著者
中村 眞樹子 竹中 万紀子
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.243-249, 2015 (Released:2015-12-13)
参考文献数
20
被引用文献数
1

数年~10年以上にわたり詳細で慎重な継続観察ができ,かつ長年変化しない特徴を明確に識別できた場合に限り,ハシボソガラスでは標識にたよらない身体的特徴などによる個体識別法は有効であることが示唆された.この方法による個体識別が正しいとすると,札幌で繁殖するハシボソガラスの中には一時的な1夫2妻が形成されることがあり,これらのトリオ形成は,必ず第1♀が数年間続けて繁殖に失敗したあとに起こった.第2♀の由来は,2例で近隣のテリトリーから移動してきた若い♀であり,1例の♀の由来は不明であった.2例で第1♀が消失または死亡してから第2♀が「本妻に昇格」した.これらのつがい関係で興味深いのは第1♀の繁殖力が低下または消失してもつがい関係を一定期間維持し続けることである.本調査の観察は,テリトリー内につがい以外の個体が許容されても必ずしもヘルパーではないこと示すものである.
著者
中村 眞人
出版者
東京女子大学
雑誌
東京女子大学比較文化研究所紀要 (ISSN:05638186)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.1-15, 2006

This study aims to clarify the rationalism in Japanese popular thought that has promoted the modernization of the Japanese society. For this purpose, we will examine the case of the independent Shinto sect Kurozumikyo that developed between the late Tokugawa period and the Meiji period. Considered is the life of the founder Kurozumi and religious thought in relation to the social background of the time along with a description of the past and present of the Kurozumikyo religious community. Then we examine the class distribution of the believers and prove that this religious sect is supported mainly by the lower and middle class people. Finally, the faith practices of this religion is investigated and found a tendency of rationalization that gives it an ethical consistency, though some magical and conventional tendencies remain. These characteristics are common in some new religions and the secular morality that developed concurrently. The development of the modern Japanese society has been supported by such a rational life manner and value system as expressed in the thought of the lower and middle class people.
著者
中村 眞理子
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.383, 2019-08-15 (Released:2019-08-15)

格言,諺の類には,一般的に認識されている意味合いが真意と正反対であったりすることが,しばしばある.「弘法筆を選ばず」という言葉.「弘法」とは,平安時代初期の書の名人である弘法大師のことで,今から1,200年以上前の平安時代初期に,真言宗を開いた空海を指している.
著者
中村 眞人
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.23-27, 2018-02-28 (Released:2018-02-28)
参考文献数
3

心停止の場所で人の生死が決まってよいのかとの思いで,千葉市を日本のシアトルに!構想がスタートした。医師会・千葉市・千葉大学が参加する連携委員会で協議し,小,中,高校対象の救急蘇生講習を軸としたいのちを守る推進プラン,医師会主催ICLS・BLS講習会,救急対応力向上研修会,医師会認定救急医制度などを開始した。例えばいのちを守る推進プラン実践校は,2011年は,1中学校区4校。2015年は,20中学校区56校と増えた。医師会主催のICLS講習会は10回,BLS講習会は8回,ICLSワークショップ講習会は2回開催した。その結果,ICLSディレクター 1名,ICLSインストラクター 8名が誕生し,BLS・ICLS講習会の医師会単独開催が可能になった。救急対応力向上研修会は39回開催し,医師会認定救急医は,初級が約20名,中級が4名,上級が1名になった。これらの活動は,学校医・産業医・かかりつけ医として医師会に求められる公益活動につながると思われる。
著者
中村 眞人
出版者
東京女子大学
雑誌
東京女子大学紀要論集 (ISSN:04934350)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.1-25, 2022-09-30

