著者
伊藤 大輔 安井 敬三 長谷川 康博 中道 一生 勝野 雅央 髙橋 昭
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.481-485, 2016 (Released:2016-07-28)
参考文献数
24
被引用文献数
1 2

症例は65歳の女性である.再発性の小リンパ球性リンパ腫に対し,半年間rituximab等が投与され,めまいと小脳性運動失調が発症した.頭部MRIで両側中小脳脚病変を認め,進行性多巣性白質脳症(progressive multifocal leukoencephalopathy; PML)を疑い,髄液中JC virus(JCV)-DNA PCR検査を数回施行し,4回目に初めてJCV-DNAが検出され,診断が確定した.小脳萎縮を認め,granule cell neuronopathyの合併が示唆された.Mirtazapineとmefloquineの併用治療により長期生存が得られた.PMLでは両側中小脳脚の病変で発症する例がある.また,病初期には髄液検査でJCV-DNAが陰性のことがあり,繰り返し検査する必要がある.
著者
加納 裕也 井上 裕康 櫻井 圭太 吉田 眞理 三浦 義治 中道 一生 西條 政幸 湯浅 浩之
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.750-755, 2018 (Released:2018-12-21)
参考文献数
14
被引用文献数
1 5

75歳男性.構音障害,左口角下垂で受診.頭部MRIで右中心前回に拡散強調画像で高信号病変を認め,脳塞栓症として入院したが,症状は悪化し画像でも病変の拡大も認めた.髄液JCウイルス(JCV)-DNA PCR検査は4回施行し陰性だったが,進行性多巣性白質脳症(progressive multifocal leukoencephalopathy; PML)に矛盾しない経過と画像であり,初診から2ヶ月後に脳生検を行いdefinite PMLと診断した.基礎疾患は特発性CD4陽性リンパ球減少症のみで,非HIV-PMLとしてメフロキンとミルタザピンの併用療法を行い,初診から約29ヶ月という長期生存の転帰であった.髄液JCV-DNA PCR検査が繰り返し陰性でも,脳生検が診断に有用なことがある.
著者
伊﨑 祥子 田中 覚 田島 孝士 中道 一生 西條 政幸 野村 恭一
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.345-348, 2015 (Released:2015-05-30)
参考文献数
9
被引用文献数
4 6

症例は77歳,女性.6ヵ月にわたって緩徐に進行する小脳性運動失調を主訴に受診した.頭部MRIで左橋上部背側と両側の中小脳脚から小脳白質にかけて鍬型に異常信号をみとめた.本例は,非HIVであり,膠原病や免疫抑制剤を使用するような基礎疾患をみとめなかった.髄液中にJCウイルス(JCV)のDNAを検出したことから,小脳症状で発症したまれな小脳・脳幹型の進行性多巣性白質脳症と診断した.また入院後の検査でCD4+リンパ球減少症をみとめた.メフロキン単独による治療で髄液JCVは陰転化し,神経症候の改善をみとめた症例を経験した.
著者
大貫 英一 朝山 真哉 朝山 知子 中道 一生 西條 政幸 小坂 理
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.705-708, 2016 (Released:2016-10-28)
参考文献数
10
被引用文献数
2 3

症例は83歳男性,慢性腎不全のため血液透析中であった.亜急性に進行する右片麻痺のため紹介入院した.頭部MRIではT2強調画像で両側中小脳脚と左前頭葉深部白質に高信号病変を認めた.病変は経時的に拡大し,1H-MRSではChoの上昇とNAAの低下を認め,脳生検ではglioblastomaが疑われた.しかし髄液JCウイルス(JCV)検査が陽性と判明し,脳生検組織を再検したところ,免疫染色でJCVに感染した異型アストロサイトを認め,進行性多巣性白質脳症(progressive multifocal leukoencephalopathy; PML)と診断した.メフロキン,ミルタザピンによる治療を開始したところ,髄液JCVの陰性化を認め,またMRIでの病変の拡大も停止した.基礎疾患,臨床経過において稀少と考え報告した.
著者
竹腰 顕 吉倉 延亮 小澤 憲司 生駒 良和 北川 順一 竹島 明 大槻 美佳 中道 一生 西條 政幸 大江 直行 望月 清文 柿田 明美 下畑 享良
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.281-286, 2019-03-01

症例は62歳男性で,悪性リンパ腫に対する臍帯血移植後に急激な視力低下をきたした。頭部MRIにて両側頭頂葉および後頭葉の皮質下白質〜深部白質に高信号域を認め,脳生検および脳脊髄液中JCウイルス(JCV)検査にて進行性多巣性白質脳症(PML)と診断した。経過中にBálint症候群を合併したが,塩酸メフロキンとミルタザピンの併用療法によりBálint症候群および頭部MRI所見は改善し,脳脊髄液中JCVは陰性化した。PMLではBálint症候群を合併し得ること,ならびに塩酸メフロキンとミルタザピン併用療法は有効であることを示した。
著者
福元 尚子 白石 裕一 中道 一生 中嶋 秀樹 西條 政幸 辻野 彰
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-000776, (Released:2016-01-21)
参考文献数
30
被引用文献数
4

症例は65歳男性である.急速進行性の認知機能低下で発症した.頭部MRIのFLAIR/T2強調画像で大脳皮質下に広汎な高信号域を認め,髄液よりJohn Cunningham virus-DNAを検出した.最終的に脳組織所見から進行性多巣性白質脳症と確定診断した.合併症として高安動脈炎と慢性型/くすぶり型成人T細胞白血病が認められた.発症早期にメフロキンとミルタザピンによる治療を開始したが,症状・画像共に改善なく約半年後に死亡した.本例において治療効果が認められなかった理由としては,HTLV-I感染に加えて高安動脈炎によるB細胞系の異常が影響した可能性を考えた.