著者
柴田 尚 戸澤 一宏 杉山 英男
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.jjom.H24-11, 2013-11-01 (Released:2018-01-27)
参考文献数
12

チェルノブイリ事故以後から富士山において実施している野生きのこを指標とした放射性セシウムに関するモニタリングの結果を報告した.福島事故以前には,高海抜地域の野生きのこで放射性セシウム濃度が高く,福島事故以後には,低海抜地域の野生きのこで放射性セシウム濃度が高かった.また,富士山の野生きのこに含まれる Cs-137濃度に対するチェルノブイリ事故の寄与率と福島事故の寄与率を計算し,前者(17%)に比べて後者(73%)が高い数値であることを示した.
著者
小泉 美樹 戸沢 一宏 柴田 尚 小林 浩
出版者
日本食品化学学会
雑誌
日本食品化学学会誌 (ISSN:13412094)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.102-106, 2016 (Released:2016-08-29)
参考文献数
10

Concentrations of Cs-134 and Cs-137 in 205 wild mushroom samples collected in Yamanashi Prefecture from September 2011 to October 2013 were measured. In all of wild mushroom samples, the concentration of Cs-137 was higher than that of Cs-134; in some samples, Cs-137 was detected while no Cs-134 was detected. Even when the concentrations of Cs-134 and Cs-137 were compared in consideration of their half-lives on the assumption that these radioactive cesium elements were brought due to the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant (NPP) accident, the concentration of Cs-137 was still significantly higher than that of Cs- 134. As the amounts of Cs-134 and Cs-137 released from the Fukushima Daiichi NPP were almost equivalent, the finding indicates that the collected wild mushrooms contained Cs-137 not derived from the Fukushima Daiichi NPP accident. In fact, the maximum concentration of Cs-137 not derived from the NPP accident was more than 200 Bq/kg in a sample.
著者
杉山 英男 柴田 尚 磯村 公郎 岩島 清
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.13-22_1, 1994-02-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
22
被引用文献数
12 19

富士山山腹 (標高1,700~2,300m) を中心に採取 (1989~1990年) した野生キノコ中の放射性セシウムの濃度レベル並びに生息基質からの移行について調べた. 富士山山腹ではキノコ中の放射性セシウム (137Cs+134Cs) 濃度は17~1,083Bq/kg生で, 生息基質である土壌の66~531Bq/kg乾と共に他地点より高い値を示した. キノコと生息基質との137Cs濃度比 (湿/乾) は報告のある葉菜, 根菜等の移行係数より100~1,000倍高いレベルにあった. これらの濃度比と生思基質のpHには有意な相関がみられ, 更に生息基質の強熱減量の増加に伴いキノコの137Cs濃度は高くなる傾向が認められており, 移行特性の一部が示唆された. これらキノコ摂取による実効線量当量は, 最大で自然界からの年間被曝線量の2%程度と推定される.
著者
礒村 公郎 樋口 正信 柴田 尚 塚田 祥文 岩島 清 杉山 英男
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.157-163, 1993-03-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
18
被引用文献数
2 1

日本国内の数か所で採取した蘚苔類中の134Cs, 137Cs, 7Be および40Kを測定した結果, 55試料すべてから137Cs, 7Beおよび40Kが検出され, 134Csは33試料から検出された。蘚苔類中の134Cs/137Cs放射能濃度比は平均0.057±0.026でチェルノブイリ事故時の134Cs/137Cs放出比から算出した採取時の存在比 (0.10) に比べて小さく, 核実験等のチェルノブイリ事故以外の137Csを含んでいることが示唆された。蘚苔類中の134Cs, 137Cs濃度は採取地点の標高と正の相関が認められた。成長年次が明瞭で各年ごとに成長した植物体を容易に分離できるイワダレゴケを試料として, 成長年別にイワダレゴケ中の放射性セシウムを測定した結果, 137Csは古い葉ほど濃度が高く, 134Csは1986, 1987, 1988年にのみ検出され, 過去数年にわたる放射性セシウムの蓄積傾向を把握することが可能であることが示唆された。
著者
加藤 文男 寺田 宙 柴田 尚 杉山 英男 桑原 千雅子
出版者
東邦大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