Tanka is a form of traditional Japanese short poem with a syllabic metre. Along with the modernization of Japanese society, a literary movement of realist tanka reform emerged and aimed at universality of emotional expression while describing objective facts and things.This article examines the works of Mokichi SAITŌ, Bunmei TSUCHIYA and other poets of the Araragi school. These poets published in the periodical Araragi, and they were highly influential among Japanese literary practitioners. They regarded an ancient poetry book, the Manyōshū, as an important poetic model.日本が近代社会を形成していく過程で、短歌を、伝統的な形式を踏まえつつも文学としての普遍性を志向する文芸に革新する運動が興った。雑誌『アララギ』に拠る人々は、写実主義を標榜し、『万葉集』を模範としながら、大衆的な広がりをもった文芸活動を実践した。斎藤茂吉はヨーロッパ滞在の体験や、飛行機への搭乗の体験などを素材として、近代にふさわしい短歌の様式を創り出した。土屋文明は、あえて殺風景な都市景観を即物的に描写しつつ、短歌の韻文としての格調を確立した。茂吉と文明は、『万葉集』における写実的な心情の表現と民衆的な基礎を尊重した。
著者
大屋 友紀子 中村 眞須美 田畑 絵美 森園 亮 森 祥子 木室 ゆかり 堀川 悦夫
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.308-314, 2008 (Released:2008-07-14)
参考文献数
30
被引用文献数
12 11

目的:地域在住高齢者を対象とし,転倒,つまずき,ふらつきの既往の有無と下肢筋力測定を含む各種の易転倒性検査との関連性を分析することにより,易転倒性の新たな指標を模索し,より効果的な転倒予防の対策を検討する.方法:被験者は地域在住高齢者102名で,問診に加え,転倒リスクを評価する5つのパフォーマンステストを実施した.さらに,膝伸展筋力を測定し,時系列解析,周波数解析を行った.結果:転倒の既往を有する者(転倒群)は,非転倒群に比してつまずき(p<0.001),ふらつき(p=0.002)の既往歴がそれぞれ有意に多かった.周波数解析の結果では,転倒群では非転倒群に比して,有意に中心周波数が低く(p=0.025),より高周波成分が少ない波形(p=0.035)を示していた.また,時系列データの解析結果から,転倒群は非転倒群よりも最大筋力に至るピーク潜時が長かった.結論:転倒群は非転倒群に比して,膝伸展筋力のピークまでにより多くの時間を要し,筋力の発生の過程が緩やかであった.この結果は,転倒群は障害物回避行動などで転倒リスクが高いことを示しており,地域在住高齢者に対する新たな易転倒性の指標として有効と考えられる.転倒の予防対策として,最大筋力とともに筋の反応速度を高める運動が有用であることが示唆された.
著者
中村 眞
雑誌
インターネットと運用技術シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.121, 2020-11-26

小中学校児童生徒に一人一台端末を用意し,学校に高速インターネットを実現する「GIGAスクール」は,教育の変革・深化・転換のチャンスとなる.新型コロナによる臨時休業時,児童生徒と学校を ICT によりつなぐ「止めない学校プロジェクト」を推進し,その経験が奈良市の GIGA スクール構想に引き継がれれている.家庭への持ち帰りを前提とし,家庭学習でも活用する「端末を文房具として活用する新しい学びのスタンダード」と,これを支える学校ネットワークの再構成について報告する.
著者
中村 眞人
出版者
東京女子大学
雑誌
東京女子大学紀要論集 (ISSN:04934350)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.105-128, 2019-09-30

