- 著者
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浅沼 宏
- 出版者
- 社団法人 物理探査学会
- 雑誌
- 物理探査 (ISSN:09127984)
- 巻号頁・発行日
- vol.67, no.1, pp.49-54, 2014 (Released:2017-03-02)
- 参考文献数
- 19
- 被引用文献数
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地熱エネルギーは賦存量,安定性,温室効果ガス排出量などの面で優れた特徴を有する再生可能エネルギーである。特に,火山国であり,世界的にも地温勾配が高い我が国においては有望なエネルギー源であると認識されている。地熱エネルギー利用の一形態に地下の貯留層から高温の熱水や蒸気を坑井を介して取り出し,それによりタービンを回転させて発電する地熱発電がある。このためには,約200℃以上の熱水や蒸気を蓄えた貯留層の開発を行う必要があるが,このような地熱貯留層はきわめて偏在していることに加え,高透水性の亀裂は貯留層内に不均質に分布しているため,このことが地熱開発の不確定性を高め,高発電コストの遠因のひとつとなっている。この中で,地下に掘削した坑井に高圧の流体を注入する等により既存亀裂の透水性を高める,あるいは新たに亀裂を生成し,人工的に地熱貯留層を拡大・作成する技術の開発が行われてきた。このように人為的手段により作成された地熱システムはEGS (Engineered Geothermal Systems) と呼ばれ,欧米では地熱開発の中心的手段となっている。我が国においてもEGSは地熱発電量の拡大,持続性の維持のために有効であると認識されている。EGSにおいては開発ターゲットとなる岩体の性状の把握,および亀裂システム作成時のモニタリング等において物理探査技術の果たす役割は大きいが,EGSでは貯留層を形成する個々の亀裂の評価・モニタリングが必要とされるため,今後さらなる技術開発が必要である。