 朋代 小川 浩三 芹沢 悟 林 智良 平野 敏彦 南川 高志 北村 麻子 桑山 由文 ゲアハルト チュール エヴァ ヤカブ シーマ アヴラモヴィッチ アデレ スカフーロ ヴォルフガング エルンスト トーマス リュフナー
出版者
大妻女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

イサイオスの法廷弁論11番及びデモステネスの法廷弁論43番、キケローの法廷弁論「カェキーナ弁護論」を素材として法廷演劇を行うことを構想し、その問題点を検討した。裁判過程全体の再構成を通して、「法」が証人や証拠と同様に位置づけられるという「事実としての」「物としての」法という仮説を提出した。裁判から古代法を見直すことが法の理解を根本から問うことになるという新しい方法論の可能性を示した。