著者
田口(袴田) 理恵 河原 智江 西 留美子 Rie Taguchi(Hakamada) Chie Kawahara Rubiko Nishi
出版者
共立女子大学看護学部
雑誌
共立女子大学看護学雑誌 = Kyoritsu journal of nursing (ISSN:21881405)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-8, 2014

児童虐待の予防対策の充実は喫緊の課題となっているが、そのために必要な虐待の前段階を含む連続的な虐待の評価指標はこれまで開発されていない。このため本研究では、母親の虐待的行為の項目数と頻度からなる得点について、虐待の前段階を含む虐待評価指標としての妥当性を検討することを目的とした。本研究では、3-6歳の子どもを持つ母親を対象としてアンケート調査を実施し、虐待的行為得点と虐待の強力なリスク要因である社会経済的状況並びに育児感情との関連性を分析した。結果、虐待的行為得点は、十分な内的整合性を有するとともに、母子家庭、世帯収入の低さ、母親の低学歴と関連することが示された。また、虐待的行為得点は、育児負担感、育児不安と関係することが示された。したがって、本得点は、虐待の前段階を含む連続的な虐待の実態を把握するための指標として、一定の妥当性を有することが示唆された。Although taking some substantial prophylactic measures against maltreatment of children is an important subject, the index for prophylactic measures that can evaluate both the maltreatment and the preceding phase of maltreatment has not been developed so far. This study aimed to evaluate the validity of a score generated from a number of items and frequency of abusive maternal behavior as an index of both maltreatment and its preceding phase. An anonymous questionnaire survey of mothers rearing 3-6 year-old children was conducted, and relevance of abusive maternal behavior score and powerful risk factors of maltreatment was examined. As a result, the score of abusive maternal behavior had sufficient inner compatibility, and had the relationship with the following socioeconomic states: the single-mother family, the low household income and the mother's low educational background. Moreover, it was shown that the score was related to burden of child-rearing and anxiety about child-rearing. Therefore, it was suggested that the abusive maternal behavior score have a certain validity to grasp the actual conditions of the maltreatment and the preceding phase of maltreatment.
著者
舛田 ゆづり 田髙 悦子 臺 有桂 糸井 和佳 田口 理恵 河原 智江
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.1040-1048, 2011 (Released:2014-06-06)
参考文献数
22
被引用文献数
3 3

目的 近年,高齢者の孤立死が都市部を中心に社会問題となっている。この問題に対し,地域の見守り活動を推進していくことは喫緊の課題であるが,見守り活動を担う住民組織が直面する課題や方策に焦点化して明らかにしたものは見当たらない。本研究では,今後の都市部における孤立死予防に向けた地域見守り活動推進における住民組織が有しているジレンマならびにそれらに対処する方略を住民組織の立場から明らかにし,今後の実践の示唆を得ることを目的とした。方法 対象は,A 市 b 区 c 地区(中学校区)で見守り活動の実績のある住民組織の代表14人である。研究デザインは,質的帰納的研究である。データ収集は,フォーカスグループインタビュー法(FGI)を用い,テーマは,住民組織が地域の見守り活動を進めていく上で感じている困難や課題等とし,計 3 回実施した。データ分析は,FGI の逐語録から単独で意味の了解が可能な最小単位の単語や文章をコードとして抽出し,次いでコードの類似性を勘案してサブカテゴリとし,さらにサブカテゴリを抽象化してカテゴリとした。結果 住民組織における見守り活動の推進に向けた課題と取組みは個人,近隣,地域の 3 領域に抽象化された。まず,ジレンマについては【見守りの拒否や無関心】,【若年層での孤立や閉じこもり】,【家族が見守りをしない】,【近隣住民の関係性の希薄】,【新旧住民がつながりにくい】,【近所付き合いへの負担感】,【プライバシー意識の高まりによる情報共有の困難】,【見守りの担い手や集う場の資源不足】の各カテゴリーが抽出された。また,方略については【地域の中で 1 対 1 の関係をつくる】,【地域の集まりや輪へ引き込む】,【さりげない日々の安否確認を行う】,【助けが必要な人の存在を知らせる】,【生活の中で互いに知り合う仕掛けをする】,【近隣単位の小さな見守りのシステムをつくる】,【行政と住民組織が連携し地区組織を活かす】,【地域住民の信頼感やつながりを育む】が抽出された。結論 地域の見守り活動の推進に向けては,各住民組織が互いの活動や存在についてより理解を深めるとともに,連携が推進されるような機会の開催や場(ネットワーク)の整え,あるいはそのような風土を地域につくっていくための検討が必要である。
著者
田口(袴田) 理恵 河原 智江 西 留美子 Rie Hakamada-Taguchi Chie Kawahara Rubiko Nishi
雑誌
共立女子大学看護学雑誌 = Kyoritsu journal of nursing
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-8, 2014-03

