著者
森脇 淳 中島 啓 望月 拓郎 立川 裕二 吉川 謙一 入谷 寛 尾高 悠志 向井 茂 並河 良典
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2016-05-31

本年度は数理物理学と代数幾何学との結びつきを重要視し,ミラー対称性とそれの周辺に関するシンポジュームを11月11日から11月15日にかけて京都大学にて国際シンポジュームを開催し,多くの最新の知見の交流を行うことに成功した.それ以外にも2班から構成する研究グループは活発に研究を進めており,以下のような成果をあげている.第一班:(中島)アファイン・グラスマン多様体上の構成可能層の性質を抽象化し、ring object として定式化した.特に,幾何学的佐武対応を通じて正規表現に対応する ring object を構成要素として,Moore-立川によって予想されていた新しいシンプレクティック多様体の構成を与えた.(並河)錐的シンプレクティック多様体の中で複素半単純リー環のべき零軌道閉包の特徴付けを行った.(望月)円周と複素直線上の特異モノポールについて,``一般化されたCherkis-Kapustin型(GCK型)''という条件を導入し,そのような特異モノポールと安定パラボリック差分加群との間の小林-Hitchin対応を確立した.(入谷)トーリック軌道体の標準類を保たない双有理変換の下での量子コホモロジーD加群の変化を研究した.(立川)様々な次元の超対称場の理論の数理の研究を続けるとともに,超対称場の理論とトポロジカルな場の理論の関連をしらべることをはじめた.第二班:(森脇)Paris7大学のHuayi Chen氏との共著の本の執筆を中心に研究を進め,非被約なスキームに対する半ノルム付き拡張定理の証明に成功した,(向井)2変数クレモナ群の研究を続け、射影平面内の6直線の分解群や上野・CampanaのCoble曲面の自己同型群を決定した.(吉川)高次元エンリケス多様体の不変量を解析的捩率を用いて構成し、それにより,ヴェイユ・ピーターソン計量のポテンシャル関数が得られた.
著者
上野 健爾 加藤 文元 川口 周 望月 新一 高崎 金久 桂 俊行 木村 弘信 山田 泰彦 江口 徹 森脇 淳 加藤 和也 吉田 敬之 三輪 哲二 丸山 正樹
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2002

上野のグループは複素単純リー代数をゲージ対称性に持つ共形場理論(WSWN モデル)とアーベル的共形場理論を使ってモジュラー函手を構成し、このモジュラー函手から構成される位相的場の理論の性質を解明した。また、共形場理論で登場するモジュラー変換を記述するS行列が種数0のデータから完全に決まることを示した。さらに共形場理論の応用として4点付き球面の写像類群のNielsen-Thurston分類を考察し、この分類が正整数n≧2を固定したときに量子SU(n)表現から決定できることを示した。加藤文元のグループはこれまで提案されている中では一番広い意味での剛幾何学の建設を推進し、モジュライ空間の幾何学のもつ数論的側面を代数幾何学的に極限まで推し進めた。望月新一は代数曲線とその基本群との関係およびabc予想の定式化を巡って、代数曲線のモジュライ理論に関する今までとは異なる圏論的なアプローチを行い、函数体や代数体の被覆や因子の概念の圏論的に一般化して捉えることができるFrobenioidsの理論の構築、エタール・テータ函数の理論の構築など、今後のモジュライ理論のとるべき新しい方向を示唆する重要な研究を行った。さらに、モジュライ空間の代数幾何学的・数論幾何学的研究で多くの新しい成果が得られた。無限可積分系の理論に関しては、高崎金久のグループは種々の可積分系を考察し、モジュライ空間がソリトン理論でも重要な役割をしていることを示した。また、パンルヴェ方程式とモジュライ空間との関係、無限次元代数と関係する統計モデルの考察、旗多様体の量子コホモロジーに関して種々の重要な成果が得られた。本研究によってモジュライ空間が当初の予想以上に深い構造を持ち、また数学の基礎そのものとも深く関わり、その理解のためには、さらに数学的な精緻な道具を作り出していく必要があることが明らかになった。また、そのための準備やヒントの多くが本研究を通して明らかになった。
著者
上野 健爾 杉江 徹 森脇 淳 河野 明 神保 道夫 丸山 正樹
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

代数多様体,複素多様体は近年理論物理学との密接な関係が見出され、従来の数学研究とは違った観点からの興味ある現象が見出され、数学そのものの再編成が行われつつある。本研究もこうした新しい観点から研究を行ったものである。以下得られた主要な成果を記す。1.Z上の共形場理論と複素コボルディズム環桂利行,清水勇二との共同研究において,自由フェルミオンの共形場理論が整数環Z上定義できること,ボゾン化によってZ上の無限変数の多項式環が生じることを示したが,本年度さらに共同研究によって,理論は複素コボルディズム理論と密接な関係を持つことが明らかになった。特に,複素コボルディズム環でチャ-ン類を取る操作とシュ-ア多項式の関係を明らかにし,複素多様体の特性類とKP方程式系のτ函数との関係も明らかにした。2.非ア-ベル的共形場理論の算術化土屋昭博,山田泰彦との共同研究によって得られた単純リ-環をゲ-ジ対称性に持つ共形場理論が,有理数体上定義され代数曲線のモジュライ空間上の数論的代数幾何学として展開できることを示した。さらに種数Oの代数曲線上の共形場理論に限ると,さらに理論は整数環Z上定義されることを示した。3.ベクトル束および連接層のモジュライ空間の研究丸山正樹は射影的代数多様体上の放物的安定層の概念を導入しモジュライ空間を構成することに成功した。また森脇淳は準安定偏曲ファイバ-空間の概念を導入し,ボゴモロフ・ギ-ゼカ-不等式を一般化することに成功した。これはモジュライ空間の研究に応用が見込まれている。