著者
松田 時彦 松浦 律子 水本 匡起 田力 正好
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.124, no.4, pp.657-664, 2015-08-25 (Released:2015-09-17)
参考文献数
18
被引用文献数
3

There are two emerged abrasion platforms on Enoshima Island, Kanagawa Prefecture, Southern Kanto district: the 4.0-meter-high Ryoshimachi surface, and the 1.0–1.3-meter-high Iwaya surface. Both emerged prior to the 1703 Genroku Earthquake. Considering uplift due to the 1923 Taisho Kanto Earthquake and non-seismic subsidence since the Genroku Era, uplift due to the 1703 Genroku Earthquake was 0.7 m or less, assuming that the height of Ryoshimachi surface before the Genroku Earthquake was 3 m or higher. This indicates that uplift of the Genroku Earthquake at Enoshima was smaller than that of the Taisho Earthquake, and the focal regions of the two earthquakes were different in the Sagami Bay. These two earthquakes are not repeating earthquakes at the Sagami Bay area.
著者
中田 高 渡辺 満久 水本 匡起 後藤 秀昭 松田 時彦 松浦 律子 田力 正好
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

富士川河口断層帯は,平均変位速度が7m/1,000年を上回る活断層によって構成され,駿河トラフのプレート境界断層の陸域延長にあたると考えられてきた(山崎,1979:地震調査委員会,1998など).一方,活動度が高く1回の変位量が大きい逆断層であるとされながら,多くの地点で実施されたトレンチ掘削や群列ボーリング調査によっても,断層運動を示す明確かつ決定的な証拠は発見されず(下川ほか,1996:静岡県,1996: 丸山・斎藤,2007,Lin et al. 2013など),大きな疑問となっていた. 富士川河口断層帯を構成する活断層のうち,東側の断層列は津屋(1940)が最初に指摘したもので,羽鮒丘陵の東縁を限る安居山断層とその南の星山丘陵の北東縁と南東縁をそれぞれ限る大宮断層と入山瀬断層からなり,富士山を中心として円弧を描く急斜面の崖下に北西側を低下させる断層が存在すると推定されている.西側の断層列は羽鮒丘陵の西の芝川に沿った芝川断層と蒲原丘陵の西縁を限る入山断層から構成される.羽鮒丘陵と星山丘陵は北西−南東方向に延びる背斜状の細長い高まり地形をなす.丘陵を開析する谷には小規模な河岸段丘や新規の富士溶岩流(大宮溶岩流(津屋,1940))が分布し,丘陵の長軸に直交する胴切り的な正断層によって上下変位を受けている.古富士泥流堆積面からなる丘陵の北縁に沿って丸みを帯びた急斜面が発達し,その下位の段丘面も富士山側に向かって撓んでいるが,古い面ほど急傾斜となり累積的な変形が継続していることが読み取れる.最近,筆者らはフィリピン・ルソン島中部のタール火山のカルデラ湖を囲む外輪山に,重力性の変形により形成されたと考えられる高まり地形を発見した(中田他,2016).この地形は羽鮒丘陵・星山丘陵と酷似しており,両者の成因が共通する可能性が高い. 駿河トラフの海底には,ほぼ南北に延びる急峻で直線的な東向きの海溝斜面が南海トラフの東端部のから連なり,その基部に活断層が発達する.活断層は,海溝斜面を開析するガリーが形成する小扇状地や谷底を変位させ比高数10mの低断層崖を発達させており,活発な断層変位が繰り返していることを示唆している.この急斜面は湾奥では北北西に走向を変え,由比川河口に達する(中田他,2009).大陸棚斜面上には,海底活断層が富士川河口に向かって分岐することを示す変動崖も存在しない。また,星山丘陵の南東縁を限る入山瀬断層は逆断層とされており,1854年安政東海地震の際に蒲原地震山・松岡地震山がこの断層に沿って出現したとされてきたが,その根拠は必ずしも明確ではない. 近年,詳細な空中写真判読から,富士川沿いの地域で南北性の活断層が次々と発見・確認されている.水本他(2013a,2013b)は,松田(1961)が西傾斜の逆断層と認定した身延断層に沿って,富士川の河岸段丘面の西上がりの変位や支谷の左屈曲を発見した.このうち,山梨県南部町原戸付近の支谷の系統的な左屈曲や,同町井出における河岸段丘面を西上がりに変位させる直線的な低断層崖は,身延断層が左横ずれ変位が卓越する活断層であることを示す確実な証拠である.また,渡辺他(2016)は富士川の東岸,身延駅南の角打〜樋之下に系統的な谷屈曲をもとに新たに南北性の左横ずれ断層を認定し,段丘礫層を変位させる断層露頭を確認した. さらに, 糸魚川−静岡構造線と富士川河口断層帯との間に発達する西傾斜の逆断層(松田,1961)のうち,根熊断層と田代峠断層に沿って河谷の左屈曲が複数発達することを新たに見出した.これらの断層は,「日本の活断層」(活断層研究会,1980)では確実度III(活断層の疑いのあるリニアメント)として記載されているものにほぼ一致する.このうち田代峠断層では,興津川上流の大平付近で認められる支谷の左屈曲が極めて明瞭である.伊藤他(2013)は地下構造探査の結果から,田代峠断層は逆断層成分を有する西傾斜の高角左横ずれ断層とした.また,野崎他(2013)は,田代峠断層の北方延長に当たる音下断層(松田,1960)の断層岩を解析し,この断層が高角西傾斜の横ずれ断層である可能性を指摘した.以上の結果から,南部フォッサマグナでは、糸魚川−静岡構造線と富士川との間の横ずれ変形帯が,駿河トラフにおけるフィリピン海プレート境界沿いの変動帯の陸域延長部にあたると考えることができる. 上述の新知見を考慮すれば,富士川河口断層帯、特にその東列をフィリピン海プレート北縁における陸域プレートの境界をとする考えには再検討が必要である.由比川沿いでは富士川河口断層帯の西列に当たる入山断層が活断層として認められてきた(活断層研究会,2001).しかし,由比川の支谷に左屈曲が複数認められるものの,活断層を連続的に認定するにたる明確な地形的な証拠は得られていない.また,入山断層の北方延長とされる芝川断層についても活断層であることを示す確実な証拠は得られておらず,さらに入念なフィールドワークと詳細な分析が不可欠である.
著者
田力 正好 水本 匡起 松田 時彦
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.232, 2013 (Released:2013-09-04)

