著者
川野 英二 木田 勇輔 原田 謙
出版者
Japan Association for Urban Sociology
雑誌
日本都市社会学会年報 (ISSN:13414585)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.40, pp.1-7, 2022-09-05 (Released:2023-09-16)
参考文献数
7

At the 2021 annual conference of the Japan Association for Urban Sociology, we held a symposium on “Neighborhood Effects and Cities in Japan.” Although we planned this symposium as an international one, the pandemic of Covid-19 made it impossible to invite presenters from abroad. Thus we invited three leading researchers in this field living in Japan to the symposium. The three presenters referred to some important topics such as ethnographic research, urban subcultures, urban crimes, neighborhood disorder, health inequalities, and deprivation. The presentations and the discussion raise some important questions. (1) What contexts are important in the research of neighborhood effects? (2) What kind of social process works in neighborhood effects? (3) How can we measure neighborhood environments in the context of social research? We expect that this symposium stimulates theoretical and empirical research on neighborhood effects in the field of urban sociology.
著者
原田 謙 杉澤 秀博
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.80-96, 2014 (Released:2015-07-04)
参考文献数
41
被引用文献数
1 7

本稿は, パーソナル・ネットワークに対する都市効果を, 階層的に異なる水準で測定された変数を扱うマルチレベル分析を用いて明らかにすることを目的とした. 具体的には, 個人レベルの属性の影響を統制したうえで, 地域レベルの都市度が, 親しい親族・隣人・友人数およびその空間的分布に及ぼす文脈効果を検討した. データは, 東京都, 神奈川県, 埼玉県, 千葉県内の30自治体に居住する25歳以上の男女4,676人から得た.分析の結果, 第1に, 親族総数の地域差は居住者の個人属性の影響を統制すると消失した. しかし都市度は親族関係の空間的分布に影響を及ぼしていた.都市度が高いほど近距離親族数は減少していたのである. 大都市の親族関係は, 規範的ではなく選択的であり, 空間的に分散したネットワークである点が示唆された. 第2に, 都市度が高いほど隣人数は減少していた. 第3に, 友人総数の地域差は居住者の個人属性の影響を統制すると消失した. しかし都市度は友人関係の空間的分布に影響を及ぼしていた. 都市度が高いほど, 中距離友人数が増大していたのである. 都市度は, 都市圏全体に広がる友人資源へのアクセス可能性を高めている点が示唆された.
著者
原田 謙 杉澤 秀博 小林 江里香 Jersey Liang
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.382-397, 2001-12-31
被引用文献数
1

本研究は, 全国高齢者に対する3年間の縦断調査データ (1987-1990) を用いて, 高齢者の所得変動の実態を明らかにし, 貧困への転落, 貧困からの脱出という所得変動の関連要因を検証することを目的とした.本人と配偶者の年間所得の合計が120万円未満の高齢者を貧困層と操作的に定義し, 関連要因として社会経済的地位およびライフイベント指標を分析に投入した. 分析の結果, 以下のような知見が得られた.<BR>(1) 各時点の貧困層の出現割合は 34.7% (1987), 31.7% (1990) であったが, 追跡期間中に全体の8.8%が貧困転落, 11.8%が貧困脱出を経験していた.<BR>(2) 社会経済的地位に関して, 学歴が高い者の方が貧困転落の確率が低く, 最長職の職種によって貧困転落・貧困脱出の確率が異なった.<BR>(3) 高齢期のライフイベントに関して, 追跡期間中における配偶者との死別は, 女性にとってのみ貧困転落のリスク要因であった.追跡期間中における失職は貧困転落のリスク要因であり, 就労継続は貧困脱出の促進要因であった.<BR>(4) 社会経済的地位, ライフイベントの影響をコントロールしても, 性別, 年齢, 生活機能といった要因が, 高齢者の所得変動に有意に関連していることが明らかになった.具体的には男性の方が女性より貧困脱出の確率が高く, 高齢である者, 初回調査時点の生活機能が低い者の方が貧困脱出の確率が低かった.
著者
柳沢 志津子 杉澤 秀博 原田 謙 杉原 陽子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.22-100, (Released:2023-04-10)
参考文献数
54

