著者
樋口 耕一
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.334-350, 2017 (Released:2018-12-31)
参考文献数
29
被引用文献数
13 16

筆者はテキスト型 (文章型) データの分析方法「計量テキスト分析」を提案し, その方法を実現するためのフリーソフトウェア「KH Coder」を開発・公開してきた. 現在ではKH Coderを利用した応用研究が徐々に蓄積されつつあるように見受けられる. したがって現在は, ただ応用研究を増やすのではなく, KH Coderがいっそう上手く利用され, 優れた応用研究が生み出されることを企図しての努力が重要な段階にあると考えられる. そこで本稿では, 現在の応用研究を概観的に整理することを通じて, どのようにKH Coderを利用すればデータから社会学的意義のある発見を導きやすいのかを探索する.この目的のために本稿では第1に, 計量テキスト分析およびKH Coder提案のねらいについて簡潔に振り返る. 第2に, KH Coderを利用した応用研究について概観的な整理を試みる. ここではなるべく優れた応用研究を取り上げて, 方法やソフトウェアをどのように利用しているかを記述する. また, なるべく多様なデータを分析対象とした研究を取り上げることで, 応用研究を概観することを目指す. 第3に以上のような整理をもとに, 計量テキスト分析やKH Coderを上手く利用するための方策や, 今後の展開について検討する.
著者
樋口 耕一
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.18-24, 2019-12-01 (Released:2020-06-01)
被引用文献数
5

本稿では,計量テキスト分析における一連の手順の中で,対応分析という統計手法を利用する利点について述べる。さらに,対応分析における同値布置の仕組みと読み取り方について,理解しやすい平易な解説を提示する。これを通じて,対応分析がより有効かつ適切に利用されるようになれば,計量テキスト分析を用いた研究の水準向上に寄与すると期待される。
著者
樋口 耕一
出版者
日本行動計量学会
雑誌
行動計量学 (ISSN:03855481)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.1-12, 2011 (Released:2011-07-04)
参考文献数
28
被引用文献数
9 7

This paper investigates whether there is significant association between the content of newspaper articles and social consciousness trends in contemporary Japan, where it is already known that the influence of television and the Internet is pervasive. We examine whether it is possible to explore social consciousness by analyzing the content of newspapers. The data obtained are responses to open-ended questions in a nationwide survey —“JIS2004”— and articles in three newspapers:“Asahi,” “Yomiuri,” and “Mainichi.” The quantitative content analysis indicated a significant association between newspaper content and responses to the open-ended questions. However, this association could not be found in certain abstract themes. Thus, we argue that a content analysis of newspapers can be utilized as a research method for exploring social consciousness, although the focus should remain on concrete themes. The author also presents hypotheses about causal relationships between newspaper content and social consciousness.
著者
樋口 耕一
出版者
計量国語学会
雑誌
計量国語学 (ISSN:04534611)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.36-45, 2017-06-20 (Released:2018-08-01)
参考文献数
2
被引用文献数
6

本稿では筆者が開発・公開しているテキストデータの計量分析用ソフトウェア「KH Coder」について,言語研究の分野で活用するための手順を紹介する.第一に,KH Coderの主な機能と開発の狙いを紹介することで,このソフトウェアの全体像を示す.KH Coderはもともと言語研究の分野ではなく,社会学・社会調査分野という異なる背景の中で開発されているので,活用のためには全体像を把握しておくことが有用であろう.第二に,KH Coderを言語研究の分野で用いるためのカスタマイズについて紹介する.たとえば,そのままの設定では,KH Coderは助詞・助動詞のような機能語を無視して内容語だけを分析に用いる.この設定を変更して機能語を分析の対象にする方法や,ソフトウェアが自動的に行なった形態素解析の結果を人手で修正する方法などを紹介する.
著者
樋口 耕一
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.334-350, 2017
被引用文献数
16