活断層(縦ずれ)の断層崖は,その成長と共に比高を増大させ,重力的に不安定となる.その結果,断層崖では地すべり・崩壊などのマスムーブメントが発生しやすくなると考えられる.縦ずれ断層が多く,新第三紀以降の固結度の弱い岩石が多く分布する東日本(糸魚川-静岡構造線(糸静線)以東)においては,特に高頻度で発生していることが予想される.本発表では,東日本のいくつかの活断層帯において,断層崖に生じたマスムーブメントの実例を示し,その形態や変形の特徴,断層崖の形態に及ぼすマスムーブメントの影響,活断層のマッピング・変位量の測定等の際に注意すべき点などについて述べる.断層崖沿いに重力的な変形(マスムーブメント)が認められることは珍しくない.断層崖に地すべり等のマスムーブメントが生じている場合,重力的な変形の影響を受けてテクトニックな要因のみの変形の場合に比べて低断層崖の位置がずれたり,変位量が大きくなったりする可能性がある.このため,活断層のマッピングや変位量の測定の際には,重力的な変形の影響の有無を検討することが必要である.特に大規模な地すべりや,地すべり地形が不明瞭な場合には,断層近傍の地形のみに着目すると地すべり地形を見落とす可能性があるため注意が必要である.
著者
渡辺 満久 中田 高 水本 匡起
出版者
一般社団法人 日本活断層学会
雑誌
活断層研究 (ISSN:09181024)
巻号頁・発行日
vol.2017, no.46, pp.9-15, 2017-03-31 (Released:2018-03-29)
参考文献数
17

We found several faulted landforms and an active fault outcrop around the Minobu fault, Yamanashi Pref., central Japan. The Neguma fault may be a reverse fault dislocating a fan surface (not dated) ca. 13 m vertically. Fluvial terrace surfaces at Wada are classified into W1 to W5 surfaces in descending order. It is probable that the W3 surface was formed in the period of MIS 5 to MIS 4. The Wada fault cuts the Neogene and the overlying gravel distributed in almost the same height with the W3 surface. The dip and strike of the fault plane are N5゜E and 50-60゜W, respectively. The striations are plunging to the south at an angle of ca. 20 degree and blow. The relative vertical component is upthrown on the east side. These structures are indicative of left-lateral movement. The maximum accumulated left-lateral slip since MIS 5 to MIS 4 is 100 m at least.
著者
水本 匡 松井 甲子雄
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J85-A, no.4, pp.451-459, 2002-04-01

本論文では,離散コサイン変換(DCT)を用いた画像に対する電子透かしを対象として,プリンタによる印刷とイメージスキャナによる取込み処理の影響を調査し,既存の周波数領域を用いた電子透かしが印刷取込み処理に耐性をもつための要件を検討する.まず最初に,画像コンテンツの印刷取込みによる影響について述べる.次に,DCT領域の印刷取込みによる影響を調査し,透かしの埋込み要件を検討する.最後に,DCTを用いた電子透かしが,印刷取込み処理に対して耐性をもつための具体策を提案する.これは,印刷取込みによって受ける影響の幾何学的な方向性を考慮し,誤差による埋込み要素間の相互作用を軽減することによって実現している.この検討からDCT領域を用いた電子透かしに印刷取込み処理の耐性を付加することができ,電子的なネットワークと物理的なネットワークを相互に往き来するコンテンツを作成することが可能となる.