児童虐待の予防対策の充実は喫緊の課題となっているが、そのために必要な虐待の前段階を含む連続的な虐待の評価指標はこれまで開発されていない。このため本研究では、母親の虐待的行為の項目数と頻度からなる得点について、虐待の前段階を含む虐待評価指標としての妥当性を検討することを目的とした。本研究では、3-6歳の子どもを持つ母親を対象としてアンケート調査を実施し、虐待的行為得点と虐待の強力なリスク要因である社会経済的状況並びに育児感情との関連性を分析した。結果、虐待的行為得点は、十分な内的整合性を有するとともに、母子家庭、世帯収入の低さ、母親の低学歴と関連することが示された。また、虐待的行為得点は、育児負担感、育児不安と関係することが示された。したがって、本得点は、虐待の前段階を含む連続的な虐待の実態を把握するための指標として、一定の妥当性を有することが示唆された。
著者
河原 智 小笠原 俊実 福村 俊美 小笠原 成郎
出版者
日本家畜臨床学会
雑誌
東北家畜臨床研究会誌 (ISSN:09167579)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.33-35, 1991-08-20 (Released:2009-04-22)
参考文献数
8

若齢牛における唾液腺嚢腫に遭遇し、外科的摘出を行ったところ良好な経過を示した。症例は元気、食欲は良好であったが、2週間前より左の顎が徐々に腫大してきたとの稟告のもとに来院。血液所見ならびに穿刺所見より唾液腺嚢腫と診断し、摘出手術を実施した。摘出嚢腫を病理組織学的に検索したところ下顎腺由来と確認され、また嚢包内膜は小葉間導管の上皮に類似していた。その後、本症例は良好な発育を遂げ、手術の6カ月後に売却された。
著者
福島 あゆみ 岡田 洋右 谷川 隆久 河原 智恵 三澤 晴雄 中井 美穂 廣瀬 暁子 神田 加壽子 森田 恵美子 田中 良哉
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.311-316, 2003-04-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
16

症例は52歳女性. 1996年 (平成8年) に低血糖昏睡 (血糖12mg/dl) で近医に緊急入院したが, 低血糖発作が頻発するため1997年 (平成9年) 当科入院.考えられる低血糖発作の原因を除外した後に, インスリン (IRI) 血糖 (PG) は0.44~1.07, 血管造影で膵尾部に径1.5cm大の濃染像が疑われることより, インスリノーマの診断で膵体尾部脾合併切除 (90%) を施行したが, 術中所見, 切除膵の組織学的検討で異常所見を認めなかった. しかし, その後も夜間空腹時低血糖発作を反復するも, 発作時のIRI PGが0.07と過剰インスリン分泌は消失していたことから, 術後低血糖の主因としては反応性低血糖を考え, ボグリボース内服と夜間補食 (2単位) を開始. 以後, 日常生活には支障ないものの, 依然として早朝空腹時血糖は50mg/dl前後であり, 2001年 (平成13年) 9月病状再評価のため施行した選択的動脈内カルシウム注入検査 (ASVS) にて, 30秒後にIRIが2.5倍以上に上昇し陽性. また, ボグリボースと夜間補食中止下でのdaily profiieでは食後高血糖がみられ, 著明なインスリン抵抗性と低血糖時のインスリン分泌抑制を認めた.本例の低血糖の病態としては, ASVSの結果および術後経過より, 術前の病態としては膵β細胞のび漫性機能亢進があったのではないかと考えられ, 広汎な膵切除によるインスリン総分泌量の減少に加え, ボグリボースにより反応性のインスリン過剰分泌を減少させることで重篤な低血糖発作を改善することができたと推測される.
著者
山辺 智子 田髙 悦子 臺 有桂 河原 智江 田口(袴田) 理恵 今松 友紀
出版者
一般社団法人 日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.63-69, 2013

