著者
森山 至貴
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.103-122, 2011-06-30 (Released:2013-03-01)
参考文献数
15

社会的マイノリティをめぐる議論は,差別の考察と結びつくかたちで常にカテゴリー語を1つの重要な論点としてきた.しかし,当該カテゴリー成員にとっての呼称が果たす意味や意義については,考察されていない.そこで本稿では,ゲイ男性およびバイセクシュアル男性の自称としての「こっち」という表現を取り上げ,この論点について考察する.具体的にはゲイ男性またはバイセクシュアル男性13人に行ったインタビューの結果を分析する.ゲイ男性とバイセクシュアル男性の集団を指す「こっち」という「婉曲的」な呼び名が〈わたしたち〉を指すために用いられる理由はいくつかあるが,そこに「仲間意識」のニュアンスが込められている点が重要である.この点には「こっち」という言葉のもつトートロジカルな性質が関連しており,「仲間」であることは性的指向の共通性には回収されない.また,「仲間意識」を強く志向するこの語彙を用いることによって「仲間意識」を発生させることも可能である.ただし,それが投企の実践である以上,他の言葉よりは見込みがあるにせよ,「仲間」としての〈わたしたち〉が必ず立ち上がるとは限らない.反例もあるにせよ,曖昧さをもったトートロジカルな「こっち」という言葉は柔軟で繊細なかたちで〈わたしたち〉を立ち上げるための言葉として存在しており,このことは意味的な負荷の軽減がマイノリティ集団の言語実践にとって重要ではないか,との洞察を導く.
著者
長田 典子 北村 紗衣 湯澤 優美 斉藤 賢爾 門林 岳史 折田 明子 横山 太郎 木下 知威 森山 至貴 松田 英子 北村 紗衣
出版者
北村紗衣
巻号頁・発行日
2012-04-12

表象文化論学会第4回大会パネル「共感覚の地平 : 共感覚は『共有』できるか?」, 2009年7月5日, 京都造形大学, 京都
著者
森山 至貴
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.2-18, 2022 (Released:2023-06-30)
参考文献数
24

2021年現在,男性中心社会における男同士の内輪のルールや雰囲気などに批判的に言及するために,アカデミズムの内外において「ホモソーシャル」という概念が多く用いられている.しかしその用法は,しばしばこの概念の出自として言及されるE. K. セジウィックの用法とは異なるようにもみえる.このような状況をさしてホモソーシャル概念の「乱用」と言われたりもする. 本稿では,ホモソーシャルという語の「乱用」に思える多義性を,削ぎ落とすのではなく適切に制御することでこの語をよりよく使うことができると主張し,そのための指針を提示することをめざす.具体的には,セジウィックを中心に,他の論者によるものも含めたこの語の用法の検討を通じて,セジウィックのホモソーシャル概念がその多義性ゆえに説明力をもったこと,したがって,概念の厳密化はむしろ望ましくないことを示す.その上で,セジウィック以後のホモソーシャルの用法を検討することで,セジウィックのホモソーシャル概念を自身の記述の文脈に応じて再形成することが有用である,と主張する.
著者
森山 至貴
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.103-122, 2011-06-30

社会的マイノリティをめぐる議論は,差別の考察と結びつくかたちで常にカテゴリー語を1つの重要な論点としてきた.しかし,当該カテゴリー成員にとっての呼称が果たす意味や意義については,考察されていない.そこで本稿では,ゲイ男性およびバイセクシュアル男性の自称としての「こっち」という表現を取り上げ,この論点について考察する.具体的にはゲイ男性またはバイセクシュアル男性13人に行ったインタビューの結果を分析する.<br>ゲイ男性とバイセクシュアル男性の集団を指す「こっち」という「婉曲的」な呼び名が〈わたしたち〉を指すために用いられる理由はいくつかあるが,そこに「仲間意識」のニュアンスが込められている点が重要である.この点には「こっち」という言葉のもつトートロジカルな性質が関連しており,「仲間」であることは性的指向の共通性には回収されない.また,「仲間意識」を強く志向するこの語彙を用いることによって「仲間意識」を発生させることも可能である.ただし,それが投企の実践である以上,他の言葉よりは見込みがあるにせよ,「仲間」としての〈わたしたち〉が必ず立ち上がるとは限らない.<br>反例もあるにせよ,曖昧さをもったトートロジカルな「こっち」という言葉は柔軟で繊細なかたちで〈わたしたち〉を立ち上げるための言葉として存在しており,このことは意味的な負荷の軽減がマイノリティ集団の言語実践にとって重要ではないか,との洞察を導く.
著者
森山 至貴
出版者
関東社会学会
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.23, pp.188-199, 2010
被引用文献数
1

