著者
秋山 遼太 中安 大 水谷 正治
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.726-730, 2021 (Released:2021-08-01)
参考文献数
18

ジャガイモはステロイドグリコアルカロイド(SGA)と呼ばれる有毒なα-ソラニンを含有している。SGAは少量であれば不快なえぐみを示す程度だが,多量に摂取した場合は食中毒を引き起こす。トマトにも有毒なSGAであるα-トマチン が葉や花、未熟果実に蓄積しているが、赤く熟した果実には有毒SGAは蓄積しておらず、食中毒を引き起こすことはない。本稿では、SGA生合成遺伝子同定に関する最近の研究の進展を解説するとともに,それらの知見を生かした有毒SGAを生産しないジャガイモの作出について紹介する.
著者
坂田 完三 水谷 正治 清水 文一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

東方美人茶(Oriental Beauty)はチャノミドリヒメヨコバイ(Jacobiasca formosana,通称ウンカ)に吸汁されたチャ葉から作られる香り豊かな烏龍茶である。この高級烏龍茶の製法の秘密の解明を目指し、天然物化学と酵素・遺伝子の両面から研究を進め、下記の成果を得た。1)本烏龍茶製造時のウンカの関与の詳細な実態調査を行い、実際にウンカの加害チャ葉が使用されていることを確認した。2)ウンカ食害有りと無しのチャ葉からそれぞれ烏龍茶を製造し、製造工程の各段階においてサンプリングを行い、官能検査、香気分析を行った。そして、加害葉から作られた茶は遙かに香気の豊かなものであることを確認した。さらにこの茶の香気特性も明らかにし、hotrienolおよび関連化合物の2,6-dimethyl-3,7-octadiene-2,6-diolはウンカ加害だけでも生成していることが明らかとなった。3)ウンカ加害および製造工程で誘導される遺伝子をMegasort法によるディファレンシャルスクリーニングにより網羅的に取得した。ウンカ加害および製造工程でのストレスにより非常に多くの遺伝子の発現が変動していることが明らかになり、その中にはストレス応答遺伝子が多数同定された。4)それらのうち、ストレス応答物質であるraffinoseやabscisic acidの生合成に関わる遺伝子に着目した。これらの遺伝子の発現量は製造工程中最初の日光萎凋で急激に増加した。それらの化合物の消長を明らかにするためHPLCにより定量的分析を行ったところ、これらは日光萎凋の段階で急激に増加することを確認した。以上のように本課題により、東方美人茶の香気特性を明らかにし、ウンカ吸汁および製造工程での様々なストレスにチャ葉が防御応答した結果、東方美人茶は香り高い茶となっていることを明らかにした。
著者
水谷 正治 坂田 完三 清水 文一 木下 朋美 水谷 正治
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

