著者
横山 詔一 真田 治子
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.31-45, 2010-04-01

山形県鶴岡市で進行中の共通語化について,将来の動向を予測する統計モデルとして言語の「生涯習得モデル」を作成し,その妥当性を論じた。このモデルは,「ある地域の言語変化の動態は,地域住民の脳内に生涯にわたって蓄積される言語記憶や言語運用能力の経年変化を反映している」という仮説のもと,「臨界期記憶+調査年効果→共通語化」という図式にしたがって共通語化を説明・予測する。鶴岡市において経年的に約20年間隔で過去3回実施された調査のデータをこのモデルで解析した結果,アクセント共通語化などにおいて予測値と観測値が精度よく一致することが示され,アクセント共通語化の進行速度が次第に加速していった状況などが統計学的に実証された。このモデルの提唱は,言語変化の経年調査データを新たな視座から検討する契機になるものと考えられる。
著者
高田 智和 石塚 晴通 小野 芳彦 豊島 正之 赤尾 栄慶 池田 証壽 大槻 信 小助川 貞次 白井 純 當山 日出夫 横山 詔一
出版者
大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

奈良時代から現代までの日本の漢字(日本の筆写漢字に多大な影響を与えた唐から宋時代の中国漢字も含む)について、公的性格・規範性の高い文献での用例整理と、私的性格の強い文献での用例整理に基づき、歴史的変遷・共時的異化の二面からなる資料体を作成した。また、この資料体の作成により、漢字字体の基礎概念を明確化し、字体編年基準の透明化を行い、その知見を『漢字字体史研究』(石塚晴通編、勉誠出版、2012年)として公刊した。
著者
野崎 浩成 横山 詔一 磯本 征雄 米田 純子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.141-149, 1996-12-20 (Released:2017-10-20)
参考文献数
22
被引用文献数
3

日本語教育で教材に使用される漢字の選定および提示順序は漢字頻度調査に基づいて決定されることが多い.そこで,本研究では効率的な漢字頻度調査を行う手法を確立するために,新聞記事フルテキストデータベース中に含まれる漢字の使用頻度を調査するシステムを開発した.このシステムを用いて,新聞朝夕刊1ヶ年分の約11万件の記事を対象に大規模な調査を実施し,漢字4,476字および平仮名83字,片仮名86字についての文字使用頻度表を作成した.その結果,1)漢字使用頻度上位1,000字が全使用率のおよそ95%を占めること,2)上位1,600字で全体のほぼ99%に達し,残りの約3,000字は1%程度を占めるに過ぎないこと,3)時代的変化に着目すると,漢字使用頻度は,'66年と'93年の新聞間で相関が著しく高いこと,が示された.以上の結果は新聞における漢字の使用実態を的確に反映するものであり,日本語教育のみならず,漢字教育や言語情報処理一般に役立つ有用な知見が得られた.
著者
野崎 浩成 横山 詔一 清水 康敬
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.59-62, 2001-08-20

本研究では, 2字熟語に使用される漢字の頻度特性を分析した.その結果, 「牲」は, 漢字2字熟語の第2文字目でのみ使用されること, その用例はすべて「犠牲」であったこと, 同様な特性を持つ漢字は, 「娠」, 「剖」, 「騨」, 「惧」, 「綻」であったこと, が示された.すなわち, ある特定の熟語にしか使用されない特別な漢字が存在することが明らかになった.このような結果を考慮して教材作成を行えば, 有用な日本語教材が得られると考える.
著者
横山 詔一 笹原 宏之 黒田 信二郎 澤田 照一郎 野島 伸一 石岡 俊明
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.110, pp.47-54, 2004-11-05

いつでも,どこでも,だれでも,社会的に必要な漢字を使える漢字ユビキタス環境を実現するため,行政文字情報交換の基準となる「文字情報集積体(文字情報データベース)」の開発を進めている。社会的に必要な漢字の範囲を決めるには,科学的根拠のほかに国民的合意の形成が欠かせない。国立国語研究所,情報処理学会,日本規格協会の3者連合体は,経済産業省から委託を受けて,総務省住民基本台帳統一文字と法務省戸籍統一文字の間に存在する微妙な字形差の統一や,文字属性情報の調査に基づく情報付与作業を行い,併せて大漢和辞典の一部などの電子化を通した研究を行ってきた。また,漢字ユビキタス環境の実現を狙うという方向性そのものが国民のニーズに合致しているのかを検討するため,国立国語研究所は独自に「漢字環境学」の視点を導入して,世論調査データの解析を行った。A comprehensive and Standardized database of kanji characters is critical to ubiquitous computing in Japan. A project team of three institute and associations, the National Institute for Japanese Language, Information Processing Society of Japan, and the Japanese Standards Association, is developing a character information database under contract with the Ministry of Economy, Trade and Industry. The database unifies the variations in the forms of kanji characters as well as includes linguistic information of the characters and the data from Daikanwa (大漢和辞典) kanji dictionary. Furthermore, the National Institute for Japanese Language has conducted a study on language policies regarding kanji characters in a framework called "kanji environment studies" in order to identify the opinions and the demands of language users in Japan.
著者
横山 詔一 相澤 正夫 久野 雅樹 高田 智和 前田 忠彦
出版者
基礎教育保障学会
雑誌
基礎教育保障学研究 (ISSN:24333921)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.11-28, 2022 (Released:2022-09-15)

