著者
山崎 慎一 木村 和彦 本吉(手嶋) 博美 武田 晃 南條 正巳
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.30-36, 2009-02-05 (Released:2017-06-28)
参考文献数
34
被引用文献数
6

Over 1500 soils samples have been analyzed for Cd. Samples were 514 soils taken in such a way as to cover a wide range of soil types common to Japan (referred to as nationwide samples), 139 volcanic ash soils also taken nationwide scale (volcanic ash samples), and 887 soils taken from arable lands in Miyagi Prefecture, northeastern Japan (Miyagi samples). Histogram has revealed that the frequency distributions of Cd was positively skewed and coincided well with those of log normal distributions, indicating arithmetic mean value is not appropriate to represent the Cd status in soils. The anti-log values of the minimum, mean, maximum, and 95% confidence limit of the mean calculated using log transformed data were respectively 0.015, 0.27, 3.37 and 0.06〜1.09mg kg^<-1>. Whereas the higher outliers in Miyagi samples were polluted soils, those in nationwide samples were un-polluted dark red soils (Chromic Luvisols) and red soils (Orthic Acrisols) both derived from limestone. It is assumed that trace amounts of Cd contained in the parent materials as impurities at the initial stage of weathering were gradually concentrated during the succeeding weathering processes as almost all of CaCO_3 were lost. The above hypothesis is strongly exemplified in the findings that the concentration levels of more than 30 trace elements in these soils were also higher than those of the other soils. It is worth mentioning that the occurrence of soil samples containing more than 3mg kg^<-1> of Cd not necessarily indicates events related to the anthropogenic soil pollution. The concentration range of Cd in volcanic ash samples was apparently lower than that of the other two groups. Comparison of concentration levels of Cd between volcanic ash soils and non-volcanic ash soils after excluding outliers has revealed that Cd in the former were significantly lower than that in the latter.
著者
中尾 淳 武田 晃 塚田 祥文 舟川 晋也 小崎 隆
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.290-297, 2011-08-05 (Released:2017-06-28)
参考文献数
35
被引用文献数
1

^<137>Csの土壌から農作物への移行低減化対策として,K飽和・乾湿処理によって土壌のCs保持能を向上させる手法について検討を行い,以下の結果を得た.(1)スメクタイトが優先して存在する水田土壌(Sm)に対してK飽和と48時間の50℃乾燥を行った結果,Kdが大きく増加し,さらに10回乾湿処理を施すことでKdの値はさらに増加した.(2)アロフェン質黒ボク土(Am)又は純鉱物イライトに対してK飽和・乾湿処理を行った結果,Kdの大きな変化は確認されなかった.(3)K飽和・乾湿処理によりKdが大幅に増加したSm7試料(1D, 10WD)に対してK脱着処理を行った結果,Kdの値は大きく減少したものの,K飽和・乾湿処理を施さなかったSm7試料のKdと比べると高い値が維持された.このように,土壌がスメクタイトを含む場合,K飽和・乾湿処理は土壌の^<137>Cs保持能を高めるために有効であることが分かった.この処理が実際に^<137>Csで汚染された土壌から農作物への^<137>Cs移行低減化に有効かどうかは,K施用方法や乾燥条件を変えて詳しく調べる必要がある.
著者
武田 晃
出版者
Japan Poultry Science Association
雑誌
日本家禽学会誌 (ISSN:00290254)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.19-31, 1964-10-25 (Released:2008-11-12)
参考文献数
37
被引用文献数
7 7

