著者
永松 裕希 松川 南海子 大井 真美子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.166-175, 2004
被引用文献数
1

知的能力や言語に遅れがなく,また主要な感覚の障害あるいは麻痺などの運動機能に関わる疾患がないにも関わらず,運動技能に困難さを示す子どもたちがいる。このような障害は発達性協調運動障害(DCD)と呼ばれ,子どもの学習や日常生活において問題を生じさせている。従来から「不器用」という言葉で認識されていたこの障害が,公式の国際的な分類体系の中で,独立した障害として認識されるようになったのは,ごく最近になってからである。本稿では,特に,DCDの学習への影響として,眼球の協調運動の問題と読み能力について言及し,読みに問題がある子どもの半数以上に眼球の協調運動の問題が確認されたという調査結果を紹介した。さらに,このような協調運動における問題が2次的に自己認知や社会的有能感の低下を生じさせるという報告もあり,一人ひとりに応じた心理教育的援助の必要性が大きいと考える。
著者
永松 裕希 上村 惠津子 小島 哲也 田巻 義孝 三枝 夏季 松川 南海子
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は, 学習障害を中心とした発達障害児の読み能力に焦点を当て, その改善を図るための評価ツールおよび援助プログラムを開発することを目的として実施された。研究内容は3つから構成され, 第一が, 読みにおける眼球運動を測定する簡易型の眼球運動評価ツールの標準化, 第二が, 簡易型眼球運動評価ツール(DEM)の妥当性の検証, 第三が読み能力の学年推移と影響因の検討, および読み障害児に対してのプログラムの開発と, その有効性の検証であった。
著者
田巻 義孝 小松 伸一 永松 裕希 原田 謙 今田 里佳 高橋 知音
出版者
信州大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

Manly, Robertson, Anderson, & Nimmo-Smith(1999)が開発したTest of Everyday Attention for Children(以下,TEA-Chと略す)を参考とし,(1)注意が単一ではなく複数の機能から構成されているとみなす理論的枠組みに立脚し,(2)児童・生徒に親しみやすい刺激材料や課題を使用し,検査の生態学的妥当性に配慮している集団式注意機能検査バッテリーを作成した。検査バッテリーは,4種の下位検査(地図探し,音数え,指示動作,二重課題)から成っており,それぞれ異なる注意機能(つまり,選択的注意,持続的注意,反応抑制,注意分割)の査定を意図している。この検査バッテリーを小集団トレーニングプログラムに参加を希望したADHD児童に実施したところ、どの児童にも共通して平均より劣っているのは持続的注意の指標であった。このことから,小集団トレーニングプログラムでは,持続的な注意の改善を基本の目標に据え、行動管理の原則を用いるとととした。バークレー(2002)では、AD/HDを有する子どもの行動管理の原則として、即時的で頻繁なフィードバックと目立つ結果、否定の前の肯定、一貫性の保持を挙げている。このプログラムでも、これらの行動管理の原則を守り,子どもが学習や遊びの場面でつまずいた時に担当者がすぐに対応し、できないことを叱るのではなくできたことを誉めるようにし、がんばってシールをためると誉めてもらってご褒美がもらえるよう設定した。小集団トレーニング開始時と終了時の行動観察(生起頻度の評定)から,児童の立ち歩く回数が減り衝動的に発話することが減っていったことが確認された。また開始時と終了時および終了後2ヶ月の保護者の行動評定から,話し合いの態度や協調性,望まない状況での対処や決めたことへの取り組みが以前よりできるようになり効果が維持されたことが明らかになった。