The first scientific literacy survey in Japan was conducted in 1948. It was the first time that a full-scale nationwide survey based on random sampling techniques was carried out in Japan, and data were collected from 16,820 men and women between the ages of 15 and 64 (by the traditional Japanese system). One of the most well-known aspects of this global landmark survey is the figures on illiteracy rates and their interpretation. The report of the survey, "The reading and writing ability of the Japanese" (1951), concluded that the illiteracy rate of the Japanese was"extremely low" at 1.7% or 2.1%. This view has been cited repeatedly in Japan and abroad and is now treated as a definite fact. However, a reexamination of the content and format of the test questions on the 1948 survey revealed that there was insufficient control of the difficulty level and that the test contained a large number of multiple-choice questions, making it problematic to simply classify those who scored zero on the test as illiterate. Therefore, we concluded that we should avoid uncritically quoting the description of illiteracy rates in this report.
著者
野山 広 岩槻 知也 石黒 圭 藤田 美佳 石川 慎一郎 横山 詔一 前田 忠彦 名嶋 義直 大安 喜一 石井 恵理子 佐藤 郡衛
出版者
大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では、現在の社会状況や多様な言語・文化背景を持った日本語使用者が共存・共生する時代に応じた(約70年ぶりの)日本語リテラシー調査(主に読み書きの力に関する調査)の実施に向けて、調査方法の開発を目指す。そのために、以下の1)~3)の実態調査(国内外)、コーパス構築、学際的な観点(基礎教育保障学、日本語教育学、生涯学習論、統計科学、異文化間教育などの多様な分野)からの分析・検討、国際シンポジウム等を実施するとともに、調査の在り方(方向性)や姿勢の追求(追究)、調査方法の開発、試行調査を行う。1)日本語使用の実態調査2)コーパス構築とデータ分析3)調査方法の開発
著者
横山 詔一 笹原 宏之 當山 日出夫
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.16-26, 2006
被引用文献数
2

文字コミュニケーションのメカニズムを解明するため,異体学の選好に関する実験を行った.異体字とは,「桧-檜」のように読みと意味は同じで字体だけが異なる文字の集合を指す.IT機器で漢字を書いている場面を実験参加者にイメージさせ,異体学263ペアについての選好判断を2肢強制選択法で求めた(選好課題).同じ実験参加者グループに対して半年後に同じ課題を与え,旧字体選好率の積率相関係数を求めたところ,r=0.96ときわめて強い正の相関がみられた.これから,選好課題の結果は高い信頼性を有することが明らかになった.さらに,別の実験参加者グループを用いて異体学ペアのいずれの親近度が高いかを2肢強制選択法で判断させ(親近度比較課題),選好課題との相関を分析した.その結果,親近度比較課題と選好課題の間にはr=0.95ときわめて強い正の相関関係がみられた.ある異体学が社会でよく使われている場合は人間がその異体学に接触する頻度が高くなり,接触頻度が高くなると単純接触効果によってその異体学に対する親近性が増加するとともに好意度も高くなると考えられる.選好課題と親近度比較課題の間に見られる強い相関関係は,単純接触効果の影響を色濃く反映した結果であると説明できる.
著者
笹原 宏之 横山 詔一
出版者
計量国語学会
雑誌
計量国語学 (ISSN:04534611)
巻号頁・発行日
vol.21, no.7, pp.291-310, 1998-12
被引用文献数
2
著者
横山 詔一 高田 智和 當山 日出夫 米田 純子
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.4(2009-CH-081), pp.33-40, 2009-01-16

日本規格協会・国立国語研究所・情報処理学会の3者連合体が経済産業省の委託を受けて制作した平成明朝体グリフ約6万字種のうち,字形デザインにおける変異が顕著で,かつデザイナーから学術的な検討を要請されることが多いデザイン差をいくつか取り上げ,認知科学と社会言語学の手法を援用しながら分析をおこなった。社会言語学的な調査データは,東京の下町と山の手,京都のほか,海外の台湾においても収集された。その結果,非伝統的な新しいデザインが好まれる傾向にあることが明らかになった。
著者
斎藤 秀紀 菱沼 透 横山 詔一 柳沢 好昭 大坪 一夫
出版者
国立国語研究所
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1998

本年度は、次ぎに示す4項目の研究を行った。(1) 「漢字符号への二律背反機能の実装」現在、使用されている漢字符号には、種々の機能不足が指摘されている。代表的な事柄には、使用できる文字の拡張に対する要望と、適正規模の文字集合による処理の効率化の対立がある。本報告は、これらの対立する二つの関係を構造化4バイトコードに要求する機能として、構造の要素と構造および構造間の関係を使い規定する方法を述べた。(2) 「インターネットでの日本語教育リソース提供の試み」本研究では,海外で日本語教育大学機関及び富士通と日立ソフトエンジニアリングの協力を得て,協働学習による日本語学習リソースの授受を試行した。これにより,日本語学習リソース提供についての幾つかの課題は,受信側である現地機関側のコンピュータ及びネットワーク環境の整備,送受信双方で使用できるツールやユーティリティの選択,発信側のデータの作成方法の検討により解決することが判明した。(3) 「『新聞電子メディアの漢字』調査について」実際の新聞紙面とそのCD-ROMを詳細に照合して漢字の出現頻度を調査した。紙面に出現したJISにない漢字(JIS外漢字)254字については、TrueTypeFontoを開発し、合計6.611文字の漢字頻度表を作成した。(4) 「中国語情報科学用語における漢字の特性」日本語と中国語の情報科学用語を比較した場合、日本語はカタカナ表記の語が多いのに対し、中国語は漢字表記である。表記上の差異は、中国人の日本語学習者に負担となっている。表記上の差異に関わらず、日本語・中国語とも出自はほとんどが英語である。以上の考え方に基づき英語(原語)を媒介として中国語漢字とカタカナ語を含めた日本語の情報科学用語との対応を調べ、中国漢字1字との対応表を作成した。
著者
横山 詔一
巻号頁・発行日
1991

筑波大学博士 (心理学) 学位論文・平成3年11月30日授与 (乙第723号)