Gay identity and gay community are both central topics in gay studies and queer studies. However, the relationship between them remains unquestioned. This paper reveals how the relationship between gay identity and gay community has been shifted from the 90's to the present based on an analysis of discourses on coming-out.<br>Coming-out in the 90's included three important elements: aspiration for making a good relationship, high self-reflexivity and entry into the gay community. However, the latter two elements have disappeared and the meaning of coming-out has shifted. This shift demonstrates that the relationship between gay identity and gay community has become more and more irrelevant and independent.
著者
森山 至貴
出版者
The Kantoh Sociological Society
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.23, pp.188-199, 2010
被引用文献数
1

Gay identity and gay community are both central topics in gay studies and queer studies. However, the relationship between them remains unquestioned. This paper reveals how the relationship between gay identity and gay community has been shifted from the 90's to the present based on an analysis of discourses on coming-out.<br>Coming-out in the 90's included three important elements: aspiration for making a good relationship, high self-reflexivity and entry into the gay community. However, the latter two elements have disappeared and the meaning of coming-out has shifted. This shift demonstrates that the relationship between gay identity and gay community has become more and more irrelevant and independent.
著者
森山 至貴
出版者
The Kantoh Sociological Society
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.23, pp.188-199, 2010-08-30 (Released:2015-06-12)
参考文献数
31
被引用文献数
1 1

Gay identity and gay community are both central topics in gay studies and queer studies. However, the relationship between them remains unquestioned. This paper reveals how the relationship between gay identity and gay community has been shifted from the 90's to the present based on an analysis of discourses on coming-out.Coming-out in the 90's included three important elements: aspiration for making a good relationship, high self-reflexivity and entry into the gay community. However, the latter two elements have disappeared and the meaning of coming-out has shifted. This shift demonstrates that the relationship between gay identity and gay community has become more and more irrelevant and independent.
著者
森山 至貴
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本年度は、いくつかの自治体(都市部に集中している)で採用されている同性パートナーシップ制度と、ネオリベラリズムの結びつきに関して重点的に検討をおこなった。結果として、同性パートナーシップを推進する論調が抱える負の側面についての考察が主要な研究上の課題となった。その際、鍵概念として「新しいホモノーマティヴィティ」(Duggan)を考察の主要テーマとした。結果として、本年中の業績には、同性愛者のみにとってのイシューとしてだけではなく、他異性愛主義的な社会にとっての同性婚・同性パートナーシップという切り口によるものが大部分となった。 具体的には、「日本のゲイは「普通の存在」になったのか」(『ジェンダーとセクシュアリティで見る東アジア』勁草書房所収)という論文を執筆した。また、同性愛者のライフスタイルや社会運動を、同性愛者に限らないさまざまなセクシュアルマイノリティのライフスタイルや社会運動の文脈に置き直すために、クィア・スタディーズの視座に関する検討をおこなった。具体的には「「新しさ」の罠にはまらないために」『現代思想』2018年4月号所収)。本研究課題の方法論的側面に関する作業として、研究者自身の採用する方法であるインタビューについても、理論的検討をおこなった(「居場所がしんどい、現場が怖い」『現代思想』2017年11月号所収)。本年度は、研究のアウトリーチ活動として、各種媒体へのコラムの執筆、講演などもおこなった。これらの機会における聴衆の反応は、フィードバックとしてとても有意義なものであり、今後の研究に活かしていく計画である。
著者
長田 典子 北村 紗衣 湯澤 優美 斉藤 賢爾 門林 岳史 折田 明子 横山 太郎 木下 知威 森山 至貴 松田 英子
出版者
北村紗衣
巻号頁・発行日
2012-04-12

表象文化論学会第4回大会パネル「共感覚の地平 : 共感覚は『共有』できるか?」, 2009年7月5日, 京都造形大学, 京都