著者
船坂 徳子 吉岡 基 植田 啓一 柳澤 牧央 宮原 弘和 内田 詮三
出版者
The Mammal Society of Japan
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.1-11, 2010-06-30
被引用文献数
1

ミナミバンドウイルカ(ミナミハンドウイルカ)<i>Tursiops aduncus</i>の成熟オス4個体を対象として,日長が大きく異なる冬至,春分,夏至に3時間間隔で24時間の連続採血を行い,血液学的検査7項目(冬至,春分,夏至)および血液生化学的検査17項目(冬至,夏至)の日内変動を調べた.ヘマトクリット(HT),尿素窒素(BUN),尿酸(UA),中性脂肪(TG),ヘモグロビン濃度(HGB),赤血球数(RBC),白血球数(WBC),総コレステロール(T-CHO),アルカリフォスファターゼ(ALP),カリウム(K)に日内リズムが認められ,このうちHT,BUN,UA,TGのリズムは特に明瞭であり(<i>P</i><0.01),HTは18時に低値を示し,BUN,UA,TGはいずれも夕方から夜間にかけて高値を示した.これらの日内リズムの頂点平均時刻は,いずれの季節においても日長とは無関係にほぼ同時刻であったことから,そのリズムは内因性の概日時計に制御されている可能性が示唆された.他の項目の日内変動は,不規則なパルス状(好酸球分画,Eos;アルブミン,Alb;グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ,GOT;グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ,GPT;総ビリルビン,T-Bil:クレアチンフォスフォキナーゼ,CPK;ナトリウム,Na;クロール,Cl),経時的上昇あるいは下降(クレアチニン,Cre;血糖,Glu),ほぼ不変(好中球分画,Neut;リンパ球分画,Lym;総タンパク,TP;乳酸脱水素酵素,LDH)に区別できた.<br>
著者
鐘ケ江 光 Igor Massahiro de SOUZA SUGUIURA 佐々木 恭子 大塚 美加 濱野 剛久 田代 連太郎 Mario Augusto ONO 和田 新平 Eiko NAKAGAWA ITANO Md. Amzad HOSSAIN 佐野 文子 植田 啓一
出版者
Japanese Society of Zoo and Wildlife Medicine
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.107-114, 2023-09-01 (Released:2023-11-01)
参考文献数
24
被引用文献数
1

Paracoccidioides cetiiを原因菌とするクジラ型パラコクシジオイデス症 (英名:paracoccidioidomycosis ceti) は,小型鯨類を宿主とし,皮膚の慢性肉芽腫性病巣を特徴とする人獣共通真菌症である。今回,臨床症状を示すものの従来法では確定診断に至らなかったバンドウイルカ(Tursiops truncatus) とオキゴンドウ (Pseudorca crassidens) の皮膚病変生検組織由来DNAより,原因菌の特異的遺伝子であるgp43をPCRとLAMPの組み合わせにより検出し,確定診断を得た。なお,オキゴンドウ症例は世界初の確定診断例である。
著者
加藤 信吾 関 亙 横井 隆 斉藤 真二 植田 啓一
出版者
一般社団法人 日本ゴム協会
雑誌
日本ゴム協会誌 (ISSN:0029022X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.9, pp.336-339, 2005 (Released:2008-05-19)
参考文献数
1
被引用文献数
2 1

Artificial tail flukes were developed for a bottlenose dolphin that lost most part of the tail flukes due to a serious disease in October 2002. The dolphin named FUJI has been kept in Okinawa Churaumi Aquarium since 1975. A joint project was started to develop artificial flukes in 2003 to recover normal revel swimming ability. At the process of the development, finite element method analysis and towing test in water tank were carried out. The artificial flukes were composed of silicone rubber and inserted FRP reinforcement. FUJI recovered swimming speed and even jumping ability by the artificial tail flukes as she had before.
著者
皆川 智子 植田 啓一 佐野 文子 上迫 春香 岩永 海空也 小峰 壮史 和田 新平
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.45-50, 2018
被引用文献数
4

<p> 水族館飼育下のカマイルカの体表にクジラ型パラコクシジオイデス症を疑う多発性の肉芽腫性結節患部を観察した。生検を実施して各種検査を行ったところ,渡銀染色下にて多極性出芽を示した球形の酵母様細胞を認めた以外は何らかの感染症を示唆する所見は得られなかったが,抗真菌剤を用いた治療により患部が緩解しているため,本症例の病態に何らかの真菌が関与している可能性が考えられた。</p>
著者
高橋 英雄 植田 啓一 宮原 弘和 渡辺 紗綾 内田 詮三 鎗田 響子 村田 佳輝 板野 栄子 高山 明子 西田 和紀 猪股 智夫 矢口 貴志 佐野 文子 亀井 克彦
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.34, 2007

水族館飼育下イルカのnon-<I>albicans Candida</I> spp.保菌が健康管理および観客への安全上問題となっているので、飼育されているイルカ20頭の呼気と飼育プール水の病原性酵母叢を昨年8月および本年2月に調査した。さらに飼育関係者24名の口腔内と観客席空中浮遊菌の病原性酵母叢の調査を本年2月に行った。保菌イルカは14頭 (70%)、分離株は<I>C. albicans</I>、<I>C. tropicalis</I>、<I>C. glabrata</I>で、1頭を除き2回の調査とも保有菌種は同一で、大多数の株はアゾール薬に耐性傾向を示した。また、4個体は1呼気あたり数十から数百の病原性酵母を噴出していた。飼育プール水の検査では8箇所中5ヵ所から<I>C. albicans</I>および<I>Candida</I> spp. など、飼育関係者の口腔からは24名中5名から<I>C. albicans</I>および<I>Candida</I> spp. などが分離され、一部にアゾール薬に耐性傾向を示す株も含まれていた。観客席空中からは<I>Candida</I> spp.など数株の酵母が分離された。しかし、病原性酵母を噴出しているイルカの呼気が観客に直接かかるような状況はなく、実際に観客席空中からイルカとの共通菌種が分離されなかったため、イルカショーで発生するエアロゾルによる観客への影響は少ないと思われる。一方、イルカ、飼育環境、飼育関係者との間では<I>C. albicans</I>が共通して分離されていたので、現在,遺伝子パターンの解析を進めている。また、イルカの真菌保有の有無は健康状態の指標となりうると思われた。