<p>筆者はテキスト型 (文章型) データの分析方法「計量テキスト分析」を提案し, その方法を実現するためのフリーソフトウェア「KH Coder」を開発・公開してきた. 現在ではKH Coderを利用した応用研究が徐々に蓄積されつつあるように見受けられる. したがって現在は, ただ応用研究を増やすのではなく, KH Coderがいっそう上手く利用され, 優れた応用研究が生み出されることを企図しての努力が重要な段階にあると考えられる. そこで本稿では, 現在の応用研究を概観的に整理することを通じて, どのようにKH Coderを利用すればデータから社会学的意義のある発見を導きやすいのかを探索する.</p><p>この目的のために本稿では第1に, 計量テキスト分析およびKH Coder提案のねらいについて簡潔に振り返る. 第2に, KH Coderを利用した応用研究について概観的な整理を試みる. ここではなるべく優れた応用研究を取り上げて, 方法やソフトウェアをどのように利用しているかを記述する. また, なるべく多様なデータを分析対象とした研究を取り上げることで, 応用研究を概観することを目指す. 第3に以上のような整理をもとに, 計量テキスト分析やKH Coderを上手く利用するための方策や, 今後の展開について検討する.</p>
著者
樋口 耕一
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.101-115, 2004-03-31 (Released:2008-12-22)
参考文献数
26
被引用文献数
36

新聞記事や質問紙調査における自由回答など、社会調査において計量的な分析の対象となるテキスト型データには、様々なものが挙げられる。これらのテキスト型データを計量的に分析する際、従来はCorrelationalアプローチかDictionary-basedアプローチのうち、いずれかが用いられることが多かった。前者は多変量解析の応用、例えば、クラスター分析を用いて頻繁に同じ文書の中にあらわれる言葉のグループを見つけだすといった方法で、データ中の主題を探索するアプローチである。それに対して後者のアプローチでは、分析者の指定した基準にそって言葉や文書が分類され、計量的な分析が行われる。本稿ではこれらのアプローチを検討し、それぞれに一長一短を持つこれら2つを、互いに補い合う形で統合したアプローチを提案する。そして、その実現に必要なシステムを作製・公開するとともに、本アプローチ・システムを用いて自由回答データの分析を行った例を示す。その上で、従来のアプローチに対する本アプローチの有効性について若干の検討を加える。
著者
樋口 耕一
出版者
社会学研究会
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.39-55,196, 2013-02-28 (Released:2015-05-13)
参考文献数
26

This paper investigates the effect of the wealth factor in Japan on the adoption of ICT innovations such as the World Wide Web. Diffusion studies suggest that wealth and attitudes are both important determinants of interactive communication technology adoption. However, little is known about which has a stronger effect, and at what point wealth shows a relatively strong effect in the diffusion process. To answer these questions, the author conducted an exploratory analysis of data from nationwide surveys (JIS2001 and JIS2004). The results indicate the following: (i) Education rather than wealth has a remarkably strong effect on adoption likelihood in the early stage of diffusion. Highly educated people have an understanding of information manipulation on the WWW, and tend to evaluate such information-related behavior positively. It is clear that education encourages individuals to adopt the WWW by engendering a positive attitude toward sit. (ii) As diffusion proceeds, the effect of wealth becomes relatively stronger, although it is never as strong as the education effect in the early stage. (iii) The more people that adopt the WWW, the wider the difference in usage between light and heavy users. Females tend to be light users, and have both positive evaluations of the convenience of the WWW and negative thoughts such as fear of crimes or other trouble. On the other hand, males, who typically have an enthusiastic attitude towards technologies, tend to be heavy users. The author concludes that wealth has a very limited effect on adoption throughout the diffusion process of ICT. Differences in attitude have a stronger effect on both the initial adoption and the amount of usage.
著者
樋口 耕一
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.161-176, 2004-09-30 (Released:2008-12-22)
参考文献数
27
被引用文献数
4

