著者
大市 三鈴 笠原 由紀 松尾 貴子 楳田 高士 栗林 恒一
出版者
関西鍼灸大学
雑誌
関西鍼灸大学紀要 (ISSN:13495739)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.35-40, 2004

鍼灸治療において、抜鍼後の鍼体に付着する可能性のある肝炎ウイルスが、綿花で拭うという操作によりどの程度除去されうるのか、HBVを含む血清を鍼体に塗布する実験を行いその結果について検討した。HBe抗原陽性者の血清を鍼体に塗布したものと、それを80%エタノール綿花および乾綿でそれぞれ一回ずつ拭ったものからDNAの抽出を行い、HBV遺伝子に対するprimerを用いてPCR反応を行いウイルスの検出を行って3者を比較した。同様の実験を二度行ったが、どちらの実験においてもエタノール綿花で拭ったものと乾綿で拭ったもののいずれからもHBVが検出された。今回の結果からHBVが付着した鍼体からは綿花で一回拭っただけではウイルスが除去されない可能性が明らかとなった。
著者
井上 悦子 七堂 利幸 北小路 博司 鍋田 智之 角谷 英治 楳田 高士 會澤 重勝 西田 篤 高橋 則人 越智 秀樹 丹澤 章八 川喜田 健司
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.635-645, 2003-11-01 (Released:2011-03-18)

風邪症状に対する鍼灸の予防、治療効果に関する多施設ランダム化比較試験 (RCT) の経緯ならびに現状について紹介した。パイロット試験では2週間の鍼治療が明瞭な効果を示したのに対し、多施設RCTによる同様な咽頭部への鍼刺激、さらには普遍的な間接灸刺激 (2週間) の効果は、いずれも300名を超す被験者を集めながら顕著なものとはならなかった。そこで、治療期間を最低8週間として、各施設においてパイロットRCTを実施した結果、より有効性が高まる傾向が認められた。これまでの臨床試験の経験や反省をふまえた議論のなかで、被験者の選択や対照群の設定、実験デザイン等の再検討の必要性が確認された。
著者
山下 仁 形井 秀一 石崎 直人 楳田 高士 宮本 利和 江川 雅人
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.728-743, 2004-11-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
53

鍼灸臨床で行われている安全性に関する知識や手順には、科学的根拠に乏しい逸話や思い込みも含まれている。鍼灸の安全性を向上させるためには、エビデンスがどれくらい蓄積しているかを整理し、吟味し、活用することが重要である。全日本鍼灸学会研究部安全性委員会では、現在までに報告されている鍼灸の安全管理に関連する研究成果をレビューする作業を開始した。2004年度に取り上げたテーマは次のとおりである : 1. 鍼灸学校における安全性教育と損害賠償の現状2. 手洗いと手指消毒法3. 施術野の消毒法4. 刺鍼から抜鍼までの操作5. 安全な刺鍼深度6. 施術環境の衛生この作業で明らかになった知識や疑問が、学校教育、日常臨床、マニュアル作成、および研究に反映されることを望んでいる。
著者
山下 仁 形井 秀一 江川 雅人 石崎 直人 宮本 俊和 楳田 高士 今井 賢治
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.2-15, 2007-02-01 (Released:2008-05-23)
参考文献数
31

より安全な鍼灸臨床を目指すためのアイデアを、ワークショップ参加者とともに考えることにした。当委員会が今回提示したテーマと各委員により提供された情報は、次のとおりである :1. 鍼の抜き忘れの防止 1) 防止法の工夫 2) インシデント報告システムの効果2. より清潔な押し手 1) 指サック・グローブ使用の長所と短所 2) 鍼体に触れない刺鍼法の試みの変遷 3) クリーンニードル開発の現状討論時間は十分でなかったものの、参加者からいくつかの貴重なアイデアをいただいた。また、新しく開発されたクリーンニードルに対する反響が大きかった。刺鍼に関するこのような新しい器具や手法が従来の伝統的な鍼灸臨床に浸透してゆく際の様々な影響についても討論してゆく必要があると思われる。今後さらに各関連施設や鍼灸院あるいは業団体など各方面からのアイデアや意見を集約していきたい。
著者
山下 仁 形井 秀一 石崎 直人 江川 雅人 楳田 高士 宮本 俊和 小松 秀人
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.57-67, 2006-02-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
34

2004年度に引き続き、鍼の安全管理に関連する情報のレビューを行った。2005年度に取り上げたテーマは次のとおりである : 1. 刺鍼時の安全性2. 鍼の品質と強度3. 用具の滅菌と保管4. 周辺器具の衛生と扱い方5. 行政側から発行された指導要領・通達6. 衛生管理面に関する届出基準と鍼廃棄システムこの作業で示された安全性に関する情報が、今後の学校教育、日常臨床、マニュアル作成、および研究に反映されることが望ましい。
著者
楳田 高士 栗林 恒一 笠原 由紀 若山 育郎
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.137-140, 2002-05-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
10

