著者
榧根 勇
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.102, no.7, pp.793-805, 1993-12-25 (Released:2009-11-12)
参考文献数
33

A Fuudo of Bali, Indonesia is discussed through aspects of water and agriculture in Bali. The concept of Fuudo used here, which may be translated into Western words as clima, oikos, or milieu, is the same as that defined by Teturo Watsuji or Tokuji Chiba. Discussed in details are the difference in Hindu gods between India and Bali, the concept of direction in Bali, and the triad principle in Bali. Importance of the triad principle which is fundamentally different from the dualism in the Western world is stressed.
著者
榧根 勇
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.143-158, 1963-03-01 (Released:2008-12-24)
参考文献数
18

関東地方の区内観測所約170地点の値をもとにして作成したP1957年12月から1958年11月までの毎日の日最高および日最低気温分布図を比較検討した結果,平均分布図だけからでは知ることのできない特徴が判つたので,今回はすでに1961年に報告し却暖候期の日最高気温分布以外の場合について報告する.最低気温分布については冬の季節風吹走時・寒冷前線停滞時・春秋の快晴静穏時・夏の晴天時の4つの場合について,代表的な日の分布図の解析結果とともに各型の平均状態を図的に表現し,地形や水陸配置との関係を考察して該地域の気温分布の中気候的特徴を明らかにした. 寒候期の最高気温分布については,全般的に該地域が高温の場合に,東京湾沿岸に局地的低温が現われること,それが東京湾特有の海風(湾風)の影響であること,また,曇天で日中気温が上昇しない時は東京湾の影響は現われず,外洋沿岸に高温域が生じることなどを明らかにした.後者については平均状態の図を示し,最低気温分布と比較できるようにした。
著者
榧根 勇
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.66, no.12, pp.735-750, 1993
被引用文献数
3 1

文部省科学研究費補助金の分科細目の大幅変更を機に,特定地域の自然と人間との関係を研究する地理学の存在理由について,自然地理学の側から考えてみた. 17世紀に西洋で始まった近代科学は,差異の捨象と法則性の追求を主目的とし,個別事例の説明は法則による演繹で可能としてきた.かって自然地理学を構成していた地形学・気候学・水文学などは,このような近代科学の枠組みのなかで,それぞれ独立したディシプリンとしての基礎をかためた.近代科学の目的は,均質で比較的単純な系については達成されたが,人間と直接かかわる自然,すなわち不均質で時間とともに進化する複雑な系については未だしの感がある.自然地理学の存在理由は,たぶん自然の一部である人間がよりよい生を送るために必要な知の提供にある.その目的は地域情報を総合して自然史を編み上げることで達成できると思う.一例として,ヒマラヤ・チベットの隆起が第四紀後期の氷期一間氷期出現の原因になったというHT効果仮説について説明した.現在地球上に展開している人文現象の地域的差異の理解にとっても,地域の自然史は不可欠の情報である.
著者
榧根 勇 嶋田 純 田中 正
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

1)東京都内の湧水を分類し、崖線タイプの代表として深大寺湧水を、谷地形タイプの代表として善福寺池を選定し、湧出機構の解析を行い、以下の結論を得た。(1)崖線タイプの湧水は、武蔵野礫層中をほぼ水平に流下する地下水が、礫層の露頭面で湧出するものである。(2)崖線タイプの湧水の集水面積は10^5〜10^6m^2のオーダーで、その涵養域は水流側200〜2000mの範囲である。(3)谷地形タイプの湧水は、武蔵野台地全域にわたる地下水位の低下によって枯渇している。(4)谷地形タイプの湧水の復活には、武蔵野礫層中の地下水位を約2m上昇させることが必要である。2)東京都の台地部及び平地部を対象に、既存のボーリング柱状図及び東京都地盤沈下観測井水位資料を整理し、1970、1980、1987の3年について南北6断面、東西6断面、深さ600mまでの鉛直二次元地下水ポテンシャル分布図を作成し、地下水の開発と揚水規制に対して、東京都の帯水層・加圧層システムがどのように応答したかを明らかにした。3)ボーリング孔内の地下水ポテンシャルを測定するためのダブルパッカー式地下水圧測定装置を試作し、1992年5月及び10月に100m深の花崗岩中のボーリング孔を利用した性能確認試験を実施した。25mから95mの間の孔内6ヶ所の約5m区間において、各々20〜40分間の測定時間にて、平衡地下水圧に到達することが確認できた。また、フィールド用データロガーを利用しているため、1日間程度は無電源で使用できる。更に、上下パッカーの膨張に伴う水圧上昇とその後の区間地下水圧と平衡状態に至る迄の圧力の時間変化データを利用して、非定常単一パルス透水試験の解析を適応した結果、地下水圧測定区間岩盤の透水係数(10^<-6>〜10^<-8>cm/sec)の測定も可能であることが明らかになった。