- 著者
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武田 一郎
- 出版者
- 地学団体研究会
- 雑誌
- 地球科学 (ISSN:03666611)
- 巻号頁・発行日
- vol.52, no.2, pp.71-81, 1998
- 参考文献数
- 65
- 被引用文献数
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後浜上限の位置の安定性と高度に関する従来の知見を概説し,さらに,日本海沿岸の後浜上限高度について検討した.後浜上限の位置は暴浪時の波の規模がさまざまであるにもかかわらず安定している.これは,浅海域のバー(海底砂州)が波に対してフィルターの役割を果たし,また,ステップが汀線直前の水深を規定するので,汀線砕波の波高がある限度を越えることがなく,その結果,暴浪時の波がある限界の地点,すなわち後浜上限を越えて遡上することがないためである.さらに,耐塩風性植物の地形固定作用も後浜上限の位置の安定に寄与する.後浜上限高度は海浜を構成する堆積物が粗いほど大きくなる.これは,堆積物が粗いほど高いフィルター効果を持つインナー・バーが形成されにくく,また,規模の大きなステップが形成されやすいので,汀線砕波波高が大きくなり得るためである.アウター・バーが存在する海岸では,これもまた波に対してフィルターの役目を果たすので後浜上限高度は小さくなる.複数のアウター・バーを発達させる多段バー海岸では,さらに後浜上限高度が小さくなる.日本の太平洋沿岸の主要海浜のほとんどは1段バー(1段のアウター・バーを有する)海岸であるのに対して,日本海沿岸はほとんどが多段バー海岸であるので,日本海沿岸の後浜上限高度の方が小さくなる.