著者
中山 昌明 栗山 哲 加藤 尚彦 早川 洋 池田 雅人 寺脇 博之 山本 裕康 横山 啓太郎 細谷 龍男
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.34, no.10, pp.1333-1337, 2001-09-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

トラネキサム酸 (tranexamic acid: TA) の投与によりCAPD患者の除水量が増加する現象が報告されているが, これを長期間投与した際の除水効果と腹膜機能への影響に関しては不明である. 我々は, 腹膜透過性は正常範囲にあるものの, 臨床的に十分な除水量が得られない3例に対し, 高濃度ブドウ糖透析液を使用する代わりにTAの少量長期間歇投与を試みた (500mg×3days/week, 18か月間). その結果, 全例において除水量の増加が持続して観察された. 少量のフィブリンの析出が-過性に認められることがあったものの, カテーテルトラブルの発生はなかった. 腹膜透過性は, 1例では明らかな変動は認められなかったが, 2例で上昇する傾向を示した. 以上の観察結果より, TAの本投与法は, 腹膜透析患者の除水量増加に対し臨床的に有効であることが示され, 除水不全に対する新たな治療対策となり得る可能性が示唆された. しかしながら, 腹膜機能に与える影響に関しては明らかではなく, さらに検討を重ねる必要がある.
著者
横山 啓太
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

数学の諸命題の強さを論理学の視点から分析する逆数学研究の基盤を広げ、より多様な視点から数学の諸命題の評価を行うことを目指して研究を行った。特に、これまで計算可能性理論の視点からの命題の強さの評価に偏りがちだった組み合わせ命題の強さについて、帰納法の強さ等の証明論的強さの視点からの評価を行うための諸種の手法の導入を行った。さらに、これらの成果を構成的数学の視点を踏まえて計算機科学、特にプログラム検証の分野と結びつけるための道筋を得た。
著者
横山 啓太
雑誌
科学研究費助成事業研究成果報告書
巻号頁・発行日
pp.1-12, 2020-06-01

本課題では、数学の定理やその証明の難しさ・複雑さを数理論理学の視点から評価・分析する、逆数学と呼ばれる研究を複数の視点から推し進めた。特に、組み合わせ命題ラムゼイの定理の評価分析において長年の未解決問題であった2次元無限ラムゼイの定理の「証明論的強さ」すなわち無矛盾性証明の困難さを確定する問題を解決し、さらにそれを理論計算機科学における停止性検証に応用する手法を考案した。 さらに有限組み合わせ命題の順序数を用いた解析手法を証明論における証明の長さの析学における新たな逆数学現象の発見等、関連研究を推し進め、逆数学研究の基盤を拡張した。研究成果の学術的意義や社会的意義: 2次元ラムゼイの定理の証明論的強さにおける長年の問題の解決とそのための手法の導入は逆数学研究におけるマイルストーンとなり、逆数学や証明論分野の国際会議で関連する多くの話題が取り上げられたほか、ウエブジャーナル Quanta Magazine でも取り上げられた。また、上の結果により、2次元ラムゼイの定理の強さがヒルベルトの還元主義プログラムの視点で十分弱いということが解明されたため、この結果の哲学的意味についても議論がなされた。 : In this project, we investigated the complexity and difficulty of mathematical theorems from the view point of reverse mathematics. Especially, we developed some new techniques to analyze the strength of combinatorial principles such as Ramsey's theorem, and solved a long-standing open problem on the proof-theoretic strength of Ramsey's theorem for pairs. Besides the above, we introduced some arguments to apply the above result and related techniques to the termination analysis, the study of sizes of proofs, found a new phenomenon on the reverse mathematical study of functional analysis, and expanded the field of reverse mathematics with those new points of view.
著者
横山 啓太
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