1.キノコ生息土壌の調査:富士山麓のキノコ生息土壌を採取し、土壌pH,^<137>Cs, Cs, K量を測定した。土壌pHは3.5-5.5と大きく酸性に偏っていた。2.キノコ生息土壌に生息する微生物のCs感受性:13の土壌サンプルについて、生息微生物のCs感受性を調べ、一般に細菌のCs感受性は低く、放線菌は感受性が高いという結果を得た。三宅島で採集した土壌より200mMCsで増殖可能な高度耐性株Streptomyces sp TOHO-2を分離した。3.分離培地のpHの影響:分離培地のpHを5,6,7に調製し、分離される細菌、放線菌の数を測定した.細菌数はpH6で最も多く、pH7の1.6倍、pH5ではpH7の1.15倍であった。放線菌数はpHの低下と共に菌数が減少し、pH7のおよそ50%であった。4,キノコ生息土壌より分離した放線菌のCs取込:これらの菌株に蓄積されるCs量は20mg/g dry wt mycelia程度であった。K202株について菌体内Cs, K量および増殖についてpH5と7で比較すると、Csによる増殖阻害はpH7の方で強く現れ、Cs蓄積量の増加とK量の減少もpH7の方が強く現れた。5.チャンネル阻害剤4-aminopyridine(4-AP)の影響:4-AP存在下でのCs取込量の変化を調べた。4-APによる阻害作用はpH7で強く認められたが、pH5では4-APによるK量の減少は認められたが、Cs量は増加し、増殖にも影響は認められなかった。6.キノコ生息土壌より分離した細菌のCs取込:生息環境に近いpH5でCsによる増殖抑制が強く見られた。また、細胞内Cs蓄積量は調べたいずれの菌株でも5mg/g dry wt前後であり、放線菌の1/4程度であった。7.細胞内Csの局在化:土壌分離放線菌、細菌、いずれの場合も低真空SEMで輝点が観察され、輝点部分にはP. OとともにCsが認められた。輝点以外の領域には、Csのシグナルは観察されず、局在化による毒性の軽減が示唆された。8.ポリリン酸の関与:^<31>P-NMRによりS.lividanns TK24にポリリン酸が存在する事を確認した。ポリリン酸合成に関わるpolyphosphate kinaseをコードする遺伝子ppkの破壊を試みている。
著者
岩﨑 安博 川嶋 秀治 柴田 尚明 田中 真生 中島 強 國立 晃成 置塩 裕子 中田 朋紀 米満 尚史 上田 健太郎 加藤 正哉
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
pp.37.3_01, (Released:2023-02-15)
参考文献数
13

症例は50代の男性. 罠にかかったイノシシを捕獲しようとした際に, イノシシに胸部に突進された. さらに転倒後両下肢を複数回咬まれた. 救急隊により開放性気胸と判断されドクターヘリが要請された. 現場で胸腔ドレナージを実施した. 両下肢にも多発切創を認め圧迫止血を行い病院へ搬送した. 第4病日に胸腔ドレーンを抜去し, 第28病日に退院となった. イノシシの犬歯は非常に鋭く大きく, それによる外傷は単なる咬傷でなく, 深部に達する刺創, 切創となり致死的な外傷を来たしうる. また攻撃性が強く多発外傷ともなりうる. イノシシによる外傷を診療する場合には, これらの特徴を踏まえて重症外傷の可能性も念頭に置いて対応する必要がある.
著者
柴田 尚武 森 和夫 関根 一郎 須山 弘文
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1089-1094, 1988-11-01

抄録 22歳女性,1年前まで覚醒剤を常用していた。1年ぶりにメタンフェタミン(MAP)を静注後昏睡となり,くも膜下出血で死亡した。脳血管造影で右脳梁周動脈にextravasationを認め,血中に374μg/100gのMAPを検出した。剖検にて脳主幹動脈に中膜平滑筋壊死を主体とする病変が広範に観察され,程度は前大脳>中大脳>椎骨>後大脳>脳底動脈の順に強かった。中膜壊死部には炎症細胞浸潤や滲出物を認めず,ごく早期の病変と考えられた。その他,線維性内膜肥厚や中膜石灰化も存在した。MAPポリクロナール抗体を用いた免疫組織学的検索では,中膜の壊死周辺部で染色された。以上より,MAP中毒に頭蓋内出血を合併する成因としては,まず,脳主幹動脈中膜の急性壊死をおこして血管の脆弱化をきたし,さらにカテコールアミン遊離作用による急激な血圧上昇が加わって破裂をおこし,出血すると考えられる。
著者
後藤 康彦 桧垣 正吾 柴田 尚 保坂 健太郎
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.53-58, 2022-11-01 (Released:2022-12-28)
参考文献数
7

福島原発事故後に,富士山の方位別および標高別に野生食用きのこ3種を採集して,子実体の放射性Cs濃度を測定した.富士山東面では全ての地点で最高値を示す試料が多く,特に中標高地域が高かった.次いで北東面の中標高地域および高標高地域で高い傾向にあった.北面では低い値を示す試料が多く,高標高地域では特に低い値を示す傾向にあった.
著者
土井 光則 岩城 久弥 柴田 尚明 加藤 正哉
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.522-526, 2019-06-30 (Released:2019-06-30)
参考文献数
3