目的 本研究は,都市部に居住する高齢者において,社会経済的地位と口腔健康との関連のメカニズムについて,心理および社会的要因の媒介効果に着目して検証し,口腔健康の階層間格差への対応に資する知見を得ることを目的とした。方法 東京都に位置する自治体で住民の社会経済階層が高い区と低い区を選択し,それぞれの自治体に居住する65歳以上の住民1,000人ずつの計2,000人を住民基本台帳から二段無作為抽出し,訪問面接調査を実施した。分析対象は,回答が得られた739人とした。分析項目は,口腔健康に主観的口腔健康感,残存歯数,咀嚼能力の3項目の合計点数を用いた。社会経済的地位は,教育年数と年収とした。媒介要因の候補は,社会生態学モデルを用いて,自尊感情,うつ症状,社会的支援とした。分析は多重媒介分析を行った。結果 心理社会的要因のうち,個別の要因については有意な媒介効果を確認できなかったものの,心理社会的要因全体では年収と口腔健康の媒介要因として有意な効果がみられた。心理社会的要因全体の媒介効果は,教育年数と口腔健康との間では有意ではなかった。結論 低所得者の口腔健康が悪い理由の一部に心理社会的要因が関与しており,ライフステージごとに実施される予防活動と心理社会的リスク要因全体を軽減する取り組みを組み合わせることで,社会経済的地位による口腔健康の格差を解消できる可能性が示唆された。
著者
原田 謙 小林 江里香 深谷 太郎 村山 陽 高橋 知也 藤原 佳典
出版者
日本老年社会科学会
雑誌
老年社会科学 (ISSN:03882446)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.28-37, 2019-04-20 (Released:2020-04-20)
参考文献数
31

高齢者に対するエイジズム研究は,国内外において蓄積されてきた.しかし「もうひとつのエイジズム」とよぶべき,若年者に対する否定的態度に関する研究は乏しい.本研究は,地域と職場における世代間関係に着目して,高齢者の若年者に対する否定的態度に関連する要因を検討することを目的とした.データは,無作為抽出された首都圏の60〜69歳の男女813人から得た.分析の結果,以下の知見が得られた. ①若年者との接触頻度が低い者ほど,若年者を嫌悪・回避する傾向がみられた. ②高齢者の生活満足度は若年者に対する否定的態度と関連していなかった.ただし職場満足度が低い者ほど若年者を嫌悪・回避する傾向がみられた. ③世代性の得点が低い者ほど若年者を嫌悪・回避する傾向がみられた.一方,世代性の得点が高い者ほど若年者を誹謗するという,アンビバレントな態度が示された. ④職場でエイジズムを経験している者ほど,若年者を誹謗していた.
著者
原田 謙 杉澤 秀博 柴田 博
出版者
日本老年社会科学会
雑誌
老年社会科学 (ISSN:03882446)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.350-358, 2009

<p> 本研究は,シルバー人材センターの退会に関連する要因を明らかにすることを目的とした.データは,全国279センターの現会員と退会者の男女,合計5,553人から得た.</p><p> 分析の結果,第一に「仕事仲間」および「発注者側の態度・対応」に関する満足度が高い者ほど,シルバー人材センターを退会する傾向が低かった.一方,「配分金」や「就業体制」に関する満足度は,退会とは有意な関連がみられなかった.第二に,センターで事務職の仕事を希望する者は,その他の仕事を希望する者に比べて退会する傾向が2倍以上であった.この影響は男性および三大都市圏において顕著であり,センターが受注する仕事と会員が希望する仕事のミスマッチの問題が示唆された.第三に,センター以外のところで就業している日数が多い者ほど,退会する傾向が高かった.この影響は,男性および地方圏において顕著であり,再就職活動の一環としてセンターに関与している高齢者の存在を示唆していた.</p>
著者
藤原 佳典 柴田 博 原田 謙 新開 省二 吉田 裕人 星 旦二
出版者
東京都立大学都市研究センター
雑誌
総合都市研究 (ISSN:03863506)
巻号頁・発行日
vol.81, pp.39-48, 2003

先進三カ国の主要都市、東京とニューヨーク、パリの健康水準の実態を都心部、周辺部、全体に分けて検討した。同一主要都市内では中心部で平均寿命が短く、AIDS・結核発症者の割合が多かった。高齢期の総死亡率や主要な疾患別死亡率については主要都市内での格差よりも主要都市聞での年齢階級別の相違のほうが顕著であった。とりわけマンハッタン地区は年齢階級の上昇とともにパリ中心部地区及び東京都23特別区に比べて相対的に死亡率の低下を認めた。乳児死亡率・新生児死亡率については主要都市間及び同一主要都市内でもニューヨーク全体つまり、マンハッタン地区の外側が高かった。次に、高齢期の総死亡率と乳児死亡率について三主要都市ごとに中心部地区の分布及び相関を見た。各死亡率に対するマンハッタン20区のばらつきが目立った。また、65才以上総死亡率と乳児死亡率の相関関係についてはパリ中心部地区のみ両者に有意な負の相関がみられた。三主要都市間あるいは内部の健康水準の格差をもたらす規定要因を明確にするには、今後、三主要都市における衛生行政に関する指標、人口学的指標及び社会・経済学的指標を含めて国際比較の視点から学際的・総合的に相関関係を検討する必要性が示唆された。We reported healthy standard of the three international megalopolises, Tokyo, New York, and Paris, in advanced countries, comparing with central area and around it respectively. Central areas had shorter life expectancy, and had more incidence of AIDS and tuberculosis in every three city. In terms of age-specific total death rate in older persons and main diseases, there was more remarkable difference among inter-cities than among inner-cities. Whole New York City, around Manhattan area showed highest infant mortality rate (IMR) and neonatal mortality rate in every area in the three cities. Total death rate for older persons showed significantly inverse correlation with IMR only in 20 central wards in Paris.
著者
原田 謙 杉澤 秀博 小林 江里香 Jersey Liang
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.382-397, 2001
被引用文献数
1