調査研究には、Tocklai Tea Experimental Station(TTES)の母体であるインドTea Research Association(TRA)の全面的協力が得られることとなり、2年間の共同研究契約を締結し、調査研究を下記のように実施した。1)ダージリン高級紅茶“Second flash"の実態調査06年5月末、日本側から3名の研究者がアッサム地方トクライにあるTTBSとダージリンを訪ね実態調査を行った。インド側2人の研究者とともにダージリンの代表的茶園を順次訪ねて、虫害の状況と製茶状況を視察した。また、2カ所の茶園では“Second flash"製造時の各製造段階でのサンプルの採取を行った。ダージリンではヨコバイ(英名:jassid(green fly):Empoasca flavescens Fabr.)の他にアザミウマ(英名: thrips: Taeniothrips setiventris Bagnall)の食害が多かった。いずれの虫害がダージリン茶の香気形成に重要かを明らかにする必要がある。07年6月、日本側から3名の研究者がTTESを訪問し調査研究を行った。ヨコバイとアザミウマを実験室で飼育できるよう指導し人工飼育に成功した。人工飼育した虫を用いて実験室レベルでチャ葉に虫害を与え、それを材料にして香気分析を行なうようインド側研究者に指導した。2)虫害チャ葉から作られる“Second flash"特有香気生成機構の解明06年にダージリン茶園試料をGC-MS香気分析に供した結果、台湾の東方美人の場合と同様に、ダージリン紅茶でもhotrienolなどのモノテルペンアルコールの生成に虫害が密接に関与していることが示唆された。07年にTTESにて人工飼育したヨコバイおよびアザミウマを用いた加害試験を行った結果、“Second flash"紅茶特有の香気生成には虫害の関与が大きいことが明らかとなった。また、日本のやぶきた種茶園にて採集した農薬処理を行ったチャ葉と虫害を受けたチャ葉とで香気成分を比較し、diolの生成にはヨコバイ吸汁刺激が引き金になっていることが示唆された。3)新しい簡易紅茶製造法開発に向けた調査研究高品質な紅茶を簡便に製造するための新しい技術として、烏龍茶の製造技術を応用することをTTESの研究者に指導し、TTESにてパイロット機器を用いた製茶を行った。萎凋工程および撹拌工程の追加改良により、紅茶香気の改善が期待された。
著者
秋山 遼太 中安 大 梅基 直行 村中 俊哉 水谷 正治
出版者
一般社団法人植物化学調節学会
雑誌
植物の生長調節 (ISSN:13465406)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.92-98, 2017

<p>Steroidal glycoalkaloids (SGAs) are toxic specialized metabolites that are found in Solanaceae. Potato (<i>Solanum tuberosum</i>) contains the SGAs α-solanine and α-chaconine, which are biosynthesized from cholesterol. Several biosynthetic genes including <i>SSR2</i> and two cytochrome P450 genes (<i>CYP72A188</i> and <i>CYP72A208</i>) have been identified, and the transgenic potato plants silencing these biosynthetic genes showed SGA-reduced phenotypes. Here we summarize our recent results and strategy towards metabolic engineering of potato accumulating pharmaceutically useful compounds by genome editing. <i>CYP88B1</i>, which is involved in a later step of the SGA biosynthetic pathway with unknown catalytic function, is co-ordinately expressed with the SGA biosynthetic genes. We applied CRISPR/Cas9 system to knockout potato <i>CYP88B1</i>. The <i>CYP88B1</i>-knockout potatoes showed no accumulation of SGAs, and furthermore the corresponding amounts of steroidal saponins were accumulated in the knockout potatoes.</p>
著者
秋山 遼太 中安 大 梅基 直行 村中 俊哉 水谷 正治
出版者
一般社団法人植物化学調節学会
雑誌
植物の生長調節 (ISSN:13465406)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.92-98, 2017 (Released:2018-01-12)
参考文献数
33

Steroidal glycoalkaloids (SGAs) are toxic specialized metabolites that are found in Solanaceae. Potato (Solanum tuberosum) contains the SGAs α-solanine and α-chaconine, which are biosynthesized from cholesterol. Several biosynthetic genes including SSR2 and two cytochrome P450 genes (CYP72A188 and CYP72A208) have been identified, and the transgenic potato plants silencing these biosynthetic genes showed SGA-reduced phenotypes. Here we summarize our recent results and strategy towards metabolic engineering of potato accumulating pharmaceutically useful compounds by genome editing. CYP88B1, which is involved in a later step of the SGA biosynthetic pathway with unknown catalytic function, is co-ordinately expressed with the SGA biosynthetic genes. We applied CRISPR/Cas9 system to knockout potato CYP88B1. The CYP88B1-knockout potatoes showed no accumulation of SGAs, and furthermore the corresponding amounts of steroidal saponins were accumulated in the knockout potatoes.
著者
水谷 正治
出版者
植物化学調節学会
雑誌
植物の生長調節 (ISSN:13465406)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.67-82, 2005-05-27
被引用文献数
3