著者
浅野 有紀 横溝 大 藤谷 武史 原田 大樹 清水 真希子 松中 学 長谷川 晃 田村 哲樹 松尾 陽 加藤 紫帆
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

研究2年目に当たる本年度は、トランスナショナルローを巡る法的・政治的問題についての理論研究をさらに進めると共に、組織規範動態WGと国際金融規制WGにおいて、実証研究に向けた本格的検討を開始した。先ず、理論研究については、3回の全体研究会を開催し(2017年7月、8月、及び、2018年2月)、共同研究者や国内の他の研究者による報告を基に意見交換を行い、知見を深めた。具体的に扱ったテーマは、「トランスナショナル・ローと法哲学の課題――多様な正統性と機能主義的考察」、「グローバルな土地収奪のトランスナショナル・ローの観点からの研究」、「解釈主義的法理論とトランスナショナル・ロー」、「立法過程と政治学の応用」、「批判法学から法多元主義、法多元主義から批判法学へ-無意識的な『法の帝国』化について」、「グローバル・ガバナンスと民主主義-方法論的国家主義を超えて」である。また、実証研究については、組織規範動態WGが2回の会合を(2017年9月、12月)、国際金融規制WGが1回の会合を(2018年3月)開催し、実証研究を進める際のテーマの選定や方法について検討を重ねた。その上で、各研究分担者が、3年目以降にさらに理論又は実証研究を進展させるべく、その基礎となる論稿を中間的成果として日本語・英語で執筆・公表した。具体的には、'Self-regulations and Constitutional Law in Japan as Seen From the Perspective of Legal Pluralism'、「法多元主義の下での抵触法」、「グローバル・ガバナンスと民主主義」、「グローバル化と行政法の変容」、「ソフトロー」、「コーポレートガバナンスと政治」、「グローバル資本規制」等である。
著者
鈴木 將文 長岡 貞男 横溝 大 Rademacher C 加藤 紫帆
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

研究期間の3年目に入り、研究を一層深化させるとともに、国内外の研究会、学会等で研究成果の発信を行った。具体的には、次のとおりである。(1)米国、ドイツ、英国、スイス等の研究者と実施した特許権侵害に対する救済措置に関する国際共同研究の成果をケンブリッジ大学出版から書籍("Patent Remedies and Complex Products: Toward a Global Consensus")として公刊した(オープンアクセスも可能な形で提供している。)。(2)特許制度の研究のためには、同様の保護対象を持つ営業秘密制度についても研究を行う必要があるとの認識から、営業秘密の国際的保護に関する研究を進めた。その成果を欧州の国際会議において、欧米の研究者と共通論題に関するパネルを組んで、パネリストとして報告を行ったのか、名古屋大学での国際会議等でも発表した(なお、2020年3月に、欧米の研究者も招いて国内で研究会を開催することを企画していたが、これは新型コロナウイルス感染症問題により中止した。)。(3)特許権の国際的保護に関し、実体法的側面と手続法的側面(国際私法の視点)の両方について研究を進め、成果を国際会議で発表した。経済学の観点からの研究としては、グレースピリオドに焦点を当てた研究を行い、国際会議で報告した。(4)標準必須特許を巡る問題につき、国内学会(法と経済学会)で報告するとともに外国研究者との共著書を出版した。(5)特許制度について考察する基礎として情報・データの法的保護に関する研究も行い、論文と研究会での研究報告を通じて成果を発表した。
著者
横溝 大
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 = Journal of social science (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.47-64, 2017-04-10

特集 家族・財産・法本稿は、個人の死亡時における相続以外の財産移転制度(「相続代替制度」)の国際的側面に関する抵触法上の問題を検討することにある。近時では、とりわけ情報通信手段の発達により、個人が複数国に資産を保有したり、外国の相続代替制度を利用したりする事例が増加しており、今後、我が国も含め、これらの制度の受益者と相続人との間で国際民事紛争の益々の増加が予想される。相続代替制度の利用を巡る国際的紛争を予防・解決するためには、当該制度の有効性や第三者に対する効力等、関連する法的諸問題に関する準拠法選択が適切且つ明確になされる必要がある。そこで、本稿では、この点について検討する。相続代替制度のために新たな準拠法選択規則を構想する必要はなく、現状では従来の準拠法選択規則の何れかに法的問題を性質決定すれば足りる、但し、例外的処理を行う可能性については、今後さらに検討が必要である、というのが本稿の結論である。This paper examines conflict-of-laws issues with regard to international aspects of succession substitutes (institutions for the transfer of properties at the death of an individual other than succession). Particularly through the development of telecommunication means, people can more easily hold their properties in different countries and make use of succession substitutes in a foreign country. Thus, it is expected that disputes will increase between a beneficiary of these institutions and a successor worldwide, including in Japan. A proper and predictable choice of law relating to relevant issues such as the validity of a succession substitute and its effect against the third party is important in order to prevent or resolve international disputes with regard to the use of succession substitutes. Thus, this article deals with this choice-of-law issues.
著者
北澤 安紀 林 貴美 林 貴美 中西 康 横溝 大 北澤 安紀
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、同性婚や、生殖補助医療により生まれた子の親子関係など、最近の各国において導入されてきている新たな身分法制への対応が国際私法方法論に及ぼすインパクトについて検討した。その結果、国際私法の伝統的な双方主義的方法論がそれらの法制度を規律するのに最適な方法であるとは言い切れず、国際私法方法論自体の再検討が求められていることが明らかとなる。この点、EU法において最近拡大傾向にある、いわゆる相互承認原則が国際私法の分野に及ぼしつつある影響も看過しえない。法廷地国は、双方主義的な抵触規則、あるいは、外国判決承認ルールを通じて、渉外的法律関係を規律し尽くそうとしているが、新たな身分法制についての国際私法側の対応としては、たとえばEU法の相互承認原則のような従来とは異なる例外的な救済方法を用いる可能性についても、今後議論してゆく必要があろう。