和歌山県立医科大学附属病院では2003年1月からドクターヘリを運行しており,一般的な救急医薬品のみを携行し,現場で処置を行った後に医療機関へ搬送していた。しかし出動先で,迅速な気管挿管や救急処置を要する場合,麻薬や筋弛緩薬の投与ができればより効率的な救急診療が可能であるとのフライトドクターの要望により,救急担当薬剤師という立場でこれらの薬剤の管理方法や運用方法を考えた。薬剤の特性に基づいて携帯ケースを用意したり,持ち出し管理表を作成するなど,救急医療の現場において救急に特化した薬剤師が関与することで,救急医療の質の向上につながったと考える。
著者
田中(小田) あゆみ 野口 享太郎 古澤 仁美 木下 晃彦 仲野 翔太 小長谷 啓介 山中 高史 水谷 和人 柴田 尚
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.129, 2018

<p>トリュフは外生菌根性のきのこで,食用価値が高く,日本国内での栽培技術確立が求められている.欧米では,土壌pHが高く,攪乱後の土壌でトリュフ生産が増加することが知られているため,本研究では樹木に耕耘と石灰施肥を行い,細根生産量や外生菌根の形成率の変化を調べた.調査地は,山梨県のクリ林と茨城県のクヌギ林の2カ所とし,2016年春に3m×3mの処理区を設置した.山梨では1本の調査木の周囲に施肥区と対照区を隣り合わせに設置し,茨城では施肥区と耕耘区,対照区をそれぞれ独立に設置した.施肥区には約20t/haのてんろ石灰を2-3回に分けて散布した.細根生産はイングロースコア法により求め,根のスキャン画像について画像解析ソフトウェア(WinRHIZO)により総細根長や比根長を求めた.その結果,石灰施肥により細根生産量と比根長,根端数が増加し,菌根形成率も高まる傾向が認められた.しかし,これらの傾向は樹種や試験地間で異なった.また,耕耘処理は樹木の細根生産量や形態に大きな影響を与えなかった.以上より,てんろ石灰施肥による土壌養分量の増加は,樹木細根の量を増やし,トリュフをはじめとする外生菌根の形成を促進する可能性が示唆された.</p>
著者
柴田 尚樹 梶川 裕矢 坂田 一郎
出版者
Japan Society of Information and Knowledge
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.171-176, 2010-05-15
被引用文献数
1

二次電池のケーススタディを通して、学術俯瞰、特許俯瞰を通して、商業化可能な技術要素の早期発見を行う方法論を提案する。学術論文は基礎的、特許は応用的になる傾向があった。学術論文と特許それぞれの主要5領域が扱うトピックを比較すると、リチウム二次電池と電解質に関する2組の対応関係が見られ、トピックスの内容や平均出版年から学術論文と特許の差分を抽出した。その結果、商業化の可能性がある領域が発見された。
著者
杉山 英男 岩島 清 柴田 尚
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.39, no.11, pp.499-502, 1990-11-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
6
被引用文献数
4 7

Concentration of 137Cs, 134Cs and potassium were measured in several higher fungi and in substrates, soils, woods and litters in some Kanto and the Koshin districts, Japan, following the Chernobyl accident during October to November 1989. 137Cs concentrations in fungi were in the range of 0.7-101 Bq kg-1⋅fresh. Maximum 137Cs level in them was observed in Boletopsis leucomelas (Pers.: Fr.) Fayod. Significantly higher levels of concentration ratios of 137Cs in fungi to substrates (e.g.; 137Cs concentration · fresh in fungus/137Cs concentration · dry in soil), 10-1 to 10×10-1, were found nearly 10 to 1000 times as much as leaf vegetables, root crops and potatoes to substrates. It was confirmed that levels of concentration ratios of potassium were similar to those of 137Cs. In all fungi, 134Cs which released from the Chernobyl accident and is not present in nuclear weapons fallout was not detected.
著者
柴田 尚
巻号頁・発行日
2006

筑波大学博士 (農学) 学位論文・平成18年1月31日授与 (乙第2169号)
著者
佐々木 けいし 柴田 尚 伊藤 隆介 羽子田 龍也 閔 鎭京
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

廃校等を芸術文化的施設として活用している事例を、全国46、海外2箇所訪問調査すると同時に、HPやFaceBookを活用して情報収集した。最終報告で全国94施設をリスト化し、うち北海道内19施設、北海道外5施設、海外2施設を具体的に紹介した。この数を基に、廃校の芸術文化的活用の割合は、全国で1.2%、北海道では3.5%であるという結論を導き出した。加えて「廃校・旧校舎アートフォーラム」を2回開催し、廃校の新たな文化施設としての側面の検証及び、近未来の日本型のアートスペースの在り方や運営法、可能性について検討した。