社会調査において内容分析(content analysis)という方法が用いられるようになった当初から、新聞記事は重要な分析対象として取り上げられ、様々な分析が行われてきた。コンピュータの発達やデータベースの整備が進む現在、この新聞記事の分析にあたってコンピュータを用いることが容易になりつつある。それに加えて、新聞記事のようなテキスト型データを、コンピュータを用いて計量的に分析する方法も提案されている。そこで本稿では、1991年以降の『毎日新聞』から「サラリーマン」に言及した記事を取り出し、コンピュータを利用した分析を試験的に行うことで、以下の2点についての確認・検討を行った。第一に、コンピュータを用いても、伝統的な手作業による分析と同じ結果が得られるかどうかを確認することを試みた。第二に、テキスト型データ一般を分析するための半ば汎用的な方法として提案されている方法を、各種のテキスト型データの中でもとりわけ新聞記事の分析に用いた場合、いかなる長所短所が生じるのかを検討した。
著者
樋口 耕一
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.101-115, 2004
被引用文献数
9

新聞記事や質問紙調査における自由回答など、社会調査において計量的な分析の対象となるテキスト型データには、様々なものが挙げられる。これらのテキスト型データを計量的に分析する際、従来はCorrelationalアプローチかDictionary-basedアプローチのうち、いずれかが用いられることが多かった。前者は多変量解析の応用、例えば、クラスター分析を用いて頻繁に同じ文書の中にあらわれる言葉のグループを見つけだすといった方法で、データ中の主題を探索するアプローチである。それに対して後者のアプローチでは、分析者の指定した基準にそって言葉や文書が分類され、計量的な分析が行われる。本稿ではこれらのアプローチを検討し、それぞれに一長一短を持つこれら2つを、互いに補い合う形で統合したアプローチを提案する。そして、その実現に必要なシステムを作製・公開するとともに、本アプローチ・システムを用いて自由回答データの分析を行った例を示す。その上で、従来のアプローチに対する本アプローチの有効性について若干の検討を加える。
著者
樋口 耕一 Higuchi Koichi ヒグチ コウイチ
出版者
大阪大学人間科学部社会学・人間学・人類学研究室
雑誌
年報人間科学 (ISSN:02865149)
巻号頁・発行日
no.24, pp.193-214, 2003

社会調査によって得られる質的データには新聞・雑誌記事、質問紙調査における自由記述、インタビュー・データなど様々なものがある。コンピュータ・コーディングとは、それらの質的データを計量的に、また多くの場合は探索的に分析するための手法である。本稿の目的は、独自に開発されたソフトウェア「KH CODER」を用いてコンピュータ・コーディングを実践するための手順を詳細に記述し、これを通じて方法論とプログラムを紹介・提案することにある。本稿の記述は、各自のパソコン上で手順を追うことができるチュートリアルとなっており、題材として用いるデータは夏目漱石「こころ」である。チュートリアルの中では、作品全体を通して頻繁に出現している言葉や、上・中・下それぞれの部で特徴的な言葉から、作品の構成・特徴を探る。また、人の死やその原因となりうる事柄を表す言葉が、作品全体のどの部分で頻出しているのかという集計を行うことで、人の死が作品中でいかに描かれているかを探索する。この結果として、「先生」という登場人物の自殺が突然・不自然になされているという指摘は、必ずしも当てはまらないことが再確認された。
著者
樋口 耕一
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.161-176, 2004-09-30
被引用文献数
3

社会調査において内容分析(content analysis)という方法が用いられるようになった当初から、新聞記事は重要な分析対象として取り上げられ、様々な分析が行われてきた。コンピュータの発達やデータベースの整備が進む現在、この新聞記事の分析にあたってコンピュータを用いることが容易になりつつある。それに加えて、新聞記事のようなテキスト型データを、コンピュータを用いて計量的に分析する方法も提案されている。そこで本稿では、1991年以降の『毎日新聞』から「サラリーマン」に言及した記事を取り出し、コンピュータを利用した分析を試験的に行うことで、以下の2点についての確認・検討を行った。第一に、コンピュータを用いても、伝統的な手作業による分析と同じ結果が得られるかどうかを確認することを試みた。第二に、テキスト型データ一般を分析するための半ば汎用的な方法として提案されている方法を、各種のテキスト型データの中でもとりわけ新聞記事の分析に用いた場合、いかなる長所短所が生じるのかを検討した。