平成29年度は前年度から継続して研究しているKolodziejczyk博士(ワルシャワ大学)、Wong博士(シンガポール国立大学)らとの共同で算術における証明のサイズ・長さと公理系の関係についての分析を幅広く進めた。特に組み合わせ命題がどのような条件で証明を短縮できるかについて細かく調べ、ラムゼイの定理の場合について証明の長さを短縮する例・しない例についての具体的な結果を得るとともに一般の場合についての予想を得た。この研究中で、指標関数と呼ばれる1970年代に提案された算術の超準モデルの分析手法を現代的に整備し直し、多くの新しい研究に適用できる形に手法を一般化した。また、国内の4人の研究者との共同で算術における論理公理の分離問題をクリプキモデルと超準モデルの手法を組み合わせて一般的に解く手法の構築を進めた。さらに完備距離空間上の最適化問題に関するEkelendの定理やCaristiの不動点定理の逆数学的強さの分析等の研究を進展させ、Ekelandの定理がいわゆる可述的と呼ばれるレベルの公理系を超える強い公理と同値になること等の結果を得た。いずれについても、現在主要な成果について論文にまとめる作業を進めており、投稿に向けて準備中である。また前年度大きく発展した諸種の組み合わせ論の強さの逆数学手法による分析成果をまとめ、特にラムゼイの定理に関する証明論的強さを確定させた主要な2本の論文が受理されるとともにそれらを計算機科学分野の定理に応用した論文についても受理された。関連論文の執筆も引き続き進めている。
著者
横山 啓太
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

数学基礎論の一分野である2階算術の諸体系についての研究,特に逆数学プログラムへの寄与を目的とした研究および,算術の体系のモデルについての研究を行った.2階算術の諸体系についての研究では,昨年度までの研究で得られていたACA_0およびWKL_0における超準解析の手法についてより精密な考察を行った.これにより,2階算術に対応した超準解析の手法が直接表現できるシステムを新たに考案した.さらに,これらのシステムを用いて表現される超準解析の証明を通常の2階算術の証明に直接変換するための手続きを与えた.これにより,超準解析の証明を細かく分析することが可能になり,超準手法を用いた逆数学研究のための新たな手法が得られた.また,これらをさらに発展させ,2階算術の多くのシステムに対して超準解析のシステムによる特徴付けを行い,さらに超準解析を用いたより多くめ証明の分析を進めることを目指して研究を進めている.また,これらのフレームワークの逆数学研究への新たな応用も試みている.また,堀畑佳宏氏と協働で複素解析の基礎に関する逆数学研究をさらに推し進め,いくつかの定理に対する逆数学的な評価を得た.特に,局所的な可積分性が重要となる状況では,WWKL_0が重要な役割を果たすことがわかり,このことからいくつかの逆数学的な評価が得られた.また,正則関数の特異点の扱いについての研究も行った.現在,ピカールの定理の逆数学的評価を目指し,研究を進めている.この他,フーリエ級数の収束性についても逆数学研究を行い,いくつかの逆数学的結果を得た.以上の結果をふまえ,今までの成果を博士論文「Standard and Non-standard Analysis in Second Order Arithmetic」にまとめた.
著者
塚田 有紀子 中村 眞 中尾 正嗣 鈴木 孝秀 松尾 七重 山本 亮 濱口 明彦 花岡 一成 若林 良則 小倉 誠 横山 啓太郎 細谷 龍男
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 = Journal of Japanese Society for Dialysis Therapy (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.40, no.10, pp.871-875, 2007-10-28
被引用文献数
2

潰瘍性大腸炎 (ulcerative colitis : UC) は若年女性に好発し, 患者の妊孕性は健常人と差がない. また, 妊娠によってUC自体が増悪しやすいこともあり, 患者の妊娠時の治療が問題になる. 症例は24歳時にUCを発症した35歳経産婦. 30歳時には治療薬を中断中に妊娠8週で流産しており, 32歳時にはステロイド療法を継続しながら第1子を得ている. 2006年7月, Prednisolone (PSL) 5mg/日とmesalazineの内服中であり, UCの活動性は臨床重症度分類で中等症であったが, 妊娠のため自己判断で内服を中止した. 同年9月妊娠8週0日で排便回数10回以上, 腹痛, 顕血便が増悪し入院となった. PSL20mg/日を使用し, 絶食と中心静脈栄養により腸管安静をはかったが症状は改善せず, 腹部の反跳痛も出現して開腹手術の適応が検討された. 10週2日からPSL50mg/日の静注を行い, 加えて11週1日から顆粒球除去療法 (granulocytapheresis : GCAP) を週2回計10回施行した. GCAP3回施行後から諸徴候は好転し, GCAP5回施行時 (14週1日) には, CRP0.5mg/dLと陰性化し, 解熱して緩解に至った. PSLは漸減し, 16週1日にPSL20mg/日で退院した. 退院時点で胎児の大横径・大腿骨長はいずれも16週相当であった. 治療に難渋したUC合併妊娠症例に対してGCAPを併用したところ, 速やかに緩解し妊娠継続が可能となった. UC合併妊娠では, 通常の薬物療法に加えて, 胎児への影響が問題とならないGCAPを積極的に活用するべきである.