1. 人工授精後最長21日間, 平均11.1日間にわたり受精卵が産出された, 注入後6日までは90%以上の受精率を示したが, 13日以降は40%以下に低下した。2. 人工授精後4日までは卵管各部のスメヤー中に精子が見出されたが, その後は漏斗部後半ならびに子宮部から腟部への移行部附近のスメヤーのみに局限され, 前者においては7日後, 後者においては22日後にも精子が認められた。3. 漏斗部後半および子宮-腟移行部に存在する腺の腺腔中に, 前者においては15日後, 後者においては30日後にいたるまで精子が包蔵されていた, しかし22日以降においては腺腔中に包蔵された精子は分解像を呈した。また腺腔中に発見される精子の数は漏斗部においてはきわめて少ないが, 移行部においてはしばしば集団状をなし前者にくらべはるかに多かった。4. 注入精子数が6億ないし1.5億のときには高い受精率を示したが, 3000万では半減し, 400万では受精卵は全く得られなかった。400万注入の場合スメヤー中には精子を見出すことはできなかったが, 移行部の腺腔中には精子が包蔵されていた。5. 移行部の腺腔中には受精卵産出期間であると否とにかかわらず精子が発見されたが, 漏斗部の腺腔中においては受精卵産出期間中には精子発見例が多く, 無精卵産出期に入ったものでは少なかった。6. 精子を包蔵する腺は漏斗部後半3~5cmの間, および子宮部から腟部への移行部1~1.5cmの間のみに存在した。7. 死亡精子を人工授精した場合にも精子は卵管を上昇したが, 腺腔中には全く侵入しなかった。
著者
武田 晃治 和田 薫 砺波 雄介 佐藤 純一 村上 敏文 新村 洋一
出版者
東京農業大学
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.76-83, 2016 (Released:2016-12-15)

本研究は,植物色素が光合成のみならず酸素毒性から細胞や種を守る抗酸化物質としても働いてきたことを,進化的側面から植物色素の存在意義について再考察させるための実験開発と教材開発を行った。実験開発では,過酸化水素と2価鉄から生じる最も酸化力の高いヒドロキシルラジカルによるDNA分解が,植物色素であるアントシアニンにより防ぐことができることを可視化するための最適実験条件を明らかにした。また,高校生を対象とした授業実践から,本実験教材を用いた授業の教育効果を検証し,高等学校生物への発展的導入について考察を行った。授業実践の事前・事後アンケートの比較の結果,本教材のアントシアニンによる抗酸化能を可視化した実験により,植物色素の抗酸化能について理解しやすい教材であることが明らかとなった。また,授業解説と実験を行うことで,植物色素の抗酸化能が,紫外線や光合成から生じる活性酸素の毒性に対する防御機構として,植物の細胞機能の維持に重要な働きをしていることを,進化的側面から理解させることのできる効果的な教材であることも明らかとなった。よって本研究は,光合成以外の働きとして重要な植物色素の抗酸化能に着目した新たな実験としてだけでなく,光合成とバイオテクノロジーで学ぶ知識と実験技術を融合したバイオテクノロジーの発展的教材として,生徒に生命進化の観点から植物色素を多面的に理解させるための探究活動として,高校生物への今後の導入が期待された。
著者
武田 晃
出版者
Japan Poultry Science Association
雑誌
日本家禽学会誌 (ISSN:00290254)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.26-36, 1982-01-25 (Released:2008-11-12)
参考文献数
33
被引用文献数
10 11

