著者
武田 一郎
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.294-306, 1998-04-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
49

日本の太平洋沿岸の砂礫質海浜における後浜上限を地形と海浜植物を用いて六つのタイプに分類し,その高度BH(平均海面からの高さ)と海浜堆積物の粒径Dとの関係を検討した.その結果,D<10mmの範囲ではDが大きくなるにつれてBHも大きくなるが,D>10mmの範囲ではDが大きくなるにつれてBHが小さくなること,また,バー海岸のBHはバーなし海岸のBHよりも小さくなることを見出した.後浜上限高度は暴浪時に波が遡上する最大の高度Rmaxに一致するが,Rmaxは暴浪時の波の規模だけではなく,バーの波に対するフィルター効果,汀線砕波波高を規定するステップの規模,および礫の消波効果と関係する.これらの諸要素はDと密接に関連するために,BHもDに大きく左右されることが分かった.
著者
武田 一郎
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.71-81, 1998
参考文献数
65
被引用文献数
1

後浜上限の位置の安定性と高度に関する従来の知見を概説し,さらに,日本海沿岸の後浜上限高度について検討した.後浜上限の位置は暴浪時の波の規模がさまざまであるにもかかわらず安定している.これは,浅海域のバー(海底砂州)が波に対してフィルターの役割を果たし,また,ステップが汀線直前の水深を規定するので,汀線砕波の波高がある限度を越えることがなく,その結果,暴浪時の波がある限界の地点,すなわち後浜上限を越えて遡上することがないためである.さらに,耐塩風性植物の地形固定作用も後浜上限の位置の安定に寄与する.後浜上限高度は海浜を構成する堆積物が粗いほど大きくなる.これは,堆積物が粗いほど高いフィルター効果を持つインナー・バーが形成されにくく,また,規模の大きなステップが形成されやすいので,汀線砕波波高が大きくなり得るためである.アウター・バーが存在する海岸では,これもまた波に対してフィルターの役目を果たすので後浜上限高度は小さくなる.複数のアウター・バーを発達させる多段バー海岸では,さらに後浜上限高度が小さくなる.日本の太平洋沿岸の主要海浜のほとんどは1段バー(1段のアウター・バーを有する)海岸であるのに対して,日本海沿岸はほとんどが多段バー海岸であるので,日本海沿岸の後浜上限高度の方が小さくなる.
著者
武田 一郎
出版者
学術雑誌目次速報データベース由来
雑誌
地理学評論. Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.70, no.8, pp.512-525, 1997-08
参考文献数
44
被引用文献数
4

茨城県勝田市那珂海岸における2年間(1980年8月28日~1982年8月30日)の地形測量と波のデータを用い,後浜上限の位置と高度に関する検討を行った.バーが波に対してフィルターの役目を果たすため,また,汀線直前の水深を規定するステップ基部水深に限度があるたあに,汀線砕波の最大波高には限度がある.その結果,沖合い段階での暴浪の規模が異なっても,波の遡上限界地点に大きな差が生ずることはない.したがって,その地点に一致する後浜上限の位置はかなり安定したものとなる.<br> この後浜上限の高度は海浜堆積物の粒径が粗くなるほど大きくなる.これは,沖合いの暴浪特性が同じであっても,海浜堆積物の粒径が粗ければ汀線砕波波高が大きくなり,その結果,波の遡上限界高度が大きくなるためである.その理由は,海浜堆積物の粒径が粗いほど波に対してフィルターの効果を有するバーが発達しにくくなり,また,最大の汀線砕波波高を規定するステップ基部水深が大きくなるためである.
著者
武田 一郎 世古 春香
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学紀要 (ISSN:03877833)
巻号頁・発行日
no.134, pp.65-78, 2019-03