The coastal districts of China have been industrializing since the 1980s. The nine cities in the Zhujian Delta in Guangdong Province were the earliest cases of industrialization in China which implemented the reform and opening-up policies. The industrialization of this area has three characteristics below. (1) Regional division of labour between Guangdong cities and Hong Kong/ Macau (Qian Dian Hou Chang). (2) The “Three-plus-one” trading-mix (San Lai Yi Bu), which means the combination of four types of transnational trade, namely the processing of materials supplied by overseas clients, the assembly of equipment supplied by overseas clients, the production of goods based on samples provided by overseas clients and the compensation transaction of offsetting the pre-rented equipment fee by sales.(3) Internal migrant workers from rural districts to industrial cities (Nong Ming Gong) under the Chinese residential registration system. Incidentally, industrial workers migrated from rural districts have been increasing in these districts and social problems in the field of social security, education etc. have been observed. 中華人民共和国では、1998年12月に共産党が改革開放路線への転換を正式に決定して以来、市場経済の制度を採り入れ、また外国企業による投資を受け入れることにより、沿海部を中心に工業化が進行して都市と工業地帯が拡大した。本稿では、中国沿海部で最初に工業化を進めた珠江デルタ地域を対象として、こうした社会変動の論理を解明する。そこでは、第一に、「前店後廠」と呼ばれる広東省の工業都市と香港・マカオとの地域間分業構造が形成されて、前者の工業化と後者の脱工業化が同時進行した。第二に、広東省における輸出志向の工業は、「三来一補」と呼ばれる委託生産を主要な取引形態とした。このことにより、中国は、土地と労働力という固有の資源を活用しながら、製造設備、部品素材、科学技術という不足していた資源を外国から導入できた。第三に、内陸部農村に本籍を有する労働者が沿海部に移住して工業労働に携わり、「農民工」と呼ばれた。沿海部工業地帯に農村を出自とした賃金労働者が集積し、定住化が進むにつれて、社会保障や次世代の教育といった分野で社会政策上の課題が発生している。
著者
中村 眞澄
出版者
早稲田大学法学会
雑誌
早稲田法学 (ISSN:03890546)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.303-334, 1959-06-20
著者
中村 眞理子 後藤 葉子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成27年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.205, 2015 (Released:2015-08-24)

【目的】調理の姿勢は、「右利きの場合、左の骨盤に拳を当ててまな板から45度くらいの角度で右を向く」とあり、包丁を持つ手は自然に真っ直ぐになり、疲れない一番楽な正しい姿勢とされている。脳血管障害後遺症による片麻痺者のリハビリテーションでは、調理訓練は重要な項目であり、片手で調理するための道具の工夫(自助具)や、立位バランスや耐久性の程度により、立位や座位での作業の検討がなされている。しかし、固定の代償など片手動作での調理に対応する方策に主眼が置かれており、構えに対する視点は希薄であるのが現状である。今回、障害者への調理動作訓練をより効果的に行うための視点として構えに注目し、健常者で自助具使用による構えの変化を検討した。【方法】大学生20名を対象とした(平均年齢21.1±0.58歳、男性8名、女性12名)。①~④の条件で、調理台上にまな板をセットした状態で包丁を持ち、調理台と体幹との角度をゴニオメーターで測定した。包丁は右手で把持①両手使用での構え(自助具使用なし)②片手動作(右手のみ使用・自助具使用なし)③自助具(ロッキングナイフ)使用での片手動作④自助具(釘付きまな板)使用での片手動作。加えて、課題終了後に感想を自由記載してもらった。【結果】①と②の結果の間に5度以上増加した群(以下A群)(11名)、5度以上の減少した群(以下B群)(9名)で比較した結果、①では両群に差はないが、①と③④の結果を比較すると、A群では③がB群では④が通常の構えに近いものとなった。両群の通常の構えに差はないことから、片手動作になったときの構えの変化という対象者の姿勢の代償の方策の違いにより、適応する自助具に違いがあることが示唆された。
著者
山田 惠子 堀口 雅美 中村 眞理子 谷口 圭吾 片岡 秋子 片倉 洋子 石井 貴男 和泉 比佐子 大日向 輝美 武田 秀勝 傳野 隆一 松嶋 範男 門間 正子 安川 揚子 旗手 俊彦 今井 道夫
出版者
札幌医科大学保健医療学部
雑誌
札幌医科大学保健医療学部紀要 = Bulletin of School of Health Sciences Sapporo Medical University (ISSN:13449192)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.17-26, 2010-03

生命倫理の問題や情報開示などの保健医療職に求められる倫理性を理解し、保健医療職の倫理性について自己の考えを明らかにすることができる力を養うことを目標にした保健医療総論IIIが、全学科共通必須科目として3年生を対象にして行われている。平成21年度はNHKスペシャル『トリアージ 救命の優先順位』を教材として、様々な役割にたった討議型グループ学習が行われた。新しい試みとして、グループ学習に先立ち、ビデオ鑑賞の感想文、倫理的思考問題など、個人単位で参加する学習を行った。グループ学習は、司会者、被災者、被災者の家族・遺族、医師、看護師、病院職員・救急隊員・救急救命士、ボランティア・一般市民、国・地方自治体の8グループに別れて学習する役割別グループ学習(A)と、異なる役割との話し合いを行う役割混成グループ学習(B) から構成され、A→B→Aの順にグループ討議が行われた。倫理的思考問題と学生によるレポート結果の解析から、役割混成グループ学習の導入は「視野の広がり」、「相手や自分の役割の理解」を助ける上で有効な方法であることが示された。
著者
伊藤 浩信 中村 眞一 岡本 和美 旭 博史 斎藤 和好
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.2080-2083, 1997-09-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
18