鶏精子は塩溶液中においてその体温近くの40°C前後で運動を停止するがその後室温に戻すと運動を回復する, いわゆる温度による Reversible Inactivation という特性を示すと言われるが, その現象はつまびらかでなく, 原因や機構については解明されていない。そこでこれら究明のために本研究に着手した。本回は鶏精子と羊精子の比較ならびに鶏精子のそれに影響を及ぼす要因のいくつかについて知見を得たので報告する。(1) KRP液で希釈または洗浄懸濁された鶏精子は40°Cにおいて運動を停止し室温 (20°C) に戻すと運動を回復 (Reversible Inactivation) したが, 羊精子ではこのような現象は認められず時間の経過と共に次第に運動が低下した。無希釈精液においても鶏精子は45°Cで Reversible Inactivation を示したが羊精子では認められなかった。50°Cにおいては鶏精子も羊精子も短時間内に死滅した。(2) 数種の塩溶液で洗浄懸濁された鶏精子は40°Cにおいて, 塩溶液の種類によって差はあるが, いずれも短時間内に Reversible Inactivation を起した。洗浄を行なわずただ希釈しただけの精液では運動停止までの時間 (不動化所要時間) が延長した。また無希釈精液は40°Cでは120分後においてもなお活発な運動を続けた。(3) 遠心洗浄された精子は40°Cにおいて Reversible Inactivation までの所要時間が短縮するが, これは遠心処理のためではなく洗浄処理の影響であった。(4) 希釈または洗浄懸濁された精子に40°Cにおいてごく短時間内に Reversible Inactivation を起させる塩溶液は, 不動化所要時間はそれよりも延長するが, 30°Cにおいてもやはり Reversible Inactivation を起させた。(5) 希釈度が高まるほど精子の運動性は低下し, また Reversible Inactivation までの時間も短縮した。(6) 保存時間が長くなるほど精子の運動性は低下し, また Reversible Inactivation までの時間も短縮した。(7) 空気およびO2中において40°Cで運動を停止した精子はO2の通気や振盪では運動を回復せず, 温度を室温に下げることによってはじめて運動を回復した。CO2中では運動停止後温度を下げるだけでは運動は回復せず, さらに空気を通気することが必要であった。(8) 塩溶液により洗浄懸濁された精子液への血漿および卵白の添加は Reversible Inactivation までの時間を延長し, 特に精製卵アルブミンの添加時には延長が著しかった。一方燐酸緩衝液の添加は Reversible Inactivation までの時間を短縮した。(9) 卵管各部のホモジネート上澄液の添加は Reversible Inactivation までの所要時間にはほとんど影響を及ぼさなかった。
著者
山崎 慎一 木村 和彦 本吉(手嶋) 博美 武田 晃 南條 正巳
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.30-36, 2009-02-05
被引用文献数
3

筆者らは土壌中における各種元素の分布と挙動に関する研究は周期律表に沿ってなるべく多くの元素を対象に、理想的には全元素を対象に、組織的、系統的に行うべきであるとの立場で研究を実施してきている。したがって、ある特定の元素のみを取り上げて研究を進めることには一定の距離を置いてきていた。しかし、コーデックス委員会による食品中のCd(カドミウム)基準値が議論されたことが契機となって、目下日本国内においてはCdに関して数多くの調査研究が実施されている。それに関連し、土壌中におけるCd濃度に関しても種々議論されているが、中には不正確な情報すら流されている現状がある。さらには、我々のこれまでに提供してきたデータが誤って解釈されている例もみられることから、今回はすでに公表している1500点余りの各種土壌試料中の40〜60種類の元素濃度の情報の中からCdを中心により詳細に検討し、発表することにした。
著者
片岡 正文 岡林 孝弘 中島 明 中谷 紳 上平 裕樹 武田 晃 折田 薫三 能見 貴人 金澤 浩
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.71-77, 1994-01-01
被引用文献数
9

大腸癌,胃癌,肺癌の手術切除例において,p53蛋白の発現異常を免疫組織学的に検討し,さらにその結果が遺伝し変異をどの程度反映しているかを検討するために,reverse transcription-polymerase chain reaction-single strand conformation polymorphism (RT-PCR-SSCP)法および直接シーケンスにて点突然異変の検出を行った.免疫組織染色は,マイクロウェーブ固定標本を使用し,抗p53蛋白モノクローナル抗体(PAb1801)を用いて行った.大腸癌13例中9例(69.2%),胃癌8例中5例(62.5%),肺癌5例中4例(80.0%)に陽性所見が認められたが,臨床病理所見との相関関係は認められなかった.RT-PCR-SSCP法では大腸癌13例中6例に異常を認め,両方法間の一致率は84.6%であり,点突然変異が免疫組織所見によく反映された.p53蛋白の発現異常は60%以上の陽性率を示し,幅広い腫瘍マーカーとしての可能性が示唆された.また,RT-PCR-SSCP法により点突然変異の検出が簡便に行えた.