本研究は, 全国高齢者に対する3年間の縦断調査データ (1987-1990) を用いて, 高齢者の所得変動の実態を明らかにし, 貧困への転落, 貧困からの脱出という所得変動の関連要因を検証することを目的とした.本人と配偶者の年間所得の合計が120万円未満の高齢者を貧困層と操作的に定義し, 関連要因として社会経済的地位およびライフイベント指標を分析に投入した. 分析の結果, 以下のような知見が得られた.<BR>(1) 各時点の貧困層の出現割合は 34.7% (1987), 31.7% (1990) であったが, 追跡期間中に全体の8.8%が貧困転落, 11.8%が貧困脱出を経験していた.<BR>(2) 社会経済的地位に関して, 学歴が高い者の方が貧困転落の確率が低く, 最長職の職種によって貧困転落・貧困脱出の確率が異なった.<BR>(3) 高齢期のライフイベントに関して, 追跡期間中における配偶者との死別は, 女性にとってのみ貧困転落のリスク要因であった.追跡期間中における失職は貧困転落のリスク要因であり, 就労継続は貧困脱出の促進要因であった.<BR>(4) 社会経済的地位, ライフイベントの影響をコントロールしても, 性別, 年齢, 生活機能といった要因が, 高齢者の所得変動に有意に関連していることが明らかになった.具体的には男性の方が女性より貧困脱出の確率が高く, 高齢である者, 初回調査時点の生活機能が低い者の方が貧困脱出の確率が低かった.
著者
原田 謙
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.57-68, 2012 (Released:2012-04-28)
参考文献数
34
被引用文献数
1 4

本研究は,階層的地位(学歴・職業・所得)が領域別および距離別パーソナル・ネットワークに及ぼす影響およびその性差を検討することを目的とした。データは,東京都,神奈川県,埼玉県,千葉県内の30自治体に居住する25歳以上の男女4,676人から得た。分析の結果,第一に,学歴が高い者ほど友人数が多く,ネットワーク総数に占める親族ネットワーク比率が低かった。とくに女性では,この学歴による友人数の多寡がネットワーク総数の多寡にもつながっていた。第二に,専門・管理職の者ほど仕事仲間数が多かった。さらに専門・管理職の女性は,友人数も多く,隣人数が少なくても,差し引きするとネットワーク総数が多くなった。第三に,所得が高い者ほど仕事仲間数が多く,ネットワーク総数が多かった。さらに男性では,所得が高い者ほど親族数も多く,所得がネットワークに及ぼす影響は男性において顕著であった。第四に,学歴が高い者ほど,そして所得が高い者ほど中距離および遠距離親族・友人数が多かった。つまり学歴と所得がネットワークを広域化する資源であることが示唆された。
著者
田巻 義孝 小松 伸一 永松 裕希 原田 謙 今田 里佳 高橋 知音
出版者
信州大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

Manly, Robertson, Anderson, & Nimmo-Smith(1999)が開発したTest of Everyday Attention for Children(以下,TEA-Chと略す)を参考とし,(1)注意が単一ではなく複数の機能から構成されているとみなす理論的枠組みに立脚し,(2)児童・生徒に親しみやすい刺激材料や課題を使用し,検査の生態学的妥当性に配慮している集団式注意機能検査バッテリーを作成した。検査バッテリーは,4種の下位検査(地図探し,音数え,指示動作,二重課題)から成っており,それぞれ異なる注意機能(つまり,選択的注意,持続的注意,反応抑制,注意分割)の査定を意図している。この検査バッテリーを小集団トレーニングプログラムに参加を希望したADHD児童に実施したところ、どの児童にも共通して平均より劣っているのは持続的注意の指標であった。このことから,小集団トレーニングプログラムでは,持続的な注意の改善を基本の目標に据え、行動管理の原則を用いるとととした。バークレー(2002)では、AD/HDを有する子どもの行動管理の原則として、即時的で頻繁なフィードバックと目立つ結果、否定の前の肯定、一貫性の保持を挙げている。このプログラムでも、これらの行動管理の原則を守り,子どもが学習や遊びの場面でつまずいた時に担当者がすぐに対応し、できないことを叱るのではなくできたことを誉めるようにし、がんばってシールをためると誉めてもらってご褒美がもらえるよう設定した。小集団トレーニング開始時と終了時の行動観察(生起頻度の評定)から,児童の立ち歩く回数が減り衝動的に発話することが減っていったことが確認された。また開始時と終了時および終了後2ヶ月の保護者の行動評定から,話し合いの態度や協調性,望まない状況での対処や決めたことへの取り組みが以前よりできるようになり効果が維持されたことが明らかになった。