著者
森岡 正博
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.141-145, 1994-10-20 (Released:2017-04-27)

妥当な脳死判定基準をどのように決めればよいかについての生命倫理の議論は、ある前提に基づいて行なわれてきた。それは、脳幹に深刻な障害のある人間の、上位脳の機能を蘇生させたり維持しておくような決定的な医療技術は、存在しないという前提である。しかし将来は、「人工頭蓋」「人工血液ポンプ」「脳血管の人工血管化」などの人工臓器技術を、脳外科手術に導入することができるようになるだろう。これらのテクニックを使うことで、脳の一部は死んでいるのに、上位脳の一部は生き続けている状態を作り出せるかもしれない。このようなケースでは、現行の脳死判定基準は再考を余儀なくされるはずである。

1 0 0 0 感じない男

著者
森岡正博著
出版者
筑摩書房
巻号頁・発行日
2005

1 0 0 0 感じない男

著者
森岡正博著
出版者
筑摩書房
巻号頁・発行日
2013
著者
井上 章一 森岡 正博
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
no.2, pp.p97-106, 1990-03

「売春はなぜいけないんですか?」「身体を売るのはよくないんです。」「でも、我々は頭を売って生活していますよ。頭なら売っていいんですか?」「臓器移植って知ってますか。臓器移植は、無償の提供を原則として運営されます。臓器売買は、決して許されません。従って、売春も許されないのです。」「むちゃくちゃな話やなあ。」「いや、これは、現代社会における身体の交換と贈与に関する、重大な問題系なのです。売春と臓器移植というポレミックな問題を、こんなふうに結合させて論じたのは、我々が世界ではじめてでしょう。」「当たり前や。こんなアホな話、学問的に突き詰めるなんて、ふつうやりませんって。」
著者
森岡正博
出版者
藤原書店
雑誌
日本の女性史を問いなおす
巻号頁・発行日
1995
被引用文献数
1
著者
森岡 正博
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 : 国際日本文化研究センター紀要 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.125-137, 1990-03-10

人間の知的な営みの本質には、ここではない「もうひとつの世界」、この私ではない「もうひとりの私」を空想し、反芻する性向がある。スタニスワフ・レムとタルコフスキーの『ソラリス』、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』、村上春樹の『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の作品世界は、この「もうひとつの世界・もうひとりの私」へと向かう想像力によって、形成されている。そして、その想像力の根底にあるものは、「死」へのまなざしであり、「救済」の希求である。人が「もうひとつの」なにかへと超越しようとするのは、そこに死と救済がたちあらわれてくるからなのだ。
著者
藏田 伸雄 森岡 正博 村山 達也 久木田 水生 古田 徹也 鈴木 生郎 八重樫 徹 吉沢 文武 杉本 俊介
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究では、「人生の意味」に関するメタ倫理学的研究と「死」の形而上学的研究との関連を、「人生の意味」についての規範的議論を手掛かりにして検討する。さらに「人生の意味」という概念の規範性について批判的に検討する。またこの分野での主張に見られる、「人生の意味」に関する命題についても真理条件が成立するという前提について検討を進める。そして決定論的な世界観を採用することは、「人生の意味」の価値を減じるのかという問題について分析する。
著者
森岡 正博
出版者
科学基礎論学会
雑誌
科学基礎論研究 (ISSN:00227668)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.97-102, 1989-03-25 (Released:2010-11-24)
参考文献数
6

本論文では, 拙論「反事実問題と実現条件」(1)で導入した「反事実問題」という概念について, さらに厳密な分析を行なう。西洋哲学の現象主義は, 反事実条件法については緻密な議論を行なっているが, 以下に議論するような「反事実問題」という概念については, 満足な分析を行なっているとは言い難い。現在直接に経験されていないものとしての「反事実問題」の厳密な概念分析は, この点で, 哲学と自然科学方法論に対して地味ではあるが着実な寄与を成し得ると考える。さて, 反事実問題とは次のものであった。(2)(1) xの存在および状態が現在直接に経験されていない。(2) xの存在および状態は原理的に経験可能である。(3) xの存在および状態が経験されるための (暫定的な) 諸条件を十分条件の形で記述できる。この3つの要件を満たすとき, またそのときに限って, x」あるいは「xの存在や状態についての命題」は「反事実問題」である。たとえば現在日本に住んでいる私にとって,「南極の氷は, (1) 現在直接に経験されていない, (2) 原理的には経験可能である, (3) それを経験するためには「明日飛行機に乗って南極へ行く」という条件が満たされればよい,という三以上つの要件を満たているので, 反事実問題である。ところで,「南極の氷」という概念は, 「南極」という概念と「氷」という概念が結合してできたものとみなすことができる。このとき, 前者の「南極」という概念は, それ自体すでにひとつの反事実問題である。では後者の「氷」は何か。これもまた目の前に現象(3)としてあらわれていないような氷, すなわち反事実問題である。ということは,「南極の氷」という概念は,「南極」という反事実問題と「氷」という反事実問題が, 結合して成立した概念であることになる。このようにいくつかの概念が複合して成立する反事実問題の構造と意味について, 以下探求してゆくことにしたい。いま, この複合を仮に「結合」と呼んだが, 本論文ではそれを「同定」関係としてとらえたい。すなわち,「南極の氷」とは,「氷」が「南極」に同定されて成立した概念であるというふうに。というのも, 「結合」ということばを使うと, どうしても二つのことばが文章構成上単に並列しているという事態を想定してしまうのだが, 以下に詳しく述べる反事実問題の構造は, それだけにとどまらないさらに独特の関係性を構成しているからである。そこで,「結合」とは一線を画した概念をこの構造の描写のために導入し, その性質を調べることが必要となってくる。私たちはそのような概念として, 〈少なくとも何かの点において同一性を措定する〉という意味をもつところの,「同定する」という概念を採用し, この構造に適用することにした。さて, 複合的な反事実問題には, (1) 反事実問題を反事実問題の場所に同定することで成立するものと, (2) 反事実問題を現象に同定することで成立するもの, の二種類がある。この二種類を順番に検討してゆく。
著者
森岡 正博
出版者
科学基礎論学会
雑誌
科学基礎論研究 (ISSN:00227668)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.135-140, 1987-12-25 (Released:2009-07-23)
参考文献数
4
著者
森岡 正博
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.21-29, 2001
被引用文献数
1

代理母や精子バンクのような最新の生殖技術は, われわれの生命観や人間観家族観に大きなインパクトを与えるであろう。子どもをもちたいというわれわれの欲望は, 具体的な下位欲望へと分節化されてきた。そして, 近代家族規範はそれらの分節化された欲望によって揺るがされる。それら分節化した欲望とは, たとえば, (1) どんな方法でもいいから子どもがほしい, (2) 血のつながった子どもをもちたい, (3) 自分の身体で妊娠出産をしたい, (4) こんな子どもならほしいが, こんな子どもならほしくない, (5) だれかと同一の遺伝子をもった子どもがほしい, などである。これらのうちいくつかは近代家族にとって既知のものであるが, 他のいくつかはまったく新しいものである。借り卵, 借り子宮, クローンなどは近代家族規範を新しいものへと変容させるかもしれない。