著者
岩切 一幸 毛利 一平 外山 みどり 野瀬 かおり 落合 孝則 城内 博 斉藤 進
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.7-14, 2006-01-20
被引用文献数
1 4

フリーアドレス形式オフィスレイアウトでのVDT作業者の姿勢および身体的疲労感: 岩切-幸ほか.独立行政法人産業医学総合研究所-フリーアドレスとは, オフィス内の好きな机に作業者がコンピュータや資料を持って自由に座ることができる新しいオフィスレイアウトである.近年, このレイアウトの導入が増えてきていることから, 従来の固定席形式レイアウトと比較した, フリーアドレス形式レイアウトの実状と作業者の疲労状況を明らかにすることを目的としたアンケート調査を実施した.解析対象者は, システムエンジニア職でノート型コンピュータを使用している20歳から59歳までの男性VDT (Visual Display Terminals)作業者203名とした.そのうち, フリーアドレスの作業者は150名, 固定席の作業者は53名であった.フリーアドレス形式レイアウトは, 固定席形式レイアウトに比べて個人の作業スペースの改善に有効であった.フリーアドレスにおいて危惧されてきた作業者間のコミュニケーションやサポートの不備については, 作業者の不満は認められなかった.しかし, フリーアドレス形式レイアウトでは, 踵が浮いた姿勢で作業している者が多く, 椅子の高さ調節を行っていないと思われた.さらに, このレイアウトは, 首・肩および背中・腰のこり・痛みを増大させる可能性も否定できなかった.このことから, フリーアドレス形式レイアウトは, 何らかの問題を抱えている可能性があり, このレイアウトとVDT作業者の健康について更に研究が必要と考えられた.
著者
岩切 一幸 毛利 一平 外山 みどり 堀口 かおり 落合 孝則 城内 博 斉藤 進
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 = Journal of occupational health (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.201-212, 2004-11-20
参考文献数
29
被引用文献数
11 34

近年,VDT(Visual Display Terminals)機器の普及により,職場におけるVDT作業者数およびVDT作業時間は増加している.それに伴い,VDT作業に関する疲労対策に取り組んでいる事業所も増えている.本研究では,このような職場におけるVDT作業者の疲労状況と疲労に関連する項目を検討し,改善すべき要因の候補を見いだすことを目的としたアンケート調査を実施した.調査票は3,927部配布し,2,374部(回収率:60.5%)回収した.解析対象者は,20歳から59歳までのVDT作業者1,406名(男性1,069名,女性337名)とした.疲労と調査項目との関連性の検討には,ロジスティック回帰分析を用いた.疲労自覚症状の訴えは,男女ともに眼の痛み・疲れが最も多く(72.1%),次いで首・肩のこり・痛み(59.3%),腰のこり・痛み(30.0%),手・腕の痛み・疲れ(13.9%)が多かった.いずれの疲労自覚症状においても,女性は男性に比べ高い有訴率を示した.眼の痛み・疲れには,男女ともに気流への不満の有無が最も関連し,従来眼の痛み・疲れの要因とされてきた照明の映り込みや文字の見やすさは関連しなかった.これは,職場での照明環境が改善され,グレア対策が進められているためと考えられる.首・肩のこり・痛みにはキー入力中の肩の持ち上がりとマウスの形状・操作位置が関連し,手・腕の痛み・疲れにはマウスの操作位置と机の高さが関連した.腰のこり・痛みには,椅子の座り心地とキー入力中の手首を浮かせた姿勢が主に関連した.筋骨格系の疲労では,VDT作業に関する疲労対策が実施されてきているにも関わらず,従来の報告と同様の項目が関連した.<br>
著者
尾之上 さくら 毛利 一平 吉川 徹
出版者
関東学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

港湾労働者96名を対象に健康調査を実施した結果、交代勤務、早朝・夜間勤務などの労働条件が身体的健康に影響する可能性が示唆された。精神的健康への影響については、職業性ストレス簡易調査から全体の27%の人にストレス反応がみられ、作業員では仕事による身体的負担が高いことが明らかとなった。面接調査では、港湾全体に労働安全に対する意識が定着し、安全に関する企業努力が物損事故、人身事故の減少に繋がっていた。一方、メンタルヘルス対策については、これからの課題であることがわかった。
著者
毛利 一平 小川 康恭 甲田 茂樹 熊谷 信二
出版者
独立行政法人労働安全衛生総合研究所(産業医学総合研究所)
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

1.清掃作業者を対象としたコホートの構築全日本自治団体労働組合の協力を得、全国の清掃労働者に対してコホート調査への参加協力を呼びかけた。コホート構築に必要な個人情報の収集(ベースライン調査)に、ごみ焼却炉での経験を有する者(曝露群)2,866名、ごみ収集作業者(非曝露群)6,239名の協力を得た。発がんリスクについては早期の評価を目指し、退職者を対象としたコホートの構築を試みたが、個人情報保護にかかわる社会環境の変化もあり、実現は困難であった。2.ごみ焼却作業におけるダイオキシン類へのばく露の評価全コホートを対象に、個々のダイオキシン類への曝露を、血液試料の分析により客観的に評価することは困難である。このため、作業内容や従事期間などの代理指標による曝露評価が必要であった。ベースライン調査において、清掃職場での職歴と飛灰に接触する頻度を、自記式調査票によって記録した。また、58人のごみ焼却炉作業員を対象に代理指標による曝露評価と血中ダイオキシン類濃度の相関を検討したところ、曝露期間(飛灰に曝露する作業に従事した期間の総和)と血中HpCDF濃度(PCDD/DFの異性体の一つ)に相関が認められた。3.がん死亡リスクの評価研究期間内に構築したコホートはすべて現役の労働者であり、労働に伴うがん死亡リスクを評価するには、今後さらに10年以上の追跡期間が必要である。4.児の性比への影響生殖障害の指標として、児の性比を検討した。複数の曝露代理指標を用いて解析した結果、統計学的に有意ではなかったが曝露期間が長いほど女児の比率が多くなる傾向を認めた。この傾向は、母親の出産経験、出生時における父親の年齢、出生年を調整しても変わらなかった。ただし、最も曝露期間が短い群で非曝露群よりも男児が多い結果となり、飛灰曝露と子供の性比に関連があるとするには根拠が弱く、現段階で明確な結論は得られなかった。