著者
浅倉 有子
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要 = National Institure of Japanese Literature (ISSN:18802249)
巻号頁・発行日
no.11, pp.15-32, 2015-03-13

新発田藩溝口家が担った延宝9 年(天和元年、1681)と貞享2 年(1685)の二度の高田在番について、その役務の内容を検討するとともに、役務の遂行にあたってどのような文書が作成されたのか、またそれらがどのように管理されていったのかについて、検討した論文である。検討の結果、文書は八つの契機と内容により作成されることが判明した。第一に①在番下命による情報収集、②在番を担当する家臣の選定と、逆に言えば留守を預かる家臣の選定に関する文書、③高田への行軍史料、④高田到着後の担当場所の決定、請取、人員配置関係の史料、⑤在番業務中の必要な文書や絵図、⑥在番の財政関係史料、⑦在番中の諸事留書等、⑧後任大名への引継書類である。This article discussed zaiban of Takada (controlled Takada-han through staying there) which was conducted twice by the Mizoguchi family of Shibata-han in 1681 (9th year of Enpo, simultaneously 1st year of Tenna) and in 1685 (2nd year of Jokyo). The article investigated what their services were, what kinds of documents were created, and how the documents were managed.
著者
下里 俊行 松田 慎也 真野 俊和 二谷 貞夫 浅倉 有子 河西 英通
出版者
上越教育大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1998

本研究成果として東アジア地域史のためのマルチ・メディア教材の試作版を作成し、CD-ROMの形態で製作・頒布した。教材の仕様としては、テキスト(PDF)、画像(JPEG)、動画(Quick Time)から構成されるデータ・ベース型の教材用素材集の形をとり、ユーザー(教員・学習者)による自由検索とローテク素材への出力が容易でかつ追加的にデータを集積することが可能な構造をもっている点を特徴としている。歴史研究・教育のためのマルチ・メディア電子教材開発にかかわる総合的な検討結果は以下の通り。1. 教育用のマルチ・メディア開発では、常に費用対効果のバランスの観点に立って不断に進化するハイエンド技術の応用を志向しつつも教育現場での汎用性を考慮してハイブリッドな技術構成を重視することが不可欠である。2. 複製技術の高度化とともに著作権上の問題が社会的に重視されつつあり、また歴史研究・教育におけるフィールド調査(地理学・民俗学的要素,音楽美術史的要素)に基づく教材・史料に対する専門的な解釈の重要性を考慮して、教材開発においてはアクセス困難な貴重な素材の引用を除いてできるかぎりオリジナルな素材の活用が望ましいという方向性が確認された。3. 国際的な視野から近隣諸国の研究者からレビューを受け、また各国の教材を検討した結果、各国教育関係者の歴史教育上の政策的課題の差異を十分に考慮しつつ、素材のグローカリゼーションの方向で教材開発を行うことが重要であることが明らかになった。4. 今後は、近隣各国の歴史研究・教育の動向を正確に踏まえ、各国の既存教材と比較検討することにより、アジア・太平洋地域におけるわが国の歴史教育の戦略的な検討課題(多文化共生の理念に立ったナショナル・アイデンティティ等)を視野に入れた歴史教材開発を行う必要があることが明らかになった。
著者
藪田 貫 浅倉 有子 菊池 慶子 青柳 周一 桑原 恵 沢山 美果子 曽根 ひろみ 岩田 みゆき 中野 節子
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では通常の分担者による研究会の積み重ねという形を取らず、日本の各地で「江戸の女性史フォーラム」を順次開催し、地域の女性史研究の成果と資料に学ぶというスタイルで3年間、進めた。その結果、大阪(2005.7)徳島(2005.12)、鳥取(2006.5)、東京(2006.7)、福岡(2006.12)、金沢(2007.9)、京都(2007.11)の7ケ所で開催することができた。その成果は、いずれも報告書の形で公表されているが、地域に蓄積された女性史の成果の掘り起こしと交流に貢献できたと確信する。とくに藩制史料の中から奥女中を含め、武家の女性の発掘が進み、菊池(柳谷)・浅倉・桑原らが中心となって「藩社会の中の女性」が一つの新しい潮流となっている。また活発な研究活動は、国内外の学会発表という形でも結実した。国内では立教大学日本学研究所の公開シンポジュウム(2006.5)に沢山と藪田が、ジェンダー史学会・女性史総合研究会共催のシンポジュムには曽根ひろみ(協力者)が、それぞれパネリストして参加した。国際的な学術交流では、鳥取と京都のフォーラムにアメリカとオーストリアから研究者を招き、また藪田が、ケンブリッジ大学での研究会「江戸から明治の女性と読書」(2006.9)、ボストンでのアメリカ・アジア学会分科会「19世紀日本の売買春と政治」に報告者として参加した。研究課題としてあげた研究者の世代交代を進め、若手研究者を養成するという点では、若い大学院生のフォーラムへの参加も少なく、残念ながら十分な成果を挙げていない。また分担者の研究の成果にもムラがあり、地域的にもまたライフコースについても、均等に成果を上げるには至らなかった。反省点であり、今後の課題である。