症例71歳,男性.右下腹部有痛性腫瘤を主訴として当科紹介された.腹部超音波,注腸透視,腹部CT検査より虫垂炎または大腸悪性腫瘍による腹腔内膿瘍が疑われ緊急手術を施行した.虫垂は硬く,棍棒状に腫大しており周囲組織に埋没していた.摘出標本をみると腫瘍性の変化はなく虫垂周囲膿瘍と診断した.病理組織標本において放線菌の菌塊を中心とした膿瘍がみられ,最終的に放線菌症と診断された.
著者
後藤 葉子 中村 眞理子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成25年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.107, 2013 (Released:2013-08-23)

【はじめに】入院期間の短縮等に伴い、医療機関でのリハビリテーションは終了しものの退院後、実際の生活機能の獲得に至っていない在宅障害者が多い。我々は2004年11月より、このような在宅障害者を対象に調理を通しての在宅支援活動を実施しており、現在は当事者主体のサークル団体として登録し、公的福祉施設を利用して調理活動を継続している。今回はこれまでのサークル活動の経緯から、在宅障害者にとって調理活動のもたらす効果について紹介する。 <BR>【サークルの内容】サークル登録メンバーは在宅障害者6名、家族メンバー3名、支援者(作業療法士)2名である。サークル活動は月1回の3時間半、身体障害者福祉センター調理室にて調理,会食、後片付けといったスケジュールで行い、材料費は実費負担としている。 <BR>【経過】自炊を必要する独居の女性1名からのスタートであったが、徐々に参加者が増え、現在は障害のため家事の役割を喪失した主婦、車椅子の重度障害者、コミュニケーション障害をもつ失語症の独居者、さらに家族の支援も含めた活動へと展開している。当初は身体機能を考慮しながら,我々が意図的にメニュー、調理方法・行程を決定していたが、次第に参加者の自主性を重んじるように心掛け、運営形態も当事者主体のサークル団体とした。現在はメニュー選択や役割分担など参加者間で決定し、料理レシピを自宅で再現する等、各々の役割や責任感、参加者同士の連帯感や協調性を養う場となってきた。 <BR>【まとめ】当事者主体のサークル活動を通じて、食べる楽しみや調理できる喜びの再獲得、また、できないと諦めていたことへの挑戦、障害者同士の交流の機会となっており、意欲的な在宅生活継続に繋がるっているものと考える。
著者
須藤 隆之 菅井 有 上杉 憲幸 幅野 渉 中村 眞一 斎藤 和好
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.208-213, 2005-02-01
参考文献数
16
被引用文献数
3

症例は58歳の男性で,平成14年7月27日腹部膨満感があり近医を受診した.精査にて腸間膜腫瘍と診断,9月12日腫瘍摘出,右半結腸切除,小腸切除術を施行.病理組織学的所見は紡錘形腫瘍細胞が束状に増殖していた.免疫組織学的検査にてc-kit染色陽性で,腸間膜gastroin-testinal stromal tumor(GIST)の診断となる.10月27日よりメシル酸イマチニブ400mg/日投与開始.平成15年4月4日腹部CTにてGIST再発を認め4月23日腫瘍摘出術施行.5月16日よりメシル酸イマチニブ400mg/日投与再開.平成16年12月12日腹部CTにてGIST再発を認め12月24日腫瘍摘出術施行.c-kit遺伝子を検索し,エクソン9のcodon503と504の間に6塩基対の挿入を認めた.c-kitの遺伝子検索は,メシル酸イマチニブの効果判定のために重要であると思われた.