目的:安全を推進するセーフティプロモーションは,健康を推進するヘルスプロモーションとともに地域看護において根幹をなす重要な概念である.しかしながらセーフティプロモーションに関する研究はまだ少ない.そこで本研究では,地域における事故や傷害の予防が課題である,都市部児童の視点による安心安全の構成要素を明らかにすることが目的である.方法:研究対象は,A市b区地域の公立小学校2校に所属する小学5年生の児童8人であり,研究方法はフォーカスグループインタビューによる質的研究である.結果:児童における安心安全の構成要素は,25サブカテゴリー,5カテゴリー,すなわち[いざというときに自分で身を守る行動]や[自分の命や人の命の大事さ]等からなる【児童の意識と価値観】,[危険な目に合わないための約束ごと]等からなる【児童と家族の規範】,[遊びや遊具使用中の不注意]等からなる【児童の遊具や道具】,[通学路での危険]等からなる【学校における集団生活と学習】,[顔のみえる関係][地域の人と学校の結びつき]等からなる【見守りのある地域】が抽出された.結論:児童の視点による安心安全の要素を勘案し,具体的なセーフティプロモーションの推進によって都市部におけるセーフコミュニティの実現へと発展させることが課題である.
著者
髙橋 美保 田口(袴田) 理恵 河原 智江
出版者
一般社団法人 日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.43-51, 2020 (Released:2020-08-20)
参考文献数
19

目的:本研究は,地域包括支援センター看護職が,虐待予防や健康保持のために認知症の妻を介護する高齢夫介護者を地域の水平的組織につなげる支援のプロセスを明らかにすることを目的とした.方法:認知症の妻を介護する高齢夫介護者を地域の水平的組織につなげた経験をもつ地域包括支援センター看護職7人を対象に半構造化面接を行い,夫介護者が自らの意思で水平的組織に参加継続するまでの支援を聴取した.得られたデータは複線径路・等至性モデリングの手法で分析し,支援のプロセスを示した.結果:地域包括支援センター看護職が高齢夫介護者を地域の水平的組織につなげる支援のプロセスは4つの時期から構成された.第1期は,サービス利用の提案に消極的な夫介護者と支援関係の構築を図る時期であり,その後,妻の介護環境を整え信頼を得て,夫自身の健康の大切さを気づかせる第2期となる.第3期は,水平的組織参加の一歩を踏み出させ,メリットを感じてもらう時期となる.第4期に至ると,水平的組織への参加継続に向けて環境の再調整を行う時期となる.考察:認知症の妻を介護する高齢夫介護者を地域の水平的組織につなげていくためには,妻の状況に合わせ段階的に夫介護者の意識を変えていくこと,ならびにその段階に応じた支援の展開が必要であることが示された.また,男性の関心事に合う多くの種類の水平的組織を育成し,周知していくことの重要性が示唆された.
著者
成田 香織 田髙 悦子 金川 克子 宮下 陽江 立浦 紀代子 天津 栄子 松平 裕佳 臺 有桂 河原 智江 田口 理恵 酒井 郁子
出版者
一般社団法人 日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.16-22, 2011-03-18 (Released:2017-04-20)

目的:農村部における認知症予防に向けた介護予防事業への参加者と不参加者の特徴の相違を明らかにし,不参加者における適切な支援を含めた今後の介護予防のあり方を検討することである.方法:対象はA県在住の地域高齢者における認知症予防に向けた介護予防事業対象者(特定高齢者)94名(参加者47名,不参加者47名)である.方法は質問紙調査であり,基本属性,身体的特性(認知機能,生活機能),心理的特性(健康度自己評価),社会的特性(ソーシャルサポート)等を検討した.結果:参加群は平均年齢79.5(SD=5.8)歳,不参加群は82.0(SD=6.2)歳であり,基本属性に有意な差はみられなかった.不参加群は参加群に比して,認知機能の低い者の割合が有意に高く(p=0.03),手段的自立(p=0.02),知的能動性(p<0.001),社会的役割(p=0.07)が有意に低いもしくは低い傾向があった.また不参加群は参加群に比して,手段的サポートが低く(p=0.09),サポートが乏しい傾向があった.なお参加群の事業参加の動機は,孤独感の緩和や人とのつながりが最も多く,次いで,物忘れの重大さの自覚や将来の認知症への懸念などとなっていた.結論:農村部の認知症予防に向けた介護予防事業不参加者は参加者に比較して,生活習慣や対人交流の脆弱性があり,今後は,高齢者一人ひとりの特性やニーズに応じた参加への意欲や動機づけの支援が必要である.