B型肝炎キャリアの被験者に鍼刺入を行い、抜鍼後の鍼体にB型肝炎ウイルス (HBV) が付着しているのかをPolymerase Chain Reaction (PCR) 法を用いて検討した。その結果、鍼体からHBVのDNAを検出した。治療後の鍼の取り扱いに注意が必要である。
著者
山下 仁 江川 雅人 楳田 高士 宮本 俊和 石崎 直人 形井 秀一
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.55-64, 2004-02-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
72
被引用文献数
1 3

鍼灸に関連して発生したとされる有害事象の情報を更新した。1998年から2002年にかけて発表された症例報告について、医中誌WebとPubMedを用いて検索した。鍼施術に関連する有害事象36症例 (感染』3例、皮膚疾患11例、臓器損傷または異物6例、神経傷害5例ほか) と灸施術に関連する有害事象9症例 (皮膚疾患6例ほか) が収集された。ほとんどの症例は現代西洋医学系学術雑誌に掲載されており、開業鍼灸師の目の届かないところで発表されている。したがって、安全性に関する情報を収集して鍼灸師にフィードバックする作業を本委員会が継続的に行う必要があると考えている。2003年6月6日に開催された本委員会のワークショップにおいては、感染制御の観点から見て適切な刺鍼法のあり方が議論の中心となった。適正な刺鍼マニュアルが作成されるためには、安全な刺鍼に関するエビデンスを集めることがさらに必要である
著者
楳田 高士 石部 裕一 石部 裕一 楳田 高士
出版者
近畿大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

1.イヌの左下葉肺分離換気標本を用いて、血管拡張薬ニトログリセリン(TNG)、プロスタサイクリン(PGI_2)の低酸素性肺血管収縮反応(HPV)に及ぼす影響を検討した。その結果TNGは肺血管を非特異的に拡張し換気血流不均衡を増強し、一方PGI_2は用量依存性にHPVを抑制しいずれも低酸素血症の原因になることを明らかにした。2.より正確に肺血管ト-ヌスを評価するために、in vivoでイヌの左下葉肺血管の圧・流量曲線を検出可能な標本を考察し、その標本を用いて、吸入麻酔薬イソフルレンとハロセンのHPVへの作用を検討した。その結果両麻酔薬とも低酸素領域に直接吸入すると用量依存性にHPVを抑制するが、1ー2MACの臨床使用濃度では従来指摘されていたようなHPV抑制は見られないことを報告した。3.同じ標本を用いてプロスタグランジンE_1(PGE_1)のHPVへの作用を検討した結果、イヌの体血圧を30%低下させる量のPGE_1はHPVを抑制し、低酸素血症の原因になることを示した。4.ARDSなどの傷害肺においてHPV反応がどのように修飾されているかについて、同じ標本で検討した。イヌに微量のエンドトキシンを投与すると、HPVは完全に抑制され、この時プロスタサイクリンの代謝産物6ーketoーPGF_1αの減少を伴った。このHPV抑制はあらかじめシクロオキシゲナ-ゼ阻害薬イブプロフェンで前処置しておくと予防され、6ーketoーPGF_1αも減少しなかった。この結果からエンドトキシンによるHPV抑制には肺血管内皮細胞からプロスタサイクリンの遊離あるいは産生の増加が関与していることが明らかになった。
著者
Kubo Erika B. 楳田 高士 吉田 宗平 森 一功
出版者
関西鍼灸大学
雑誌
関西鍼灸大学紀要 (ISSN:09129545)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.66-71, 2006-05-26

患者は2003年2月に左頚部神経鞘腫切除術を受けた28歳の女性で、術後、ホルネル症候群が出現、頚部の突っ張り、咀嚼時痛がひどくなり、肩凝りもひどくなった。さらに、不眠、月経困難とそれに伴う腰痛なども愁訴として認められた。2004年1月末に鍼治療を開始し、1か月にほぼ1回の割合で低周波鍼通電療法(3Hz、15分間)と皮内鍼貼付を行った。全身調整経穴を主としたが、鍼通電には主にTH-17(翳風)-LIと18(扶突)、ex-HN5(太陽)とST-7(下関)を頚部の突っ張りと咀嚼時痛の軽減のために用いた。数回の治療で、頚部の突っ張り、月経困難、不眠症、および腰痛はほとんど消失し、眼瞼下垂の症状も顕著に改善した。頸肩部の突っ張りや凝り、顔面部の咀嚼時痛の消失は低周波鍼通電療法と皮内鍼貼付による胸鎖乳突筋・斜角筋の弛緩と鎮痛作用と手術痕周囲の循環の改善もよるものと思われた。他のメカニズムとして鍼刺激により、多くのケミカルメデイエーターの放出が促進されたためと考えられた。この眼瞼下垂は頸部交感神経の傷害により起こったホルネル症候群であり、鍼治療による眼瞼の開大は鍼刺激(太陽穴)によりこの交感神経を刺激することによりおこる反射を改善させたものと考えられた。